カテゴリー別アーカイブ: 知的生産の技術

生き様-知的生産の技術

書斎の資料整理

いよいよ、書斎の整理に着手しました。本棚は引っ越してすぐに満杯になり、その後読んだ本や買った本は、床に山積みになっています。最初の頃は、それもかわいかった(必要とあれば取り出せた)のですが。気がつくと、50センチ以上の山脈になっていて、取り出すどころではありません。11年間に、たくましく増殖しています。
困ったものです。見ない=使わない=捨てれば良いのですが、その「きっしょ」(関西弁で「きっかけ」のこと)が立ちません。仕事では決断の早い私ですが、本を捨てることに関しては優柔不断です(反省)。
かつて大学教授の研究室を訪れたときのことを思い出します。天井まである大きな本棚はもちろん、通路にも本や資料が山積みされていて、その間の獣道(けものみち)を通って、先生の机までたどり着きました。人様のことを笑えません。

4月から大学で講義も始めるので、その資料を入れる空間を作る必要があり、遂に本棚の一部を整理しました。かつて出講していた大学での講義の資料、書いていた原稿の資料(中断したままのもの)を、捨てました。本棚の良い場所を、それらのファイルボックスが占領していたのです。講義資料はデジタルにして、パソコンや記録媒体(USBメモリ)に保管してあります。原稿もデジタルで保存し、記事にもなっています。しかし、その準備のために集めた資料がたくさんあるのです。
資料を見ると、「良く集めたな」「こんな資料もあったよな」という思い出の旅です。我ながら、よく調べていたものです。私の関心は、「日本の政治と行政」「官僚の役割」です。いずれ文章にして世に問おうと考えてたのですが、総理秘書官や大震災対応の仕事について、それどころではなくなったのです(言い訳です)。

それぞれに有用な資料なのですが、10年近く経つと価値が下がります。もう一度読み返したい資料もありますが、そんなことをしていては、新しい準備に取りかかることができないので、えいやっと捨てました。やれば、できるのです。
けっこうな空間を確保できました。ところが、既に集めてある資料をそれらのファイルボックスに入れると、すぐに埋まってしまいました。いよいよ、本の整理に着手しなければなりません。

広辞苑、還暦

広辞苑が、刊行以来60年になるのだそうです。すなわち、1955年生まれで、私と同い年です。戦前からあるのだと思っていました。
私が使い出したのは、中学生の時です。田舎の中学生にとって、広辞苑は権威であり、あこがれでした。一つの単語を引いては、近くの単語を読みと、知識の源でした。小学生や中学生の時は、百科事典を読むのが楽しみでした。知らないことばかりでしたから。また、教科書のほかに適当な本もありませんでした。
国語辞典の話に戻ると、社会人になってからは、職場では「岩波国語辞典」を使っています。こちらは1,800ページでコンパクトです。もっとも、パソコンで調べることも多くなりました。一つの単語を調べるには、インターネットが便利でしょう。しかし、学生が勉強するなら、印刷物の辞書をお薦めします。知識が横に広がります。

パワーポイントは嫌い

私は、「パワーポイント」(プレゼンテーション用のコンピュータのソフト)が、嫌いです(2011年11月6日)。1枚当たりの情報量が少なく、観客とのアイコンタクトが切れてしまうからです。講演の時も使いません。仕方なく使うときもありますが、画面操作は別の人にお願いします。
印刷しても嫌いです。用紙を横長に使うのは、人間工学に反します。とはいえ、最近の資料は、この様式を使うことが多いようです。
資料をもらって、困ることがあります。省資源のために、両面印刷が普通です。そのときに、あなたなら、2ページ目(1ページの裏)を、どちらを上に印刷しますか。上辺で綴じる場合は、裏面は表面と上下を逆にします。左辺で綴じる場合は、裏面も表面と同じ上下になりますよね。ところが、会議で配られる資料に、両者が混在していることがあります。左上をホッチキスした資料には、両方が混在しています。資料1は上下に開くのに、資料2は左右に開くのだったり。
あなたも、困ったことがありませんか。紙を横長に使うから、こんな混乱が起きるのです。紙は縦長に使うものです。

松原先生の書庫

先日(4月7日)紹介した、松原隆一郎先生の『書庫を建てる  1万冊の本を収める狭小住宅プロジェクト』(2014年、新潮社)。その書庫を見せていただきました。我が家からは、歩いてすぐのところです。
実物も、予想以上の立派さで、感激しました。先生におねだりして、先生がゆったりできると書いておられた、1階の階段下に座らせてもらいました。納得。
設計された堀部安嗣先生が、「もう2度とできない」とおっしゃっていましたが、まあ、知恵と工夫の結晶です。このような書庫を建てて欲しい研究者や読書家は、たくさんいると思います。みんな蔵書の置き場や、部屋の床が抜けることに困っているのですから。この書庫を基本形にして、サイズを大きくするとか、付属室を変えるとか。
もう一つの圧巻は、書棚に並んだ本の数々です。多くの棚で、私の関心と重なる本が並んでいました。
うらやましいです。自分の集めた本を、ほぼすべて収納できる。しかも、螺旋階段で、全てを一望できるのです。書庫を作るというのは、本好きにとっての「男子の本懐」ですよね。しかし、先生の書庫をうらやむ前に、我が書斎、いえ今や書庫になっている6畳間は、読みもしない本を捨てることが先決です。その決心がつかなくてねえ・・。優柔不断です。

8坪の土地に書庫を建てる

松原隆一郎先生の『書庫を建てる  1万冊の本を収める狭小住宅プロジェクト』(2014年、新潮社)が、とてもおもしろくて、一気に読んでしまいました。
東大教授である先生が、1万冊が入る書庫を作る話です。しかし、普通の建物ではありません。8坪の小さな土地に、建てるのです。どのようにして、建築家である堀部安嗣さんが設計するか。
さらに、できあがった書庫は、すばらしいです。写真がついていますが、とても8坪の土地に収まっているとは思えません。お二人の哲学がこもっています。
そして、松原先生が、なぜ書庫を作られたか。おじいさんの仏壇を書庫に収めるまでの、松原家の隆盛とその後の歴史探訪が語られます。お薦めです。
本文でも書かれていますが、家を建てることは、一つの小説になりますね。私も、今の家を建てることは、楽しい経験でした。小さな家には、それなりの苦労があります。大きな要求に対し小さな予算と面積、それをどのような設計に組み込むか。大きな家以上に、ドラマがあります。