カテゴリーアーカイブ:社会の見方

人工知能があなたのすべてを見ている

2026年10月5日   岡本全勝

9月24日の朝日新聞に「私の全部、見透かされてる? AIとの対話から資産、趣味、心の内側までも」が載っていました。他人には言わないこと、家族にも言わないことを、機械には入力してしまいます。すると・・・。

・・・日本人の約半数が利用したことがあるといわれる生成AI(人工知能)。ふと気がつけば、仕事や人間関係、健康上の悩みまで相談できる「心の友」と化している。「友」は私が何に悩み、何を好み、どんな価値観を持っているか熟知しているかのようだ。だが待てよ。AIが知っているということは、その向こうのAI企業にも知られているってことでは? 何を知っているのか、AIで探ってみた。

実験に協力してくれたのは、データ保護のためのサービスを開発している株式会社データサイン社長、太田祐一さんだ。
太田さんは、グーグルのジェミニを使い始めた昨年8月31日から約1年間のチャット履歴をダウンロード。これをオープンAIのChatGPT(チャットGPT)に読み込ませ、会話の人物像をプロファイリングさせた。データ量は96MB。文字にして新書約320冊分に上った。

「うわー。全部、当たってる」。結果を見た太田さんは苦笑いした。
チャットGPTが言い当てたのは、氏名、住所、年齢、両親や妻の氏名、子どもの年齢、年収、資産、よく使うホテルに趣味。健康の悩みまで当てている。
「これだけの情報があれば、僕を詐欺にひっかけるのは簡単だな」と太田さん。だが、チャット履歴を見直すと、ほとんどは自ら入力した内容だった。
資産運用の見直しを相談したり、不動産購入の契約書をチェックしてもらったりした時だ。子どもの年齢も、旅行先のホテル探しを頼んだ際に伝えていた。
「予想以上にたくさんの情報を入れちゃってましたね」と、恥ずかしそうに頭をかく太田さん。「生成AIには、検索とは比較にならないほど大量の機微に触れる情報を渡しがちだ」と分析する・・・

福井ひとし氏の公文書徘徊16

2026年10月4日   岡本全勝

『アジア時報』10月号に、福井ひとし氏の連載「一片の冰心、玉壺にありや?―公文書界隈を徘徊する」第16回「「大政翼賛会」の作り方―設立の手順と根拠」が載りました。

大政翼賛会と言っても、名前を聞いたことはあっても、どんな組織だったかは、多くの人は知らないでしょう。1940年10月、第二次近衛内閣の下で新体制運動の結果結成された国民統制組織です。ぎょうぎょうしい割には、何をしたのかよくわかりません。今回の論考を読むと、当初の意図とは異なり、尻すぼみになったようです。

行政学・行政法学的には、国家行政上どのように位置づけるのか、どのような根拠と手続きで作られたのか、興味深い事例のようです。詳しくはこの論考を読んでいただくとして、内閣の決定で作られるのですが、法律や勅令もない、不思議な位置づけの組織になります。

51ページに、第一回準備会の議事録で「女の腐つたようなことを言ひ合ふよりもこの場で心の底からお互に意見を吐露せねばならん(金光氏、憤然自席より「女の腐ったとは何だ!不謹慎極まる!」との発言があり、それに対して「取り消さぬ、断じて取り消さぬ」との応酬が載っています。こんなやりとりがあって、記録されているのですね。

ところで、漢文の素養が高い筆者です。末尾に「翼賛」の語源が出てきます。中国の三国志に出てくるとのことです。

鳥の保護活動がカラスに利用され裏目に

2026年9月29日   岡本全勝

9月17日の日経新聞有価に「絶滅危惧種の渡り鳥コアジサシ、観察減らすと繁殖成功 福島の営巣地」が載っていました。保護活動が逆効果だったのですね。

・・・絶滅危惧種の渡り鳥「コアジサシ」が今夏、福島県いわき市の夏井川河口で繁殖し、20羽以上のひなが巣立った。東北の太平洋側では貴重な営巣地だが、2年前まで15年間、カラスの捕食被害などで巣立ちは確認されていなかった。
会員減による人手不足に悩む保護団体が、窮余の策で観察日を減らし「知らんぷり」したところ、人間の姿で巣の場所を特定していたカラスの攻撃を受けにくくなったとみられる・・・

・・・県は毎年5〜8月、河口の立ち入りを規制しているが、ひなは親鳥が餌の小魚を捕りに巣を離れている間に、たびたびカラスに食べられていた。
一方、同支部では近年、会員数が最盛期の半数近くまで激減。人手が足りず、観察する日を限定して放任することにした。
すると昨年、2009年以来となる5羽が巣立った。原因を調べると、一端は「人間の姿」。立花博支部長代行は「カラスは会員らが向けたレンズの先にひながいることを覚え、襲っていた」と振り返る・・・

日本人の内向き化、統計での裏付け

2026年9月28日   岡本全勝

9月22日の朝日新聞に「日本人の「内向き化」に裏付け 年齢に限らず、経済停滞など影響か 青学大」が載っていました。なるほど。

・・・若者の海外留学や海外赴任の減少、職場でコミュニケーションをとりたがらない姿勢――。日本人は以前より内向きになっていると近年懸念されているが、本当にそうなのか。
青山学院大学の研究グループが2010~21年に実施された性格特性の調査を集めて分析したところ、活動的で社交的さを示す「外向性」が男女いずれも年々低下傾向にあることが確認された。「日本だけ国際的に特異な可能性も考えられる」という。研究成果が専門誌に掲載された。

研究グループは、性格分析での5大要素の一つの「外向性」に着目。国際的な指標を使い、2010~21年に実施され、日本人計4万8905人について外向性を1~7点(真ん中が4点)で評価した48研究(75データ)を、年齢や性別を考慮しながら分析した。
その結果、10年以降、外向性の平均値は年々低下。例えば10~15年は平均4・05点で、16~21年は同3・82点と、「内向き化」が裏付けられた。新型コロナウイルス感染が流行する前の19年まででみても同じ傾向がみられた。
10~21年でみると、女性の外向性は平均4・07点で男性(3・80点)より高いが、性別によらずこの10年ほどで同じように低下していることがわかった。海外では年齢が上がるほど外向性は低下する傾向がみられるが、日本では年齢の影響はみられなかった。

一方、欧米や中国では調査年の違いはあるが、すべての国で外向性は年々上昇している。なぜ日本だけが低下しているのか。
研究グループのメンバーで、現在は東京大大学院生の秋元涼之介さんによると、経済的な要因が候補の一つとして考えられる。中国では1人当たりのGDP成長率が高い地域ほど外向性の上昇率が高い。一方、日本は「失われた30年」などと指摘されてきた。
心理学的な要因も考えられる。日本では個人主義の傾向が年々高まっているが、もともと日本に存在していた集団主義と相いれず、その結果、欧米とは異なり「他人との関係を断つ個人主義」が広まっていると指摘されているという。
また、SNSの普及も考えられ、外向性が高い人がSNSを使うと外向性がより高まるが、低い人がSNSを使うとより低くなるという報告があるという・・・

なぜエスカレータの片側を空けるのか、2

2026年9月26日   岡本全勝

「なぜエスカレータの片側を空けるのか」の続きです。日本では法律や合理性より、社会の通念、世間体が行動基準となります。

憲法に男女同権が定められても、長年、職場や家庭で男女差別を続けてきました。結婚は二人の意思と決められても、結婚には親の了解を得た(両家の結婚式)のです。世間の通念は、憲法より強かったのです。
日本は集団主義と言われます。それは、各人が判断して集団のためになる行動を取っている(積極的集団主義)のではなく、他者の行動にあわせている(消極的)集団主義なのです。日本では、規則や合理性より強い行動規範=世間に合わせる=世間の目を気にするです。「ムラ社会」です。

会社の側も社員がそれぞれに判断するのではなく、会社の都合に合わせるように期待し、それに報いました。採用されると、人事課が配属や昇進を決めてくれるのです。「面倒見のよい会社」と「甘える社員」ができました。いわゆるメンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の違いです。
この集団主義は軍隊や経済発展期の工場では、みんなが同じことをする際に効果的でしたが、各人が判断して行動する場面になると欠点になります。学校での「集団主義」「画一的」教育と、自分で考えるのではなく正解を教える教育は、自分では考えない国民をつくってしまいました。
エスカレータの片側を空ける行動は、根が深いものがあります。