カテゴリーアーカイブ:社会の見方

人工知能は報道を代替できず

2026年10月29日   岡本全勝

10月20日の読売新聞、ロバート・トムソン、ニューズ・コーポレーションCEOのインタビュー「報道 AIは代替できず」から。

・・・生成AI(人工知能)の急速な普及で、ネット上に不正確な情報や真偽不明のコンテンツがあふれている。米メディア大手ニューズ・コーポレーションのロバート・トムソン最高経営責任者(CEO)が読売新聞のインタビューに応じ、生成AI時代に報道機関が果たすべき役割を語った。

トムソン氏は生成AIを「他者のコンテンツを要約し、再利用し、コピーしている『高度な分配ネットワーク』にすぎない」と指摘した。その上で、「ジャーナリズムの本質は『現在』を映し出し、歴史の第一稿を正しく記録することにある。過去データを処理するだけのAIには決して代替できない」と強調した。
また、人間が検証を重ねて生み出すニュースコンテンツをAIモデルの進化と維持に欠かせない「インプット」と表現し、人間が深く関わる報道の意義は、これまで以上に大きくなるとの見方を示した。
取材現場におけるAIの利用についても「人間の関与(ヒューマン・イン・ザ・ループ)」が必要との認識を示した。
AIは資料調査の効率化には役立つものの、最終的な執筆や何が重要かの判断は記者の役割だと訴え、「AIはパターン認識に基づく『線形思考』だが、人間はシナプスを通じた『水平思考』で創造的な発想ができる。記者の署名は読者への誠実な責任の証明だ」と話した。

―生成AI時代の新聞報道の存在意義は。
「AIは過去の情報を精巧に再構成して利用する『レトロスペクティブ(過去指向)』な存在だ。ジャーナリズムの本質は『現在』を映し出し、歴史の第一稿を正しく記録することだ。未来を見据え、現在を描く人間の取材・報道は、AIには決して代替できない」
「今起きている『現在』を、ジャーナリストが信念を持って報道することが非常に重要なのだ」

―報道コンテンツを「AIモデルの進化と維持に不可欠」と公言している。
「明らかにジャーナリズムがAIのインプット(情報収集源)になっている。問題は、多くのジャーナリズムを損なう形で再利用されている点だ。関係性を根本から変える必要がある」

―記事執筆でのAI利用はどう考えるか。
「効率的なリサーチに使うのは理にかなっているが、物事が重要かどうかを説明するのは記者の役割だ」・・・

女性首長「いまだゼロ」8県

2026年10月28日   岡本全勝

10月25日の朝日新聞ウェブニュースに「女性首長「いまだゼロ」8県に 岩手で誕生、人数・割合トップは東京」が載っていました。岩手県雫石町で、県内初の女性首長が生まれたことに関連してです。

・・・ 朝日新聞の調べでは、10月20日時点で市区町村長に女性がいないのは14県。このうち広島は、知事が女性だ。
富山、石川、奈良、島根、香川、愛媛、佐賀、宮崎の8県は、過去も含めていないか、いたという記録が確認できていない・・・
・・・女性のトップは、全国1741市区村長でわずか82人。最多の東京でも17.7%にとどまる。政治の世界ではまだマイノリティーだ・・・

思ってはいても座席を譲らない

2026年10月28日   岡本全勝

10月18日の朝日新聞オピニオン欄「優先席を考える:2 譲るハードル」から。私の経験「席を譲られた」

・・・快適な利用には、お互いの配慮が欠かせない、電車やバスなど公共交通機関の優先席。ただ、せっかく譲りたい気持ちがあるのに、ためらいを感じることもあります。2回目は、その理由を調査した2人の専門家に聞きました。

欧州で電車やバスに乗ると、乗客がごく自然に席を譲り合っている。「なぜ日本とは違うのだろう」。そんな素朴な疑問を出発点に、公共交通での協力行動や社会規範を国際比較した研究がある。主導した公益財団法人・日本交通公社の川村竜之介さんに、その成果と発見を聞いた。

日本では、弱者に席を譲ることがマナーとして認知されているはずですが、実際には行動に移している人は少ないように感じます。その違いは何によるものなのか、探ろうと思いました。「鉄道やバスの車内で席を譲る行動」に着目して、2012~13年に、日本・韓国・イギリス・フランス・ドイツ・スウェーデンでウェブ調査をしました。世代による偏りが出ないように配慮した上で、各国の首都圏に住む300人に、席を譲る頻度や意図、規範意識などについて聞きました。
大きな発見は、日本は「席を譲るべきだ」という意識は各国と同様に強かったのですが、実際に席を譲る頻度は最も低かったことです。行動に移すまでに、何らかの壁があると考えられます。日本の事情を分析したところ、いくつかの背景や要因が見えてきました。
まず、優先席は6カ国全てにありましたが、「優先席では席を譲りましょう」と車内などで積極的にアナウンスをしていたのは当時、アジアの日本と韓国でした。こうした呼びかけは「席を譲ることが望ましい」という認知を高めている一方で、「優先席以外では席を譲らなくていい」とも受け止められ、譲る行動を抑制している可能性があります。

また日本では、地域のなかで疎外感がある人ほど、席を譲らない傾向もみられました。公共交通機関をよく利用する人ほど、席を譲らなくなる傾向もありました。
今回の調査対象は首都圏、つまり日本の場合は東京圏でした。一般に、コミュニティーに属している感覚が薄く「自分ひとりで生きている」と思う人は、他者を助けようという意識も弱くなります。利他的な行動が、巡り巡って自分にも利益をもたらすと実感できれば、自然に席を譲るという行動につながっていくはずです。
そのためには、時間はかかりますが、地域への愛着を高めるような施策が大事です。過去の研究では、地域を「歩く」行為が、その人の地域への愛情を醸成することがわかっており、歩ける街をつくるための施策も必要になります・・・

「俺」を使わなくなった

2026年10月27日   岡本全勝

10月17日の日経新聞に「男性の「俺」離れ、半数が使わず 「私」や「自分」で自己主張弱める」が載っていました。

・・・男性一人称の自称詞、「俺」の存在感が揺らいでいる。民間調査によると「俺」を使う男性は約30年で急減し、「私」「僕」「自分」に分散した。専門家らは、立場や関係性に配慮し、摩擦を避けたい意識の表れとみる。

博報堂生活総合研究所が実施した調査によると、家族や友人の前で自分を「俺」と呼ぶ男性の割合は1994年に未婚者で86.0%、既婚者では65.4%と多数派だった。ただ、2026年調査ではそれぞれ42.5%、46.7%と半数を割り込んだ。
「俺」衰退の裏で進むのが分散化だ。1994年では次点「僕」とのほぼ2択だったが、2026年には「私」が未婚・既婚とも2割前後の勢力となり、「僕」は3位に転落した。「自分」も未婚・既婚とも1割前後を占め、存在感を増している。

調査を担当した研究員の加藤あおいさんは、「男らしさを強調する『俺』を避け、より自己主張が弱い『私』が選ばれている」と分析する。「『自分』はSNSなどで匿名で発信したい場合にも便利。主張が強いと思われたくない、属性を明らかにしてたたかれたくないという心理がある」。身近な関係だけでなくフォーマルな場でも広がっているという。
なぜ男性は、自分の色を消そうとしているのか。『自称詞〈僕〉の歴史』著者である友田健太郎さんがこの30年の変化として注目するのが、女性の社会的地位の向上だ。
「『俺』の乱暴なイメージが強まり、女性との対等な関係性を意識する男性が使いにくくなった」と友田さんは分析する。「『僕』にも若干のエリート感がある。一方、『自分』は自身を内省するような率直な響きがあり、男女間の緊張とも無縁で選びやすくなったのでは」

言葉とジェンダーの関係を研究する言語学者の中村桃子さんが注目するのは、生活総研調査での女性側の変化だ。1994年は「あたし」の利用が未婚女性で4割超、既婚女性で3割弱を占めたが、2026年にはともに1割以下となり、「わたし」が大きく増えた。
中村さんによれば、「あたし」は「わたし」より女性性を強調する響きを持つ。「俺」離れと「あたし」離れは同じ変化の表れで、「伝統的な男らしさ、女らしさに魅力がなくなった結果ではないか」と考察する・・・

回答率わずか3%、アメリカの世論調査

2026年10月23日   岡本全勝

NHKウェッブニュースに「回答率わずか3%?アメリカの世論調査は信頼できるのか」(10月22日)が載っていました。

・・・アメリカの中間選挙が迫っています。情勢を占う上で欠かせないのが世論調査ですが、その信頼性をめぐる議論が続いています。研究者や調査会社への取材から見えてきた課題や変化について、ワシントン支局の西河篤俊支局長に聞きます。

西河支局長「多くの世論調査やメディアで伝えられているのは、議会下院では野党・民主党がやや優勢、議会上院は接戦という見方です。」

ただ、こうした世論調査の信頼性が近年議論になっていると

西河支局長「そのとおりです。今に続く議論のきっかけともいえる象徴的なケースが10年前、2016年の大統領選挙です。多くの調査はヒラリー・クリントン氏の優勢を示していましたが、結果は予測に反してトランプ氏の勝利でした。
そして、2022年の中間選挙では、共和党が大勝するいわゆる「レッドウェーブ」が予想されていましたが、実際の共和党の躍進は予想ほど大きくありませんでした。」

西河支局長「・・・1つ挙げたのが、「調査の回答率の低さ」でした。
実際に世論調査を行っている現場の当事者である共和党系の世論調査会社のブレント・ブキャナンCEOにも話を聞きました。
すると驚いたことに、調査で実際に回答を得られるのは、わずか1%から3%程度だというのです。政治とのつながりが弱く、ニュースをあまり見ない人たちほど声を拾いにくいとのことでした。
また、「若者は昔から調査で捉えにくいが、今の若者は他の世代以上にフラストレーションを抱えている」とも分析していました・・・」