カテゴリーアーカイブ:行政機構

国勢調査の回答率8割

2026年6月19日   岡本全勝

5月30日の日経新聞に「国勢調査の回答率8割どまり 綻ぶ「全世帯」統計、ぼやける国の輪郭」が載っていました。
NHKなどの世論調査でも回答率は5割程度です。8割は高い方だと思います。戸建ての多い地方と異なり、アパートやマンションが多い都会では、誰が住んでいるかもわからず、難しいでしょうね。マイナンバーカードが全員に普及したら、それを使えますかね。

・・・2025年の国勢調査の回答率はインターネットと郵送で計80.7%にとどまった。選挙の区割りや国内総生産(GDP)の根拠にもなる「最も重要な統計」の精度が落ちれば国の輪郭はぼやける。あらゆる政策の土台が揺らぐ静かな危機だ。
調査は5年に1度、国内の全世帯を対象に家族構成や就業状態、勤め先の場所などを聞く。回答率は1995年に99.5%だった。その後は右肩下がりの傾向が続いてきた。
前回2020年は83.7%まで沈んだ。このうち79.8%分がネットと郵送で、3.9%分が調査員による回収だった。

国勢調査はあくまで全世帯の実態をつかむため、回答が集まらない分は近隣住民やマンションの管理人らへの聞き取りで補う。統計法が定める手続きだ。
その聞き取りにも限りがある。働いているかどうかや最終学歴など分からない項目は空欄のままで「不詳」という扱いになる。
東京都心の港区や新宿区は20年調査で「就業状態」が4割も不詳となった。両区は配偶者の有無も不詳の割合が2割を超えた。こうしたケースが増えるほど統計と実態がずれかねず、社会保障政策などの針路が狂いかねない。

国勢調査は大正時代の1920年に始まった。自治体が自治会の推薦などで調査員を確保し、人手で調査票を配布・回収するのが伝統的な手法だった。
近年は一人暮らしや共働きの広がりで昼間に顔を合わせにくくなるなど壁にぶつかっていた。そもそも人間関係も希薄になっている。
今回、ネットでの回答率は47.3%だった。IDやパスワードの手入力を省けるQRコードの導入などで前回20年調査から9.4ポイント高まった。目標としていた5割には届かなかった。
ネットの活用では英国が先を行く。オンライン主体の調査に切り替え、反応のない世帯は郵送や対面でフォローアップする。直近21年の回答率は97%に達した。未回答の多い項目は人口分布を反映して自動補完するシステムも取り入れている・・・

鳥インフルエンザ処理、自衛隊から民間へ

2026年6月1日   岡本全勝

5月18日の日経新聞夕刊に「鳥インフルエンザ、今季は自衛隊派遣ゼロ 殺処分など民間委託進む」が載っていました。

・・・高病原性鳥インフルエンザの防疫作業の担い手に変化が生じている。都道府県の要請に応じて自衛隊員が派遣されてきたが、今シーズンはゼロ。国が要請基準を厳しくしたことが背景にある。都道府県は殺処分などの民間委託を進めており、人材の確保や育成が課題となる・・・

・・・鳥インフルエンザは例年秋から春にかけて発生する。防疫作業は短期で終える必要があり、人手がかかる。都道府県は自衛隊に災害派遣を要請して確保してきた。防衛省によると、派遣は04年から始まり、20年に最多の20件、前シーズンの25年は9件だった。
農林水産省によると今シーズンは25年10月に初めて感染が確認され、これまでに16道府県で発生した(4月30日時点)。殺処分数は過去4番目に多い約576万羽に上るが、自衛隊が派遣されたケースはない。
背景には農水省が25年5月、都道府県に自ら対応可能な防疫体制づくりを改めて求めたことがある。自衛隊の主任務も踏まえ、安易に頼らないように「行政機能の維持が困難となり、やむを得ないと判断した場合」に災害派遣の要請を検討するよう示した。
家畜伝染病予防法は、養鶏場の所有者の責任で防疫措置を実施しなければならないと規定する。近年は畜産業の大規模化によって所有者だけでは殺処分が追いつかず、都道府県が主体となって対応している。

自前の防疫体制を強化するため、民間との連携を進める自治体が目立つ。人員の手配や防護服の輸送などにあたる旅行会社や運送会社と協定を結んだり、発生に備えて民間団体に消毒作業などの研修を実施したりしている。
今シーズンに5事例の感染が発生している北海道は、殺処分や消毒など一部の作業を初めて民間企業に委託した。担当者は「当初は軽微なけがや体調不良の報告もあったが、回数を重ねて徐々に作業のスピードも上がってきた」と話す・・・

法律に出てくる「市民」

2026年4月15日   岡本全勝

法律に規定された「消費者市民社会」」の続きです。残る「市民」に関する法律の規定は、次の2つになります。
「市民」特定非営利活動促進法、成年後見制度利用促進法
「市民生活」暴力団不当行為防止法、警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律など

市民という言葉は、市の住人という意味でも使われますが、ここでは、西欧近代で生まれた「政治参加の主体となる自立した個人(citizen)や地域社会を担う主体」として取り上げています。その観点では、警察関係で出てくる「市民生活」は「住民の生活」と言い換えることができるようで、少々異なります。

成年後見制度利用促進法には、ずばり「市民」が出てきます。
(基本理念)
第三条 2 成年後見制度の利用の促進は、成年後見制度の利用に係る需要を適切に把握すること、市民の中から成年後見人等の候補者を育成しその活用を図ることを通じて成年後見人等となる人材を十分に確保すること等により、地域における需要に的確に対応することを旨として行われるものとする。

しかし、市民の定義はないようです。どの範囲を指して市民というのか、国民とはどのように異なるかは不明です(専門家の方に教えていただけると幸いです)。

もう一つ「市民」は、特定非営利活動促進法に出てきます。

特定非営利活動促進法
(目的)
第一条 この法律は、特定非営利活動を行う団体に法人格を付与すること並びに運営組織及び事業活動が適正であって公益の増進に資する特定非営利活動法人の認定に係る制度を設けること等により、ボランティア活動をはじめとする市民が行う自由な社会貢献活動としての特定非営利活動の健全な発展を促進し、もって公益の増進に寄与することを目的とする。

この法律は、案の段階では「市民活動促進法」という名前でしたが、自民党内での反対で、現在の名前になったという経緯があります。ここに出てくる「市民」は、「政治参加の主体となる自立した個人や地域社会を担う主体」という意味だと考えられます。
「市民社会」は歴史学や政治学、社会学でよく使われる言葉ですが、歴史的にそれを勝ち取った西欧諸国と異なり、日本では違った歴史を歩んだので、「市民社会」や「市民」という言葉がなじんでいないのかもしれません。

法律に規定された「消費者市民社会」

2026年4月14日   岡本全勝

「市民社会」とは歴史学や政治学、社会学でよく使われる言葉です。ウィキペディアでは、概ね次のように定義されています。「市民社会とは、ブルジョワジー(市民)が封建的な身分制度や土地制度を打倒して実現した、民主的・資本主義的社会」。しかし、政府の文書で使われることは、見たことがありませんでした。
消費者教育の推進に関する法律に、「消費者市民社会」という言葉があることを教えてもらいました。この法律は、平成24年(2012年)に作られました。議員立法のようです。第2条に定義があります。

消費者教育の推進に関する法律
(定義)
第二条第2項 この法律において「消費者市民社会」とは、消費者が、個々の消費者の特性及び消費生活の多様性を相互に尊重しつつ、自らの消費生活に関する行動が現在及び将来の世代にわたって内外の社会経済情勢及び地球環境に影響を及ぼし得るものであることを自覚して、公正かつ持続可能な社会の形成に積極的に参画する社会をいう。

ただし、これは「市民社会」という言葉ではありません。消費者が積極的に参画する社会を指しているようです。歴史的な意義を持つ「市民社会」とは違うように思えます。
そこで、知人に教えてもらって、e-Gov 法令検索で「市民社会」を検索しましたが、法律には「消費者市民社会」以外は出てきません。次に「市民」で検索してみました。すると、次のような単語と法律が出てきました(これらの法律を引用しているような法律は除きます)。
「市民」特定非営利活動促進法、成年後見制度利用促進法
「市民生活」暴力団不当行為防止法、警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律など
「市民権」出入国管理法など
「市民農園」「市民緑地」市民農園整備促進法、都市緑地法

このうち「市民権」は外国人についての規定であり、日本人についてではありません。「市民農園」「市民緑地」もここで取り上げている「市民」とは異なるようです。(この項続く)。

自治体情報システム標準化の遅れ

2026年4月10日   岡本全勝

時事通信社の地方団体向け専門情報サイト「iJAMP」4月1日に、庄司昌彦・武蔵大学教授「システム標準化「多くの犠牲の上でたどり着いた60点」」が載っていました。
この問題(期限に間に合わないこと)は、当初から指摘されていました。現場での移行が遅れたのではなく、そもそも期日の設定に無理があるというのです。突然、現場の意見も聞かずに、移行期限を決められたとも言われています。記事でも、意思決定過程の不透明さが指摘されています。

・・・地方自治体の情報システム標準化は2025年度末に移行期限を迎えた。「半数超の自治体で遅れ」と報じられているが、1システムでも遅れる自治体がいくつあるかというより、約3万4000のシステムのうち、どれだけ遅れているかという視点の方が重要だ。大いに心配していたので、期限までに移行完了したシステムが半分を超える見込みという現状は「なんとか大失敗にはならなかった」と捉えたい。多くの障害を乗り越え、いわば文字通りの不眠不休の努力の上に何とかたどり着いた「60点」と評価できる。ぎりぎり合格点といったところだが、途中でもっと判断を誤れば、50点、40点、もしくは30点となったリスクもあっただろう・・・
・・・スケジュールを巡って、自治体関係者の反応が厳しいことは承知している。ここまできたら遅れの有無そのものを問題にすべきではない。遅れを問題視すれば、「危険でも早く終わらせろ」という動機が働きかねない・・・

・・・心身を病んで離職した職員や「もう行政のシステム市場には関わりたくない」と言っている業者も存在する。意思決定をする立場の人は、こうした事実を認識すべきだ。特定の悪者がいて、どこかと癒着していたというような単純な構図ではなく、情報共有や意思決定に関する構造的な課題が主な原因であると考えられる。今後もシステム改修は続くので、今回の反省を次に生かしていかなければならない。
標準化20業務のうち9業務について座長として仕様書策定に関わった立場でも見えない部分が多いくらい、標準化やガバメントクラウドに関する全体像や意思決定過程は不透明だった。会議としてはデジタル庁に「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ」が存在するが、3年ほど開催されていない。司令塔的な会議体がない上、公開の場で外部の視点による検証の仕組みもなく、方針が突然示されるような状況が続き、適切な意思決定プロセスとは言いがたかった・・・