カテゴリーアーカイブ:経済

30年間で物価は2倍に、賃金は9割に

2026年4月21日   岡本全勝

4月6日の朝日新聞に「月刊データジャーナリズム」「物価2倍超、ウナギもサンマも」が載っていました。
・・・新年度が始まりました。このタイミングで値上げされた商品やサービスも多く、買い物をしていて「高い」と感じる場面も増えたのではないでしょうか。ここ30年の消費者物価指数を振り返り、物価の変遷を追ってみました・・・

・・・近年、物価の上昇が著しい。
総務省が食品や光熱費、教育などの値段の変化を数値化した「消費者物価指数(CPI)」によると、うなぎのかば焼きの値段は1991年から2025年までに約2.5倍になった。
比較可能な387品目で調べると、上昇率が2倍を超えたのは23品目。値上げが特に大きかったのは「たばこ(国産品)」と「さんま」で約2.6倍。「灯油」が約2.5倍、「わかめ」と「水道工事費」が約2.4倍だった。全体の82%にあたる318品目が値上がりしていた。

とはいえ、ここ30年超を見渡すと、日本はバブル崩壊後の1990年代から、物価や賃金が上昇しない傾向が長く続いていた。
2010年時点で値段が上がっていたのは55%にあたる213品目。消費者物価指数の総合指数も20年代に入るまで110%を超えることはなかった。
厚生労働省の毎月勤労統計では、従業員5人以上の事業所で働く人(自営業やフリーランスを除く)の賃金を基に計算した「購買力」を示す実質賃金指数は、この間に1割ほど減った。
物価の上昇に賃金の伸びが追いついていないことを示しており、この間は「失われた30年」とも呼ばれる・・・

1991年を100とした折れ線グラフがついています。総合物価指数は120.8、光熱水費や食料は140を超えています。実質賃金指数は88.2です。

日本の投資の停滞

2026年4月20日   岡本全勝

4月2日の日経新聞経済教室、滝澤美帆・学習院大学教授の「日本は「イースト型」の経済成長を促せ」から。
・・・日本の労働生産性(時間当たり)はこの30年間、主要先進国で最低水準にとどまり続けている。深尾京司・経済産業研究所理事長の研究によれば、1人当たり国内総生産(GDP)を基準に見ると、日本が技術フロンティアから著しく乖離(かいり)した局面は鎖国下で産業革命に乗り遅れた江戸時代末期、太平洋戦争前後に続いて、1990年代以降が3度目だという。
今回の停滞は景気の波や政策の巧拙で全て説明できるものではない。日本経済が世界の技術の最前線から取り残されつつあるという、より根深い問題だ。
では、日本のどの産業で問題が生じているのか。バンアークらの研究(2019年)では産業をデジタル産業(ICT〈情報通信技術〉機器製造・情報通信)、デジタル集約的利用産業(金融・専門サービス・機械製造など)、デジタル非集約産業(建設・宿泊・運輸・農業など)の3群に分け、生産性への寄与を分析している。
表1に示す通り、日本の労働生産性成長率は全産業で低水準だ。世界金融危機後にデジタル産業の寄与が0.18%ポイントに急落し、デジタル集約的利用産業も0.13%ポイントにとどまる。デジタル非集約産業は危機後にわずかにプラスに転じた。全体の成長は0.39%まで落ち込んでいる・・・

・・・米国は経済全体の付加価値の約9%に過ぎないデジタル産業が、デジタル集約的利用産業と同程度の生産性寄与を生み出し、マッシュルーム型の傾向が見られる。ドイツは金融危機後にデジタル集約的利用産業が主役となる回復を示しており、イースト型に近い。
しかし日本はいずれにも当てはまらない。全セクターが低水準に収束し、成長のエンジン不在に陥っている。背景にあるのは二つの投資の停滞だ。有形インフラの老朽化と、無形資産投資の立ち遅れである。
有形インフラから考えよう。資本のビンテージ(世代)という概念が重要になる。ノーベル賞経済学者ロバート・ソローによれば、技術進歩は新規投資に「体化」される形で経済に浸透する。最新の機械や構造物には最先端技術が組み込まれているが、投資が滞れば資本ストックの平均年齢が上昇し、体化された技術水準が低位に固定される・・・

・・・無形資産でも立ち遅れは深刻だ。マスらの25年の研究は、現代の生産性成長ではICT投資単独ではなく、研究開発(R&D)・組織資本・人材育成・ブランドといった無形資産との補完的な投資が重要であることを示した。
表2には無形資産の有形資産に対する比率を日米独で比較した。日本は6〜8%にとどまり、16〜19%の米国に大きく水をあけられている。
さらに問題なのは表3が示す無形資産投資の偏りだ。無形資産全体に占める組織資本・人的資本の割合が、日本では約16%から約11%へと低下している。米国・ドイツがほぼ横ばいを維持するのと対照的だ。有形インフラと同様に、日本では既存の組織・人的資本の維持に資源配分が偏り、新たな能力形成への投資が相対的に抑制されている。
生産性低迷の背景には投資不足に加え企業規模の零細性という問題もある。一般に企業規模が小さいほど無形資産投資比率は低く、組織資本や人材育成への支出は後回しになりがちだ・・・

消費税ゼロ、経営者「反対」66%

2026年4月16日   岡本全勝

3月31日の日経新聞1面に「消費税ゼロ、経営者「反対」66% 給付付き控除は「賛成」86% 社長100人アンケート」が載っていました。
・・・高市早苗政権が導入を目指す飲食料品の消費税ゼロに日本の主要企業の経営者は否定的な見方を示している。日本経済新聞の「社長100人アンケート」では回答の66.3%が「反対」だった。物価高対策としての効果に懐疑的で、財政悪化への警戒感が強い。一方で、給付付き税額控除には所得再分配の手段として支持が集まっている。
アンケートは国内主要企業の社長(会長などを含む)を対象に3月2〜19日に実施し、143社から回答を得た・・・
反対の理由は、代替財源が確保できないから(71%)、景気押し上げ効果は限定的でコストに見合わないから(67%)などです。

4月1日には「ブランシャール氏に聞く積極財政 成長投資「正しい」、消費税減税「異論」」が載っていました。
・・・26日の政府の経済財政諮問会議に有識者として出席した米マサチューセッツ工科大学のオリビエ・ブランシャール名誉教授が日本経済新聞のインタビューに応じた。高市早苗政権の責任ある積極財政の考え方に「正しい」と賛同した。食料品の消費税率を2年間0%にする政府・与党案については「少し異論があるかもしれない」と語った・・・

食料品の消費税率を2年限定で0%にするという高市政権の案について。
・・・私はその案に少し異論を唱えるかもしれない。食料や誰もが必要な商品の税率を所得再分配の観点で引き下げるのは良い考えだ。ただ私が必需品の減税を検討するなら、他の品目の税率を引き上げるだろう。そうでなければ財政赤字を増やし、財政の信認を低下させる。実行するなら予算に中立であることを徹底すべきだ。
なぜたった2年間なのかも論点だ。低所得者層を真剣に支援するならそれは恒久的措置出あるべきだ。景気循環も時限的な減税の理由の一つにはなる。景気後退期に一時的に減税すれば、再増税前に人々の消費を増やすインセンティブになる。これは景気後退期には有用な政策だが、今の日本はそうではない・・・

20代と50代、賃金上昇に世代間格差

2026年4月1日   岡本全勝

3月15日の朝日新聞に「20代と50代、賃金上昇に世代間格差」が載っていました。

・・・若手の賃金が大きく伸びる一方で、中高年は伸び悩んでいます。賃上げの動きが広がるなか、世代間の賃金上昇のばらつきが新たな課題です。その傾向は20代と50代に象徴的に表れています。
厚生労働省「賃金構造基本統計調査(速報)」によると、2025年の大卒20代(20~24歳と25~29歳)は前年比4~5%台の伸び。一方で、大卒50代(50~54歳と55~59歳)は1%未満だった。
大卒の男女別もわかる24年の値で20年と比べると、就職期にあたる20~24歳の賃金は男性9・8%増、女性10・5%増。一方で、50~54歳は男性0・9%減、女性0・2%減だった。近年の賃上げ局面では年代による賃金上昇のばらつきが鮮明になっている。

第一生命経済研究所の熊野英生氏は「若手は転職が活発で、労働需給の逼迫(人手不足)が賃金上昇に反映されやすい。一方で50~54歳の就職氷河期世代は転職が少なく、世代間格差が生じている。氷河期世代の労働移動がもっと活発になるような環境整備が必要だ」と指摘する・・・

・・・賃金アップは、年齢などによる定期昇給と全体水準を底上げするベースアップ(ベア)に大きく分かれる。企業にとって悩ましいのは賃上げの原資の振り向け方だ。
人材採用のため、初任給は同業他社と比べて見劣りさせられない。初任給を上げれば若手の賃金も上げないと、既存社員と新入社員で逆転しかねない。賃上げ原資は若年層へまわりやすい構図にあるが、中高年層にも目配りしないと数多い社員の士気にかかわる。
経団連が労務担当役員らに聞いた「2025年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果」でみると、ベアの配分方法(複数回答)は「一律定額」55%、「職務・資格別」24%に続き、「若年層(30歳程度まで)」への重点配分が23%と多い。「中堅層(30~45歳程度)」は9%、「ベテラン層(45歳程度以上)」は1%だった・・・

・・・職場では管理職と若手、家庭では親と子。その象徴的な年代の50代と20代を比べると、労働市場での違いが浮かび上がる。
人口は20代が1272万(26年2月)と50代より3割少なく、働き手として希少な存在。就職期の環境は50代後半がバブル経済末期、50代前半が就職氷河期と、同じ年代でも差が大きい。20代は学生時代や就職期にコロナ禍を経験し、デフレからインフレへの転換期を若手社員として過ごしている。
お金に対する意識はどのように違うか。金融経済教育推進機構(J―FLEC〈ジェイフレック〉)の「家計の金融行動に関する世論調査2025年」によると、経済的な豊かさを「実感」「ある程度実感」している世帯の合計は20代58%、50代35%と開きがある・・・

広告費の半分はネット広告

2026年3月21日   岡本全勝

3月17日の朝日新聞、小林美香さんへの取材「作られた像、誘われる有権者 ネット広告と衆院選、ジェンダー表象研究者に聞く」から。

・・・選挙期間を通して、ネット広告の多さは異様に感じました。特に自民党は、YouTubeのような動画プラットフォームだけではなく、写真を用いたバナー広告など、量で圧倒していたように見えます。
広告は数秒のビジュアルや短いメッセージで消費者の「内なる欲望」を喚起し、消費行動へと誘導するように設計されています。
「アテンションエコノミー」という言葉で言い表されるように、いかに短時間で人々の認知を獲得し、情報を刷り込むかが、商品やサービスの消費行動のみならず、投票行動にも大きな影響を与えます。有権者の多くが、政策や公約を比較し検討するよりも、膨大な広告費をつぎ込んで出稿された広告の単純接触効果によって、投票先を選択しているのではないか、と強い危機感を抱いています・・・

次のような数字が載っていました。
・・・電通が公開する「日本の広告費」によると、2024年の日本の広告費は7兆6730億円。同年度の防衛予算7・9兆円に近い金額です。うちネット広告費は3兆6517億円と総広告費の47・6%を占め、マスコミ4媒体(テレビ、新聞、ラジオ、雑誌)の広告費2兆3363億円を大きく上回っています。
今後も増加が予測される広告費は、私たちの価値観や生活に大きな影響を与えているのにもかかわらず、その機能や全体像がつかみづらいのが実情です・・・