カテゴリーアーカイブ:経済

経営陣と管理職は外国人、日本人は従業員

2026年7月18日   岡本全勝

時事通信社の専門誌『地方行政』6月25日号「インバウンド急増、1000万人突破が契機に 久保成人元観光庁長官に聞く」に次のようなことが書かれていました。
・・・観光地で外国資本による大規模ホテルの建設が進んでいるが「ホテルのマネジメント層に日本人があまりいない」ことを課題に挙げる。「米コーネル大ホテル経営学部卒などの外国人が高給取りの経営陣や中間管理職で、日本人は給料が高くないホテルのスタッフにとどまっており、この流れをどこかで止める必要がある」と警鐘を鳴らす・・・

先日書いた「経済停滞・高齢化と終身雇用の変貌」。優秀な従業員から管理職や幹部を選抜する日本の雇用慣行の限界、従業員と管理職や幹部は別に採用する諸外国の雇用慣行の違いが、現れています。

再利用市場3

2026年7月12日   岡本全勝

再利用市場2」の続きになります。6月22日の読売新聞には「リユース店 値付けが勝負…買い取り 販売価格から逆算」が載っていました。

・・・リユース取引が身近になったのは、2013年創業のメルカリなどフリマアプリの影響が大きい。スマートフォン一つで自宅から売買でき、中古品の相場も一目で分かるようになった。
ただ、ビジネスモデルには違いがある。メルカリは個人と個人の取引場所を提供する仲介業者であることだ。店舗型の事業者が販売額と買い取り額の差益で稼ぐのに対し、販売手数料が主な収益となる。在庫を抱えるリスクもない・・・国内の累計出品数は40億点を数え、海外との取引も含め、流通総額は年1・1兆円を超える。衣類やゲームなど身近なものから、子供の工作に使うトイレットペーパーの芯や、草木染用のタマネギの皮なども売りに出され、メルカリ社内には「一番の競合はゴミ箱」という言葉もあるほどだ。

新たな収益を求めた海外進出も増えている。ゲオホールディングス(HD)は「セカンドストリート」を米国や台湾など6か国・地域で出店。海外店は20年度の16店から25年度に148店に増えた。現地での買い取り販売が中心で、世界市場を成長の柱に据える。
日本の中古品は、丁寧に使われて保存状態が良く、本物か偽物かの査定能力も高いため訪日客の人気は高い。「ユーズド・イン・ジャパン」とブランド化している。メルカリは18日、日本の中古品を海外から購入できる「グローバルアプリ」の提供を米国で始めたと発表した。台湾、香港に次ぐ3か所目となる・・・

・・・環境省の調査によると、国内のリユース市場は右肩上がりに拡大しており、2024年に3兆4986億円となった。政府は3月に公表したロードマップで、循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行を加速させるため、30年までに4・6兆円に増やす目標を掲げている。
市場拡大の背景には、廃棄物を減らす環境意識の高まりもあり、ブックオフグループHDの長谷川氏は「リユースに関する教育や接点が増え、若年層を中心にリユースへの抵抗感が薄まった」と指摘する。
成長の余地はまだありそうだ。メルカリの試算では、国内の家庭で1年以上使われていない不用品は90兆5352億円。1人あたり約71・5万円の「隠れ資産」が眠っている計算だ。
衣料品や書籍、家具など多岐にわたり、現在は使っていても、今後5年間で使わなくなると推測される不用品も国民平均約27・4万円に上るという・・・

伝統的企業の企業内官僚制の悪弊

2026年7月11日   岡本全勝

6月22日の日経新聞、西條都夫・特別編集委員の「パナソニックに必要な「解体新書」」から。この官僚制(性)には、本家官僚もびっくりです。

・・・パナソニックホールディングス(HD)は今度こそ復活するのだろうか。「ザ・JTC(日本の伝統的大企業)」とも呼ばれる同社は過去40年以上足踏みを続けた。連結営業利益は昭和時代の1984年度に記録した5757億円をいまだに超えられず、ライバルのソニーグループや日立製作所に置いていかれた。成長力不足に悩む日本経済の縮図のような存在である。ところが、どうしたことか最近のパナソニックは調子がいい・・・
・・・株価上昇の要因は相場全体の上げ潮に加え、昨年来の1万人を超える人員削減と、人工知能(AI)用データセンター(DC)向け分散型電源システムの好調だが、底流では企業の体質転換も進んでいるようだ。

一つは過剰な官僚体質の是正だ。OBによると、以前の同社は煩雑なプロトコルに縛られた組織で、「役員に事業計画をプレゼンするときは、事前に課長、部長、事業部長と上げていく。そのたびにあれこれ注文がつくので、プレゼン用のパワポ資料が『ver100』を超えることもザラだった」という。稟議の承認を得るのも面談が原則。上位者が例えば長期出張中だと、ただただ待つしかなかった。
一昔前のJTCなら「あるある」かもしれないが、さすがにこれでは競争できない。ある社員は「こうした弊は改まり、組織の風通しは昔より格段によくなった。幹部の若返りも進んだ」という。
外資の経験が長く、21年にパナソニックに招かれた玉置肇副社長も「もともとセクションごとの縦割りが強く、事業部間の情報共有も不十分だった。この壁を壊すことで経営チームの一体感が生まれた」と指摘する。
ガチガチの官僚体質が普通の組織に一歩近づいた、というところだろうか・・・

再利用市場2

2026年7月10日   岡本全勝

再利用市場」の続きです。日経新聞6月9日は、川端基夫・関西学院大学名誉教授の「中古品に海外で新たな価値も」でした。
・・・日本のリユース市場(販売額)は、図1のように24年時点で3兆円を超える巨大市場に成長し、40年には5兆円に達すると予測される。筆者も今後の拡大余地は大きいとみている。その理由を4つ挙げたい。
1つ目は、中古品購入への抵抗感の低下である。20〜30歳代の若い世代は、7割以上が過去1年間に中古品を購入した経験をもつ(メルカリ総合研究所の24年調査)。世代交代で一層の市場拡大が予想される。
2つ目は、不用品売却が容易になったことである。各家庭に眠る不用品は、25年時点で90兆円を超えるという推計もある。今後はそれらがリユース市場で流通する可能性が高い。
3つ目は、リユース店の海外進出の増加である。国の内外が連動したグローバルな市場拡大が見込める。
4つ目は、訪日客による中古ブランド品への需要増加である。日本の真贋判定レベルの高さや商品のきれいさ、円安などが主な要因だ。訪日客の増加が続けば、さらなる需要拡大が見込める。
このうち1つ目と2つ目の背景には、フリマアプリの普及があるとみてよい。図2のように、リユース市場はネット上での販売が6割強、店頭販売が4割弱である。とくにフリマアプリを介した個人間売買が全体の4割を占め最大になっている。ネット取引は広域から買い手を探し出せるし、売り手の利益も多くなる。
とはいえ店舗の数も増えてきている。リユースの店舗には2種類がある。一つは近年店舗を急増させている買い取り専門店で、消費者から買い取った商品を一括して国内のオークションで同業者などに売却する。ブランド品や宝飾・貴金属の売買が主であるが、今や世界中から入札がある。
もう一つは店頭で消費者から買い取り、店頭で消費者に再販売する店である。衣料品・書籍・玩具・家電・家具・雑貨などあらゆるものが店頭で売買されている。この業態を注意深く見ると、リユース店の経営上の特徴がよく理解できる・・・

・・・先述のように、日本のリユース企業は海外市場の開拓にも力を入れる。海外店舗数は、筆者の調査ではすでに500店に迫るが、まだ成長の余地が大きいと考えられる。日本のリユース企業には、海外市場での競争優位性があるからだ。
海外店舗には(1)ブランド品などの買い取り専門店(2)幅広い商品の買い取りと再販売を行う店(3)日本の中古品を現地で販売する店――の3種がある。
(1)と(2)は現金での買い取りを行っており、それ自体が海外での競争優位性になっている。海外ではアンティーク品などを別として、中古品を現金で買い取る店が少ないからだ。

特に欧米では伝統的に寄付文化が根付いてきた。中古品は店に寄付され、販売収益は教会や慈善団体に寄付される。米国では中古品を寄付すると、寄付した中古品の金額に相当する税の控除証明が店側から発行される。消費者は、換金狙いではなく税の控除狙いで中古品を処分しているのだ。したがって、日本式の現金買い取り自体が海外では人気を呼んでいる。
また、販売面でも地元リユース店にはない優位性がある。日系リユース店は店舗が明るく清潔で、クリーニングや修理が施されたきれいな中古品が整然と並ぶ。ブランド品は、真贋判定が確かで偽物が無いことも優位性となっている。

一般に中古品は、新品よりも安いという理由だけではなく、買い手が新品と異なる新たな使用価値(効用)を見いだすことで売れる側面がある。壊れたパソコンでも修理の部品取り用として使えるし、古く汚い洗濯機も工事現場で泥汚れを洗うために売れている。
海外では、国内とはさらに異なる使用価値が見いだされることも多い。国内では、中古のひな人形や五月人形はまず売れない。縁起物には中古品はそぐわないからだ。日本人形やこけし、古びた子供用玩具も新たな価値を見いだしにくい。だが、海外ではそれらも結構売れている。ひな人形や五月人形・日本人形などには急増する現地の日本料理店のインテリアとして、日本の子供用玩具には子供がけがをしない安全な玩具としての使用価値が見いだされているからだ。
つまり、国境を越えると商品に対する意味づけや使用価値が変わり、新たな市場が生まれるのである・・・

再利用市場

2026年7月9日   岡本全勝

日経新聞経済教室は、6月8日、9日と「拡大するリユース市場」を連載していました。8日は山本晶・慶応義塾大学教授の「販価値の可視化が変える消費」でした。
・・・リユース(再利用)市場とは、中古品や未使用品が再び売買される市場を指す。中古品市場の専門紙であるリユース経済新聞によると国内のリユース市場規模は2024年で約3.3兆円と推計され、15年で約3倍に拡大した。物価高やインバウンド(訪日外国人)需要の増加など複数の要因が絡み合い、市場は活況を呈している。リユース市場では、消費者が売り手としても買い手としても参加する。

市場拡大の理由のひとつは、中古品の売り手としての消費者行動の変化である。フリマアプリの普及や中古品買い取り店の店舗拡大により、消費者の家庭にある不用品を売却するハードルが劇的に下がった。
フリマアプリは、スマートフォン一つで家庭内の余剰資源の売却を可能にする。匿名配送や人工知能(AI)による出品サポートなどの機能拡張で、利便性はさらに高まっている。
また、中古品買い取り・販売店の店舗数が増大し、消費者の生活圏内にリユースとの物理的な接点が増加していることも、市場の成長をけん引している。こうした実店舗では梱包や発送の手間をかけず、外出のついでに不用品を持ち込んで簡単に現金化できる手軽さがあり、幅広い消費者の売却行動を後押ししている。
消費者が家庭内の余剰資源を売却するようになった背景には、それまで不明瞭だった衣類やバッグなどの中古価格が、自動車や不動産のように可視化されたことも大きい。

次に、リユース品の買い手としての消費者を考える。中古品は「生活防衛のための節約」と「お得に楽しむための探索」という2つの軸で消費者から選ばれている。前述のようなリユース品との接点拡大に加え、長引く物価高による家計の圧迫も相まって、新品よりも価格が安い中古品は生活防衛の手段として広く受け入れられている。
かつては中古品に対して汚れや不具合などの悪いイメージがあったかもしれないが、日本の中古品は品質が高い。実際、日本の中古品は「Used in Japan(ユーズド・イン・ジャパン)」と呼ばれ、海外の消費者から高い評価を受けている。中古でありながら傷などが少なく、新品に近い品質を保っているためである・・・