カテゴリーアーカイブ:経済

放蕩のアメリカ、高齢の日本、貧乏のヨーロッパ

2026年9月18日   岡本全勝

9月4日の日経新聞、ロビン・ハーディング、ファイナンシャルタイムズ・アジア・エディターの「放蕩か高齢か貧乏か 日米欧、ましな借り手は」から。
わかりやすい表現です。「多くの国では政府が大盤振る舞いを約束する一方で、経済はそれを支える力を失いつつある。しかも、こうした厳しい現実を有権者に突きつける政治的意志はほとんどみられない」という記述が肝ですね。

・・・あなたがある銀行の融資審査委員会の委員長で、3件の案件が審査に上がってきたとしよう。次のうち、どの相手に融資するのがよいだろうか――。
1件目の借り手は起業家として成功したものの、どこかで道を踏み外したようで、パーティーや薬物に途方もなく浪費する放蕩(ほうとう)者で、このライフスタイルを維持するのにもっと現金が必要だという。
2件目の人物は実業家で、高齢ではあるが評判はよい。莫大な借金を抱えながら、まだ散財する計画を立てているが、多くの資産を保有し、勤勉さでも定評がある。問題は今後、どこから収入を得られるのかという点だ。
3件目は威厳のある大邸宅に住む貴族だ。ただ、かなりの借金を抱えており、子どもの教育費や馬の維持費、屋根の修理代など出費も非常に多い。邸宅は外から見た目はよいが、部屋の中は寂しく、持ち主が今後どれほど稼げるか疑わしい。
これら3つの借り手は、先進国の財政状況が軒並み悪化するなかで、世界の投資家がどこに資金を振り向けるべきかという選択を象徴している。

候補1は米国だ。国内総生産(GDP)の6%近くに相当する財政赤字を抱えているが、その大きな理由は「増税などアメリカらしくない」という発想をしている以外に見当たらない。しかも、その状況を改める計画もなければ、どうやら改めるつもりも全くなさそうだ。
候補2は日本だ。巨額の公的債務を抱える一方で、人口の高齢化が進んでいる。しかも長年にわたるデフレ問題を克服したにもかかわらず、財政赤字を続けるという奇妙な決断を下した。もっとも日本の場合、政府も国民も多くの資産を保有している。
候補3は欧州だ。債務国が多く、中でもフランスやイタリア、英国などは債務レベルが高い。欧州では少なくとも建前上は公的債務や財政赤字は抑制すべきだ、との注意喚起がなされている。しかし、多くの国では政府が大盤振る舞いを約束する一方で、経済はそれを支える力を失いつつある。
しかも、こうした厳しい現実を有権者に突きつける政治的意志はほとんどみられない。
各国債の利回りは上昇傾向にある。30年物国債の利回りは日本が4%を超えており、米国と英国は5%台と、債務を抱えるすべての国には例外なく財政上の圧力が強まっている。
各国は自国の財政問題と、それを招いた政治家たちの放漫ぶりを嘆いている。いずれの国も2008年の世界金融危機以降、公的債務が大幅に増加しており、特にコロナ禍以降に増加した・・・

・・・日本は長年にわたり巨額の公的債務を抱えており、そのため日本は世界でも例外的な存在だとみなされてきた。とはいえIMFによれば政府が保有する金融資産残高を差し引いた純債務は26年末にGDP比で134%になることが見込まれ、ほかの先進国とそれほど大きな差はないように見える。
日本が直面する財政問題で最もやっかいなのが、容赦なく進む人口の高齢化だ。これにより医療や年金にかかるコストが毎年膨らみ続ける一方、それを負担する生産年齢人口は減る一方だからだ。
現在、日本には財政問題に取り組む好機が訪れている。デフレからインフレに転じたおかげで、ゼロ金利時代に借りた債務の価値が目減りしている。だが、高市早苗首相は不必要な歳出拡大を進め、この絶好の機会をみすみす棒に振る決意を固めているようだ。もっとも、それらの歳出は少なくとも手厚い福祉で固定化される経費ではなく裁量的なものだ・・・

中古品販売店が海外出店拡大

2026年9月8日   岡本全勝

8月24日の日経新聞に「日本の「リユース」世界へ」が載っていました。

・・・中古品などを販売するリユース各社が海外出店を積極化している。人工知能(AI)を活用した査定の精度向上や現地人材の教育など「日本流」の浸透で市場を開拓する。国内小売業界では人員確保が大きな課題だが、海外では効率化を追求して旺盛な需要を取り込む。

5月上旬、タイのトレジャー・ファクトリーの新店舗「ザ・モール バンケー店」のオープン初日。開店前から100人以上の人が列に並んだ。同店はタイで6店舗目だ。
同社は7月に海外進出から10年を迎えた。タイを皮切りに台湾3店舗を展開する。近く米国にも進出する。タイ進出当初は現地在住の日本人から買い取った商品を販売していたが、現在は商品の9割を現地で買い取っている。残りは日本で買い取った商品を目玉商品として販売する。
「手応えを感じている。海外店もようやく地に足が着いてきた」(トレファクの野坂英吾社長)。タイは所得格差が大きく、富裕層が高頻度でブランド品を買い替えるため日本より高単価な商品が集まる。足元では日本よりも収益性が高い。
台湾でも総合リユース店から衣料品中心へと品ぞろえを見直し、収益改善を進めている。今後は出店拡大フェーズと位置付け、両地域で年間2〜3店舗の出店を計画する。
他のリユース各社も海外展開を積極的に進めている。セカンドストリートを運営するゲオホールディングス(HD)は6月時点で、米国や台湾を中心に6カ国・地域で158店舗を展開する。同社は36年3月期までに海外1000店舗体制の実現が目標だ。

円安やブランド品の相次ぐ値上げを受け、国内のリユース品は海外からの注目度も高い。品質の高い査定や良好な保存状態の中古品は「Used in Japan」として人気を集めており、訪日客から得た認知度を海外展開にも生かす。
各社の海外展開を支えるのは正規品とにせ物の見分けや査定の精度だ。
トレファクは7月からルイ・ヴィトンの商品を対象に、AI査定機能を試験導入した。商品を撮影すると、品名やAIが算出した推奨買い取り価格が自動登録される。次に体系化されていなかった社内の真贋判定資料の中から該当資料を抽出し、画像と照合して簡易的な判定までする。
ルイ・ヴィトンは型番が多くブランド側も偽造対策として仕様を変更するため、1つの商品につき20カ所以上を確認する必要がある。型番ごとに適切な資料を探し出すだけでも時間を要していた。最終的な真贋判断は社員がするが、査定時間は従来比で7〜8割削減できる見込みだ。
3月には査定DX・真贋室を新設した。高額商品や特殊商材の遠隔査定をする窓口が商材ごとに分かれていたが相談先を統一した。「1日で終わらなかった査定や買い取り作業も数時間に短縮できた」(野坂社長)。経験やノウハウが必要な真贋判定では日本の担当者と画像や動画でやりとりする「二審制」を採用、査定の精度向上や時間短縮を進める。
ゲオHDも独自の査定システムを開発した。年間1億点超の買い取り実績データと最新の市場相場をデータベース化し、商品のカテゴリーやブランド名などの必要項目を入力すると参考となる適正価格を自動で算出する・・・

ビッグマック指数の意義

2026年8月22日   岡本全勝

8月4日の日経新聞に「満40年、ビッグマック指数の意義」(イギリスのエコノミスト誌の転載)が載っていました。

「通貨の重みや購買力を測る世界共通の基準は存在しない。だが本誌(The Economist)にはお気に入りの候補がある」として、ビッグマック指数を紹介しています。この指数は、1986年にエコノミスト誌が作ったのです。
私も、日本の経済力を諸外国と比較する際に、使っています。残念なことに、アジア各国(都市)より低いのです。日本の原材料費が安いとも考えられず、賃金と円の評価によるものでしょう。

この記事では、ビッグマック指数で測った購買力と、外国為替相場との乖離を指摘しています。
アメリカでは、100ドルでビッグマックを16個買えます。同じだけ買うと、日本では8039円かかります。ところが100ドルは、円ドル相場では1万6000円です。倍の違いがあります。それだけ、円が過小評価されているのです。
ビッグマック指数に問題があるのではなく、円=日本の経済力が小さく評価されているということです。海外旅行すると、実感します。

物価指数からネクタイが外れた

2026年8月11日   岡本全勝

8月8日の日経新聞に「物価算定からネクタイ除外、消費の変化映す 新たにプロテイン追加」が載っていました。
・・・総務省は7日、基準年の見直しを反映した消費者物価指数の改定値を公表した。家計の消費実態を踏まえ、新たにプロテインパウダーやペット保険料などを対象品目に加えた。ネクタイや婦人用ストッキングなどは除外した。
たこ焼きや通信教育なども対象に加えた。ネクタイや婦人用ストッキングのほか、ビデオソフトレンタル料なども除外した。一部品目の名称も変えた。「男子」「婦人用」はそれぞれ「男性」「女性」に改めた。「男子用コート」は「男性用コート」に「婦人用上着」は「女性用上着」とした・・・
総務省統計局資料「消費者物価指数2025年基準改定の概要」

社会人になって、スーツを着てにネクタイを締めたときは、何かしら一人前になった気になりました。それまでは、学生の下宿暮らし。きちんとした服も持たず、楽な(だらしない)格好でした。
その後は、仕事に忙しく、スーツとパジャマとスポーツウエアだけで過ごしたことは、いくつかのところで書きました。その3つしか生活の場面がなく、仕事着は紺のスーツが「制服」でした。
あるときから「世間」に反抗して、クレリックシャツや上下そろいでない洋服を着るようになりました。みんなから変に思われましたが。それでも、ワイシャツ(色物でも薄い色)、ネクタイ、上着は必須と考えていました。
クールビスが導入されたとき、よいことだと思いました。ただし、私の基準から外れた「だらしなく見える服装」には違和感がありました。その後、どんどんと基準が緩くなりました。ネクタイが売れなくなるのは、当然ですね。

検索したらネクタイの話題は、何度も書いていました。「ネクタイ、8割減」「ネクタイはなくなるか」「ネクタイとスーツは伝統衣装になるか」

輸出額、韓国と台湾に抜かれる

2026年8月11日   岡本全勝

8月8日の日経新聞1面に、「韓国と台湾の輸出額ともに初の日本超え 26年上期」が載っていました。
・・・韓国、台湾の1〜6月の輸出額が初めて日本を上回ったことが分かった。人工知能(AI)向け半導体特需を受けて急伸した韓台に対し、日本は半導体関連の素材・製造装置に強みが限られ、恩恵に差が出た。世界が求める最終製品の供給で後手に回る日本のものづくりの現状を映す・・・

ここまで来ましたか。しかも、人口も日本の方が多いのです。韓国の人口は約5,200万人、台湾約2,300万人です。
私の見方を書こうと思ったのですが、川北英隆先生がわかりやすく解説してくださっています。そちらをご覧ください。「台湾と韓国に抜かれた日本」