カテゴリーアーカイブ:明るい課長講座

頭脳明晰+やり抜く力

2026年10月8日   岡本全勝

10月1日の日経新聞経済教室に、鈴木智之・国学院大学教授の「変わる企業の採用活動」「経営視点の採用・教育を」が載っていました。詳しくは記事を読んでいただくとして、人材の認知面と非認知面について書いておられる部分の一部を紹介します。

・・・今世紀に研究が大きく進んだ分野の一つに「GRIT(やり抜く力)」がある。長期的目標への根気と熱意を意味する。考える力という面では水準が変わらない人々の間で、職業上の成果に大きな差が生じるのはなぜかという疑問を探求したものだ。
頭脳明晰でも、すぐに諦めるような性格では成果を高く望めるとは限らない・・・

東武4人死亡事故「意見を述べると怒られる」

2026年10月5日   岡本全勝

10月1日の読売新聞に「ずさんな現場浮き彫り…東武4人死亡事故「意見を述べると怒られる」「余計なことを言うともめ事になる」」が載っていました。紙面では「東武4人死亡 非番の上司現場で指示 指揮混乱」という見出しです。
記事を読むと、非番の職員が現場に出てくることも疑問ですが、仕事熱心な社員だったのでしょうか。その人が、部下である現場指揮者に代わって指示を出したとのこと。それが混乱の原因のようです。部下はこの上司に意見を言えない関係、社風だったのでしょう。事務の職場でもありそうなことで、職場が混乱するのですが、作業現場では死を引き起こす事故が起きます。

・・・ 栃木県鹿沼市の東武日光線新鹿沼駅構内で、除草作業中の作業員4人が特急列車と接触して死亡した事故で、東武鉄道は30日、事故原因などを分析した中間報告書を国土交通省に提出した。報告書は、現場責任者の作業指揮者が作業員の退避先や列車の見張り場所を指示していなかったと指摘。事故当日、指揮権限のない上司が現場で指示を出し、指揮系統の混乱を招いていたことを明らかにした。

報告書によると、7人は東武建設と下請けの建設会社の従業員で、警備会社に所属する3人が列車の見張り役を務めていた。
このうち東武建設社員の作業指揮者は、東武鉄道の規定に反し、作業員らに見張り場所の指定や避難先を確実に共有することなどを怠った。ホーム上から列車の接近を作業員に知らせる「列車見張り員」は、事故直前までほかの作業員とともに線路内に立ち入っていた。

死亡した作業員4人のうち1人は作業指揮者の上司だった。除草作業全体を統括する「現場代理人」という立場で除草作業の経験も豊富だったが、この日は非番で、現場に来る予定はなかった。ところが、現場代理人は見張り員などへの指示も出し、除草作業の経験がなかった作業指揮者は事故当時、記録用の写真撮影をしていた。作業指揮者は会社の調べに「(現場代理人に)任せれば安心と考えていた」と説明しているという。

列車見張り員は事故直前、現場代理人に「列車到着3分前」と伝えたが、現場代理人のジェスチャーを作業続行と受け止め、除草作業は中断されなかった。
列車見張り員は疑問に思ったが、「意見を述べると怒られると思った」と説明している。別の作業員は「余計なことを言うともめ事になるので、遠慮していた」と話しているという・・・

優秀だが困った人

2026年10月4日   岡本全勝

9月28日の読売新聞「論壇キーワード」、常見陽平さんの「ブリリアント・ジャーク 組織の問題を映す言葉」から。詳しくは記事をお読みください。

・・・「ブリリアント・ジャーク(Brilliant Jerk)」という言葉がある。個人としての能力や業績は極めて優秀(Brilliant)だが、協調性に欠け、周囲に悪影響を及ぼす嫌な人(Jerk)を指す。
この言葉が広く知られるきっかけの一つになったのが、動画配信大手Netflixの企業文化である。同社はかつて「No Brilliant Jerks」を掲げた。現在は表現こそ変わったものの、どれほど優秀でも、同僚を礼節と敬意をもって扱えない人物を容認しないという考え方は受け継がれているようだ。端的に言えば、「いくら仕事ができても、嫌な奴は要らない」ということだ。
ここで問題にされているのは、会議で人を侮辱する、手柄を横取りする、立場の弱い相手にだけ威圧的に振る舞う。こうした行動を繰り返し、職場の人々を 萎縮させる人物である。

似た概念に「トキシック・ワーカー」がある。本人が高い成果を上げていても、攻撃的な言動やルール違反によって職場全体に損害をもたらす「有害な働き手」という意味だ。成果の高い人なら「トキシック・ハイパフォーマー」とも呼ばれる。最近は「フレネミー」という言葉も耳にする。友人(friend)のように振る舞いながら、実は敵(enemy)でもある人物のことだ。

厄介なのは、ブリリアント・ジャークは組織の中でしばしば守られることだ。「数字をつくるから」「重要な顧客を持っているから」「あの人がいないと仕事が回らないから」。そんな理由で上司や人事が見て見ぬふりをする。過去の実績が、いつの間にか免罪符のようになる。被害を訴えた側が「あの人との付き合い方を覚えた方がいい」と諭されることさえある。
しかし、本当にその人は「成果を上げている」のだろうか。本人の売り上げや実績だけを見れば優秀かもしれない。だが、その人のために何人が辞めたのか。会議で発言しなくなった人は何人いるのか。尻拭いや人間関係の調整にどれだけの時間が使われているのか。見えにくい損失まで含めれば、評価は変わるはずだ・・・

・・・こうした言葉は、本人への評価であると同時に、組織の問題を映す言葉でもある。ブリリアント・ジャークは、勝手に生まれるのではない。彼らを重用する組織のあり方もまた、問われている・・・

会社指定の課題図書、読んだ社員は半数

2026年10月3日   岡本全勝

9月26日の日経新聞夕刊に「会社員の48%、課題図書を最後まで読めず」が載っていました。

・・・本の内容を音声で聴く「オーディオブック」を手がけるオトバンク(東京・文京)は会社員の読書に関する調査結果を発表した。会社指定の課題図書を最後まで読めなかったと回答した割合は47.6%だった。理由は興味を感じなかったり、時間が不足したりといった回答が多かった。
0〜69歳の会社員を対象に8月にインターネットを通じて調査し400人から回答を得た。

会社から指定された課題図書や推奨図書について、「ほとんど読まなかった」が14.8%、「途中で挫折した」が32.8%だった。
読了できなかった理由を複数回答で聞いたところ「本に興味や必要性を感じなかった」が48.3%と最多で、「本を読む時間が足りない」が31%で続いた。「活字を読み進めるのが苦手」は27.6%だった。

日常の読書習慣については、「全く読まない」が48.5%だった。1カ月あたりの読書数で、2冊以上とした割合の合計は32.4%だった・・・

ドイツに見る短時間勤務3

2026年10月2日   岡本全勝

「ドイツに見る短時間勤務2」の続きです。田中洋子・筑波大学名誉教授の「市民の議論生かしたドイツの働き方改革」9月17日から。

・・・働きやすさを実現させたドイツと日本は、何が違うのか。ドイツは、将来の労働に関する国民的な議論を経験し、政府がその声を形にしたという経緯をたどった。日本では政府が音頭を取る形で働き方改革を進めるが、雇用慣行を崩すには至っていない。

二つの国は・・・産業構造が似ているため、社会や家族構造も似たものになった。製造業に勤める労働者はほとんど男性だったことから、1970年代には「男性稼ぎ主型モデル」が確立された。男性が家族を養って昇給や社会保障、福利厚生を享受し、女性は主婦になるか家計補助のために短く働いた。これも同じだ。
その後、女性の教育水準が上がり続けたドイツでは、高学歴なのに家にいて社会で力を発揮しないのは、社会的にも経済的にも矛盾だと考えるようになり、仕事と家庭の両立のための企業内施策が展開された。この点も日本とほぼ同じである。

両国が大きく分岐したのは、2000年代半ば以降だ。日本では過労死やハラスメント、非正規、格差社会といった問題が大きくなったが、この頃にドイツは働き方や労働時間の柔軟化を進めた。日本がコスト削減や低賃金雇用を増やした時期に、ドイツは個人の生活重視のため労働時間短縮に着手していた。
これを進めやすい背景は確かにあった。80年代から労働時間をポイントとしてためて好きな時に休みと交換できる制度があり、それが2000年代に広がった。フレックスタイムも事業主が提案するほどになっていた。
90年代には、これからの労働はどうあるべきかについて研究者や労働組合、女性団体などが熱い議論を交わした。インターネットが出現したこともあって、技術革新が進めば進むほど、これからは短く働くことがトレンドとなると考えられた。来るべき社会では育児も介護もボランティアの時間も、賃労働と同じ価値を持つ営みだという考えが根付いた。
こうした市井の声を連邦政府が形にしたのが、パートタイム法だ。パートを社会インフラにし、誰もが短時間労働者になれるようにした。
日本はこうはならなかった。ドイツで労働の未来論が盛んだった頃、日本はバブル崩壊にあえぎ、企業は人件費を削減していた。世界で多様な働き方に関する議論が行われた時代があったのに、日本はそれを取り込むことなく今に至っている・・・