カテゴリーアーカイブ:科学技術

人工知能と分身ロボットの未来

2026年4月20日   岡本全勝

結果で測るか過程で測るか」の続きにもなります。
人工知能やロボットが進化すると、どのような世界が生まれるか、想像してみましょう。本人が考えなくても、人工知能が問いに答えてくれます。分身ロボットが進化すると、本人の代わりにいろんな作業をしてくれます。

まず学生です。分身ロボットに授業に出席してもらい、本人は家で寝ていることができます。宿題や試験は、人工知能に答えてもらいます。楽ちんです。高校や大学の受験も、分身ロボットが受けてくれます。ただし、入学が許可されるのは本人ではなく、分身ロボットです。本人は進学できません。
もっとも、人工知能の性能が上がると、すべて同じような水準になるので、入学試験は意味がなくなります。

入社試験も、分身ロボットに受けてもらいます。会社での仕事も、分身ロボットがやってくれます。とても楽になります。でも会社は、分身ロボットを雇うのなら、自前のロボットに仕事をさせるでしょう。本人は解雇されるか、そもそも採用されないでしょう。こうして、就職できない人がでてきます。

人工知能を備えた車に乗って、「どこか楽しい場所に連れて行け」と指示します。いくつかやりとりがあって、選んだ行楽地に連れて行ってくれます。そのうちに、車が言います。「私が出かけていって、画像を自宅に送るので、ご主人は家にいてください」と。「いや、私はあの山に行きたいのだ」と言っても、車は「そんなしんどいことは、私に任せてください。あなたは、家で寝ていてください」と言って、勝手に走って行きます。

とても暗い未来が見えます。この想像は、どこが間違っているのでしょうか。

都会の鳥は人間が怖くない

2026年4月18日   岡本全勝

3月31日の朝日新聞夕刊に「都会の鳥は…、人間が怖くない? 東京23区と茨城、逃げ出す距離に差」が載っていました。
・・・春が到来し、鳥の姿があちこちで見られる。「都会の鳥は人が近づいてもなかなか逃げない」とも聞くが、本当なのか? スズメやカラスなど身近な7種の鳥について、動物行動学の研究者が東京都心と茨城県の農村地帯で実験したところ……。

取り組んだのは国立科学博物館名誉研究員の浜尾章二さん。
対象とした鳥は、スズメ、ハシブトガラス、ムクドリ(いずれも遅くとも1920~30年代には東京に生息)、キジバト(東京定着は50年代)、シジュウカラ(同60年代)、ヒヨドリ(同70年代前半)、ハクセキレイ(同70年代後半)の7種。
浜尾さんは2022年(一部は23年)の3月中旬~5月上旬、東京23区内にある12カ所の緑地と茨城県南部の農村地帯の18カ所で実験。人がゆっくりと歩いて近づいた際に、鳥が飛んだり走ったりして逃げ始めたときの距離(逃避開始距離)を、計500羽超で測った。
その結果、7種すべてで東京都心での逃避開始距離は茨城南部よりも統計的に明確に短く、人を恐れず警戒性が低下していると考えられた。例えば、スズメの逃避開始距離は、茨城では平均11・1メートルで、20メートルを超える個体もいたが、東京では平均4・2メートルで10メートル超の個体はほとんどいなかった。種ごとに見ると、東京での逃避開始距離は茨城南部の0・28~0・58倍だった。

では、なぜ都会の鳥は人が近づいてもなかなか逃げないのか。浜尾さんによると、動物は捕食などのリスクを回避するために逃避行動をとる。一方で逃避には、食事を中断するなど、行動面での負担が伴う。そのため、捕食者を避けて安全を図るという利益が十分になければなかなか逃避しないと考えられるという。
浜尾さんは「都会の鳥は東京では著しく警戒性が低下し、大胆になっていることが確認できた。人が危険な動物ではないと学習しているだけなのか、人に追われるリスクがあっても採食し続けなければいけないほど食べ物が乏しいのか。警戒性が低下している直接の原因を解明したい」と話す・・・

星を見て1000キロ飛ぶガ

2026年3月27日   岡本全勝

3月15日の日経新聞に「動物に驚異の「超能力」 星を見て1000キロ飛ぶガ、馬は感情読む?」が載っていました。へ~と、びっくりすることばかりです。

・・・地図や全地球測位システム(GPS)を使わずに毎年夏に約1000キロメートルも旅をする昆虫がいる。オーストラリアのボゴンモスというガだ。スウェーデンのルンド大学などは2025年にこのガが方角を探る仕組みを突き止め、英科学誌「ネイチャー」に発表した。
ボゴンモスは約40億匹もの大集団を作り、涼しい山地まで飛んで眠りにつく。秋になると元の繁殖地に戻る。渡り鳥と同様に季節に応じてすみかを変えるわけだ。このガの寿命は約1年しかなく、遠大な旅に出るのは生涯で一度きりだ。どう方角を知るのだろうか。

ルンド大などは100匹以上のガを採取して胴体を棒に固定し、実験室に星空の映像を写して飛ぼうとする方角を調べた。映像を動かすとガは追従して正しい方角を向いた。研究チームはボゴンモスが星空や月を目印にすると考えている。地球の自転で夜空の星の位置は変わるが、それを織り込んで正しい向きに飛ぶ。
ルンド大のエリック・ワラント教授は「星を頼りに移動するのは人間や特定の鳥類だけだとされてきた」と話す。研究チームは小さなガが同じ能力を持つと証明し、常識を覆した。
ボゴンモスは曇りの日には地球を南北方向に走る磁場の地磁気を使って方角を知る。ルンド大などの実験で地磁気を鋭く捉えた・・・

人工知能が抱える制御不可能性

2026年2月21日   岡本全勝

2月1日の読売新聞、平野晋・中央大学教授の「AI 抱える「制御不可能性」」から。

・・・1972年、米国で欠陥車による死傷事故が起きた。フォード社が突貫で開発した小型車「ピント」は、後方から追突されると燃料漏れが起こりやすい欠陥があった。フォード社はそれを把握しながら放置した結果、火災事故が続発。メーカーの製造物責任が問われる事態となった。
「フォード・ピント事件」から半世紀。現代社会では、急速に進化するAI(人工知能)が、様々な問題やリスクを抱えながらも加速度的に導入範囲を広げている。
こうした状況に、自動車メーカーなどで製造物責任訴訟対応に当たった中央大教授の平野晋さんは、警鐘を鳴らす。リスク、欠陥を抱えたまま社会実装されるのを防ぐには、倫理的・法的、社会的な視点が必要だと訴える・・・

・・・自我に目覚めたAIが暴走して人間を敵と見なし、人類絶滅を図る――。1984年に公開されたSF映画「ターミネーター」は、そんな近未来を描いた作品でした。
私は論文や講義で、「ターミネーター」などディストピア(反理想郷)を描いた映画や神話などを例に出し、科学技術の戒めを伝えることに力を入れてきました。科学技術への制御能力を持たなければ人間自身が窮地に立たされる、ということが現実に起こりうるからです。しかし、一部の起業家やエンジニアからは「フィクションを引き合いに出して開発を阻害するな」と批判も浴びてきました。

そんな中、登場したのが生成AIでした。指示文を入力するだけで文章や画像・動画が瞬時に生み出される利便性から急速に普及していますが、同時に深刻な社会問題を引き起こしています。
実在する人物の画像や動画を性的に加工した「性的ディープフェイク」の被害は、世界中に広がっています。政治家や著名人の偽音声が作られ、詐欺に悪用される事件も起きています。殺人兵器のアンドロイドが他人の偽音声で電話をかける「ターミネーター」の1シーンが、フィクションではなく、現実となっているのです。

懸念すべき問題はそれだけではありません。
今のAIは、予測できない判断・動作をする「制御不可能性」を抱えています。もし、制御不可能なAIを搭載した車やロボットが何らかの事故を起こしたとしたら――。製造物が事故を起こした場合の製造業者の賠償責任を定めた「製造物責任(PL)法」に照らせば、事故を起こす可能性を認識しながら、市場に送り出した製造業者の責任は免れません・・・

・・・AIの判断は必ずしも公正ではない、という問題もあります。
人事採用を例に考えてみましょう。日本でも採用面接などにAIを導入する企業が増えているようです。ある企業でAIによる面接を受けた私のゼミ生の話では、画面の向こうのアバターが面接し、採点や合否判定にもAIが使われたそうです。
確かに、AIは応募者を統一したルールで振り分けることは得意です。しかし、応募者の背景事情や潜在能力といった数値化できない情報は読み取れません。正確さを追求すると公正さが減退する場合もあることが知られています。
実際、米アマゾンで過去の応募者の履歴書を基にAIで技術者の新規採用を行ったところ、採用者が男性ばかりになるといったことが起きました。過去のデータに照らせば「必ずしも不正確ではない」と主張する人がいるかもしれませんが、決して「公正」ではありません・・・

・・・自身、AI自体を否定するものではありません。原則、どんどん研究開発を進めるべきだと考えています。事務作業に導入できれば、人間は思考やアイデアが必要な業務に時間を割くことができます。ワーク・ライフ・バランスの改善にもつながるでしょう。
では、どう開発し、社会実装につなげていくか。重要となるのが「予防法学」です。健康診断を定期的に受けて生活を改善し、病気を未然に防ぐ「予防医学」のように、AIの活用が不法行為につながったり、人間の権利を侵したりすることがないよう、事前にリスクを予見し、法的に対策するというものです。
予防法学の実践には、AIの開発者側、利用者側の双方が「倫理的・法的・社会的課題=ELSI(エルシー)」を見つけ、検討する力を養うことが求められます。
ELSIは、Ethical(倫理的)、Legal(法的)、Social(社会的)、Issues(課題)の頭文字を取った略語です。誕生のきっかけとなったのが、米国で1990年に始まった、人の全遺伝情報を解読する「ヒトゲノム計画」です。計画を進める上で、遺伝情報の解読が差別につながる懸念や、個人情報やプライバシーをどう守るか、新たな法規制が必要になるのではないかといった課題が浮き彫りになり、ELSIの研究も行われることになりました・・・

人工知能に図を作らせる

2026年2月10日   岡本全勝

川北英隆・京都大学教授のブログ、2月8日は「マイクロソフトの死?」でした。

「日米の株価を各々の消費者物価指数で割り戻した(実質化した、つまり物価上昇率をどの程度上回って株価が上昇したのかの)図表」が3つ載っています。
「最初がExcelを使って僕が書いたもの、次がGeminiに書かせたものであり、株価は1969年末を1にして表示している。そして3つ目が、株価のメモリを対数にしてGeminiに書かせたものである。表示も日本語に直させた」とあります。
上手にやってくれるのですね。しかも、労力なしで。

そして、次のように書かれています。
「データを与え、「図を書いて、対数値に直して、表題やメモリの表記を日本語に直して」と指示すれば、ちゃんと処理してくれる。これなら複雑なExcelのソフトは不要だろう・・・「SaaSの死」はまだ大げさかもしれないが、AIがデータベースやデータ処理のあり方を抜本的に変えることは現実のようだ」

続いて、「図表作成の今昔」が書かれています。
それらを使えない私は、未だに手で図表を作らなければなりません。もっとも、部下や知人に頼んで、エクセル、パワーポイント、pdfを作ってもらっていて、自分では作業していないのですが。すみません、いつも面倒な作業を頼んで。