カテゴリーアーカイブ:連載「公共を創る」

連載「公共を創る」第262回

2026年6月25日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第262回「これまでの議論ー平成における地域の変化」が発行されました。
平成時代の暮らしについて、次は地域の変化を取り上げましょう。数字で見る変化は連載第258回で富山県を例に示しましたが、ここでも数字には表れない変化が進んでいました。

地域産業の空洞化と地域活力の低下は、街の形を変えました。人通りの減った商店街は寂れ、シャッター通りも増えました。郊外に大型店舗が進出したことや、事業の後継者がいないこともそれを加速させました。若者が都会に出て行って、戻って来ません。空き家が増え、放置された家が周囲に与える悪影響からその対策も必要になりました。
平成時代になって、限界集落という言葉が広がりました。地域人口の半数以上が65歳以上の集落です。冠婚葬祭などの社会的共同生活を維持することが限界になりつつある集落を指します。さらに日本創成会議が、2014年に「消滅可能性都市」を発表し、衝撃を与えました。

過疎地域でも道路や上下水道などの整備に力を入れました。しかし、生活が便利になっても、住民は中山間地域を離れたのです。経済発展の過程で、都市は豊かになるのに、稲作や林業だけでは貧しいままでした。さらには、それらの産業への需要も減り続けましたから、住民は農山村を離れました。
便利さの向上の次に取り組まれたのが、地域おこしや地域活性化政策です。一村一品運動、ふるさと創生、地方創生などです。全国一律の工場誘致やインフラ整備による地域振興でなく、自治体が地域の特性を生かした、個性的な地域活性化に取り組むようになったのです。「国土の均衡ある発展」から、「個性ある地域の発展」「知恵と工夫による活性化」へと地域振興の方向性が変わりました。

平成初期に地方行政関係者の間で流行した言葉に、「3K」がありました。高齢化、国際化、高度情報化の頭文字Kを取ったものです。これらの三つが自治体にとって大きな課題でした。
この頃は、地方分権改革が進んだ時期でもあります。分権改革、三位一体の改革などです。併せて、平成の市町村合併が進みました。

連載「公共を創る」第261回

2026年6月18日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第261回「これまでの議論ー男女共同参画の進展に伴う変化」が発行されました。
平成時代の変化の中でも、目立って進んだことが男女共同参画と働き方改革です。職場、社会、家族、個人の意識を大きく変えました。
女性従業員や女性幹部が増えたこと、そして共働きが増えたことで、「昭和の職場」も変わり始めました。従業員に求められた長時間で私生活を犠牲にした勤務は「夫は職場、妻は家庭」で成り立っていたのですが、女性従業員や共働き家庭には、それを求めることができないのです。否応なしに、「働き方改革」を迫ることになりました。
昭和の変化が、物が増え便利になるという「豊かになる革命」だったとすると、平成の変化は、男女平等の実質化と働き方改革による「生き方の革命」だと言えるでしょう。

これらのほかにも、職場は変わりつつあります まず、転職が増えたことです。能力があるのに処遇に不満を持つ従業員が、より良い条件の職場へと容易に転職できるようになりました。これまでは不満があっても辛抱していた「囚人」が、転職という交渉権を得たのです。新卒時に一度しかなかった職業選択の自由が、実質化したとも言えます。
これまでの人事課による配属先決定、経験年数による昇進と給与という仕組みから、これからは本人の望む職場を提供し、できる従業員にはふさわしい給与を提供する仕組みへ変わるのでしょう。日本の労働慣行が崩れつつあります。
職場での変化として、セクハラやパワハラも挙げておきました。職場での自由度では、クールビズが2005年から導入されました。

これら男女共同参画、働き方改革、転職の自由化などとともに、人権や自律性の尊重などは、これまでの職場での過度な上下関係や性別役割分担が変化したことの表れであり、会社中心から従業員中心の働き方への転換だと位置付けることができます。昭和の職場、昭和の家庭からの脱却です。
もっとも、周囲に同調する、会社に任せるという「依存」から、自分で判断するという「自律」への転換は、その結果に責任を負わなければならないことでもあります

人工知能と競争する

2026年6月12日   岡本全勝

連載「公共を創る」は、これまで書いたことの要約に入っています。ある知人曰く「人工知能にさせれば、すぐにやってくれますよ」。なるほど、そうですね。
かつて行った講演を、主催者が機械で文字に起こし、要約を作って送ってきたことがあります。「確認してください」とのことでした。読んでいくと、よくまとまっています。「すごい」と思ったのですが、読み進めていくと、変なところがでてきました。さらには、私が話していないことまで書いてあります。「なんじゃこれは??」
便利だけど、信用してはいけないと言うことでしょうか。

しかしこの指摘を受け、人工知能に負けてはいけないと、闘志がわきました。「そうだ、単純に要約するのではなく、長期にわたって書き続けたことを現時点で振り返り、その視点でもう一度考え直そう」と思い至りました。しんどいことなのですが。

要約する機能以上に、人工知能(AI)が発達して、人の代わりに文章を考えてくれるそうです。しかしこれも、広く世の中にある文章を要約しているのですよね。
新しいことを述べたり、自分の考えを語ったりする際に、過去の蓄積(本や論文)を元にします。全くの無から、新しいことを生み出すことはできません。その際に、かつては自分で論文を探す、知っている人に聞くことが主でしたが、インターネットが発達してからはネットで検索することが便利になり、さらに人工知能は検索しなくても過去の文章を探して書いてくれるのです。

すると、人工知能には書けない内容を書こうと、これまた闘志がわきます。すでに書かれてている事実や主張を元にするのですが、それを越える「付加価値」をつけなければなりません。

連載「公共を創る」第260回

2026年6月11日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第260回「これまでの議論ー平成の変化─ICT、家族形態、男女共同参画」が発行されました。
「平成の変化」に関する記述を続けます。「昭和の変化」では身の回りの物が劇的に増え、私たちの暮らしを大きく変えました。それに比べると平成の変化では、物は大きくは増えていないように見えます。ところが社会の中では、大きな変化が始まっていたのです。物ではなく、暮らしの形が変わり始めていたのです。

その一つが、情報通信技術(ICT)、すなわちコンピューターとインターネットの飛躍的な発展です。パソコン、携帯電話、スマートフォンは、いつの間にか、私たちの暮らしだけでなく社会の仕組みまで変えました。
それまで職場や家庭を単位に連絡を取っていた個人同士が、移動しながら直接会話するという形が出来上がりました。仕事の仕方が、体を使うことから、パソコンに向かってキーボードを叩たたくものになりました。職務内容によっては、職場に出勤しなくても、自宅でも外出先でも仕事ができるようになりました。商品の購入も、電子決済と宅配便の普及で購入者と直接取引ができるようになりました。クレジットカードとICカードの普及は、現金を持ち歩かなくても良くなりました。

インターネットとスマホの発達は、情報を入手したり知人同士で連絡を取ったりするだけでなく、世界に向けて情報発信することを可能にしました。一億人が記者に、出版社に、映画監督になることができます。万民に対して「表現の自由」を実質化したとも言えます。
ところがその発信内容には、十分考えたものではなく、思い付きや感情のままの発言、過剰な表現もあります。匿名なので、嘘や誹謗中傷も書かれます。他者とのつながりを便利にするスマホが、それを阻害する状況さえ表れました。つながっている先は、携帯電話では人でしたが、スマホでは娯楽性の高い映像や商品の宣伝画像などです。
子どもが有害な情報を見たり、見知らぬ人にだまされて被害に遭ったりしています。いじめに使われる場合もあります。詐欺被害も多発し、被害額も巨額になっています。

平成時代の暮らしのもう一つの変化は、家族形態の変化です。「昭和の標準的家庭」は夫婦と子ども2人でしたが、未婚化や晩婚化、配偶者と死別した高齢者の増加で、単身(単独)世帯が増えました。生き方の多様性が認められるようになったのですが、一人暮らしでは、家族による支援がなくなります。

連載を書いている間にも時代は進む

2026年6月8日   岡本全勝

連載「公共を創る」は、締めに入り、これまでの議論を振り返っています。過去に書いた記事を要約すればすむと思っていたのですが、そうは問屋が卸さないようです。

国民の意識を説明する際に、内閣府が行っている「国民生活に関する意識調査」やNHK放送文化研究所が行っている「日本人の意識調査」を利用してきました。経済成長期からの変化を追うことができるのです。生活の満足度が高まったこと、物質的な豊かさより心の豊かさを選ぶ人が増えたことなどです。

ところが、2019年の調査の後、新型コロナウイルス蔓延で、これまでの対面調査ができなくなり、郵送調査に変わりました。すると、調査結果数値が大きく変わって、経年変化を終えなくなったのです。
内閣府調査では。「現在の生活に満足しているかどうか」という問には、満足している人(まあ満足しているを含め)が2019年では74%でしたが、再開された2021年では55%に低下しています。その後も大きな変化はありません。調査方法の変更が、その原因だと思われます。
対面では見栄も会って「満足」と答えていた人が、郵送調査では「本音」でそうではないと回答しているのでしょうか。なお、郵送調査では回収率も6割あまりです。
これでは、単純に国民の多くは満足しているとは言えなくなりました。

また、『明るい公務員講座 仕事の達人編』(2018年)では、ワークライフバランスを説明する際に、イクメンとイクメンパスポートを紹介したのですが。育児をする父親が珍しくなくなって、この言葉は死語になりつつあり、「共育」「ともそだて」に変わっています。