カテゴリーアーカイブ:世界

日本の強みは信用

2026年10月16日   岡本全勝

10月1日の朝日新聞オピニオンラン「アジアの中の日本」。
・・・日本が経済大国としてアジアの先頭を走った時代は過ぎた。米中両大国がせめぎ合うなか、アジアの中で日本はどんな存在となり、どう外交を進めれば良いのか。アジア開発銀行(ADB)元総裁の中尾武彦さんと、元駐インドネシア大使の石井正文さんに聞いた・・・

中尾さんの発言から
―中国への見方は変わりましたか。
「以前は、安全保障上の中国警戒論を聞いても、『そこまでではないだろう』と懐疑的でした。でも今考えると、警戒論は7割ぐらいは正しかったかもしれない」

―それでも「中国包囲網」には否定的ですね。
「囲みきれないですよ。特に経済は、中国を抜きにした国際経済、アジアの枠組みは考えられません。警戒することと敵対することは違います」

―中尾さんがADB総裁だった時、中国主導で発足したアジアインフラ投資銀行(AIIB)と協力したのが印象的でした。
「日本では『バスに乗り遅れるな』と参加を促す議論もありました。でもそれは中国がつくったバスで、運転手も中国人です。敵対する必要もないし、日本の税金で出資までして加入するのでもなく、ADBとの協調融資で協力するのが合理的だと考えました」

―今の日本の強みは。
「信用です。日本企業や日本外交は『約束を守る』とアジアの国々から信頼されてきた。短期的利益だけでなく、長期的に相手の利益も考える。その積み重ねが資産になっています」

中堅国家のこれから

2026年10月15日   岡本全勝

9月30日の読売新聞に「読売国際会議2026 ミドルパワー連携の可能性と限界」の概要が載っていました。「中堅国家 高まる役割」という見出しです。

・・・米国が国際協調に背を向け、中露が覇権主義的な行動を強める中、ミドルパワー(中堅国家)はどう活路を見いだすか――。読売新聞社と読売国際経済懇話会(YIES)は18日、読売国際会議2026「ミドルパワー連携の可能性と限界」を都内で開いた。年間テーマ「岐路に立つ世界と日本の国益」に基づき、岡野正敬・前国家安全保障局長、添谷芳秀・慶応大名誉教授、岩間陽子・政策研究大学院大教授が、ミドルパワーを巡る世界の現状について議論した・・・

添谷
「ミドルパワーとは米中露3大国に続いて相応の力があり、ルールに基づく国際秩序の管理に責任と意思を持つ国のこと。日本は当然、ここに入る。
ミドルパワー連携には三つの領域がある。第一に地球規模の課題に取り組む「グローバル・ガバナンス」(世界の秩序管理)への関与だ。カーニー氏の演説は、こうした責務の大きさを正面から受け止めていた。
第二に、大国との関係を管理するために自らの力をつける「自強」と地域秩序の強靭性強化だ。高市首相が提唱するアジア諸国のエネルギー調達支援の枠組み「パワーアジア」は、まさに地域の強靭性強化を目指す政策だ。
第三に3大国との関係の管理だ。つまり日本が国家戦略に対中外交や対米同盟をどう落とし込むかという話で、一番厄介な課題だ。この第三の問題が第一と第二の領域に波及するのは避けなければならない。」

岩間
「ミドルパワーとは、世界の秩序管理に貢献する意思と能力はあるが、単独では形成できない国。世界は16、17世紀以来、欧米中心の秩序にあり、そこから外に飛び出す覇権交代は一度も経験していない。
だが例えば中国やインドは既存秩序に従うことを当然視していない。日本は戦後秩序から多大な恩恵を受けたが、欧米中心でない世界が来ることがあり得るという想像力は必要だ。
欧米中心の秩序で進んだグローバル化は人間の本性に若干なじまない部分があり、20世紀初めに一度反動が来て、現在また反動が来ている。また、世界は久しぶりの人口減の時代に入る。安定した社会ほど人口がおそらく減っていく。
現在の政治の根っこにあるグローバル化と人口減という中長期の問題に対し、ミドルパワー連携は(短期的に)「時間を買う」ために必要だが、もう少し中長期の感覚も求められる。」

岡野さんが、組織論について、興味深い発言をしておられます。
「安全保障の議論で注意すべき点がいくつかある。まず、議論が専門的になると責任の所在が不明確になる。昨年成立したサイバー対処能力強化法及び同整備法の準備過程で、内閣官房に法案準備チームを立ち上げた。各省庁から送られた優秀な人材は自らの担当分野の知識や判断力は素晴らしかったが、サイバーセキュリティー全体を知る人がいなかった。透明性を高め国民的な議論をすることが大事だ。」

フランスで、ビール消費量がワインを抜く

2026年9月21日   岡本全勝

9月12日の日経新聞夕刊に「フランスでワイン離れ鮮明 ビールと消費量逆転、好みも多様化」が載っていました。
・・・「フランス人はワイン好き」というイメージが崩れつつある。2025年の国内消費量は初めてビールを下回った。食前酒の選択肢が多様化するほか、種類の複雑さが若者を遠ざけている。消費者ニーズを反映した新形態の製品も生まれているが、普及に向けた壁は高い・・・

記事によると、2025年のフランス国内のワイン消費量は、21億9650万リットル、ビールの消費量は22億1000万リットルで、わずかにビールが上回りました。15歳以上人口で割ると、年間1人当たり39.7リットルで、日本の3リットルの約13倍です。
なお、生産量に占める輸出割合は、イタリア47%、スペイン68%、フランス35%だそうです。

ボトルのワインは栓を開けると、飲みきらなければなりません(酸化が進む。コルクの栓で締めることありますが)。料理店や家庭で飲むときは、数人で飲みます。酒を飲まない人が増え、嗜好が多様化すると、一人で1本飲まなければなりません。そこで、箱入りのワインが売られているとのことです。量が減ると袋もしぼんで、酸化を防ぐのだそうです。日本の醤油容器にもありますね。

フランスでは、ワインとビールを好む人は減って、カクテルが増えているそうです。しかし、ビールに抜かれるとは。ビールはアルコール度が低くて、飲みやすいこともあるのでしょうか。私も夏はビールです。

「欧米に学べ」「アジアに遅れるな」2

2026年9月5日   岡本全勝

「「欧米に学べ」「アジアに遅れるな」」の続きです。
櫻井泰典・前自治体国際化協会シンガポール事務局長が、月刊『地方財務』に「シンガポールの公共政策」を連載しています。8月号で17回になります。小さな国家であり、建国から半世紀あまりの国ですが、1人当たり所得では日本よりはるかに高い国です。
条件に恵まれない国が、どのように豊かな国になったか。日本が学ぶことも多いようです。ところが、日本では欧米には大きな関心を持って、事例を紹介するのですが、アジア各国についてはそうでないようです。

最近の連載では、多文化共生政策(2026年5月号)と、製造業振興(6月号)が勉強になります。
多民族で多宗教、多言語。建国時にはその対立で暴動も起きています。人種対立や宗教をあおる行為が法律で禁止され、選挙や住宅などで調和を進める政策が取られています。
小さな都市国家で面積も人口も限られているのに、製造業が強いのです。生産物の内容は、時代とともに変化しています。それに成功したのです。

「欧米に学べ」「アジアに遅れるな」

2026年9月2日   岡本全勝

明治以来日本は、多くの面で「欧米に学び、追いつけ追い越せ」を国是としてきました。国民の努力によって、特に高度経済成長で経済的に追いつき追い抜き、産業、教育、行政などでも追いついたと思いました。もちろん「輸入し揃えた」のは制度などで、運用は異なっていることも多かったです。

ところが、バブル経済崩壊後の長期停滞で経済が停滞し、他方でアジア各国の追い上げによって、追いつかれ追い抜かれました。すると、次の標語は「アジアに遅れるな」でしょうか。
「輸出額、韓国と台湾に抜かれる」「電柱王国日本」「ビッグマック指数」