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板垣勝彦著『分権改革の現在地と法』

2026年4月6日  岡本全勝

板垣勝彦著『分権改革の現在地と法――分権と集権の狭間で揺れる地方自治のいま―』(2026年、第一法規)を紹介します。板垣先生は、地方行政の現場を踏まえた行政法学を展開しておられます。本書は最近発表された論考を集めたものですが、はしがきで「少し思い切った3つの視座を設定した」と書いておられます。分権改革以降の法的課題がよく整理されていると思います。一部を引用します。

第一は、地方自治の「法化」ともいうべき事象である。岩沼市議会事件の最高裁大法廷判決は、これまで地方議会の自律的判断に委ねられてきた議員出席停止処分に対し司法審査を及ぼすという判例変更を行い、幾次にもわたる辺野古紛争は、国-地方間の紛争の舞台をインフォーマルな政治過程から公開の法廷へと移した。泉佐野ふるさと納税訴訟などは、以前であれば地方が国に抑え込まれる決着に終わっていたことは想像に難くない。

第二は、目の前の政策課題に対し、条例制定を通じて解決を試みる政策法務の進展である。空き家条例がまさに好例で、平成22(2010)年に埼玉県所沢市で制定されてからわずか数年で全国400以上の市区町村へと広がり、とうとう空家特措法という形で国全体の施策へと上り詰めた。これは、住民に最も身近な存在である市町村こそ、住民ニーズを最も早期かつ的確に把握し、迅速に対応できるのだから(認知的先導性)、住民の暮らしにかかわる事項は第一次的に市町村に任せるべきだという補完性の原理の表れといえる。

第三が、俄かに押し寄せた「集権」の動きである。個人情報保護法制の一元化とマイナンバー、そして令和6年法改正による「補充的指示権」の立法は、程度の差こそあれ、「分権」一辺倒であった数十年間の動きに対する反作用といえる要素があり、様々な評価があると思われる。しかし、私は、あえて積極的に、わが国が「分権」と「集権」の間で最適なバランスを模索する時代に突入したのだと理解したい。
皮肉にも分権改革が一応の区切りを迎えた21世紀に入ると、少子高齢化の進行、デジタル社会の到来、災害・感染症リスクの現実化、社会保障費の激増など、分権を取り巻く環境が大きく変化した。国が慢性的な財政難に陥る中で、地方においても、増大する一方の事務・事業に人員確保が追い付いていない。