カテゴリーアーカイブ:寄稿や記事

コメントライナー寄稿第29回

2026年7月15日   岡本全勝

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第29回「所管のみ、目標なき役所」が7月10日に配信され、14日のiJAMPにも転載されました。

中央省庁や自治体の幹部と話すと、みんなが「忙しい」とぼやきます。日々起きる問題の対処の上に、首相官邸や首長から下りてくる指示が増えています。他方で職員数は増えず、現場では悲鳴が上がっているようです。しかし、国民や住民から見ると、その割には社会の課題は解消しているようには見えません。なぜ、そのようなズレが起きるのか。

一つは、日々生じる問題への「対策」に忙しくて、現在の問題を踏まえてその解消を図る「政策」がおろそかになっていることでしょう。対策は出てきた問題に対応するので、受動的です。その中で目標を考えることはありません。それに対し、政策は能動的に未来を考え、将来像を示します。大きな政策課題を後回しにして、小さな課題への対策に注力していては、全体として成果は上がりません。
もう一つは、役所の各部局には、「任務と所管」は定められていても、「目標」は与えられていないことです。各省設置法や組織令には任務のほか、所掌事務が詳しく書かれていますが、その目標は書かれていません。

役所の職位と任務を分類すると、指示されたことを実行するのが一般の職員で、その職員を使って与えられた目標に取り組むのが管理職です。その管理職に与える目標を考えるのが幹部です。
所掌事務しか書かれていない組織において、何が課題なのかを考え、それら課題に優先順位をつけ、いつまでにどのように進めるのかを考える。そして、大臣や首長の了解を取って、部下を指揮して解決に導く。それが幹部の役割でしょう。

福島民報新聞に載りました

2026年6月23日   岡本全勝

6月21日の福島民報新聞に、私の発言「「基本法」制定を提案」が載りました。私が主張したのは、次のようなことです。

・地震津波災害と原発事故災害では復興の国の責任の在り方で大きく異なる。国の立場は、自然災害では「支援」だが、原発事故については「責任を果たす」ということ。
・津波被災地の経験もあって、すぐに大きなインフラを整備する手法を見直し、人が戻る場所に徐々に戻すという方式を採用した。例えば復興拠点。全域避難した自治体が持続的な発展を成し遂げるには、人や賑わいの戻りを見極めながら時間をかけて施策を進めなくてはいけなかった。
・今後の復興庁のあり方として、原子力災害対策本部、経済産業省の被災者支援チームなども一体となった組織とし、原発事故復興に力を入れる態勢が望ましい。
・避難指示を解除できない地域がある上、廃炉作業完了の見通しは立たない中、「東電福島第1原発事故復興基本法」の制定を提案したい。原発事故の収束と復興についての東電と政府の責任の明記、行うべき作業の全体像と計画の作成、予算と財源の措置などを法で定めることが必要と考える。それによって、地元を安心させてほしい。

ある編集者の卒業

2026年5月16日   岡本全勝

木村文男さんの退職記念文集ができました。良書普及会、第一法規出版の編集者でした。編集者が退職するに際して、記念文集が発行されることは珍しいでしょう。寄稿しているのは、自治省・総務省の関係者、東大をはじめとする行政法研究者たちです。私も名を連ねています。
木村さんは長きにわたり、「自治研究」と「自治実務セミナー」の編集を担当されました。良書普及会が営業を閉じるときに、この2つの専門誌を続けるために、多くの人の声に押され、第一法規に雑誌ごと移られました。

私も、この二つの専門誌にはお世話になりました。寄稿した多くの方が、若いときに原稿を書き、勉強になったと書いています。官僚にしろ学者にしろ、実名で原稿を載せてくれる雑誌は多くはありません。初めて活字になると、緊張し、うれしかったものです。特に「自治研究」は水準と格式が高いです。「木村さんに厳しく指導された」との思いでも載っています。私の原稿はほぼ無傷で載せてもらえました。

お世話になった人たちによる寄稿のほか、関係者による座談会も載っています。その一つが、総務省自治行政局(元・現)幹部によるもので、「自治実務セミナー」に載った論考を元に、地方制度改革が振り返られています。解説本には書けないことやその時々の社会政治状況との関連が考察されています。これは意義があります。

木村さんのご健勝と、この二つの専門誌がこれからも長く続くことを期待しています。

コメントライナー寄稿第28回

2026年5月13日   岡本全勝

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第28回「少子化対策、産業界の責任」が5月12日に配信されました。

人口減少が進み、少子化対策は国家の大きな課題です。子どもの数が減った要因の一つは、結婚しない若者が増えたからです。意識調査では、若い人の結婚願望は昔と大きく変わらず、「結婚したいけどできない」という人も多いようです。長期不況で非正規労働者が増え、その人たちは将来の生活にも不安があり、結婚に踏み出せないのでしょう。「リストラ」「小さな政府」という主張の下、人件費を削ってきたツケが回ってきたともいえます。若い人の給与を引き上げ、身分を安定させること、そのためにも日本経済の再生が少子化対策の肝でもあるのです。

もう一つの要因は、今の日本が子育てに優しい社会ではないことです。
長時間勤務を減らすことはもちろん、子育て中の両親には柔軟な勤務時間を認める必要があるでしょう。また通勤地獄では、子どもを会社の近くの保育園に連れて行くことは困難です。住宅と勤務地が離れた長距離通勤は、共働きの子育て家庭を想定していません。子育ては専業主婦である妻に任され、父親には朝早く出勤し夜遅く帰宅することが許されていたからできたのです。

2025年10月に、経済界を中心に「未来を選択する会議」が設立されました。設立趣意には、「私たち一人ひとりが希望する『生き方』『くらし方』『働き方』を実現し、豊かに安心してくらすことができる日本社会をどうつくっていくかが大きな課題となっています。未来を選択する会議は、いま、そしてこれからを生きる世代がいきいきとくらせる日本社会の実現をめざしています」とあります。
ようやく物価、給与、株価が上昇し始め、長期不況が終わりそうです。かつて、日本の企業経営は世界一と評価されました。もう一度、世界に誇れるような職場と社会をつくってほしいものです。

市町村アカデミー機関誌2026年春号

2026年4月12日   岡本全勝

市町村アカデミー機関誌「アカデミア」2026年春号が発行されました。拙稿、連載「これからの時代に求められる自治体職員像」第4回「あなたの悩みは何か─若手職員の心構え」が載っています。今回は、若手職員向けです。

職場では、いろいろな悩みや迷いが出ます。それをどのように乗り越えていくか。そこに、仕事が楽しくなるか、嫌になるかの違いが出てきます。そして、仕事ができる職員と、そうでない職員の違いが出てきます。
職場での悩みは、「仕事について」「人間関係」「将来の見通し」に分類できます。その対処方針を説明しました。
どの悩みについても一番の薬は、助言をくれそうな人に相談することです。上司には聞きにくいこともあるでしょう。そのようなときに相談できる先輩を持っておくことが重要です。

第3回「職場を支えているという自覚-中堅職員の役割
第2回「管理職の役割-はまるな四つの落とし穴
第1回「これからの自治体職員像ーあなたに求められていること