カテゴリーアーカイブ:教育

学童保育の必要性2

2026年8月3日   岡本全勝

7月11日の朝日新聞オピニオン欄に「放課後どこに行けば」が載っていました。学童保育は、共働きが増えた現在では、学校と同様に必須のものとなりました。もっと、重要なものとして位置づけるべきでしょう。「学童保育の必要性

・・・かつて小学生たちは放課後、気ままに過ごしていた。でも今の時代、子どもを放っておくのは心配だし、学童保育は過密状態……。放課後どこに行けばいい? 子どもたちが、のびのび過ごせる場とは・・・

佐藤愛子・全国学童保育連絡協議会事務局次長の発言から。
・・・学童保育(放課後児童クラブ)とそこに通う子どもは年々増えています。私たちの2025年の調査では、約2万5千カ所に児童151万7772人が入所していました。公立小学校に通う1~3年生のうちの約4割が利用している計算です。出産後も働き続ける女性が増え、放課後や長期休みに子どもが通える場所が必要とされています。

学童保育は需要に供給が追いついていません。入所人数に制限をかけず大規模化した施設は、騒々しくて安心して過ごせない空間になっていることも多い。遊びや活動も制限されがちです。子どもが「話を聞いてほしい」と思っていても、指導員側も声や手が届かず葛藤があると思います。
国は14年、学童保育における子どもの人数を支援の単位(1クラス)につき「おおむね40人以下」などと厚生労働省令で基準を定めました。ただ、地域の実情によって変えてもよい基準のため、25年時点で基準を満たしているのは全体の約6割に過ぎませんでした。
「待機児童ゼロ」でも学童保育が充足しているとは限りません。適正規模を超えて子どもをどんどん受け入れたら、「ゼロ」になるわけですから。

4~6年生でも学童保育を必要とする家庭はあるのに申請を諦めているというケースも聞きます。高学年だからこそ、一緒に成長してきた仲間との時間は大切です。災害・事故に遭うリスクを考え、学童保育にいてほしいという保護者もいます。しかし、現状は低学年が優先され、学童保育を必要としている子どもが必要な期間、通い続けられているのか疑問です。
少子化や財政難などを理由に、新たな施設の整備に消極的な自治体は多いですが、必要とするすべての子どもが通え、安心して過ごせる環境にするには、整備はまだ必要だと考えます。将来的に高齢者施設に転用するなど長期的な視点を持てば、方法はあるのではないでしょうか・・・

アメリカの高校、金融教育

2026年7月31日   岡本全勝

7月6日の日経新聞夕刊に「アメリカ、高校で金融教育の義務広がる 職業選択などに好影響を期待」が載っていました。
かつては、「一生懸命働けば食べていくことができる」「出世すれば、よい暮らしができる」「お小遣いは貯金する」という教えしかありませんでした。私も、早い段階で勉強しておくべきでした。しかし、よい教科書もありませんでした。今はどうでしょうか。

・・・米国の高校で家計のやり繰りや投資の方法などを学ぶ金融教育が広がってきた。2008年のリーマン・ショック前にほとんどみられなかった州全体で義務にする措置が、全米の半分以上の州で実践されるようになった。若者たちの職業選択など人生にもいい影響を及ぼすと期待されている。

経済教育協議会(CEE)が3月に発表した報告書によれば、金融教育が高校で義務になったのは全米39州に及び、米国の半分以上の州に広がる。直近でもカリフォルニア州やデラウェア州、コロラド州、ハワイ州などが義務化した。
ロードアイランド州では21年、金融教育が高校の卒業要件になった。ポール・カフィー高校ではゴンザレスさんら主に3年生が3カ月半ほど、金融に関する授業を毎日受ける。ジェネビーブ・シュルツ校長は「大人として成功し人生をうまく切り抜けていくために必須の知識だ」と話す。
他の生徒の多くが、クレジットカードの仕組みやおカネの借り手の信用度を示す指標に特に関心を持ったという。会計士や医療技術者、獣医などそれぞれの生徒が具体的に目指す仕事に就いたことを想定して、最初の1カ月目の収支計画を立てる課題にも挑戦した。
クラスの中には貧困家庭で育つ生徒もいる。教師のグリフィン・クワークさんは「この授業は格差是正の面でも大きな役割を果たしている」と熱心に指導する。

大学に進学したポール・カフィー高校の卒業生は節約のために大学の寮に入らずに自宅から通う例が多いという。米国では働いてからも長い間学生ローンの返済を強いられるのは珍しくない。同校3年のハズメル・カシミロ・ペナさんは「奨学金がもらえることが決まったので借金せずに大学に行ける」とほほ笑む。高校で金融教育を受けた成果とも言える。

高校での金融教育を米国で初めて州全体の義務にしたのはユタ州だった。03年に成立した法律に関わった州公認会計士(CPA)連盟のスーザン・スピアーズ最高経営責任者(CEO)は「ユタ州は自己破産率で当時、全米ナンバーワンの状況が数年続いていた」と振り返る。
状況を打開するために思いついたのが高校生への教育だった。スピアーズ氏は「子供が学んだ知識を親にも話してくれることにも期待した」という。独調査会社スタティスタによると、ちょうど20年たった23年のユタ州の自己破産率は全米13位にまで改善した。

ニューヨーク州でも、今年の秋から公立の中学校と高校で金融教育が義務になる。ニューヨーク市内のヘラルド・スクエア公園では、それに先駆けて18年から大人向けに毎月数回講座が開かれている。毎回4〜5人が集まって、昼食を食べながら講師の話を聞く。
イベントを主催するフューシャ・ローズさんは「国語や数学、読み書きのように基礎的な知識として、小学校でも金融教育を取り入れていいと思う」と訴える。幼いときから学んでいれば、大学に進学するかどうかの選択やその後の職選びなどでも別の道を進むことができた人もいるかもしれないと考えるからだ。
公園の講座に参加した50代のフレードー・ビクトリアさんは「自分も子供のときに授業を受けたかった。特に投資の仕方などを学ぶ機会があったらよかったのに」と口にする・・・

電子書籍より紙で読む方が記憶に残る

2026年7月28日   岡本全勝

7月14日の朝日新聞「紙で読むと、脳のコスパ良い? 東大グループ、漫画で電子版と比較実験」から。

・・・同じ漫画の作品でも電子書籍で読むより、紙で読む方が脳の余計な活動をおさえられる「省エネ化」に役立つようだ。東京大の酒井邦嘉教授(言語脳科学)らの研究グループが、脳活動を調べられるfMRIという機器を使い確かめた。グループは「社会的に文書の電子化が進み、デジタル教科書の導入などが検討されているが、知的活動や教育における紙の価値を再認識してほしい」としている。
同じ文章を読むにも、紙とパソコン画面で記憶や理解に違いが生じ、紙で読んだ方が読解テストや内容要約の成績がよかったという海外の報告がある。デジタルの文書は画面が瞬時に切り替わるなど、視覚的にも触覚的にも空間的な手がかりが欠け、記憶に残りにくいと考えられるが、脳で実際にどう働いているかはわかっていなかった。

研究グループは、首都圏の大学生・大学院生25人に、読んだことがない漫画を紙とデジタルで読んでもらう実験を試みた。
漫画の内容は男女2人が主人公のラブコメディーで、1話の前半と後半を男女別の視点で描く「ザッピングストーリー」と呼ばれる形式の作品。実験の参加者は、前半を紙かタブレット端末で、後半はすべてfMRI内でゴーグル型の装置で読んでもらう。その後、漫画の内容に関する問題の答えを4択から選んでもらい、反応時間や脳の活動を分析した。
問題は、前半だけ読んで答えられる「問題A群」と、前半と後半を両方読まないと答えられない「問題B群」がある。前半と後半は基本的には同じストーリーだが、主人公2人の視点が違うため、B群の解答には前半と後半の情報をうまく重ね合わせる必要があり、脳への負担が大きい。

実験の結果、前半をタブレットで読んだ場合にB群の解答時間は、A群の解答時間より1秒以上長く、統計上明確な差が出た。前半を紙で読んだ場合の解答時間は、A群とB群の間で差はなかった。
fMRIで脳活動を見ると、漫画の後半を読んでいるとき、前半をタブレットで読んだ場合は左脳の言語機能にかかわる領域(言語野)が強く活動しているが、前半を紙で読んだ場合はほとんど活動していなかった。つまり、前半を紙で読むと内容を理解しやすく、後半に脳の活動を節約できたとみられるという。

酒井さんは「タブレットだとタップ1回で画面が一瞬で変わり、すぐに次の情報が来るのに対し、紙を自然な動作でめくるわずか1秒ほどの間に、前の情報を咀嚼(そしゃく)して次のページに向かうことが内容の理解に大切ではないか」と指摘。「紙の本だとどのあたりを読んでいるかが感覚的につかみやすく、全体の長い文脈の中で主人公の発言などがどう位置づけられるかを頭の中で再構成しやすいことも考えられる」と話す・・・

アメリカ、ロースクールで人工知能を規制

2026年7月21日   岡本全勝

7月4日の朝日新聞に「米ロースクール、AI規制加速 実在しない判例や根拠不明の記述増」が載っていました。

・・・生成AI(人工知能)が、米国の法曹界や大学を翻弄している。弁護士がAIで作成して裁判所に提出した資料に、捏造や誤りが相次いで判明。法律家を養成する法科大学院(ロースクール)では、AIの利用を禁止する名門校も出てきた。

米西部カリフォルニア大バークリー校のロースクールは、今夏からAIの利用を大幅に制限する方針を発表した。採点対象となる課題のほぼすべてでAIの使用を禁止。論文は、テーマや構成案を聞くことのほか、下書きや推敲、文法チェック、翻訳でもAIの利用を認めない。
2年前に定めた規則では、アイデア出しや推敲などに使うことは許されていた。米国の大学で最も厳しい水準の措置に転じたのはなぜなのか。
「我々の教育の目的は、学生が法律家として活躍するために必要な批判的思考力を身につけることです」。カリキュラム担当のジョナサン・グレイター教授はこう話す。「しかし、AIへの過度な依存が、そうした能力の育成を損なってしまいました」

同校の教授たちが「異変」に気づいたのは、2024年ごろだ。学生の提出物に、実在しない判例や根拠不明な記述が増えた。ある学生は「ChatGPT(チャットGPT)との会話中に独自の論を見いだした」と発表したが、それはすでに他の文献に書かれたものだった。
学内のAI規制を主導したクリス・フーフナグル教授は、法律の解釈を現実の事案に結びつける法的推論という法律家の大事なスキルについて「基礎的技術を身につけなければ、AI企業にアウトソースする弁護士ができあがってしまう」と危機感を抱いたという。
AIの利用を禁じることは「実社会と逆行する動き」との批判もある。だが、まずは法的思考力を身につけ、その後にAIの活用を学ぶべきだとする。AIの「監督力」こそが必要になると考えるためだ。

米メディアによると、カリフォルニア州の弁護士2人が6月、AIを使ってありもしない判例を裁判所に提出したとして、それぞれ2500ドル(約40万円)の罰金と6カ月間の活動停止処分を下された。
フランスのHEC経営大学院のダミアン・シャルロタン研究員によると、22年のチャットGPTの登場以降、世界で少なくとも1600件のAIによる虚偽・捏造が裁判所に提出され、そのうち米国が1100件以上を占めた。

もともと弁護士はAIに取って代わられやすい職業の一つと指摘されてきた。業務の多くが大量のテキストデータの処理や過去の判例の照合など、AIが得意とする仕事が多いためだ。人間が何日もかけて調べる過去数十年分の判例や文献を、AIは一瞬で見つけ出せる。
ある弁護士はAI利用について「スタッフを雇う必要がなくなり、はるかに速く、安上がりで仕事ができる。使わない手はない」と話す。
それでも、グレイター教授はAI時代、法律家に求められる力はむしろ重要性が増していると指摘する。
「分析力と倫理観、そして何よりも判断力。それはAIには取って代わられてはいけない」・・・

早まる採用活動は悪いことか

2026年6月5日   岡本全勝

5月27日の日経新聞に、「採用計画調査から(4)」「早まる就活、6割「悪影響」採用活動、コスト増に疲労感」が載っていました。

・・・日本経済新聞社がまとめた採用計画調査では、2026年春入社の採用活動における早期化や長期化の影響について聞いた。「悪い影響があった」と回答した企業は6割を超えた。学生だけではなく企業にも疲弊が表れている。
26年春入社の面接、試験など選考の開始時期は「24年10~12月」が27.3%と最も多かった。「25年3月」(18.7%)、「25年1月」(12.9%)、「24年7~9月」(9.9%)と続く。
政府は新卒採用の選考活動開始時期について卒業年度の6月1日以降が望ましいとしているが、25年6月以降だったのは5.6%にとどまった。ルールと実態が乖離していることが浮き彫りになった。

早期化・長期化による影響について良しあしを聞くと「悪い影響があった」とした企業が1778社のうち1112社と62.5%を占めた。
具体的な影響(複数回答)では「早期に学生との接点を持ち、自社理解を深めてもらえた」が66.3%と最多だったものの、次に多かったのは「内定辞退防止の負担が大きくなった」で55.2%となった。内々定辞退者の数について「前年より多かった」と答えた企業は3割に上った。優秀な人材を獲得するために早期からの採用活動を有効と考える半面、内定辞退の対応策に頭を悩ませる企業が増えている・・・

でも、採用活動が早まること、企業の負担が大きくなることが問題なのでしょうか。
大学では、通常4年間学ぶのですよね。3年生の夏や秋から採用の面接などをして学生を選ぶということは、学生が身につけた学問を問わないに等しいでしょう。(学問を問わず)優秀な学生と判断して会社が採用したいなら、卒業を待たず、2年生でも3年生でも学年途中で採用すればよいのではありませんか。
良い学生と見込んだら、卒業を待たずに、採用すれば良いのです。それなのに、なぜ卒業まで待つのか。内定辞退の恐れもあるのに。
採用活動が早まることが問題ではなく、卒業証書が形式的価値しか持たず、学んだ内容を問わないという大学教育と、企業の採用基準が問題なのです。