カテゴリーアーカイブ:地方行政

地方分権、人口増と減少下での違い

2026年5月27日   岡本全勝

戦後の日本では地方分権が一つの課題でした。それが1990年代に大きく進み、2000年には分権改革一括法が施行されました(第一次分権改革)。国から地方自治体に権限を下ろす、市町村を地域の行政主体とするのです。これは大きな成果でした。他方でその後は、自治体が担いにくい事務について、国が行うこととする「調整」も行われています。大規模災害時での国の役割、災害復旧での国の代行事業など。

ところが、過疎地域での人口減少で、小規模自治体が行政事務を処理できなくなる恐れが出てきました。職員数の減少、定員が充足しないことも、問題を現実化しています。ゴミ処理や消防、介護保険など、市町村が共同で行うことも進んだのですが。新型コロナウイルス対策では、各省から大量の指示・依頼文書が自治体に向けて発出されましたが、小さな自治体ではすべてを処理することは不可能でした。

昭和の市町村合併では、中学校を持つことができるように8千人を目標としました。平成の市町村合併ではそのような人口規模目標を持たなかったので、大きな政令市ができる一方で、小規模自治体が残りました。私は地域の総合行政主体としては、例えば10万人の規模は欲しいと思います。
市町村合併ができないとなると、小規模自治体が処理できない、処理しにくい業務は、近隣の市に委託するか、県が補完するのが代案だと思います。県が補完する案は、第一次分権改革後に、西尾勝先生が私案として出されたのですが、当時は反対論が多かったようです。しかし、人口減少が進み、検討が始まったようです。

祝「自治体のツボ」2500回

2026年5月18日   岡本全勝

このホームページでも、時々紹介している「自治体のツボ」が、2500回を達成したそうです。おめでとうございます。
8年間続いているそうです。表題の通り、毎回、全国の記事をよく調べてあります。かなりの労力が必要だと思います。それだけに、思い入れがあるのでしょう。付録の料理の写真も、興味深いです。カロリー多めと思うのですが。

次の指摘は、同感です。
「最近は残念に思うことが多い。東日本大震災、新型コロナウイルス禍、インフレ増進ときて、地方自治体の自律の動きは鈍くなっている。国との連携・協調、住み分けは大事だが、金も知恵も限られ、地方のお願いモードが目につく。国頼みに屈託がない。」

大阪市の放置自転車・路上喫煙対策

2026年5月14日   岡本全勝

4月25日の日経新聞夕刊に「万博が育むクリーンな大阪 放置自転車・路上喫煙が3割減少」が載っていました。

・・・かつて雑然と街中に自転車が放置され、路上で喫煙する人の姿も珍しくなかった大阪が変わり始めた。契機となったのは2025年の大阪・関西万博。世界を代表するクリーン都市を目指し規制強化に乗り出した官民の取り組みは徐々に実を結びつつあり、開催前後の比較では放置自転車と路上喫煙がいずれも3割減少した・・・

放置自転車については、繁華街での夜間で即時撤去を進めた結果、3割減りました。路上喫煙については、違反した場合の過料を1000円に設定しました。自然体の路上喫煙率が3割低下し、0.15%になったそうです。

ただし、過料の徴収はどの程度行われているのでしょうか。条例で罰則を定めても、実行が伴わないと、無視されてしまいます。
我が家の周辺も路上喫煙禁止区域なのですが(路面に表示があります)、毎日、たばこの吸い殻が捨ててあります。違反を摘発している場面も、見たことがありません。自転車の違反には青切符が着られるようになったとのことです。すると、効き目があるでしょうね。

市道補修を民間に一任

2026年4月17日   岡本全勝

3月31日の日経新聞に「市道補修は民間に「お任せ」新潟県三条市、エリアごとに5年契約」が載っていました。
・・・新潟県三条市は土木部門の人手不足に対処するため、民間への包括委託で発注業務を大幅削減している。簡易な補修などは5年間の長期契約でプロに一任し、市職員の負担軽減とインフラ維持を両立させている。どのように「官民分担」が進んでいるのか、記者が寒さの厳しい同市の現場で探った・・・

通常は、道路など自治体が管理する施設は、自治体職員が現場を確認して、補修工事の範囲などを指示する仕様書を出します。土木業者から見積もりを取って、発注します。
三条市では、市内を4区域に分けインフラの補修や巡回を民間企業に包括委託しています。費用が130万円未満の案件は市が個別に指示せず、受託企業が判断し作業します。背景には、自治体の職員特に技術職員の不足があります。
企業による作業の成果評価をどうするか(作業不足、作業過大など)など課題はあるでしょう。

板垣勝彦著『分権改革の現在地と法』

2026年4月6日   岡本全勝

板垣勝彦著『分権改革の現在地と法――分権と集権の狭間で揺れる地方自治のいま―』(2026年、第一法規)を紹介します。板垣先生は、地方行政の現場を踏まえた行政法学を展開しておられます。本書は最近発表された論考を集めたものですが、はしがきで「少し思い切った3つの視座を設定した」と書いておられます。分権改革以降の法的課題がよく整理されていると思います。一部を引用します。

第一は、地方自治の「法化」ともいうべき事象である。岩沼市議会事件の最高裁大法廷判決は、これまで地方議会の自律的判断に委ねられてきた議員出席停止処分に対し司法審査を及ぼすという判例変更を行い、幾次にもわたる辺野古紛争は、国-地方間の紛争の舞台をインフォーマルな政治過程から公開の法廷へと移した。泉佐野ふるさと納税訴訟などは、以前であれば地方が国に抑え込まれる決着に終わっていたことは想像に難くない。

第二は、目の前の政策課題に対し、条例制定を通じて解決を試みる政策法務の進展である。空き家条例がまさに好例で、平成22(2010)年に埼玉県所沢市で制定されてからわずか数年で全国400以上の市区町村へと広がり、とうとう空家特措法という形で国全体の施策へと上り詰めた。これは、住民に最も身近な存在である市町村こそ、住民ニーズを最も早期かつ的確に把握し、迅速に対応できるのだから(認知的先導性)、住民の暮らしにかかわる事項は第一次的に市町村に任せるべきだという補完性の原理の表れといえる。

第三が、俄かに押し寄せた「集権」の動きである。個人情報保護法制の一元化とマイナンバー、そして令和6年法改正による「補充的指示権」の立法は、程度の差こそあれ、「分権」一辺倒であった数十年間の動きに対する反作用といえる要素があり、様々な評価があると思われる。しかし、私は、あえて積極的に、わが国が「分権」と「集権」の間で最適なバランスを模索する時代に突入したのだと理解したい。
皮肉にも分権改革が一応の区切りを迎えた21世紀に入ると、少子高齢化の進行、デジタル社会の到来、災害・感染症リスクの現実化、社会保障費の激増など、分権を取り巻く環境が大きく変化した。国が慢性的な財政難に陥る中で、地方においても、増大する一方の事務・事業に人員確保が追い付いていない。