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連載「公共を創る」101回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第101回「家族と職場に見る「ずれ」の実像」が、発行されました。経済成長期に私たちの暮らしが大きく変化したのに、社会の仕組みや通念が追いついていません。そのずれが、不安を生んでいます。

家族の形では、サザエさんやちびまる子ちゃんのような3世代同居から、一人暮らしが増えました。家族という保障機能が小さくなると、孤立の問題が出てきます。男女共同参画は大きく進展しましたが、男性の家事従事時間は、女性よりはるかに短いです。

労働の形では、家族で働く農業や商工業から勤め人になりました。かつての農業に比べ、給料の良いきつい肉体労働でない月給取りは憧れでした。しかし、勤め人がすべて条件の良い労働ではありません。職場での人間関係に悩む人が増え、非正規雇用は給与も条件も良くありません。

終身雇用慣行は、社員が定着するには良い仕組みだったのですが、転職を妨げています。職場での大部屋主義と全員一致制は、非効率になりました。「部下に任せるのが良い上司」という通念は、上司が責任を取らないことにつながっています。

在宅勤務、20代は不安

11月22日の日経新聞が、在宅勤務で生じるコミュニケーション不足や孤独感を解消する対策を特集していました。その記事に、パーソル総合研究所が行った調査結果が紹介されていました。「はたらく人の幸せに関する調査結果」2021年6月8日公表

いくつも興味深い結果が載っているのですが、ここで取り上げるのは、20代の社員で在宅勤務で不幸せになった人が多いことです。
どの年齢を取っても在宅勤務で幸せを感じる人が増えたのですが、20代だけが減っているのです。その原因は、「ひとりぼっち」と「職場がバラバラ」という因子です。納得します。出勤していても一人で悩む社員はこの因子が当てはまるのでしょう。在宅勤務になると、それが悪化します。
まだ駆け出しの社員は、その不安が大きいのです。気を配ってやってください。

緩いチームに成長はない

11月25日の日経新聞夕刊、GU・柚木治社長の「私のリーダー論 下」から。

ー育てる側の忍耐や自制心も試されそうです。
「時には厳しさも重要ですね。あえて修羅場を経験させたり、高い要求を与えて叱って伸ばしたりも必要です。自分自身を振り返っても、そういう時に成長しました。厳しさはわたしにとっては不得手な部分で、部下に対してやりきれているだろうかと思うこともありますね」
「でも『チームワーク重視』などを理由に厳しくしなければ、ただの緩いチームになり部下も成長しません。結果として全員が不幸になります。それは経営者としては怠慢に等しい。柳井会長は部下に期待しながら厳しくも接する。両方ができる強いリーダーだと感じています」

関西大学で講義

今日12月2日は、関西大学経済学部に呼んでいただき、講義してきました。毎年一度の講義です。
私が東日本大震災対策で経験したこと、そこで考えたことを元にお話ししました。実務家としての経験を話すことが主眼ですから。
そこから発展して、連載「公共を創る」に書いている、行政だけでなく企業や非営利団体が私たちの暮らしに重要な役割を果たしていることをお話ししました。

大学は、オンライン授業が多くなっているとのことで、参加者は例年より少なめでした。講義後に質問を募ったところ、2人から質問が出ました。その内容が素晴らしく、講義をした甲斐がありました。ありがとう。

進んでいる移民の受け入れ

11月26日の朝日新聞オピニオン欄、社会人口学者・是川夕さんへのインタビュー「「移民国家」になる日本」から。

――日本に働きに来ている外国人は「移民」なのでしょうか。
「国連は移民を『1年以上外国に居住する人』と定義しており、経済協力開発機構(OECD)は『上限の定めなく更新可能な在留資格を持つ人』としていますが、どちらにしても、事実として日本は移民を受け入れています。コロナ禍の直前で毎年約17万人の技能実習生、約6万人のハイスキル層、約12万人の留学生など、年間約54万人の外国人が新たに来日している。今後は、日本への永住も可能な特定技能2号の対象業種拡大も見込まれています」

――技能実習生の失踪が問題になり、出入国在留管理局では収容中にスリランカ国籍の女性が死亡しました。日本は「移民受け入れ後進国」なのではないですか。
「再発防止を徹底するべきですし、人権擁護の重要性は言うまでもありません。しかし、理想的な移民政策を採ったとしても不幸な事件は起きうるでしょう。外国人だという立場の弱さ、力の不均衡が事件の前提にあるからです」
「多くの外国人労働者が、働くための在留資格という正面玄関ではなく、研修目的の技能実習制度や留学生のアルバイトなどのバックドアから入っているという見方が主流です。ゆがんだ制度によって外国人労働者が来日し、それが故に人権侵害が一部で起きていることも否定できません。しかし、それだけでは大切なことを見落とすことに気付きました」
――何が見えなくなる、と?
「それでも、彼ら彼女らは日本を目的地として選んだという事実です。外国人労働者たちを『だまされて日本で働いている可哀想な人たち』と見ていると、なぜ日本に永住する人が増えているのか、説明がつかない。未知のリスクがあるにもかかわらず国境を越えることを選んだ人たちの視点に立つと、別の風景が見えてきます。『差別され、貧困に苦しむ人たち』としてしか見ない視線では、国境を越える熱量とダイナミズムは理解できません」

――雇用という面で見れば、外国人労働者、つまり移民は日本社会に溶け込みつつある、と?
「ええ、ゆるやかに社会統合されていると分析しています。私の研究では、在留外国人のうち、最大のカテゴリーである永住者の賃金水準は、日本人と大きく変わりません。専門職に就く割合も、日本人と変わらない。周囲を見回せば、私たちと同じような暮らしをしている外国人が近くにいる、という状況になっています」
「小学校入学前の子どもたちでは、外国籍、日本国籍取得者、親のいずれかが外国籍という『移民的背景を持つ人』は2015年で5・8%に上り、30年には10人に1人となるという推計があります。子ども世代にとっては、クラスに2、3人は外国ルーツの友だちがいることがリアルです」

――文化の違う出身国ごとのコミュニティーができているという話も聞きます。それでも日本社会に統合されていると言えますか。
「日本人同士でも、隣に住んでいる家族がどんな人たちなのか、分からないことがある。それが移民となると、地域に溶け込むべきだ、となるのはおかしいと思います。階層、雇用、教育、婚姻など公的な領域では、差別や分断はあってはなりません。一方で、文化的なものは私的な領域に属する部分も大きく、日本人も外国人もそれぞれが大切にすればいい」
「米国でも、移民たちは出身国の文化を守り、コミュニティーを形成しています。それでも学校や職場では価値観を共有し、同じ社会のメンバーという意識を持っている。文化的な統合まで求めるよりも、最低限押さえるべき共通部分について決め、それを守る方がいいのではないでしょうか」