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職場の悩みは人間関係

日本を代表する企業であるダイハツ工業と豊田自動織機が、トヨタ自動車向けの車種やエンジンで不正を行っていました。豊田自動織機の調査報告書では、次のようなことが指摘されています。豊田自動織機「調査報告書(公表版)」2024年1月29日

・・・当委員会がヒアリングしたエンジン事業部の従業員の中には、「開発スケジュールが厳しいことを上司に伝えても、上司が L&F に対しスケジュールの見直しを申し出ることはなく、むしろ、決められたスケジュールに間に合わせるよう指導を受けるのみであったため、スケジュールが厳しくても、上司に相談することはしないようになった。」などと述べる者もいた・・・(164ページ)

ここから読むことができるのは、不正が起きた、そしてそれが是正されなかった原因は、人間関係だということです。
部下は悩んでいる、しかし上司に言っても無駄だとあきらめている。上司は部下の悩みを聞くどころか、その原因になっているのです。
拙著『明るい公務員講座』で、職員の悩みは人間関係だと説明しました。仕事に悩んでいるのではなく、人間関係に悩んでいるのです。

自分で市場価値を高める社員

2月5日から、日経新聞2面に「ワクワク働いていますか」という連載が載っていました。6日の第2回は「働くZ世代「頼れるのは自分」 市場価値向上に貪欲」でした。

・・・都内のシステム開発会社に勤めるエンジニアの日高僚太(24)は午後7時半に仕事を終えた後、再びパソコンに向き合う。ここからは副業の時間。クラウドを使って働きたいエンジニアのメンターとして、IT(情報技術)スキルを教えている・・・本業ではプロジェクト責任者として働く。
「社内外で多くのことを吸収し、成長するのが喜び」と日高。目まぐるしく必要な技能や知識が変わるITの世界で「頼れるのは自分」とも強調する・・・

・・・若者は仕事で何に成長を感じるのか。取材班が働くZ世代(1990年代半ば〜2010年代初頭生まれ)50人に聞くと、「知識や経験値が増えること」と「結果を残すこと」との回答がそれぞれ約3割にのぼった。
Z世代は多感な時期にリーマン・ショックや東日本大震災を経験した。最近は新型コロナウイルス禍が起き、経済や社会の不安定さを目の当たりにした。芽生えたのは組織に身をすべて委ねることへの不安。目に見える実績や数字を追い求め、自分の市場価値の向上に貪欲だ・・・

・・・機能性衣料品を手がけるスタートアップ、TENTIAL(テンシャル、東京・中央)で働く石川朝貴(28)は中国の消費者に熱心に問いかける。石川は同社の海外展開の責任者。現地の消費者のニーズを聞き取る市場調査に奔走する。「自分にしか出せない結果を残したい」と目を輝かせる。
販売職で入った前職の大手メディアは残業がないなど職場は「ホワイト」だった。うんざりしたのは何をするにしても色々な上司の承認が必要な「はんこリレー」。仕事のスピード感が遅く3カ月で退職した・・・

・・・今の若者は成長に「タイムパフォーマンス」(時間効率)も求める。
転職サービス「doda(デューダ)」では、入社直後の2023年4月に転職サイトへ登録した新社会人が11年から23年にかけて約30倍に増えた。スキル向上や責任ある仕事の機会を与えなければ、熱意ある若者は企業から去っていく・・・

日本のGDPが世界4位に

内閣府が、2023年の国内総生産の数値を公表しました。各紙が「ドイツに抜かれた」と伝えています。
・・・2023年の国内総生産(GDP)は、物価の影響をふくめた名目GDPが前年より5・7%増え、591・4兆円だった。米ドルに換算すると1・1%減の4・2兆ドルで、ドイツ(4・4兆ドル)に抜かれて世界4位に転落した。1968年に西ドイツ(当時)を追い越して以来、55年ぶりに日独が逆転した・・・「日本GDP、4位に転落 円安響きドイツ下回る」2月16日の朝日新聞。

報道では、第4位に転落したことを強調していますが、問題はそこではありません。ドイツの人口は8000万人余りで、1億2000万人の日本の3分の2です。すなわち、一人あたり国内総生産では、日本はドイツの3分の2なのです。それは、個人の豊かさと言い換えることができます。

2月17日の日経新聞5ページに、「物価を考える 名目GDP600兆円」という記事が載っていて、各国の名目GDPの伸びがグラフで出ていました。
このグラフでは、1993年を起点に100として、日本やアメリカ、ヨーロッパ先進国の名目GDP(自国通貨建て)の伸びを示しています。アメリカ、イギリスは3倍以上、フランス、イタリア、ドイツが2倍以上、日本は横ばいです。毎年2~3%程度の伸びがあると、30年間でこれだけの差が出るのです。日本だけが独自の道を歩んでいます。

30年間とは結構長い時間です。どこに問題があったのでしょうか。昭和後期に奇跡のような高度成長を遂げ、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われて自慢していたのに。
数字では見えない、悪いことがあります。企業はリストラという名の下に社員を解雇し、非正規や派遣社員に置き換えました。役所も行政改革の旗印の下、職員を非正規職員に置き換えました。そして、就職氷河期、年越し派遣村、子どもの貧困、結婚できない若者という言葉に象徴されるような、不安な社会を作ったのです。子どもの数が減るのも、これが大きな要因でしょう。
数字の上では横ばいですが、正規と非正規の間の格差、社会の分断を生んでいるのです。社会は悪くなっています。

障害児の親への支援

2月5日の日経新聞ダイバーシティ欄に「障害児の親への両立支援に光」という記事が載っていました。

・・・世の中には仕事との両立を阻むハードルが多数存在しているが、これまで支援の網から漏れていた課題にようやく光が当たろうとしている。障害児や医療的ケア児を育てる保護者の両立問題だ。一般的な子育てと違って成長とともに親の負担が軽くなるとは限らず、既存の子育て支援では追いつかない。国が育児・介護休業法改正案に支援拡充を盛り込むなど官民が動き始めた・・・

詳しくは本文を読んでいただくとして。障害を持っていて特別支援学校などに通う児童生徒数は約62万人、全体の6.5%になります。その親の多くは、仕事と子どもの世話を両立させる苦労をしています。他方で、多くの企業は特に配慮していません。

健康な人にとっても、障害は他人事ではなく、誰もが持つ可能性のあることです。これまで、見てみないふりをしていたこと、配慮しなければならないことがたくさんあります。

『市政』2月号「地域でこどもを守り育てる」

全国市長会の機関誌『市政』2月号の特集は、「地域でこどもを守り育てる」です。
こども食堂支援で活躍している湯浅誠さんが、「こども食堂から考える こどもの居場所づくりと行政支援の在り方」を寄稿しておられます。

子ども食堂は、家庭の事情で食事が満足に食べられない子どものために開設されていますが、子どもの居場所つくりというより大きな目的があるようです。そして、子どもだけでなく、年齢を問わない居場所を目指しているところも多いようです。
この特集にもあるように、子どもを孤立させない対策が広まっています。

現代社会の大きな問題である孤独・孤立対策のために、子どもだけでなくすべての世代に対して開かれた居場所が求められています。
そして、居場所という概念にとらわれず、地域のつながりという機能を強くする必要があります。これが、地域の安心を作る次の課題です。