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書店減少対策

4月1日の読売新聞「LEADERS」は、近藤敏貴・トーハン会長の「本屋にチャンス届ける」でした。

出版取次大手トーハンが小型書店の開業をサポートするサービス「HONYAL」(ホンヤル)を始めた。出版物の卸売りを担う取次会社が書店の振興に取り組むのはなぜか。近藤敏貴会長に聞いた。

今、全国の28%の自治体に書店がありません。いろいろな手を打っているのですが、まだ減っています。
でも世界を見ると、韓国やフランスなどでは書店は減っていない。むしろ独立系の個性的な書店が増えています。日本でも同様に、小型でも特色のある書店が増える可能性はあると考えたことがスタートです。調べてみると、実際に増えつつあることもわかりました。
これまで日本で小型書店が作りにくかった責任の一端は我々にもあって、少額取引は採算が合わず、辞退せざるを得なかったのです。ホンヤルではその採算モデルを見直しました。

<ホンヤルは連帯保証人や信認金(取引保証金)は原則不要。取り扱いは注文品のみで配送は週1回。小型書店が参入しやすく、取次会社の配送コストも抑える仕組みとし、2024年10月にサービスを始めた>
最初の導入事例は、10年前から町に本屋がなかった北海道南幌町の「はれっぱえほん館」です。
「はれっぱ」は、子どもの室内遊戯施設がメインで、開設後の1年間で来館者数が21万人を超えました。ファミリー層に認知された場所で、新たに絵本の売り場づくりをお手伝いできてよかったと思います。

<紙の出版物の市場規模は1996年をピークに減少に転じ、書店数も20年間で半減した。経営環境が厳しさを増す中、2019年に中期経営計画を策定。本業改革と事業領域の拡大に乗り出した>
取次事業が赤字になる一番の理由は、配送運賃の高騰を経費削減や売り上げでカバーできていないことです。
その中で本業改革をどうやろうかと、ドイツへ視察に行きました。ドイツは日本と同じように本は定価販売で返品もできるのですが、返品率は10%くらいです。日本は30~40%もあります。
何が違うのかというと、日本では出版社が決めた製作部数があり、それを取次会社が書店に配本しています。
ドイツでは発刊の半年から1年前にカタログを作り、書店はそれを見て発注し、出版社はそれをもとに製作部数を決めます。だから返品率が低いんですよ。
こうしたマーケットイン型に全部するのは無理だとしても、少しずつでも変えるべきじゃないかと。日本の出版流通における「川上思考」を、刊行予定をもとに書店が発注する「川下思考」に変えようというのが本業改革の基本的な考え方です。

プロ野球観戦、明治神宮球場

4月20日日曜の夜、久しぶりに、明治神宮球場にプロ野球ヤクルト対ジャイアンツの試合を見に行ってきました。
なんでまた、日曜の18時からの試合。と思いましたが、昼は東京六大学の試合があるのです。誘ってくれた人は、田中将大投手が投げるかもしれないと、早い段階で予約してくれたそうです。残念ながら予想は外れ、ジャイアンツは普段見ない投手が次々と出てきました。

試合はゆっくり進み、20:30の時点で6回でした。私はそこで、帰ってきました。
でも、ホームラン2本、甲斐捕手の盗塁刺殺、ダブルプレー(成立したのは1回、失敗2回)、そのほかファインプレーも見ることができて満足できました。テレビ観戦に慣れていて、ビデオ再生がないので、よくわからないうちに進んでいきます。どんな球を撃ったのかとか。

驚いたのは、女性と外国人の多さです。アジア系も欧米系の人もいました。私の隣のおじさん2人は、英語と中国語で野球の内容について話していました。後ろの席は若い女性軍で、これまた玄人の話をしていました。

毎日のように野球観戦に行っている肝冷斎はすごいです。しかも、毎回、きちんと記録をつけているとのこと。好きでないと、いえ好きだけではできないことです。尊敬します。

アテンション・エコノミー

3月28日の朝日新聞オピニオン欄は「奪い合うアテンション」でした。
・・・インターネットの普及で、人々の関心や注目が経済的な価値を持つ「アテンション・エコノミー」はますます社会に浸透している。何が起きているのか。乗り越える方策はあるのか・・・

馬籠太郎・電通デジタルマネージャーの発言から。
・・・アテンション・エコノミーは、広告業界においてはもともと商売の要です。看板や新聞の広告、テレビCMといった従来型の広告でも、アテンションを引くということが商売のもとになっていると言えます。

ただ、デジタル広告が従来型の広告と違うところは、人々の反応のデータが取れることです。どれくらいの人がクリックしたかとか、動画であればどれくらい表示されていたかとか、ユーザーの属性ごとに細かくリアルタイムで分かります。従来型の広告だと、掲載してから反応が見られるまで割と長かったのですが、デジタル広告はフィードバックがすごく速くなってきたと言えます。
スマートフォンの普及も大きいでしょう。今までであれば、テレビを消したりラジオを消したり、雑誌を閉じたりすれば、アテンションはおしまいです。でもスマートフォンは手もとにあるので、いつでもコミュニケーションが取れる状態です。アテンションを強く引くものが出てきた場合、ずっとそれに縛りつけられた状態になってしまいかねません。

人間の時間は有限ですが、情報空間にある情報は膨大に増え続けています。だから、アテンションがより価値を持ってくるのだと思います。ユーザー側の貴重な時間をいかに割いてもらうかがポイントですし、そのための手法がいろいろと考えられています。
良いアテンションと悪いアテンションというのがあるとすれば、扇動的になったり、過度に刺激的になったりするのは、悪いアテンションでしょう。ネガティブな感情に働くものは割とアテンションを引きやすいと思いますが、アテンションを引ければ何でもいい、というような話は危険だと思います。偽・誤情報が広がってしまう恐れがありますし、そうなると情報空間自体の信頼性がどんどん下がってしまいます・・・

ベトナム国戦略的幹部研修

今日4月22日は、政策研究大学院大学での、ベトナム政府の国戦略的幹部研修講師に行ってきました。今回の対象者は地方政府幹部で、私の講義は「リーダーシップと危機管理」です。19人の方が、熱心に聞いてくださいました。

十分な質疑の時間を取ったのですが、次々と鋭い質問が出て、予定時間を超過しました。予測はできなかったのか、予算確保の方法、塩害に遭った農地の復旧、がれき片付け、保健の問題など。地方政府でそれぞれの分野に責任を持っている人ならではの、質問がありました。
的確な質問が出ると、うれしいですね。私の話が理解されているということですから。

ベトナム政府は、大胆な行政改革に取り組んでいるとのことです。中央省庁の統合と、地方行政単位の統合です。後者は、「省・郡・社」の3層構造から「省・市」と「社」の2層構造に移行し、63ある省と中央直轄市を34(28省+6市)に再編します​。なかなか大胆な行政改革です。
人口は約1億人、面積は約33万平方キロ。日本と似た状況ですから、驚くことではないでしょう。ところで、職員の配置転換、削減はどのようにするのでしょうか。

新型コロナ風評被害、ハンドドライヤー

4月5日の朝日新聞「コロナ5年 今考える」2「風評被害 根拠なく使用禁止、消えぬイメージ」。ハンドドライヤー製造販売会社社長、井上聖一さんの発言から。

新型コロナ流行時、トイレで使用禁止になったハンドドライヤー。この対策は、明確な根拠なく決まり、禁止が続いた。ハンドドライヤーの製造販売を手がける「東京エレクトロン」(神奈川県)の井上聖一社長(74)は、今も影響は続き「風評被害で、人生が大きく変わってしまった」と語る。

――今の会社の状態は?
売り上げは、今もコロナ禍前の半分ほどです。ハンドドライヤーは年間2500~3千台ほど売れていたのが、コロナ禍はほぼゼロに。2023年5月にコロナが感染症法の5類になった後も回復しきらず、去年は700~800台ほどでした。今は売り上げの3分の2が、ハンドドライヤー以外です・・・
コロナが世間で注目されるようになった頃は、ビジネスチャンスだと思ったんです。というのも、09年の新型インフルエンザ流行時には、ハンドドライヤーの売り上げが年1千台以上も増えました。新型コロナでもそうなるだろうと、韓国の関連企業に増産を指示し、中国から300台を緊急輸入しました。
おかしいなと思ったのは、少し経って「エアロゾル感染」が報じられるようになってからです。

――20年5月に政府の専門家会議は業種ごとの感染防止ガイドラインをつくるよう提言。その中の「留意点の例」に「ハンドドライヤーは止める」と記載され、各業界団体のガイドラインのほとんどに使用禁止が盛り込まれました。
レンタル解約の連絡が止まらなくなり、新規の注文もゼロに。倉庫には在庫の山ができました。
調べてみると、WHO(世界保健機関)は手を洗った後はハンドドライヤーなどを使って乾かすべきだとしていましたし、禁止したのは日本だけでした。

――なぜ禁止になったのだと?
当時はまだ新型コロナは未知のウイルスで、社会の不安が大きかったのは分かります。それでも、専門家が何の実験も検証もせずに禁止を勧めたことには今でも憤っています。禁止になると死活問題になる会社があることを全く考えていなかったのでしょうね。
国を訴えようと顧問弁護士に相談しましたが、費用と時間がかかりすぎるので諦めました。まず、ハンドドライヤーが感染につながらないことをアピールするため、実験をしました。

――その結果は?
ハンドドライヤーを介して手から手にウイルスが移ることも、風でウイルスが飛散することもないというものでした。会社ホームページに報告書を載せ、誰でも読めるようにしました。

――政府は22年10月になってようやく、ガイドライン見直しのポイントに「ハンドドライヤーは、使用できる」と明記しました。
5類移行の検討が話題になった頃から、少しずつ注文が入るようになってきました。ただ、移行後にどっと増えるかと思ったらそうはなりませんでした。悪いイメージが定着してしまったのだと思います。