投稿者アーカイブ:岡本全勝

竹工芸、購入者の8割が外国人

2026年6月7日   岡本全勝

5月31日の日経新聞別刷りに「竹の魔術 しなりが導く匠の技」が載っていました。

・・・日本人にとって竹がもっとも身近な植物の一つであることは間違いないだろう。和的な景観を彩る要素としてだけでなく、しなやかで強靱な特性は昔から、人びとの暮らしを支えてきた。近年は厄介者扱いされることもある一方、その秘めた能力に魅せられる人は少なくない。
細い竹ひごが、生き物のようにしなる。岐部笙芳(せいほう)さんの手が交差するたび、目の前で美しい網目模様が広がっていく。大分県九重町にある岐部さんの工房を訪れた。現在全国で3人いる竹工芸の重要無形文化財保持者(人間国宝)の一人だ。
創作は「材料とり」と呼ばれるひごづくりから始まる。真竹を縦に割り、包丁を使ってひごをつくる。細いものは1ミリ以下。端から見ているとわけなく見えるが、均一な幅を保つのは経験のたまものだ。使用する数も作品によっては百本を超えるというから、繊細さに加えて根気もいる・・・

・・・(訓練学校の)1年の課程を終えた後も学び続け、展覧会で受賞もした。だが、作品づくり一本で食べていくのは難しい。問屋の求めに応じてつくった小物は一つ3000円。月に10個が精いっぱいだ。バブル期にはバッグが高値で売れたこともあったが、崩壊とともに需要は激減。アルバイトをしながらの制作が続いた。
第二の転機は25年ほど前だ。ある日、日本の竹工芸に造詣が深い米国人ロバート・コフランドさんが通訳を伴い工房を訪れた。「作品を見せてほしい」と請われ、2点を注文して帰った。その後、米国で個展を開催することになる。
いまも購入者の8割を外国人が占める。団体が山あいの工房にバスで乗り付けることもあるそうだ。「元の竹から変化して様々な形に変化する。実演すると『なんなんだこれは』と驚かれる」。竹が醸す日本文化への憧憬もあるのだろう・・・

オランダの歴史に学ぶ2

2026年6月6日   岡本全勝

オランダの歴史に学ぶ」の続きです。

司馬遼太郎著『街道をゆく オランダ紀行』(1994年、朝日文庫。新装版が出ています)を本棚から探し出して(このシリーズは捨てませんでした)、読みました。司馬さんの本は、読みやすいですね。もちろん歴史書ではないので、すべてに目配りすることなく、ある視点から、そして現地の風景を織り込みながら、説明してくださいます。先日訪れた風車の残る観光地、キンデルダイクで、咸臨丸が建造されていたことを知りました。

続けて、桜田美津夫著『物語 オランダの歴史 大航海時代から「寛容」国家の現代まで』(2017年、中公新書)を読みました。これは500年の歴史を新書にまとめてあるので、オランダの黄金時代には1章が当てられています。しかし、その後のオランダがたどった歴史がわかりやすいです。マウリッツハイス美術館の位置づけもわかりました。

と書いて、私のホームページを検索したら「オランダの歴史」がでてきました。ああ、読んでいたんだ。私の興味は変わっていないということですね。でも、何も頭に残っていなかったということです。寝る前に布団で読むと、こんなものでしょう。「生産の読書、消費の読書、貯蓄の読書」。実は先日、別の本でもやってしまったのです。肝冷斎に話したら「二度あることは三度ある」と言われてしまいました。

ところが、岩波書店の宣伝誌「図書」6月号に、石井洋二郎さんと國分功一郎さんの読書を巡る対談が載っていて、石井さんの次のような発言があります。
・・・渡辺一夫先生がある本を読み始めたら、途中でラテン語の引用があって、自分の筆跡でフランス語に訳してある、そこで前に読んだことがあると初めて気がついた。博覧強記の渡辺一夫先生でさえそうだと・・・

寺島実郎著『世界認識の再構築─17世紀オランダからの全体知』( 2025年、岩波書店)も興味深そうですが、これはまたの機会にしましょう。

超人は、主体的に考え練習する

2026年6月6日   岡本全勝

5月23日の朝日新聞オピニオン欄、吉井理人・千葉ロッテマリーンズ前監督へのインタビュー「勝手に育った」超人たち」から。

・・・メジャーリーグで活躍する佐々木朗希、大谷翔平、ダルビッシュ有。3投手がアメリカに渡るとき、指導者として携わったプロ野球・千葉ロッテマリーンズ前監督の吉井理人さんは「勝手に育った」と評する。超人に共通する言動とは。その礎となる思考を鍛えるために、周りはどうサポートしたらいいのか。

―「勝手に育った」3投手の共通するものはなんですか。
「好奇心、向上心が強く、自分の頭で考えて工夫して練習する。主体性をもって、自分の意思や判断で物事に向き合うとも言えます。主体性は、言われたままを積極的に取り組む自主性とは明確に異なります」

―とはいえ、主体性は個人の資質によるような……。
「主体的な思考は鍛えられます。ああしろこうしろと他人に指示されるのではなく、自分で考えて取り組むことで、モチベーションが高まる。活躍する選手は自分を客観視できるから、やるべきことがわかるのです」
「まずは自分を知ることが一番のポイントです。三人称で日記を付けてみたり、脳内で自分がコーチになったつもりで自分をインタビューしてみたりすることをお薦めします。『私は』ではなく『吉井は』と俯瞰した視点で振り返る。できたこと、できなかったことが言語化できるようになれば、自ら解決策を見いだせるようになります」

―結果に至ったプロセスに加えて、そのときの感情も振り返ることが大事だそうですね。
「感情によって行動は変わります。気合が入りすぎると力んでしまう。実は家族とケンカしていたという私生活が影響することもある。メンタルをコントロールすることは重要です」
「大谷のすごさは、いつも機嫌良く見えることです。楽しくない日もあると思うんですけど、自分で自分の機嫌をとれる。力を発揮できる精神状態を作れるのです。小さいときから訓練してきたのでしょう。大谷が一人いるだけで、周りの雰囲気がぐっと良くなります。日本が優勝した2023年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)がいい例です」

―主体的な思考を育むために、指導者や保護者ができるサポートはありますか。
「気づきを与えることが全てだと思っています。まずは相手に話してもらう。安心して話してもらう関係を作るために、相手の主張は全肯定します。そのなかで『なぜ』『どうすればよかった』『どうしたい』と質問攻めにします。最初は上辺だけのことしか話せなくても、質問を繰り返すことで一歩ずつ思考が深くなっていきます」
「答えは与えられません。その人のなかにしかないのです。困ったときにヒントを与えたり、提案したりするなかで、自分に合うと思う解決策を選んでもらいます。自己決定を尊重し、成功体験を積み重ねた先に、主体性は養われていきます。もちろん年単位の時間がかかることもあります」

―勉強などでもそうですが、指導者は「答え」をアドバイスしたくなります。
「一時的には効果が出ますが、やらされてもうまくいかないとやる気がなくなり、やめてしまいます。長い目で見るとマイナスです。サポートする側は我慢が必要です。私も駆け出しの頃は、最初は選手に質問していても、最後は自分で答えをまとめていました。その会話を録音して、見直しました」

「32歳でメジャー移籍し、投手コーチから『自分のことを一番知っているのは自分自身だから、君のことを教えてくれ』と言われたのが印象的でした」

補正予算の財源

2026年6月5日   岡本全勝

国の補正予算が審議されています。
その財源について「総額3兆1135億円はすべて赤字国債を発行してまかなう。首相はこの日の衆院本会議で「市中への発行総額を増やさずに対応できるため、国債マーケットに影響を与えることなく実行可能だ」と繰り返した。財務省によると、税収増などにより2025年度の国債発行が計画より3兆円少なく済む見通し。このため、3兆円超の国債を新たに発行しても市場に出回る量は差し引きでほとんど変わらないという理屈だ」とのことです。6月4日の朝日新聞「市場を警戒、財政規律強調 首相「国債発行総額、増やさず対応」 補正予算審議」。

ご存じの通り、財政法では、国債は例外的に発行すると定めています。特例公債法を定めて、その例外をつくっています。
第四条 国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。

一時しのぎなら良いのですが、日本の財政は毎年、多額の国債を発行し、その累積残高も飛び抜けて多くなっています。為政者が考えるべきは、発行額を減らすこと、残高を減らすことでしょう。「今はうまく回っているから大丈夫」という説もありますが、それがどこまで続くか心配です。他方で、南海トラフ地震も想定され、その復興経費を考えると、財政に余裕を持っている必要もあります。

税収増があるから、それを使えば良いという考えも、疑問です。財政法には、次のような規定もあります。
第六条 各会計年度において歳入歳出の決算上剰余を生じた場合においては、当該剰余金のうち、二分の一を下らない金額は、他の法律によるものの外、これを剰余金を生じた年度の翌翌年度までに、公債又は借入金の償還財源に充てなければならない。

基本を切り抜ける知恵を出すことも良いですが、それが続くと基本を放棄したことになります。

早まる採用活動は悪いことか

2026年6月5日   岡本全勝

5月27日の日経新聞に、「採用計画調査から(4)」「早まる就活、6割「悪影響」採用活動、コスト増に疲労感」が載っていました。

・・・日本経済新聞社がまとめた採用計画調査では、2026年春入社の採用活動における早期化や長期化の影響について聞いた。「悪い影響があった」と回答した企業は6割を超えた。学生だけではなく企業にも疲弊が表れている。
26年春入社の面接、試験など選考の開始時期は「24年10~12月」が27.3%と最も多かった。「25年3月」(18.7%)、「25年1月」(12.9%)、「24年7~9月」(9.9%)と続く。
政府は新卒採用の選考活動開始時期について卒業年度の6月1日以降が望ましいとしているが、25年6月以降だったのは5.6%にとどまった。ルールと実態が乖離していることが浮き彫りになった。

早期化・長期化による影響について良しあしを聞くと「悪い影響があった」とした企業が1778社のうち1112社と62.5%を占めた。
具体的な影響(複数回答)では「早期に学生との接点を持ち、自社理解を深めてもらえた」が66.3%と最多だったものの、次に多かったのは「内定辞退防止の負担が大きくなった」で55.2%となった。内々定辞退者の数について「前年より多かった」と答えた企業は3割に上った。優秀な人材を獲得するために早期からの採用活動を有効と考える半面、内定辞退の対応策に頭を悩ませる企業が増えている・・・

でも、採用活動が早まること、企業の負担が大きくなることが問題なのでしょうか。
大学では、通常4年間学ぶのですよね。3年生の夏や秋から採用の面接などをして学生を選ぶということは、学生が身につけた学問を問わないに等しいでしょう。(学問を問わず)優秀な学生と判断して会社が採用したいなら、卒業を待たず、2年生でも3年生でも学年途中で採用すればよいのではありませんか。
良い学生と見込んだら、卒業を待たずに、採用すれば良いのです。それなのに、なぜ卒業まで待つのか。内定辞退の恐れもあるのに。
採用活動が早まることが問題ではなく、卒業証書が形式的価値しか持たず、学んだ内容を問わないという大学教育と、企業の採用基準が問題なのです。