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隠れ教育費

4月6日の朝日新聞別刷り「フロントランナー」は、「隠れ教育費」研究室、福嶋尚子さん・柳澤靖明さんの「学校の「当たり前」を問いなおす」でした。

・・・制服、ランドセル、計算ドリルや国語ワーク。子どもが小中学校に入学すると買わねばならないものは、多岐にわたる。部活動費や、修学旅行費など行事に関わる出費も少なくない。そうした学校にまつわる保護者負担を「隠れ教育費」として、問題提起をしてきた。

なぜそれを買う必要があるのか。購入に至るまで、教職員や保護者らでどんな話し合いがあるべきか。費用はいくらが妥当で、誰が負担するべきなのか――。
憲法26条には「義務教育は、これを無償とする」とある。家庭の経済状況に左右されず、全ての子どもが教育を受けられるようにするためだ。にもかかわらず、文部科学省の「子供の学習費調査」を元にした試算では、公立小6年間では約63万円、公立中3年間では約51万円の保護者負担が発生する。憲法の「無償」はどの範囲で、どう考えたら良いのか・・・

盲点でした。経済成長が始まる前は、家が貧しくて修学旅行に行けない子どももいました。悲しかったでしょうね。

優先順位をつけることは劣後順位をつけること

時間が限られているのに、処理しなければならない仕事がたくさんある場合や、予算や人員が限られているのに、たくさんの要求がある場合。それらの課題に優先順位をつけなければなりません。企業ではひところ「選択と集中」という言葉が流行りました。

「優先順位をつける」「選択と集中」とは、よい響きがある言葉です。でもその裏側に、劣後順位をつけること、切り捨てることが必要になります。それは、切り捨てられる立場の人にとっては、たまったものではありません。「なんで、私が切られるのか」と反発します。

公務員にとって困るのは、議員が特定案件を優先するように求めてくる場合です。不合理な依頼は断る必要があるのですが、時に高圧的に、威圧的な場合もあります。私も何度も経験しました。
私は後輩に「スマートフォンか録音機で、そのやりとりを録音しておいたらどうか」と助言するのですが、場合によっては、さらに激高される恐れがありますね。街頭だと防犯カメラに写るのでしょうが・・・。

自治体賃金、女性平均低く 

3月28日の読売新聞解説欄に「自治体賃金 女性平均低く 男性の8割未満71% 多い非正規 少ない幹部」が載っていました。

・・・都道府県や政令市など主要121自治体の多くで、女性職員の平均賃金が男性の8割に満たないことが読売新聞の集計で明らかになった。女性職員に占める非正規雇用職員の多さと幹部登用の少なさが主な原因だ。都道府県や市区町村は、国と共に女性活躍の旗振り役とされ、改善への取り組みが必要だ。

女性活躍推進法に基づく改正内閣府令で、自治体は2023年度から、賃金格差について公表を義務づけられた。だが大半の自治体はウェブサイトの探しにくい箇所に公表している。
読売新聞は23年8~9月、都道府県と政令市、県庁所在地、東京23区の計121自治体に、22年度の非正規職員を含めた男女間の職員の賃金差と、背景要因などを書面で尋ねた。その結果、71・9%にあたる87自治体で女性の平均賃金が男性の8割に達していないことが分かった。

要因を尋ねた選択回答式の設問に対し、9割近い106自治体が、非正規雇用である会計年度任用職員として働く女性の多さを回答した。次いで半数を超す68自治体が「管理職への登用の少なさ」を選んだ。

会計年度任用職員は地方公務員特有の職種だ。総務省の20年度調査などによると、地方公務員の2割弱(約62万人)を占め、その8割弱が女性だ。
この職種は民間のパートタイムやアルバイトに比べ、休暇制度や福利厚生が充実しているとされる。家庭などを優先したい人には利点があるが、あまり昇給を見込めず、自分の得意分野を生かして働きたい人には物足りない面もある・・・

詳しくは記事を読んでいただくとして。時代が進んだことを実感します。30年前までは、女性は補助的業務に従事し、結婚したら退職、非常勤職員は女性、幹部に女性はいませんでした。1946年に日本国憲法が男女同権を定めたのですが、実態はこうだったのです。日本社会と国民の暮らし、そして意識は、急速に変化しつつあります。まだその途中ですが。

国立公文書館特別展「夢みる光源氏」

国立公文書館で特別展「夢みる光源氏―公文書館で平安文学ナナメ読み!」が開かれています。5月12日まで。

公文書館の展示は、動物園とか博物館と違い、書物なので派手さはありません。その分野に興味のある方でないと、つまらないかもしれません。関心のある方には、面白いでしょうね。
1000年前に書かれた小説、しかも王侯や僧侶でなく女性が書いたものが、後の世に伝わったのです。書庫の奥深く眠っていたのではなく、最初は上流階級に、後には庶民にまで読まれます。手で写していたものから、木版印刷、挿絵入りになります。それを江戸幕府が収集し、明治になると内務省が集めます。これも、不思議ですが。

今回の展示は、「夢」を切り口にしています。昔の人は、夢を大切にした、畏れたのですね。夢に出てきた女性が物の怪になり、憑りついて殺すのです。
源氏物語を通読した人は少ないでしょう。「早わかり、源氏物語」のような解説展示もあります。素人向けには、もっと説明があってもよいですね。外国人向けの解説もあると、喜ばれるでしょう。
近くの皇居東御苑の「三の丸尚蔵館」と一緒に、お訪ねください。東京の真ん中で便利です。しかも無料です。

公文書、政治の介入許すな

3月26日の朝日新聞オピニオン欄に、福田康夫・元首相の「国民のための公文書 歴史の生の記録は国家形づくる石垣、誠意の介入許すな」が載っていました。

・・・「その一つ一つが、国家を形づくっている石垣です」。公文書管理法の生みの親ともいえる福田康夫元首相は、公文書を城の石垣にたとえる。相次ぐ改ざんなどで、その石垣が揺らいでいる。国民共有の知的資源で、説明責任が求められる公文書。適切な管理に最も重要なことは「政治を介入させないこと」だと話す・・・

―なぜ公文書問題に取り組んだのですか。
「国家として歴史の事実の記録をきちんと残していく。それは当然のことです。事実を知ることは民主主義の原点、民主国家の義務です。しかし、その基礎となる法律が日本にはなかった。民主主義国家として恥ずかしいことです」
「米国の公文書館には国の歴史が詳細に保存され、それを国民が容易に見ることができる。国家がどのような歴史を経て今の形になったのか。事実の積み重ねを具体的な生の記録を通じて知ることで、歴史の事実を実感をもって理解してもらうことができる。それが、国民の国家への信頼につながり、対外的な信用も生まれる。その記録の豊富さ、閲覧のしやすさなどに驚かされました。日本にもこういうものをつくらないと、と痛感しました」

――公文書を見ればその国がわかるということですか。
「小さい事実、歴史の記録の一つ一つがお城の石垣のように積み上がって国家を形づくっている。その石垣が公文書です。公文書を通じてその国がどういうものかが読み取れる。その国がどんな歴史を経て今に至ったか、その姿を後世にきちんと引き継ぐ、その基礎となります」

―政治の責任はどうですか。
「大きくいえば、政治の責任です。きちんと記録を残すよう関係省庁に促したのかどうか。記録がないと、後々検証ができません。検証できなければ、教訓を後世にいかすこともできません。今回の裏金問題も同じ構図といえます。なぜ、このようなシステムができあがったのかを解明し検証しないと有効な対策がとれない、と野党が国会で追及している通りです」
「最も極端なケースは、敗戦直後に各省などで資料が一斉に焼却されたことです。戦争責任の追及を恐れた政治指導者が、責任追及を回避するために証拠隠滅をはかろうと指示したものでした」

――第2次安倍政権では、公文書改ざんが明らかになりました。
「事実を正しく記録したものでなければならない。その公文書が偏っていたり、事実と違っていたりしたら、国民にも、対外的にも信用されなくなります。改ざんがいけないのは公文書に限ったことではありませんが」

―財務省の公文書が改ざんされた森友学園問題がそうでした。
「官僚は、上から評価してもらうため、自らの身を守るために忖度して行動しがちです。内閣人事局ができたことで官僚に対する官邸の人事権が強まったこともその傾向を強めています。文書改ざんは過度に忖度したということでしょう。そこには政権が強力で長続きしそうだという判断も恐らくあったと思います」
「政治家が常に心しなければならないのは、権力行使は最低限にとどめなければいけないということです。権力者が長くその地位にとどまることは、決して好ましいことではない。そのことを政治家が自覚すべきです。官僚機構も同じです。要職に長くとどまると、新たな権力構造が生まれやすくなります」

――権力は腐敗すると。
「腐敗しがちだということです」
「中立性、公正性を保つには、公文書館は内閣から独立した存在にすることも改めて考えるべきでしょう。内閣だけでなく、三権に対して強い権限を持つ必要があります。たとえ政府や国家にとって都合が悪いことでも、事実を記録して公開する。それが国家としての信頼につながります。そのためには、政治を介入させないことが何より重要です」