投稿者アーカイブ:岡本全勝

地方の人は歩かない、都市部の半分

2026年10月20日   岡本全勝

10月6日の日経新聞に「歩かぬ地方、都市部の半分」が載っていました。
このことは、私も昔から気になっていました。地方の人は、すぐ近くでも車に乗るのです。車がないと移動できませんし、車を持っているので使うのです。東京は地下鉄などが発達し、車を持っている人も少ないので、歩くのです。かつて、自治省(合同庁舎2号館)から大蔵省まで行くにしても、結構な歩数を稼ぎました。国会議員会館を走り回っていたのは、別の事情ですが。
座りっぱなしの仕事は、足腰を弱くします。私はぎっくり腰にもなりました。今は健康のために、万歩計をつけて歩くようにしています。

・・・1日の平均歩数を都市と地方で比較すると、最大約3700歩の差があることが専門家の研究で明らかになった。約30分の歩行に相当し、住民の健康維持に地域差が生じることが懸念される。国や自治体は歩きやすい靴で通勤する「スニーカービズ」を推し進めるなど改善に乗り出している。
東京大学の鎌田真光准教授らの研究グループが6月に発表した研究結果によると、調査自治体のうち、1日の平均歩数が最少だったのは宮崎県小林市の4026歩。住民は車移動が中心で、歩く機会が少ないとされる。
地域によって歩数の差が生じ、住民の健康状態に影響するとみられる中、これまで自治体ごとに歩数の差を定量的に示した研究は限られていた。

同市は2020年度、歩数に応じポイントがたまる事業を始めたが「健康に無関心な層に届いていない」(市担当者)。25年度の登録者数は市の人口の約5%にとどまる。最多だった東京都豊島区(7750歩)と小林市との差は約3700歩でほぼ2倍。福岡県うきは市(4205歩)や長崎県南島原市(4216歩)なども低水準だった。
研究グループは歩数を自動計測するスマートフォンアプリの利用者データを分析。対象は951市区町村の20〜64歳の現役世代約150万人で、各自治体の平均歩数と、人口密度や道路の接続性など「歩きやすさ」との関係を調べた。その結果、首都圏や近畿などの歩きやすい都市ほど歩数が多く、東北の北部や九州南部など歩きにくいと評価された地方都市では少なかった。

歩数減少は健康上のリスクとなりうる。
厚生労働省は身体活動が不足したり、デスクワークなどで座る時間が長くなったりすると、筋肉や骨といった運動器の障害などのリスクが高まると指摘。腰痛や肩こりなどにより労働生産性に影響する可能性もあるとする。
同省が24年に公表した手引は、歩行と同程度以上の活動を成人は1日60分以上、高齢者は40分以上することを推奨し、歩数に換算すると成人は8千歩以上、高齢者は6千歩以上となる・・・

職場の一員、3種類の歯車

2026年10月19日   岡本全勝

組織の中の一員を、歯車に例えることがあります。
映画「モダン・タイムス」の中で、機械工のチャップリンが巨大な歯車に巻き込まれる場面は有名です。もっともこれは、歯車に巻き込まれるので、機械工が歯車になっているのではありません。時計をはじめ身の回りの機会が電子化されると、歯車を見る機会が少なくなりました。

組織の一員になると、自分が大きな機械の中にある、たくさんの歯車の一つだと思うことがあるでしょう。自分の考えで動くことができず、上司の指示や規則、前例に従って動かなければならないのです。私も若いときに、そう感じました。しかし考えると、歯車にも3種類あると思いました。
一つは、隣の歯車から伝えられた回転を次に伝える歯車で、一連の動きの途中にあります。
二つ目は、ほかの歯車を動かす動力となる歯車です。動きの出発点になります。
三つ目は、動きの最後にある歯車で、その動きが成果として現れます。

三つ目の歯車は、やりがいがありますよね。役に立っていることが見えます。二つ目の歯車も、やりがいがあるでしょう。責任も大きいです。
では、一つ目の歯車はどうでしょうか。錆びついて動きが悪い歯車も、円滑に動く歯車もいます。まずは円滑に動く歯車を目指しましょう。
次に、前の歯車から伝えられた回転をそのまま次の歯車に伝えていては、やりがいがないでしょう。しかし、伝えられた回転を隣の歯車に伝える際に全体の動きを見て、2倍の速さに変えたり、半分の速さに変えたりして機械全体が円滑に動くように操作することは可能です。そう考えると、「言われたとおり」「前例通り」のつまらない歯車でなく、全体の効果を見た歯車を目指すことで、やりがいが出てきます。

歯車は取り替えがききます。その際に、代替品がたくさんあるのではない歯車になりたいものです。

既存企業が防ぐイノベーション2

2026年10月19日   岡本全勝

「既存企業が防ぐイノベーション」の続きです。リチャード・ダッシャー、スタンフォード大学特任教授のインタビュー「日本流のイノベーション」から。

―人材の流動性が低い日本企業の終身雇用は、イノベーションの障害となるのでしょうか。
「外部人材が入りにくいのは事実ですが、終身雇用に裏打ちされた、社員と組織の関係性の強さと持続性は、息の長いイノベーションを生み出す背景でもありました。プロジェクトの進展と共に、チームのメンバーが研究所から事業部に異動し、技術営業やマーケティングなどに回って支える人もいる――といった強みです」

―製造業では、工場などの現場重視も強みとされてきました。これも、破壊的イノベーションを妨げる要因になりませんか。
「トップレベルの意思決定において現場が重視される日本企業の『技術経営』は、世界最高のシステムと評価されてきました。一方で、現場には、年功序列に基づくヒエラルキーも存在します。そして一般に、序列の高い人ほど変化に消極的になりがちです。培った経験と実績があり、やってきたことを変えたくないからです」
「つまり終身雇用や現場重視は日本企業の強みを支えてきた半面、既存事業の維持やリスク回避を優先しがちな面もあります。ですから、しがらみにとらわれずに新しい技術やビジネスモデルで社会の課題を急速に解決するスタートアップも、両方が重要です」
「これまで日本では、大企業に就職するか起業するかといえば、圧倒的に大企業を選ぶ若者が多かった。しかし、それでは革新的なアイデアは失われてしまいます。日本はキャリアの柔軟性があまりにも欠けており、スタートアップを行き来できるキャリアを真剣に考える必要があります。一人一人が、より幅広い選択肢を持つことです。そして大事なのは、もし失敗しても他の道があることです」

―日本には、まだ失敗を減点と捉える傾向もあると感じます。
「シリコンバレーでは、失敗は学ぶための機会と考えます。日本が目指すべきは、この『失敗の再活用』であり、それが人材の流動性のカギにもなる。リスクとチャンスは、同じコインの表と裏なのです」

連載執筆、主題が繰り返される

2026年10月18日   岡本全勝

「連載「公共を創る」を本にすると2」の続きにもなります。

連載を読んでいただいている方は、お気づきのことと思います。同じ話題が、しばしば出てきます。官共業三元論、社会的共通資本、この国のかたち、成熟社会の課題・・・。
全体の構成は執筆前に考えてあって、それに従って文章を書いています。しかし、主題を念頭に、さまざまな角度からそれを説明しているので、どうしても同じ話題が出てくるのです。単行本なら「××ページ参照」と書けば省略できるのですが、連載の場合はそうもいきません。
さらに連載が7年にもなり、同じ話題なのに状況が変わっているものもあります。例えば労働の形の変化で転職が増えたことです。

他方で、「これは以前にも書いたよな」と思っても、探すのに苦労する場合があります(反省)。
4月から「これまでの振り返り」を書いていて、「違った角度からの同じ話題の説明」が明確になりました。

既存企業が防ぐイノベーション

2026年10月18日   岡本全勝

10月2日の朝日新聞オピニオン欄、リチャード・ダッシャー、スタンフォード大学特任教授のインタビュー「日本流のイノベーション」から。
「日本に破壊的イノベーションを生む力がないわけではなく、むしろ産業基盤が強固で、既存のビジネスが破壊されるのを防いできたのです。最終的には、外部から破壊をもたらす者が現れることになります。日本企業も、既存事業の外側に新たな価値を見つける必要があります」が的を射ていると思います。

・・・かつて日本企業は技術革新(イノベーション)を次々と起こし、世界をリードした。だが、近年は苦戦が目立つ。もはや技術大国ニッポンは過去の栄光なのか。イノベーションの中心地である米国の西海岸シリコンバレーに詳しく、日本企業も長年研究してきたリチャード・ダッシャーさんに日本の課題を聞いた・・・

―そもそもイノベーションとは何でしょうか。
「新たな価値の創造によって、変化に対応する、あるいは変化を先取りすることです。人類の歴史上、変化への対応の仕方は『戦う』と『逃げる』、そして『革新する(innovate)』の三つでした。古代人は、地球上で最も強くも速くもない、弱い存在だった。だからこそ、生き残るために道具や武器を発明してきました」
「イノベーションは『破壊的』と『漸進的』の二つに分けられます。たとえば、対話型の生成AI『ChatGPT(チャットGPT)』の登場は、『検索』という人々の行動様式を変えてしまう破壊的なイノベーションです。日本企業ではソニーのウォークマン、ホンダのカーナビ、デンソーウェーブのQRコード、NTTドコモのケータイ絵文字も、世界を変えた破壊的なイノベーションでした」
「ただ本来、日本企業が得意なのは、徐々に改良を重ねる漸進型のイノベーションです。しかも、極めて長期的に取り組む。たとえば、軽量で丈夫な東レの炭素繊維は、航空機や車に使われるようになるまで研究開発に30年もかけています。米国企業ならとっくに打ち切っており、あり得ない。戦後の日本の技術開発は終身雇用に支えられ、漸進型イノベーションを主導してきたのは大企業でした」
「こうしたイノベーションの原動力は、既存事業に付加価値を与え続けることです。日本に破壊的イノベーションを生む力がないわけではなく、むしろ産業基盤が強固で、既存のビジネスが破壊されるのを防いできたのです。最終的には、外部から破壊をもたらす者が現れることになります。日本企業も、既存事業の外側に新たな価値を見つける必要があります」

岩崎薫里・日本総研上席主任研究員の談話
・・・なぜ日本では破壊的なイノベーションが起きないのか。そもそも日本は安全で便利な社会で、何かを劇的に変える必要性があまりないのです。「不便さ」は、破壊的なイノベーションの土壌になる。東南アジアでフィンテック(ITを使った金融サービス)が急成長したのも、「ATMが近くになく、隣の島まで行かなきゃいけない」といった不便さが背景にありました。
人材の多様性も重要です。日本には「奇人変人」も、もっと必要です。とっぴな発想は失敗も多いけれど、成功すると破壊的イノベーションにつながる可能性があります・・・