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生き様-明るい課長講座

やる気を引き出す励まし話法

2月27日の日経新聞夕刊に、日本ペップトーク普及協会 教育普及部副部長・乾倫子さんの「やる気を引き出す励まし話法」が載っていました。部下育ての基本は、しかるより褒めるですが、子育ても同じですよね。詳しくは記事をお読みください。

・・・子どもにしてほしいことをうまく伝えるにはどうしたらいいか。ポジティブな言い方で相手のやる気を引き出す米国生まれの話法がある。スポーツ指導のほか教育やビジネスの現場でも活用されるこの話法を家庭で実践し、子どものやる気を引き出す方法について、日本ペップトーク普及協会の教育普及部副部長、乾倫子さんの助言を紹介する。

この話法は「ペップトーク(Pep Talk)」と呼ばれ、直訳は「励ましの言葉かけ、応援演説」という意味だ。米国発祥で、もともとはスポーツの試合前に監督がロッカールームで選手を励ますための短いスピーチのことを指す。
2023年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)決勝戦の前に大谷翔平選手がチームメートに投げかけた「憧れるのをやめましょう。(中略)勝つことだけを考えていきましょう」という言葉は、典型的なペップトークだ。

ペップトークは次の4つのステップで進める。
【ステップ1=受容】事実や相手の感情を受け入れ、共感を示す。子どもの気持ちを聞く際はイエス・ノーで答える質問ではなく、「今どんな気持ち?」「何を頑張りたい?」など自分の言葉で答えられる質問をする。

【ステップ2=承認】次にとらえ方をポジティブに変換する。コツは「ない」ものでなく「ある」ものに目を向けること。例えば雨天のとき、「外で体育はできないね」とネガティブにとらえず、「お気に入りの傘が使えるね」とポジティブな面に目を向ける。

【ステップ3=行動】してほしいことを分かりやすく伝える。「走らないで」と伝えると、子どもの脳内には走る場面が浮かんでしまうので、「ゆっくり歩こう」などとしてほしいことをシンプルに伝える。

【ステップ4=激励】その上で子どもの性格に応じた言葉で励ます。「困ったら手伝うからね」と安心感を与える言い方や、「○○ちゃんなら絶対できるよ! 全力でやってみよう」と背中を押す言い方など、子どもが言ってほしいと思う言葉を選ぶのが効果的だ・・・

NTT西の情報漏洩、自治体8割「流出元知らず」 

先日紹介した、西日本電信電話の元社員による個人情報持ち出し事件「情報不正持ちだし、対策の不備と組織文化」。3月4日の日経新聞が、被害にあった自治体の8割が、漏洩元の企業を把握していなかったこと、知っていたのはゼロだったと伝えています。「NTT西系漏洩、自治体8割「流出元知らず」

・・・NTT西日本子会社から900万件超の個人情報が流出した問題を巡り、被害にあった自治体の8割超が漏洩元の企業を把握していなかったことが、日本経済新聞の調査で分かった。情報を取り扱う業者の監督は法律などで義務付けられているが、昨年10月の問題発覚後も実態を「把握すべきだった」と回答したのは3割にとどまった・・・
・・・同社に住民情報の取り扱いを委託した自治体側の対応についても、専門家は「個人情報の管理が企業任せになり、委託先の監督を義務づける法の趣旨が骨抜きにされている」と指摘する・・・

詳しくは原文をお読みください。皆さんの自治体、あなたの部署では、大丈夫ですか。

情報不正持ちだし、対策の不備と組織文化

3月1日の各紙が、西日本電信電話の元社員による個人情報持ち出し事件の調査結果を報道していました。約930万件の個人情報を持ち出し、名簿業者に売っていた事件です。西日本電信電話株式会社の発表(2月29日)

・・・NTT西日本の子会社の元派遣社員が約930万件の個人情報を不正流出させた問題で、NTT西の森林正彰社長は29日、3月末に引責辞任すると表明した。社外の弁護士らを入れた調査委員会の調査では、情報流出の確認を求めた顧客への虚偽回答が判明。グループ全体の企業統治に課題が突きつけられた・・・(朝日新聞「NTT西社長、引責辞任 個人情報928万件流出 調査委「重大な不備」」

もちろん不正に持ち出した社員が悪いのですが、それを防げなかった組織、顧客から指摘を受けて行った調査の杜撰さが明らかになっています。そして、それを生んだ組織文化(社風)も。
調査報告書は、280ページに及ぶ大部なものです。社員に学習させるためにも、要約版をつくってほしいです。要点は次のようなものです。日本を代表する情報通信企業がこのような実態にあることは、唖然とします。

1 個人情報不正持ち出しを防ぐことができなかったことについて(23ページ、26ページ、29ページ)
・サーバーにアクセスするアカウントが共有されていた
・外部記録媒体への書き出しが禁止・制限されているのに、私有USBへの書き出しがされていた
・情報漏洩を監視するためログを定期的に確認することになっていたのに、行われていなかった
・犯罪を行った社員は上長による監視がなく、野放し状態

2 顧客の依頼で行われた社内調査での隠蔽(69ページ以降)
・USBで情報が持ち出されたのに、USBポートが「ない」と回答
・暗号化ソフトは未整備なのに、「整備済み」と回答
・ログを改変し隠蔽した上で、「問題なし」と回答

3 社内調査の評価(58ページ)
・社内調査では、調査担当者たちは不正持ち出しを発見することすらできておらず、問題点の見直しも行わず、不正持ち出しの継続を許していた。(本委員会は、社内調査担当者が隠蔽したのではないかと調査したが)隠蔽より問題がある。
・調査とは似ても似つかない杜撰な作業。事なかれ主義的対応を繰り返し、果てには虚偽回答まで至ったことは唖然とする

4 組織文化
・情報セキュリティ社内規則が守られていない(29ページ)
・自主点検において不正確な報告がなされている(35ページ)
・外部からの不正侵入への意識はあるが、内部不正による情報漏洩リスクへの意識が希薄(45ページ)
・顧客の依頼で行われた社内調査は、上司への状況報告(エスカレーション)が行われていなかった(67ページ)
・自主点検結果には○をつけなければいけないという「無謬性への執着」があった(182ページ)
・自己の責任範囲でなければ積極的に解決にあたらないという「自分事として捉えない行動様式」「前例踏襲」「事なかれ主義」「現場任せ」(182ページ)

仕事をしない大企業幹部

半導体大手エルピーダメモリの社長を務めた坂本幸雄さんが亡くなられました。2月28日の日経新聞、西條都夫・編集委員の「坂本幸雄氏死去 世界標準の半導体プロ」に、次のようなことが書かれています。

・・・「知る人ぞ知る存在」から、一躍脚光が当たったのが2002年に経営危機にひんしたエルピーダメモリに再建の切り札として招かれ、社長に就任した時だ。同社はもともとNECと日立製作所のDRAM事業が統合して発足。その後、三菱電機の同事業が加わり、寄り合い所帯感が強かったが、坂本氏の剛腕で組織に心棒が通った。

「大企業出身の幹部は何がダメといって、まず仕事をしない。朝来るとお茶を飲みながら同僚と雑談したり、新聞を読んだりする。外資系の長い私にとって、日本企業にはこういう手合いが一定数いて、しかも組織のなかで比較的大きい顔をしていることが新鮮だった」と後々振り返った・・・

皆さんの職場にも、こんな上司がいませんか。

管理職が管理職の仕事をしない

職場の悩みは人間関係」の続きです。豊田自動織機の調査報告書では、次のようなことも指摘されています。豊田自動織機「調査報告書(公表版)」2024年1月29日

・・・当委員会のヒアリングにおいて、これらの管理職は、「設計グループ出身であり、適合業務の経験がなかったため、適合業務に詳しい適合グループの担当者らや高浜工場の担当者を信頼し、劣化耐久試験に関する業務を一任していた。」、「船舶用エンジンの出身なので、フォークリフト用エンジンのことは分からない。」、「適合業務に関する知識や経験がなかったため、適合業務の担当者に対して、日程に関するコメントや設計者の視点からのコメントはしていたものの、基本的には担当者に劣化耐久試験を含む適合業務を一任していた。」等と述べ、自身が経験してこなかった業務やエンジンについては、知見・経験がないため、管理職としてのチェック機能を果たせていなかったと述べている。
しかし、管理職のこれらの発言は、管理職としての責任を全く自覚していなかったことを自認するに等しいものである。
管理職が自らの所掌する業務を全て担当者として経験することは、むしろ稀である。その上で、管理職としては、所掌する業務の基本的な知識や管理上の要諦を身につけ、部下からの報告の内容に耳を傾け、問いを発するなどして問題の有無の発見に努め、適正な業務執行がなされるよう管理する必要がある・・・(169ページ)

「管理職のこれらの発言は、管理職としての責任を全く自覚していなかったことを自認するに等しいものである」という指摘は、厳しいですね。しかし、指摘の通りでしょう。
「管理職が自らの所掌する業務を全て担当者として経験することは、むしろ稀である。その上で、管理職としては、所掌する業務の基本的な知識や管理上の要諦を身につけ、部下からの報告の内容に耳を傾け、問いを発するなどして問題の有無の発見に努め、適正な業務執行がなされるよう管理する必要がある」とは、当然のことです。
これまでは「部下に任せる上司」が、よい上司と考えられてきました。しかし、それでは、いてもいなくても一緒です。