カテゴリーアーカイブ:明るい課長講座

「働かぬ万年課長」を見限る中堅

2026年1月25日   岡本全勝

2025年11月28日の日経新聞「惑う30代 成長の盲点(下)」「「働かぬ万年課長」を見限る中堅、JTCに別れ 昭和型雇用が阻む成長」から。

・・・「やっぱこの会社、ダメだわ」。2024年12月、大手電機メーカーの主任だったエンジニアの男性(34)は11年働いた会社を辞めた。
誰もが知る大企業。だが年功序列の企業風土が染みつき、出世も昇給も入社順だった。懸命に残業をこなし、成果を上げる自分より「働かない万年課長」のほうが給料が高い。成長機会を求めて会社を去る優秀な同僚を何人も見送ってきた。
決定打は上司の一言だった。会社が抜てき人事を可能にする制度を導入した矢先、「俺はそういう人事はやらない」と飲み会の席で言い放った。「失敗さえしなければいい上司と、残業しない後輩。そのはざまで頑張ってきたのに、もう限界」
転職活動は2週間で終わった。経験が評価され、転職先のIT企業が提示した年収は前職より300万円多い1100万円超だった。「中堅社員は追い詰められて転職していくのに、会社は気づこうとしない」と訴える。

IT転職支援のレバテックによると、30代の転職希望者は25年までの5年間で1.75倍に増えた。要因の一つが硬直的な人事制度だ。同社の調査で30代の転職理由の上位は「収入アップが見込めない」「スキルアップが見込めない」「残業時間が多い」だった。
年功序列や終身雇用に代表される日本型雇用を続ける企業をJTC(ジャパニーズ・トラディショナル・カンパニー)と呼ぶ。多様な働き方や貢献に即した報酬が求められる時代の変化に多くの企業が対応できていない・・・
番外編

たわいのない会話の重要性

2026年1月24日   岡本全勝

「たわいのない会話」とは、つまらない話とか雑談です。その話の内容はつまらないので、なくても良い話です。しかし、職場では、重要な機能を持っています。
もちろん、職場は、仕事をして報酬を得るために行くところです。嫌な仕事でも、生活のためには行かざるを得ません。他方で、仕事は自己実現の場でもあります。やりがいを与えてくれます。機能を考えれば、職業は報酬とやりがいを得る場です。しかし、人間はそのような目的だけでは生きていません。

一人で誰とも会話せずに仕事をし、一日を送る。できないことはないでしょうが、しんどいでしょうね。新型コロナウイルス感染拡大の時を思い出してください。学校も同じです。勉強をするために(と給食を食べに)行くところですが、一番の楽しみは友人との会話だったでしょう。
人は社会的動物です。他者と交わって、生きています。その場合でも、面識のない人との対話(初めてのお店)と、知っている人との対話があります。前者は程度の差はあれ緊張します。後者の場合も、仕事の案件で緊張する場合もありますが、「たわいのない会話」は緊張をほぐします。「ねえねえ聞いてよ」と言いたいときがあります。話すと、相手は「な~んだ、しょうむな」と笑いますが、それで心がほぐれるのです。「そんな無駄口をきくな」というような職場だと、落ち着いて仕事できません。

「おはようございます」は、内容としては意味のない発言ですが、これが相手との関係確認になり、その場の人たちの「輪」に入る入場券です。職場では、上司や同僚と一緒に仕事をしています。挨拶と会話は、人間関係を確認する重要な行為です(かつては、男性は喫煙場所で、女性は洗い場で、盛り上がっていました)。そこから、仕事の相談を切り出すこともできやすいです。難しく言うと「心理的安全性」ですが、私たちの言葉では「風通しのよい職場」です。
もっとも、無駄口ばかり叩いて仕事をしないとか、周りの迷惑になったりしたらダメですよ。
職場は仕事だけの場ではない」「面談が社員の安心感を高める

ストレスチェックの活用半ば

2025年11月8日   岡本全勝

10月28日の日経新聞夕刊、「ストレスチェック、業務改善に生かせてますか? 専門家と連携で効果」から。

・・・従業員にかかる心理的な負荷の状況を調べるストレスチェックの活用が道半ばとなっている。高いストレスを抱えていると判定された従業員のうち、医師との面接を受けた人は3%に満たない。面接の有効性に疑問を持つ人がいるほか、職場環境の改善に十分つなげられていない現状も浮かぶ。一部の企業は専門家と連携した対応を進める。
ストレスチェックは労働者のメンタルヘルスの不調を未然に防ぐため、アンケートを通じてストレス状況を把握し、労働環境の改善につなげる制度だ。これまで従業員50人以上の企業が義務化の対象だったが、今年の通常国会で成立した改正労働安全衛生法によって今後はすべての企業に広がる。

メンタルヘルス対策は企業にとって重要な経営課題となっている。厚生労働省によると2024年度に仕事上のストレスによる精神障害で労災と認められた人は6年連続で過去最多となり、初めて1000人を超えた。
ストレスチェックで高ストレスと判定された場合、本人からの申し出があれば医師による面接指導を実施する。企業側は医師の助言を踏まえて従業員の業務負担を減らし、職場環境の改善につなげることが望ましいとされる。
しかし活用は十分に進んでいない。大手IT企業で働くAさん(30)は毎年ストレスチェックで高ストレスと判定されているが、産業医の面接には行っていない。「会社に高ストレス判定がばれると不利益がありそうだし、周りも高ストレス判定ばかりで何の意味があるかわからない」と懐疑的だ。

全国労働衛生団体連合会による2024年の分析によると、高ストレスと判定された人のうち実際に医師面接を受けた人は2.9%だった。面接によって高ストレスであることが事業者側に知られてしまうことを懸念し、Aさんのようにためらう人が多い。
厚労省の調査によれば、メンタルヘルス対策を実施している企業の割合は50人以上の事業所で9割を超える。ただ職場環境の改善効果を労働者が実感できていないことが、ストレスチェックの活用が進まない背景にある。
みずほリサーチ&テクノロジーズが厚労省の委託を受けて行った調査によると、ストレスチェックを通じて職場環境が良くなったと認識している労働者は2割にとどまる。産業医科大学の岩崎明夫非常勤助教は「ストレスチェックをどう活用したらいいか分からず、ただのアンケート調査になってしまっていることも多い」と話す・・・

幹部の役割、業務の分別

2025年11月3日   岡本全勝

管理職や幹部になると、部下だったときと異なった「仕事」が出てきます。その一つが、たくさんある仕事について優先順位を付けることです。どの仕事から急ぐか。自分でするか部下に任せるか、任せるとしたらどの範囲までか。誰に、どの仕事を任せるかなどです。

部下も、与えられたたくさんの仕事の中で、優先順位をつける必要があります。しかし、それは上司と相談できますし、処理しきれないときは「もう無理です」と言うことができます。

それに対して管理職は、はるかに多くの仕事を部下職員に割り振らなければなりません。それらの仕事の作業量の多さ、難しさ、急ぎの度合いを、判断しなければなりません。単純に急ぎの案件と締め切りまでに余裕がある案件の比較なら簡単ですが、重要度の比較が難しい案件に、順位をつけなければなりません。他方で、各職員の抱えている仕事量や各人の能力を見極めなければなりません。
これは、有能な部下の延長にはない能力です。「鬼軍曹」の失敗は、『明るい公務員講座 管理職のオキテ』でお教えしました。

そのような職場内での検討とともに重要なのが、上司や関係先といった外部との相談と調整です。
職場内での検討が行き詰まったとき、抱えている案件を先送りできるかや、「手付け」「時効中断」(ひとまず未完成で提出し、完成を待ってもらう)で許してもらえるかを、その人たちと交渉しなければなりません。
これが、管理職の重要な役割なのです。
「調子の良い管理職」は外面が良く、幹部や取引先に良い顔をして、たくさんの仕事を引き受けてきて、それを部下に押しつけます。そして部下職員が行き詰まっても、幹部や取引先に掛け合ってくれないのです。

電話が怖いを乗り越える

2025年10月31日   岡本全勝

10月12日の朝日新聞オピニオン欄「電話が怖い」から。

電話に苦手意識を持つ人は、どのような心構えで向き合えばいいのでしょうか? 約15年間コールセンターで働き、電話応対コンクール全国大会で優勝した経験がある「ケーブルテレビ」(本社・栃木市)カスタマーサポート担当課長の三沢教子さんに、会話を円滑にする電話応対術を聞きました。

――電話が怖いと思ったことはありますか?
「当然あります。今もドキドキしながら緊張感を持って対応しています。うまく説明できる自信がないとか、クレームに発展してしまったらどうしようとか。でもそうした不安は、相手に対しての謙虚さの表れでもあると思います」

――どうすれば克服できるでしょうか。
「電話応対の基本技術を身につけることが何よりも大事だと思います。名乗りから始まって、相づちをちゃんと打つこと。私たちは『笑声(えごえ)』と表現していますが、笑顔であることが伝わるような声で話すこと。適切にお礼やおわびを言う、復唱する、寄り添う姿勢を示すこと。これらをしっかり身につければ、相手のトーンや言葉に乗る感情が柔らかくなる瞬間が見えてきます」
「基本技術は自分自身を守る『武器』になります。何のよろいも武器もなく、丸腰の状態で『とりあえず電話を取れ』と戦いに臨まされたら、弾があたって傷つけられ、誰だって『電話が怖い』『逃げたい』と思うでしょう」

――敬語や丁寧な言葉遣いが正しく使えず、電話に苦手意識がある人へのアドバイスは?
「まずは本やインターネットなどで情報収集をして、電話での応対にふさわしい言葉を知っておくことです。また、お客様から『間違った日本語だ』と指摘をいただいたら、それをスルーしないこと。私たちは、それは自分たちがスキルアップするために必要なものだと受け止めています」
「例えば『なるほど』は相手に対して失礼にあたることがある。『勉強になります』『私も同じように思います』が適切ですね」

――急にかかってきた電話だと、用件も、相手が誰かもわからないので不安を感じる、という人への心構えを教えてください。
「相手や用件がわからないからこそ、基本を押さえることが大事です。相手に安心してもらえるようなトーン、笑声で会話をスタートさせることが重要です」
「具体的には、私は電話を受ける前に口角を上げるようにしています。身ぶり手ぶりが伝わらない分、ウェルカムな気持ちを表すために、笑声を崩さずに話します」
「また、実際にわからない内容のことを尋ねられたときのために、わからないなりのフレーズをおぼえておくことです。『間違いがあってはいけませんので担当に確認いたします』など、ポジティブな表現に言い換えましょう」