カテゴリーアーカイブ:社会の見方

「欧米に学べ」「アジアに遅れるな」2

2026年9月5日   岡本全勝

「欧米に学べ」「アジアに遅れるな」」の続きです。
櫻井泰典・前自治体国際化協会シンガポール事務局長が、月刊『地方財務』に「シンガポールの公共政策」を連載しています。8月号で17回になります。小さな国家であり、建国から半世紀あまりの国ですが、1人当たり所得では日本よりはるかに高い国です。
条件に恵まれない国が、どのように豊かな国になったか。日本が学ぶことも多いようです。ところが、日本では欧米には大きな関心を持って、事例を紹介するのですが、アジア各国についてはそうでないようです。

最近の連載では、多文化共生政策(2026年5月号)と、製造業振興(6月号)が勉強になります。
多民族で多宗教、多言語。建国時にはその対立で暴動も起きています。人種対立や宗教をあおる行為が法律で禁止され、選挙や住宅などで調和を進める政策が取られています。
小さな都市国家で面積も人口も限られているのに、製造業が強いのです。生産物の内容は、時代とともに変化しています。それに成功したのです。

人工知能を使って気軽に文学賞に応募

2026年9月5日   岡本全勝

8月17日の日経新聞に「AI小説が文学賞に殺到 増える選考コスト、公募新人賞は存続できるか」が載っていました。
・・・今年に入って、どこの文学賞も応募が急増している――。出版関係者らがそんなささやきを交わしている。人工知能(AI)を使って気軽に大量の小説を出力できるようになった結果、公募新人文学賞の存続が危うくなりかねない事態を招いている。

「いくらなんでも多すぎる」。早川書房編集本部シニアエディターの塩澤快浩氏は目を見張った。今年3月末に応募を締め切った「第14回ハヤカワSFコンテスト」の応募点数は1012点。例年400点前後で推移していたが、突然、倍増した・・・

応募が増えることはありがたいことですが、選考にかかる負担が増えること、作家を発掘することが難しくなるなど困ったこともあるようです。人工知能が書いたのかどうか、選考委員も試されます。

「欧米に学べ」「アジアに遅れるな」

2026年9月2日   岡本全勝

明治以来日本は、多くの面で「欧米に学び、追いつけ追い越せ」を国是としてきました。国民の努力によって、特に高度経済成長で経済的に追いつき追い抜き、産業、教育、行政などでも追いついたと思いました。もちろん「輸入し揃えた」のは制度などで、運用は異なっていることも多かったです。

ところが、バブル経済崩壊後の長期停滞で経済が停滞し、他方でアジア各国の追い上げによって、追いつかれ追い抜かれました。すると、次の標語は「アジアに遅れるな」でしょうか。
輸出額、韓国と台湾に抜かれる」「電柱王国日本」「ビッグマック指数

福井ひとし氏の公文書徘徊15

2026年9月2日   岡本全勝

『アジア時報』9月号に、福井ひとし氏の連載「一片の冰心、玉壺にありや?―公文書界隈を徘徊する」第15回「発車オーライ!──日本バス史点描」が載りました。

今回は、バスについてです。よくこんな話題を考えますね。鉄道ファンは多いですが、バスは・・・。
路線バスは、戦前は県庁(国の出先機関)の認可なので、多くの資料は県に、あるいは引き継いだ地方運輸局にあるのでしょうか。今回の記事は、国に残っている公文書を基に調べています。
冒頭に出てくる「田舎のバスはおんぼろくるま~」という歌は、私の子どものころに歌いました。覚えていた歌詞は違っていましたが。
9月20日がバスの日とは、知りませんでした。1903年のこの日に、乗り合いバスが初めて走ったのだそうです。京都でです。

人工知能データセンターは電気の缶詰

2026年9月1日   岡本全勝

8月16日の読売新聞に、大塚隆一・編集委員が「データセンター 重工業化加速」を書いておられました。

・・・人工知能(AI)向けの大規模データセンターが次々と建てられている。産業史上で屈指の巨額投資も相次ぐ。AIデータセンターとはどんな施設なのか。なぜ大量の電気と水が必要なのか。建設ラッシュの先には何があるのか。インフラ(社会・産業基盤)の歴史も踏まえて考えてみた。

数千のラックが並び、その棚には計数十万個もの画像処理半導体(GPU)が収まる。GPUは猛烈な計算で二つの仕事をする。
一つは大量のデータからAIモデルを作る「学習」。もう一つはチャットGPTのような完成したモデルを使い、利用者の質問への回答を生成する「推論」だ。その際にGPUは大量の電気を使い、大量の熱を出す。
米エヌビディアの最新GPUである「B300」の場合、本体は手のひらに収まるほど小さいのに電気ストーブ以上の電力を消費する。この電気エネルギーはほとんどが熱として放出される。
GPU72個が入るラックはどれほど熱くなるのか。ラック内部は衣料品店の試着室を縦に二つに割ったほどの広さ。図の右側の計算が示す通り、その空間に電気ストーブ100台分の熱が発生する。
そのうえ発熱はわずか数平方センチほどのGPUに集中する。エアコンのような「空冷」ではGPUは焼き切れかねない。だから大量の水でがんがん冷やす。この冷却にも大量の電気が使われる。

現時点で最大規模のAIデータセンターは米スペースXがテネシー州に建設した「コロッサス2」だ。最大消費電力はGPUなどのIT関連機器だけで約1ギガ・ワット。これは原発1基分の電力に相当する。
1施設当たりでこれほどの電力を使う産業はほとんどない。「電気の缶詰」とされるアルミニウムの精錬工場に迫る水準だ。

ここまで来ると重厚長大産業や重工業と肩を並べるレベルだ。もはや単なるネット企業ではない。
重厚長大産業は文字通り、鉄鋼や造船など重くて大きいものを作る。一方、IT業界が扱うデータは重さも大きさもゼロだ。個々の計算などに要する電気は微々たるものだが、処理量の激増で電力消費は無視できなくなってきた・・・