11月20日に、連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第241回「政府の役割の再定義ー行政改革の成功に伴う負の遺産」が発行されました。新自由主義的改革の功と罪について議論しています。
いまだに政治家が「小さな政府」や「身を切る行政改革」を主張し、本来議論すべきこの国の将来像、国民に必要な政策とその優先順位などを議論しないのは、行政改革が成功したことの負の遺産でしょう。国鉄民営化に始まり、選挙制度改革、中央省庁改革、地方分権改革、各種の規制改革などが、反対派の抵抗を乗り越えて実現しました。それは、有識者と国民に達成感をもたらしました。そして、日本の再生と発展はこの延長線上にあると思い込んだのです。
さらに「小さな政府」論を続けたことの大きな罪は、最も大きな社会の課題である経済の停滞と社会の不安に取り組むどころか、それを拡大し長引かせたことです。経済停滞からの脱却のために、企業は「選択と集中」という事業の縮小、従業員数の削減、非正規化、給与の据え置きを進めました。しかし、その目的を達した後も、引き続き縮小を続けたのです。それでは、消費も拡大せず、経済も社会も発展しません。河野龍太郎・BNPパリバ証券経済調査本部長著「日本経済の死角」(2025年、ちくま新書)は、この点を明快に分析しています。
経済停滞には、需要と供給の両面の理由があるのでしょう。企業が設備投資を控え、事業を拡大しなかったことは、供給面です。他方で、需要の面では国民の所得が増えなかったことです。河野氏の著書は、この需要の面からの説明です。政府も、国・地方を通じて行政改革を進め、職員数を削減し、給与を据え置き、経済の縮小に手を貸したのです。また、少ない公務員を削減したことで、現場では悲鳴が上がっています。
企業は人件費を削減するために、正規労働者を非正規労働者に置き換えました。非正規労働者は、正規労働者に比べ、給与などで低い処遇に置かれています。この格差は、社会の不安と分断を生んでいます。「結婚できない、子どもを持てない」という若者の悲鳴は、社会全体の不安につながっています。社会の不安を減らし、国民の間の分断を避けるには、雇用格差を減らすことが緊要だと思われます。
麻生太郎内閣では、日本の目指す国家像と社会の姿として「安心社会」を掲げ、「安心社会実現会議」で検討した結果を「安心と活力の日本へ」として公表しました。暮らしの安心の中心は、社会保障制度ではなく、雇用です。社会保障は、安心できる生活ができなくなったときに救うものです。