カテゴリーアーカイブ:著作と講演

千葉県町村議長会で講演

2025年11月21日   岡本全勝

11月21日は、千葉県町村議長会での講演に、千葉市に行って来ました。
主題は「2040年、地域と役所はどうなるか~日本は転換中」としました。
日本全体での人口減少と東京一極集中、長期経済停滞、雇用格差、働き手不足と外国人労働者の増加など、地域社会はこれまでにない課題を抱えています。では、今後どのようになるのか。かなりの確実性を持って言える部分と、不確実なものがあります。それら課題を嘆いているのではなく、改善していかなければなりません。

連載「公共を創る」で主張しているように、長い歴史で見ると、日本は大きな曲がり角にあります。
1 長い弥生時代の終わり=地域の暮らしの変化。昭和後期の経済発展による、稲作と農村の暮らしの終わり。
2 長い明治時代の終わり=行政と経済手法の変化。経済発展の達成による、欧米を手本にした発展の終わり。
3 長い昭和時代の終わり=働く女性が増えたことによる、家族と働き方の大変化。
これらを基に、停滞から再生へ転換するために、どう考えるべきかをお話ししました。

連載「公共を創る」第241回

2025年11月20日   岡本全勝

11月20日に、連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第241回「政府の役割の再定義ー行政改革の成功に伴う負の遺産」が発行されました。新自由主義的改革の功と罪について議論しています。

いまだに政治家が「小さな政府」や「身を切る行政改革」を主張し、本来議論すべきこの国の将来像、国民に必要な政策とその優先順位などを議論しないのは、行政改革が成功したことの負の遺産でしょう。国鉄民営化に始まり、選挙制度改革、中央省庁改革、地方分権改革、各種の規制改革などが、反対派の抵抗を乗り越えて実現しました。それは、有識者と国民に達成感をもたらしました。そして、日本の再生と発展はこの延長線上にあると思い込んだのです。

さらに「小さな政府」論を続けたことの大きな罪は、最も大きな社会の課題である経済の停滞と社会の不安に取り組むどころか、それを拡大し長引かせたことです。経済停滞からの脱却のために、企業は「選択と集中」という事業の縮小、従業員数の削減、非正規化、給与の据え置きを進めました。しかし、その目的を達した後も、引き続き縮小を続けたのです。それでは、消費も拡大せず、経済も社会も発展しません。河野龍太郎・BNPパリバ証券経済調査本部長著「日本経済の死角」(2025年、ちくま新書)は、この点を明快に分析しています。
経済停滞には、需要と供給の両面の理由があるのでしょう。企業が設備投資を控え、事業を拡大しなかったことは、供給面です。他方で、需要の面では国民の所得が増えなかったことです。河野氏の著書は、この需要の面からの説明です。政府も、国・地方を通じて行政改革を進め、職員数を削減し、給与を据え置き、経済の縮小に手を貸したのです。また、少ない公務員を削減したことで、現場では悲鳴が上がっています。

企業は人件費を削減するために、正規労働者を非正規労働者に置き換えました。非正規労働者は、正規労働者に比べ、給与などで低い処遇に置かれています。この格差は、社会の不安と分断を生んでいます。「結婚できない、子どもを持てない」という若者の悲鳴は、社会全体の不安につながっています。社会の不安を減らし、国民の間の分断を避けるには、雇用格差を減らすことが緊要だと思われます。
麻生太郎内閣では、日本の目指す国家像と社会の姿として「安心社会」を掲げ、「安心社会実現会議」で検討した結果を「安心と活力の日本へ」として公表しました。暮らしの安心の中心は、社会保障制度ではなく、雇用です。社会保障は、安心できる生活ができなくなったときに救うものです。

国際協力機構「強靭な国・社会づくり」講師

2025年11月18日   岡本全勝

11月6日は、国際協力機構の「強靭な国・社会づくり」の講師に行って、「日本の発展を支えた行政機構」を話してきました。
参加国は、ボスニアヘルツェゴビナ、ブルキナファソ、エチオピア、パキスタン、フィリピン、ソマリア、南スーダン、スーダン、ウガンダの9か国です。
東京での座学研修のほか、広島と東北に現地視察が組まれています。座学研修企画には私も参加し、「日本の戦後復興と国土計画」は木村実・元国土交通省国土計画局長に、「持続可能な地方活性化政策」は末宗 徹郎・地域総合整備財団理事長にお願いしました。
13日は「東北復興」を講義し、最後の18日は全体振り返りにも参加しました。(12月24日記載)

連載「公共を創る」目次10

2025年11月13日   岡本全勝

目次9」から続く。「全体の構成」「執筆の趣旨」『地方行政』「日誌のページへ

(5)新自由主義的改革の代償
11月13日 240政府の役割の再定義ー新自由主義的改革の功罪
11月20日 241政府の役割の再定義ー行革の成功に伴う負の遺産
12月11日 242政府の役割の再定義ー反転攻勢に必要な縮小思考からの転換
12月18日 243政府の役割の再定義ー「役所の経営」を超えた「地域の経営」
12月25日 244政府の役割の再定義ー地方自治体の「内包と外延」
(2026年)
1月8日 245政府の役割の再定義ー地域の活力低下と地方創生
1月15日 246政府の役割の再定義ー「自ら考え自ら行う」自治体への転換
1月22日 247政府の役割の再定義ー地方創生が進まない要因
2月5日 248政府の役割の再定義ー
2月19日 249政府の役割の再定義ー
2月26日 250政府の役割の再定義ー

連載「公共を創る」第240回

2025年11月13日   岡本全勝

11月13日に、連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第240回「政府の役割の再定義ー新自由主義的改革の功罪」が発行されました。1990年代に行われた政治改革の限界について述べています。

当時の改革は政治過程で見るなら、入り口(選挙制度)の改革と、出口(内閣による統治)の改革であって、その間にある最も重要な「あんこ」(国会での政策議論)は手付かずだったのです。当時の私たちは、改革が制度だけの問題ではないということに、気が付きませんでした。選挙制度改革と内閣改革を行えば、政治主導が実現すると思い込んでいたのです。記事では、図をつけて解説しました。
内閣と官僚機構に議論が集中していますが、現在の日本政治の機能不全は、政治家が政治家の役割を果たしていない、政党が本来の役割を果たしていないという問題なのです。問題は、内閣ではなく、国会にあるというべきでしょう。

振り返ってみると、20世紀第4四半期の言論空間にも、その原因を求めることができます。国民の思考や言動が世間の通念に縛られるように、政治改革論も「流行の言説」に目を奪われ、議論が制約されていたのではないでしょうか。この時期の政治議論は、新自由主義的改革が中心となり、政府の機能向上に集中しました。
先進諸国では経済が行き詰まり、政府の財政赤字が拡大し、その対策として新自由主義的改革が流行しました。「小さな政府論」です。併せて、行政サービスの質の向上という方向にも進みました。その際には、「新公共経営論」(ニュー・パブリック・マネジメント)が理論的支柱となりました。民間企業における手法を導入することで、効率的で質の高い行政サービスを提供しようという考え方です。
政治については、それまでの考察が政府(ガバメント)を対象としていたのに対して、統治(ガバナンス)という概念に広がりました。行政については、役所(アドミニストレーション)に、経営(マネジメント)という概念が入ってきました。

しかし、企業統治においてガバナンス論が変化をもたらし定着したことに比べ、政府論においての影響は明確ではありません。もう一つの問題は、当時の社会がこの流行の言説に目を奪われてしまい、何のために公共や行政が使われるのかという議論を隠してしまったことではないかと思います。政治の議論が政府の効率化に集中し、その範囲を出ませんでした