カテゴリーアーカイブ:著作と講演

市町村アカデミーで講義

2026年7月6日   岡本全勝

今日7月6日は、市町村アカデミーに呼ばれて、「管理職の必須知識講座」で講義をしてきました。昨年9月に学長を退任してから、久しぶりに市町村アカデミーに行ってきました。
この研修は、私が学長になったときに作ったものです。毎回、冒頭にその意図を話していました。その行きがかり上、今回も呼ばれたようです。

管理職は、部下職員を使って与えられた目標を達成することと、部下職員を育成することが期待されています。ところが、仕事は時には(しばしば)思うように進まず、部下は全員が優秀でやる気があるわけではありません。職場内で問題が起きること、部外との関係でうまくいかないこともよく起きます。しかし、これまでは「みんなで良い職場を作りましょう」と教えることはあっても、問題が生じた場合の対処を教えてくれることは少なかったのです。

今日は60人の研修生(市町村の主に課長とこれから課長になる人)が、熱心に聞いてくれました。みなさん、現場で悩んでいます。質疑の際にも、具体的な事例が出ました。私の答えは、個別に答えるとともに(と言って、よい正解はないのですが)、一般論としては「一人で悩むな」「人事課に相談せよ」です。
また、この研修に参加した同じ悩みを持つ研修生同士で、意見交換をして、メール友達になって、帰ってからも情報交換をしてくださいと助言しました。そして、よい管理職、さらに幹部を目指してください。
「明るい課長講座」のページも参考にしてください。

連載「公共を創る」第263回

2026年7月2日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第263回「これまでの議論ー平成の「小さな政府」志向」が発行されました。
平成時代の地域の変化のうち、市町村について述べています。国だけでなく、地方自治体でも、この間「小さな政府」を目指した行政改革で、予算と人員の削減を続けました。それは主に、事務の外部委託と非常勤職員への置き換えで行われました。企業では、不採算部門を廃止したり縮小したりできるのですが、自治体では法律に基づく事務など廃止できないものも多いのです。会計年度任用職員のうち常勤的な勤務の職員は70万人近くいます。その他の市区町村では、職員のうち実に3人に1人が非常勤です。これで、仕事がうまく回るのでしょうか。

自治体では早くから、庁舎警備、学校給食、ゴミ処理などの業務が民間に委託されていましたが、新自由主義的改革の思想の下、「民間活力の活用」という掛け声でさらに民間委託が進みました。現業業務でなく、企画を調査会社に委託することや、施設の工事も施工だけでなく設計段階から企業に委託することが広がりました。見方によっては「丸投げ」です。ところが、職員が考える機会が減り、成果物(企画書や設計図、完成したもの)を評価する能力も低下していると聞きます。発注内容そのものを企業につくってもらう例もあるようです。
民間業者に委託すると、組織内にその仕事についての経験と知見が蓄積しないのです。住民が利用する施設の管理等を任せることにより、住民との接触が減って、地域の問題を拾い上げる機会が減ったと指摘する自治体幹部もいます。行政改革の旗を振った一人として、反省します。

平成の初期(1990年代)は、改革の時代でもありました。選挙制度改革、省庁改革、分権改革、規制改革などです。戦後型の行政が行き詰まっている、その仕組みを変えなければならないという意識からです。
この間の、私の体験も書いておきました。男女共同参画と働き方改革は、「昭和の官僚」にとっては、コペルニクス的転回でした。また、改革のいくつかに参画しました。

なお、会計年度任用職員の数については、総務省のホームページに載っています。「令和7年度 会計年度任用職員制度の施行状況等に関する調査結果 (任用件数等)

連載「公共を創る」第262回

2026年6月25日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第262回「これまでの議論ー平成における地域の変化」が発行されました。
平成時代の暮らしについて、次は地域の変化を取り上げましょう。数字で見る変化は連載第258回で富山県を例に示しましたが、ここでも数字には表れない変化が進んでいました。

地域産業の空洞化と地域活力の低下は、街の形を変えました。人通りの減った商店街は寂れ、シャッター通りも増えました。郊外に大型店舗が進出したことや、事業の後継者がいないこともそれを加速させました。若者が都会に出て行って、戻って来ません。空き家が増え、放置された家が周囲に与える悪影響からその対策も必要になりました。
平成時代になって、限界集落という言葉が広がりました。地域人口の半数以上が65歳以上の集落です。冠婚葬祭などの社会的共同生活を維持することが限界になりつつある集落を指します。さらに日本創成会議が、2014年に「消滅可能性都市」を発表し、衝撃を与えました。

過疎地域でも道路や上下水道などの整備に力を入れました。しかし、生活が便利になっても、住民は中山間地域を離れたのです。経済発展の過程で、都市は豊かになるのに、稲作や林業だけでは貧しいままでした。さらには、それらの産業への需要も減り続けましたから、住民は農山村を離れました。
便利さの向上の次に取り組まれたのが、地域おこしや地域活性化政策です。一村一品運動、ふるさと創生、地方創生などです。全国一律の工場誘致やインフラ整備による地域振興でなく、自治体が地域の特性を生かした、個性的な地域活性化に取り組むようになったのです。「国土の均衡ある発展」から、「個性ある地域の発展」「知恵と工夫による活性化」へと地域振興の方向性が変わりました。

平成初期に地方行政関係者の間で流行した言葉に、「3K」がありました。高齢化、国際化、高度情報化の頭文字Kを取ったものです。これらの三つが自治体にとって大きな課題でした。
この頃は、地方分権改革が進んだ時期でもあります。分権改革、三位一体の改革などです。併せて、平成の市町村合併が進みました。

福島民報新聞に載りました

2026年6月23日   岡本全勝

6月21日の福島民報新聞に、私の発言「「基本法」制定を提案」が載りました。私が主張したのは、次のようなことです。

・地震津波災害と原発事故災害では復興の国の責任の在り方で大きく異なる。国の立場は、自然災害では「支援」だが、原発事故については「責任を果たす」ということ。
・津波被災地の経験もあって、すぐに大きなインフラを整備する手法を見直し、人が戻る場所に徐々に戻すという方式を採用した。例えば復興拠点。全域避難した自治体が持続的な発展を成し遂げるには、人や賑わいの戻りを見極めながら時間をかけて施策を進めなくてはいけなかった。
・今後の復興庁のあり方として、原子力災害対策本部、経済産業省の被災者支援チームなども一体となった組織とし、原発事故復興に力を入れる態勢が望ましい。
・避難指示を解除できない地域がある上、廃炉作業完了の見通しは立たない中、「東電福島第1原発事故復興基本法」の制定を提案したい。原発事故の収束と復興についての東電と政府の責任の明記、行うべき作業の全体像と計画の作成、予算と財源の措置などを法で定めることが必要と考える。それによって、地元を安心させてほしい。

連載「公共を創る」第261回

2026年6月18日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第261回「これまでの議論ー男女共同参画の進展に伴う変化」が発行されました。
平成時代の変化の中でも、目立って進んだことが男女共同参画と働き方改革です。職場、社会、家族、個人の意識を大きく変えました。
女性従業員や女性幹部が増えたこと、そして共働きが増えたことで、「昭和の職場」も変わり始めました。従業員に求められた長時間で私生活を犠牲にした勤務は「夫は職場、妻は家庭」で成り立っていたのですが、女性従業員や共働き家庭には、それを求めることができないのです。否応なしに、「働き方改革」を迫ることになりました。
昭和の変化が、物が増え便利になるという「豊かになる革命」だったとすると、平成の変化は、男女平等の実質化と働き方改革による「生き方の革命」だと言えるでしょう。

これらのほかにも、職場は変わりつつあります まず、転職が増えたことです。能力があるのに処遇に不満を持つ従業員が、より良い条件の職場へと容易に転職できるようになりました。これまでは不満があっても辛抱していた「囚人」が、転職という交渉権を得たのです。新卒時に一度しかなかった職業選択の自由が、実質化したとも言えます。
これまでの人事課による配属先決定、経験年数による昇進と給与という仕組みから、これからは本人の望む職場を提供し、できる従業員にはふさわしい給与を提供する仕組みへ変わるのでしょう。日本の労働慣行が崩れつつあります。
職場での変化として、セクハラやパワハラも挙げておきました。職場での自由度では、クールビズが2005年から導入されました。

これら男女共同参画、働き方改革、転職の自由化などとともに、人権や自律性の尊重などは、これまでの職場での過度な上下関係や性別役割分担が変化したことの表れであり、会社中心から従業員中心の働き方への転換だと位置付けることができます。昭和の職場、昭和の家庭からの脱却です。
もっとも、周囲に同調する、会社に任せるという「依存」から、自分で判断するという「自律」への転換は、その結果に責任を負わなければならないことでもあります