連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第221回「政府の役割の再定義ー成熟国家への転換期における苦悩」が、発行されました。
政治の役割として、目指す国家像を示すことを説明しています。
国家像を議論する際の共通基盤の第三は、成熟国家になって見えてきた課題への対処です。
かつて豊かさを達成し、ジャパン・アズ・ナンバーワンと「慢心」しました。しかし実際には、豊かさを達成しただけでは、すべての問題が解決したわけではありませんでした。豊かさと平等を達成したと思っていましたが、そうでない人たちもいました。
そして、新しい不安が生まれました。豊かさとの引き換えに不足感と不安が生じ、豊かさ故に新たに不足感と不安が生じたのです。それとともに、国民の意識や社会の仕組みが、現実の変化に追い付いていない問題もあります。過渡期の悩みですが、行く先がよく見えていません。
日本列島に住む人は、弥生時代以来、村で支え合って生きてきました。家族や親族、地域社会に縛られつつ、一方で守られて安心を得ることができました。村から離れて、家族形態だけでなく職業や住む場所も、個人が選ぶことができるようになった社会で生きているのは、初めてなのです。束縛はなくなったのですが、どうやって生きていけばいいのか自分で考えなければなりません。しかし、まだほんの数世代の経験しかないのです。