連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第238回「政府の役割の再定義ー議員と官僚、公的な「組織と組織」の関係に」が発行されました。前回から、野党と官僚との関係について説明しています。
私が自治省財政局交付税課長補佐の時の主要な仕事の一つが、野党議員との接触でした。毎年度、算定の根拠となる地方交付税法の改正案を作り、国会を通すことが必要です。国会質疑のかなり前から議員と接触し、法案の概要を説明し、疑問に答えることを始めます。審議日が決まると、それら議員の事務所に、質問を取りに(教えてもらいに)行くのです。 国会審議の時期になると、役所にいる時間より、議員会館にいる時間の方が長かったのです。
当時野党の社会党の五十嵐広三・衆院議員に呼ばれ、どのようにしたら分権改革が進むかを、2人で考えたこともありました。
私は、議員に呼ばれ地方財政の説明をすることを、うれしく思いました。地方行政の理解者を増やすことになり、また新聞やテレビで見た国会議員、国権の最高機関の構成者に会うことができるのですから。「××議員と親しい」ことを、誇りに思っていました。
しかし、だんだんと疑問が湧いてきました。官僚は府省の職員であって、政党の職員でもなければ、政党の関係者でもありません。国会議員の質問案を作成することは、「与党の下請け」とも違った、「議員の部下」の仕事ではないだろうかということです。
国会議員が政策を勉強する際に、官僚を呼ぶことは理解できます。しかし、国会議員には政策秘書が付き、各党には政策審議の事務局があります。まずはその人たちと勉強すべきではないでしょうか。そして、各議員がバラバラに官僚を呼ぶのではなく、政党という組織として役所を呼んでもらうべきではないかと考えています。それは、質問主意書についても言えます。
疑問があれば官僚を呼ぶということを続けている限り、議員と政党は官僚に依存することになり、政党の政策審議能力は向上しません。