カテゴリーアーカイブ:社会の見方

歴史を学ぶ意義

2019年5月24日   岡本全勝

5月23日の日経新聞文化欄、歴史学者・呉座勇一さんの「絶対の正解求める危うさ」から。
・・・歴史に限らず「唯一絶対の正解があり、そこに必ずたどり着ける」と考える人は多いが、現在の複雑な社会で、簡単に結論の出る問題はない。性急に答えを欲しがり、飛びつくのはポピュリズムだ。
新しい時代を生きる上で重要なのは「これが真実」「こうすればうまくいく」という答えらしきものに乗せられることなく、情報を評価するスキルではないか。ネットを通じ、情報の入手自体は簡単になった。それをいかに分析し、価値あるものを選び出していくか。歴史学の根幹はこの「史料批判」にある。リテラシーを身につけるひとつの手段として、歴史学の研究成果に親しんでもらえたらと思う・・・

・・・歴史を学ぶ意義は大きく2つある。1つは現代の相対化だ。かつて、いま我々がいる社会とは全く違う仕組みの社会が存在した。異なる常識で動いていた社会を知ることが、我々の価値観を疑ったり「絶対に変えてはいけないものなのか」と問いかけたりするきっかけになる。女性・女系天皇を巡る議論も、歴史を知ることなしにはできない。
もう1つは、社会の仕組みが異なっても変わらない部分を知ること。親子や兄弟の絆、宗教的観念などは、時代を超えて今につながるものがある。この両面を通して、我々はこれからどう生きるべきか、ヒントを引き出せるのではないか・・・

特許制度、脱「途上国モデル」

2019年5月21日   岡本全勝

5月14日の朝日新聞オピニオン欄「知財立国の足元」荒井寿光・元特許庁長官の「脱「途上国モデル」へ一歩」から。

・・・日本の特許裁判の賠償額は、全体的に低すぎます。2007年から17年の間で、最も高くて17億円です。一方、米国は2844億円です。中国は56億円ですが、政府は引き上げる方針です。賠償額は裁判所で決まる特許の価値ですから、高いほど勝手に使うことを抑える力になります。

日本の現状は「侵害し得、侵害され損」です。欧米に追いつき追い越せの時代には、この方がよかったからです。日本は欧米から基本的な技術を導入し、改良して安くて良い製品の輸出を伸ばして経済成長しましたが、米国から何度も特許侵害で裁判を起こされました。「侵害者」の日本としては米国の主張が認められにくい方がよく、負けても少ない賠償額で済ませたい。いわば「発展途上国モデル」を続けてきたのです。

歴史的にみれば、19世紀には新興国だった米国が欧州に対して特許を侵害する立場でした。米国は20世紀に知財大国になり、今度は中国が侵害する側になりました。その中国はいま、研究開発に力を入れ、特許の裁判や賠償制度を強化し、米国を追い越そうとしています・・・

質問、再質問

2019年5月17日   岡本全勝

NHKのウエッブニュース「城の石垣 半数以上が「修復必要」」(5月14日)。内容とは異なりますが、質問のあり方について考えました。

・・・NHKは「日本城郭協会」が選んだ日本100名城と続日本100名城を対象にことし3月、アンケート調査を行いました。
石垣のない城などを除く169の城について、管理している地元自治体などに用紙を送り、このうち73%に当たる124の団体から有効な回答を得ました。

はじめに城の石垣に関して日常的な観察や管理を行っているか尋ねたところ、92%に当たる114の団体が「行っている」と答えました。
「行っている」と答えた団体に頻度や実効性について問いかけると、「おおむねできている」が77と多数を占める一方で、「十分にできている」は5か所にとどまり、「あまりできていない」は32と、3割近くに及んでいました。
また、「現在、修復を要する被害や劣化は見られるか」と尋ねたところ、57%に当たる71の団体が「見られる」と答えました・・・

日常的な観察や管理を聞くと、9割が「行っている」と答えます。しかし、頻度と実効性を聞くと、3割はできていません。
これは、参考になります。ほかの問題でも、応用できます。「やっていますか?」と聞くと、「やっています」と答える場合があります。しかし、「では、どの程度やっていますか」を具体的に聞くと、形だけとか、実効的でないことがばれます。この質問は、具体的に聞く必要があります。「よくやっている」「ある程度やっている」といった、曖昧、主観的な選択肢では、意味がありません。

記者会見を見ていても、型どおりの質問をして、型どおりの回答があり、それで終わる、他の質問に移る場合があります。見ていて、残念な気持ちになります。「もっと、突っ込んでくれよ」と。
想定問答を準備している方も、再質問、再々質問を想定しています。突っ込みが足りないと、物足りないです。
その質問で何を聞きたいのか。それを考えて、質問と再質問を組み立ててもらいたいです。
余談ながら。事件や事故が起きたときに、質問に対し「詳細を把握していないので答えられない」「訴状を受け取っていないのでコメントできない」という答えがあります。ぜひ、数日後に、「その後どうですか」と聞いてほしいです。

データの国際管理

2019年5月16日   岡本全勝

4月29日の日経新聞オピニオン欄、ジリアン・テット、ファイナンシャルタイムズ編集長の「データに国際的枠組みを」から。

・・・第2次世界大戦末期の1944年、国際通貨制度を安定させる枠組みの構築を目指し、連合国の代表が米ニューハンプシャー州ブレトンウッズに集まった。
参加者たちは平和の促進と経済の成長にはお金の流れを監視することが欠かせないと考えた。戦争が終結すれば世界経済を再生しなければならず、そのための国際組織が必要だと考えたのは当然かもしれない。国際通貨基金(IMF)の創設が決まり、以来数十年、何とか目的が果たされてきた。
75年間の国際協調はたたえられるが、IMFは今やお金以外にも目を向けるべきではないか・・・
・・・昨年のデジタル経済に関するIMFのセミナーで、バルシリー氏はIMFがデータ規制で各国の協調を促し、さらにIT(情報技術)の発展が社会や経済にもたらす影響に対しても国際戦略を策定する時が来たと主張した。同氏によると、米S&P500種株価指数の構成銘柄の企業価値のうち、1976年時点で16%が無形資産だったが、現在は90%近くに上る。
これはデータ管理が重要な政策課題になったということだ・・・

かつて経済力は、資源であり、生産品・生産力でした。次に、お金でした。それも、蓄えているだけではダメで、どのように流通させるかです。
ストックとともにフローが、重要になりました。そして、いまは、情報です。
記事にもあるように、モノでなく無形資産(情報)に価値が移っているのです。これも持っているだけではダメで、早く入手し、読み取り、どのように使うかです。
価値が、見えるものから見えないものへと転換しています。そして、ストックでなくフローにとです。

中間団体の重要性

2019年5月15日   岡本全勝

5月9日の日経新聞「令和新時代」、猪木武徳・大阪大学名誉教授の「新技術 道徳と調和を」から。

・・・平成が始まった年は東西冷戦が終わった年でもあった。世界の体制変化と日本の経済力の相対的な低下が同時に進んだ。なかでも、中国の台頭は大きなファクターだ・・・

・・・中間組織に弱さ
経済でも、昭和は大企業が安定的に支配していたが、平成には野望を持つ新興企業が参入し市場を揺さぶった。一方で、国と個人の間にある中間組織が弱くなった。労働組合の組織率は低下、経営者団体もかつてのような発言力がない。民主的な精神が徹底したが、補完する装置は弱まった。
民主制を安定的に機能させるには、個人と国家が直接対峙するだけでなく、非営利法人(NPO)も含めた中間的な組織が大切だ。個人は弱いので団結して共同の利益を主張することも必要だ・・・

中間団体は、公共を考える際にも、重要な要素です。