カテゴリーアーカイブ:社会の見方

アメリカの保守主義の変化、市場主義が家族を破壊している

2019年6月29日   岡本全勝

会田 弘継・青山学院大学教授の「アメリカが心酔する「新ナショナリズム」の中身 保守主義の「ガラガラポン」が起きている」(東洋経済オンライン6月28日)が、興味深いです。

・・・そのカールソンは1月初め、市場経済とアメリカの「家族」の問題について、次のようなことを番組の中で長々と「独り言」として述べた。
「アメリカでは今や、結婚は金持ちしかできない。そんなことでいいのか。半世紀前には、結婚や家族生活において階級格差などほとんどなかった。1960年代後半から、貧困層が結婚できなくなった。1980年代には労働者階級のかなりの部分でそうなってきた。18~55歳の貧困層では26%、労働者階級では36%しか結婚していない」

労働者階級の子どもを見ると、半分近く(45%)が14歳までに両親の離婚に直面している。さらに婚外子、家庭崩壊などが激しく増加している。中間層以上の裕福な家庭では56%の成人が結婚しており、離婚率もずっと低い。どうしてか。
市場経済がなすがままにする連邦政府の誤った政策が、労働者階級の「家族生活」の経済的・社会的・文化的基盤を台無しにしている。カールソンはそう批判した。製造業の働き口がなくなり、高卒以下の労働者の賃金が下がり続け、結婚もできず、家庭は崩壊し、薬物・アルコール濫用、犯罪増加につながっている、と指摘した。
富裕層のエリートたちは労働者を踏み台にして、脱工業化経済の中で繁栄を享受しているのに労働者の苦境に見て見ぬふりをしている。「すさまじい怠慢ぶり」だ、とカールソンが激しく批判した。
共和党だけでなく民主党も同罪だと述べ、大きな問題は、アメリカ保守思想の一方の核である「市場」が、もう1つの核である「家族」を破壊しているということだ、と論じた。「家族の価値」を重んじる保守派による資本主義批判という点が注目される。

これに対し、中西部ラストベルトの崩壊貧困家庭からはい上がって、自身の物語を『ヒルビリー・エレジー』という本にまとめ、今は保守派論客となったJ・D・ヴァンスは保守派論壇誌『ナショナル・レビュー』への寄稿で満腔の賛意を表明した。
アメリカのGDPは拡大し、輸入雑貨が安く買えても、子どもの死亡率は下がらず、離婚も減らないし、寿命まで縮んでいる地域がある。これで豊かな国だといえるのか。「政府の介入」が必要だ。「市場が解決する」などありえない。

トランプ政権時代に入り、アメリカの保守派からこうした声が出るのは当たり前のように思えるが、FOXテレビや『ナショナル・レビュー』という保守の中核メディアで保守派論客が堂々と市場経済を否定し、大きな政府(「政府の介入」)を求め、しかも市場経済が家族を破壊しているとまで主張するのは、大きな思想変化が起きたことを意味する。既成の保守派内から猛然と反論が出たのは当然であった・・・

私も連載「公共を創る」で、科学技術と市場経済の発展は必ずしも社会を幸せにしないこと、「見えざる手」だけでは「暴走」を食い止めることはできないことを書いているところです。

若冲が日本に帰ってきます

2019年6月26日   岡本全勝

各紙の伝えるところによると、若冲コレクションで有名な、プライスさんの所蔵品が、出光美術館に譲られたそうです。
日本人が価値をわからなかった若冲作品を、集めてくださったプライスさん、そしてそれを日本に戻してくださった決断に、感謝しなければなりません。

一人暮らしの高齢者を支える、フィンランド。その2

2019年6月24日   岡本全勝

高橋絵里香著『ひとりで暮らす、ひとりを支える』の続きです。

本では、ディアコニという職業が紹介されています。フィンランド福音ルーテル派教会にある職です。社会サービスや援助活動をします。社会サービスの学位や看護の学位を持っています。

町のディアコニの事務所は、月曜から木曜の朝9時から10時が対応時間です。やってきた人たちは、椅子に座って順番を待ち、その日の担当者と話をします。
人生の悩みを打ち明けに来る人、血圧を測りに来る人、食料品をもらいに来る人など。どんな内容であれ、助けて欲しいことがあれば、ディアコニが相談窓口になっているようです。
血圧を測りに来る人も、食料品をもらいに来る人も、話し相手が欲しくて、それを理由に来ているようです。

福祉国家が成立する前は、地方でその役割を果たしていたのは、教会だったのです。医療などの身体的必要は行政が担うようになって、ディアコニは精神的、社会的支援を担うようになったのです。
前回紹介した、どのように死を迎えるかとともに、経済的支援と身体的サービスの次に求められるのは、このような精神的、社会的支援でしょう。
これをどのように実施していくのか、日本の行政の次の大きな課題だと思います。

「生きることの社会学」

2019年6月22日   岡本全勝

川田 耕 著『生きることの社会学 人生をたどる12章』(2019年、世界思想社)を本屋で見つけて読みました。大学生向けの入門書です。

目次を見ていただくとわかるように、人生の各段階で出会う社会との関係を、わかりやすく説明しています。出生、学校、恋愛、子育て、仕事、老い、死・・・。
初学者には、この入り方は良いと思います。
私も地方行政を話す際に、朝起きてから寝るまで、生まれてから死ぬまで、どのように、どれだけ自治体の世話になっているかを説明して、自治体との関係を実感してもらっています。

第6章成長における幻想と文化、第7章攻撃性の社会学は、学生を対象とした本ならではの項目ですね。よく考えられています。
もちろん、このような構成で書かれていますから、社会一般や組織論は出て来ません。それは、次に勉強してもらうのが良いでしょう。

認知症の行方不明者1万7千人

2019年6月20日   岡本全勝

6月20日の新聞各紙の夕刊が、「認知症の行方不明者1万7千人」を伝えていました。2018年に認知症が原因で、警察に行方不明届が出された人の数です。大変な数です。

71%の人は、届け出の当日に無事が確認されています。25%の人は2~7日以内に発見されて、全体の96%が受理から1週間以内に見つかっています。他方で、車にはねられるなど、死亡者は508人です。