カテゴリーアーカイブ:社会の見方

カタカナ英語の弊害「ブラック企業」

2019年7月5日   岡本全勝

7月4日の朝日新聞オピニオン欄「私の視点」、尾鍋智子・桃山学院大学国際教養学部准教授「造語と言語感覚 「ブラック」使い方再考を」に、ハッとさせられました。

・・・最近のマスコミの言語感覚に首をかしげることが多いのは、私だけだろうか。最も不快な表現は「ブラック企業」のブラックだ。
なぜ不快なのか。「黒は悪」という短絡的稚拙さへの恥ずかしさや、「劣悪」「闇」で代替可能という思い、「ブラック企業」が和製英語の最新語としてリストに加わりそうなことへの憂鬱もある。だが、カタカナのブラックと英語のBlackが持つ意味の違いは、さらに重要な問題をはらんでいる。
Black is beautiful.「ブラックは美しい」は、1960年代に米国の公民権運動で使われた代表的標語だった。ブラックという色が悪いという偏見を、黒人自らがまず打ち砕き、人種差別と闘おうとした力強い言葉である・・・
・・・ブラック企業とは労働環境の劣悪さを指すようだが、完全な和製英語である。公民権運動を経た欧米においては、「ブラックは悪」というニュアンスでの新たな造語は許されないからだ・・・

カタカナ英語が、とんでもない間違いを生む例です。私も無意識に使っていました。反省します。この言葉を安易に使っているマスコミにも、問題がありますね。何か良い日本語を、考えなければなりません。マスコミがどのように対応するかを、期待してみていましょう。

JR九州、鉄道の売り上げは34%

2019年7月5日   岡本全勝

7月2日の読売新聞経済欄「経営者に聞く」は、青柳俊彦・JR九州社長の「多角化 地元と共に走る」でした。

・・・〈業績は徐々に上向き、2016年10月には青柳社長の下で東京証券取引所1部への株式上場を果たした〉
民営化当時、赤字だったJR北海道、四国、九州の3社は「三島さんとう会社」と呼ばれました。この呼び方は奇異に感じました。「本州だって島じゃないか」と思ったものです。上場した時は「三島会社でも上場できるんだぞ」と感慨もひとしおでした。民営化した頃、三島会社が上場できるとは誰も思っていなかったはずですから。
〈19年3月期連結決算で売上高は過去最高を更新した。売上高のうち鉄道事業の割合は34%にとどまる。流通・外食が24%、建設が21%、駅ビル・不動産が16%を占める。今や首都圏などでもホテルやマンション、オフィスビル、飲食店、ドラッグストアなどを手掛ける〉・・・

・・・〈18年3月、九州全域で1日あたり117本を減便し、列車の運行本数を1日3011本にした。民営化後、最大規模の減便だった〉
当社管内の在来線はほとんどが赤字です。乗客はさらに減る傾向にあります。「公共交通機関なんだから、赤字でもちゃんと運行しなさいよ」と地元からご意見をいただきますが、赤字のままでは事業を長く継続することはできないのです・・・

監視社会

2019年7月2日   岡本全勝

6月30日の朝日新聞「未来からの挑戦」は、「AIの目、忍び寄る監視社会」でした。
・・・画像処理を得意とする人工知能(AI)が登場し、街中の監視カメラで瞬時に個人を識別して追跡もできるようになる。治安向上に役立つ一方で、「監視社会」の不安が人々の身の回りに忍び寄る・・・
記事には、次のようなことが書かれています。
6万人のコンサート会場で、1人を見つけ出すこと。中国では警察が全国に張り巡らせた監視カメラが2千万台、それ以外を合わせると2億台ものカメラがある。中国の警察官がかけている特殊なめがねは、登録した人の顔が見えると、それを表示する・・・。

街中の監視カメラで、私たちの顔が撮られていることは既に「常識」です。駅や新幹線の中は、カメラがどこにあるか、よく分かります。そこで、顔が撮られているはずです。
さらに、鉄道の改札でスイカ(イコカなど交通系ICカード)を使うと、どこに移動したかも、把握されます。クレジットカードを使うと、どこで何を買ったかも、把握されます。インターネットで何を見たか、電子メールでどのようなやりとりをしたかも。
秘密も何も、あったものではありません。
把握されるのが嫌なら、クレジットカードやスイカを使わないようにしなければなりません。犯罪がらみは、現金で決済しているのでしょうね。さらに、監視カメラなどに中国製品が使われていると、データは北京に送られているという説もあります。

私は駅を通る際に、監視カメラ(たいがいエスカレーターの上にあります)に向かって、顔が映るようにしています。何か事故に巻き込まれたときに、「ここまでは歩いていた」と分かるようにです。

キャッシュレスは財布が緩む

2019年7月1日   岡本全勝

6月28日の朝日新聞オピニオン欄「キャッシュレスより現金払いの方がよくない?」から。
「単身赴任をきっかけに、飲食費をクレジットカードで払う機会が増えました。しかしつい使いすぎ妻からは大目玉。現金払いに戻したところ、支出が減りました。日本は海外に比べ「現金主義」が強いと言われます。政府は消費増税を機にキャッシュレス化を進めようとしていますが、やっぱり現金の方がよくないですか」という記者の問に。
中川宏道・名城大学准教授の回答です。

・・・なかなか手に入らないバスケットボールの試合チケットのオークションで、クレジットカード払いの人は、現金払いの人に比べ、平均約2倍高い価格で入札していた――。マサチューセッツ工科大の研究者によるこんな実験結果があります。
なぜこうなるのでしょう。クレジットカード払いだと、銀行口座から引き落とされるのは通常1カ月以上先で、「支払いの痛み」を感じにくいからです。現金払いは、財布を取り出し、お金を数え、店員に渡すので、お金が減ることを実感します。様々な研究で「支払いの痛みは、支払時の作業量に比例して増す」ことが分かっています。
クレジットカードは現金払いに比べ作業量は少ないし、目の前で現金が出ていかないため、支払いの実感が低くなります・・・

我が身を省みて、納得し、反省します。

空き家問題、住宅を資産として考えない日本の意識

2019年6月30日   岡本全勝

東京財団政策研究所のレポート「所有者不明土地問題」に、砂原庸介・神戸大学教授が「空き家問題:対症療法だけでなく長期での取り組みを」(6月21日)を載せておられます。

住宅を資産として考えるか、海外との意識の差を指摘しておられます。
・・・日本の文脈において、資産としての住宅という観点が強調されにくくなっているということではないか。資産価値を重視するからこそ十分な管理が行われて良質な中古住宅が市場に出るし、自分の資産の価値に影響を与える他者の行動に対する関心も高まる。所有者本人の観点からしても土地や住宅を空き家、ひいては「所有者不明」とするのは惜しいし、周辺住民や地方自治体から見てもそんな状態を放置することができないという感覚が強まると考えられる。日本の現状は、住宅の住む機能のみが過度に強調されて、その住人(所有者のみならず貸借人も含む部分がある)が自由に扱うことが許されていることを反映しているのではないか。それは一方で好きに住むということで空き家としての放置を許し、他方で好きに処分するということで土地が投機を招くことにもつながっていると思われる・・・

・・・ズレのもう一つの原因は、住宅が特定の個人のみに帰属する資産だという発想ではないかと考えられる・・・
・・・しかし、注意しなくてはいけないことは、土地や住宅の価値はその所有者の意思や行為のみによって決まるわけではない。周辺の土地や住宅がどのように管理されているか、ということも重要である。とりわけ集合住宅ではそのような性格が強くなる。言い換えるならば、住宅の金融資産として価値を蓄える、貯金のような機能があるとしても、それは個人において完結するのではなく、周辺地域の価値と連動しうるのである。たとえば、住宅の近くに新たに線路が敷かれるということであれば、騒音に悩まされることで価値が低く評価されることになるかもしれないし、反対に線路に加えて近くに鉄道駅ができると便利な地域として住宅の評価が上がるかもしれない。それは(招致運動や反対運動に参加することがあったとしても)基本的に所有者の意思や行為の帰結ではなく、他の土地や住宅の所有者の意思や行為に基づくものである・・・

・・・このように、同じ地域に住む他の人々の行動が、自分の資産の価値に影響するという観点から考えたとき、空き家というものが周辺からそのまま放置されるというのは非常に奇妙なことに見えるのである。日本の文脈で考えれば、土地や住宅という特定の資産を処分できるのはその所有者であり、所有者が住宅を利用せずに空き家として放置していることは、ある意味で所有権の正当な行使の範囲内にあると理解されるだろう(「正当」とされるのかは微妙だが)。しかし、自分の土地や住宅を将来売却する可能性がある資産として捉える見方が強ければ、地域に何か新しいものを建設する場面、とりわけそれまでの土地利用の用途を変える局面では、影響を受ける地域全体の集合的な同意が極めて重要なものとみなされる。そして、空き家を放置する行為は所有者としての正当な責任を果たさないものであり、自分自身の資産を守るために地方自治体や周辺の住民で一致して介入するという発想がむしろ自然なものとなるのである・・・

私も、戦後日本で進んだ「土地に関する所有権の絶対化」が、背景にあると思います。端的に言うと「所有者はその土地をどのように処分しても良い、他者は意見を差し挟めない」です。周囲との関係が忘れられている、公共の福祉との折り合いの付け方がうまくできていないのです。