読売新聞2月10日「地球を読む」は、北岡伸一先生の「憲法改正の道筋」でした。
・・私は憲法改正に賛成である。護憲論には強い違和感がある。自分たちのルールを自分たちで作り、作り直すことは、民主主義の基本である。これを否定する護憲論は、民主主義の否定だと思っている。
しかも現行憲法は、占領軍が原案を書き、その監視のもとで成立した。戦争は懲り懲りだと思っていた国民は、戦争放棄などの内容を歓迎したが、十分な検討を経た上での賛成ではなかったし、占領下、強い言論統制のもとで憲法を作ることは国際法違反である。
とはいえ、制定から60年余、憲法は定着した。私は、制定経緯だけを理由に改正すべきだとは考えない。不都合なところがあるから改正が必要なのであり、そうしたところは順次変えていけばいいと考えている。その際、実効性が乏しく、リスクの大きい改正方針は避けるべきだと思う・・
ごく一部を引用したので、原文をお読みください。
カテゴリーアーカイブ:政治の役割
政治の役割、国家嚮導行為
高橋信行著『統合と国家―国家嚮導行為の諸相』(2012年、有斐閣)を、本屋で見つけました。
「国家嚮導行為」とは、「政治的計画や予算、外交、国防といった、国家の進むべき基本方針に関わる創造的・積極的な作用」と定義されています。そして、国家が国家として存在するためには、国家がその時々の課題に応じて積極的に政策を遂行することで、国民を国家につなぎ止め、統一がもたらされるという考えです。
連載「行政構造改革―日本の行政と官僚の未来」で、政治家と官僚の役割分担を論じた際に、政治家や政治の役割を書きました。そして、「立法は国会に、行政は内閣に、司法は裁判所に分担される」という三権分立の考えが、政治の役割を忘れさせていることを指摘しました(連載第三章一1統治の中の政治)。
「国会=法律の決定」→「内閣=法の執行」では、誰が政策の立案をするかが抜けています。「法律の決定」の前に、「政策の立案」が必要なのです。すると「政策の立案」→「法律の決定」→「法の執行」という流れになります。そして、現代国家では、政策の立案の多くは内閣が行います。高橋和之先生の「内閣によるアクション―野党と国会によるコントロール」を、わかりやすい説明として紹介しました。
また、政治目標(政治課題)の設定と政策の統合が、与党と内閣の大きな責務であること。この「政策の立案」の多くを官僚に委ねることが、官僚主導です。官僚への批判と官僚主導の問題は、官僚が政治家の仕事を代行していたことを指摘しました(第二章四1政治の責任)。
連載を中断し(総理秘書官になって、とても時間がとれませんでした)、時間が経ってしまいました。月刊誌で14回、200ページを超えるまで書いたのですが。ライフワークと考えているので、勉強を重ね、いずれ本にしたいと考えています。官邸でも現在の職場でも、政策の立案や政と官の役割を、日々体験させてもらっています。経験や知識は増えているのですが、今の仕事の状況では、執筆はいつになるやら(決意表明ばかりで、反省)。
高橋先生の本は、公法学からのアプローチですが、私の視点からも勉強になりそうです。もっとも、読み終えるには、時間がかかりそうないので、読んでいない時点で紹介しておきます。
国勢調査ができない国
1月30日の朝日新聞に、「ボスニア・ヘルツェゴビナ、国勢調査また延期へ」という記事が載っていました。1991年に実施して以来、国勢調査ができないのです。
ボスニア・ヘルツェゴビナでは、1992年から95年まで、激しい内戦が続きました。1995年の和平合意による現憲法は、3つの民族の均衡を定めています。議会や政府は、ボシュニャク(モスレム)人、セルビア人、クロアチア人の3民族から均等に選ばれることとなっています。国勢調査で、3民族の人口比が異なる結果が出ると、この憲法と政府の正当性が疑われることになります。
しかし、国勢調査がないと、人口も年齢分布もわかりません。いろいろと困難なことがあるでしょうね。何か別の手法で、国民を把握しているのでしょう。でないと、税金徴収や行政サービスができません。
日本で、ソマリアの海賊を裁く
1月12日の朝日新聞夕刊に、「本邦初、海賊法廷」という記事が載っていました。2011年、ソマリア沖で日本のタンカーが襲われた事件で、「ソマリア人海賊」の裁判が、東京地方裁判所で始まるのです。
この事件が日本で裁かれることについては、2011年9月11日の記事で紹介しました。 また、ドイツでの海賊判決も、紹介しました(2012年10月21日の記事)。
今回の事件は、場所は公海上、船はバハマ船籍、乗組員に日本人はいません。海賊をどこで裁くかの国際的ルールがなく、どこも引き受けないので、船の所有者の国で裁判をします。
日本政治、研究者の成果
若手研究者による成果が、次々と出版されています。インターネットで検索すれば、探すことはできるのでしょうが、各分野での動向を簡単に俯瞰することは難しいです。学会誌では、通常1年遅れになります。それらを紹介する月刊誌がある分野も、少ないでしょう。研究者の方々は、それぞれのネットワークで調べておられるのでしょうね。
砂原庸介准教授が、ブログで、日本政治研究の若手のこの1年の成果を紹介してくれています(2012年12月22日の記事)。それぞれ「分厚い」ことと、数が多いことから、なかなか目を通すことができません。私が若かった頃は、現在の日本政治を取り上げた研究は、こんなに多くなかったです。喜ぶべきことです。
政治家、官僚、マスコミが、これらの成果をどのように現実政治で活かしていくか。それが課題です。特に、税財政、社会保障、環境といった「政策分野別」の成果は、それぞれの政策共同体(各省、関係する政治家やマスコミ)で生かされるでしょうが、統治のあり方、内閣のあり方、制度改革など「基本制度の設計と運用」について、専門職や政策共同体がないのです。