11日の朝日新聞が、「いまとこれから」という世論調査を載せていました。
今の日本がおかれた状況を登山にたとえると、「息が切れて、後続の人に追い抜かれていく」が62%、「足を痛めて先に進めない」が18%、「急な坂を懸命に登っている」が15%で、「快調に登っている」は1%です。
「日本に誇りをもっているか」については、75%の人がもっています。誇るものは、技術力が94%、アニメやゲームが68%、経済力は34%、教育水準は33%でしかありません。急速にイメージが変わっているように、思えます。
日本の自画像については、「勤勉である」が46%、「でない」が50%。「礼儀正しい」が45%で、「でない」が52%です。さらに「独創性がない」61%、「国際性がない」70%、「自立心がない」76%です。かなり悲観的ですね。
詳しくは記事を見ていただくとして、佐藤俊樹東大教授は次のように述べておられます。
・・調査結果からまずわかるのは、日本社会の自己像が不明確になったことだ。「顔」を失った日本、という感じだ。経済力や教育水準の高さは、戦後日本の代表的な「プラス面」だ。ところが、いずれも誇れると思わない人のほうが多い・・日本人の特徴についても、器用だが自立心は弱く、国際性にも欠ける、という答え。一言でいえば「ぱっとしない自分」だ。いまの若者によく見る自己像とも似ている・・
ただし、国民が見つめる自画像の多くは、マスコミが伝えた報道によるところも多いのですよね。「記事で誘導しておいて、世論調査で確認する」といったら、言いすぎでしょうか。
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社会と政治
短命政権を生み、捨てる社会
11日の日経新聞経済教室、山崎正和さんの「指導者は難題と向き合え」から。
・・何より気がかりなのは、これらの(民主党の)公約が目先の変革にのみ重点を置き、永続的な国益や目標を無視していることである・・素人でもわかる長期的な視点の欠如、国策の連続性への関心の鈍さが異様なのである。そしてこの鈍感さを最大限に露呈したのが、防衛問題であるのはいうまでもない・・この問題の惨めな結末はすでに明らかだから、私にはあらためてこれをあげつらう興味はない。
それよりも注目に値するのは、なぜ民主党が革命にも似た変革を掲げ、国民も雪崩を打ってそれを支持したかという疑問である。国民の変化への要求はこのところ性急さを増し、内閣支持率は激しく上下動を繰り返して、そのたびに短命政権が生まれては消えた。政党を問わず指導者は小粒になったように見え、選挙民はこらえ性がなくなった気がする。これはいったい、文明と社会のどのような問題の反映なのだろうか。
まずいえることは、現代日本の真の課題が深刻なものばかりになり、経済の成熟、少子高齢化、環境破壊、技術開発の停滞など、時間がかかる困難が急増したという点がある。グローバル化の下で政府のできることは小さくなる一方なのに、うすうすそれを感じる国民はいらだちを強め、せめて見かけ上の変革を性急に求める方向に走った。
同時に、長く続いた冷戦が終わったことによって、個人の政治的アイデンティティー、心のよりどころとしての政治的立場が揺らぎ始めた・・
第3に、都市化の進行が人びとから故郷や近隣社会を奪い、よかれあしかれ多数の国民を孤独な群衆にした。とくに日本では、グローバル化が企業の枠組みを弱くして、企業という伝統的な帰属感の対象が動揺したことが大きい。典型的な大衆(マス)社会に投げ出された日本人は、信頼できる顔の見える隣人を失い、流行とか世間の空気といった目に見えない趨勢に流されやすくなった・・
こうした社会状況の下で起こりがちなのはポピュリズム(扇情政治)だが、現代の日本には雄弁な扇動家は現れにくいから、ここに「リーダーなきポピュリズム」とも呼ぶべき珍現象がみられることになる・・
詳しくは、原文をお読みください。
インターネットの功罪
(インターネットの功罪)
先日の新聞記事(5月23日の記事「ネット帝国主義、利益を吸い上げる仕組みと安全保障上の危険」)に触発されて、岸博幸著「ネット帝国主義と日本の敗北」(2010年、幻冬舎新書)を読みました。論旨が明快で、わかりやすかったです。私なりの理解では、岸さんの分析と主張は、ごくごく簡単にまとめると、次のようなものです。
1点目は、インターネットの無料ビジネスが、ジャーナリズムと文化を破壊しているということです。すなわち、インターネットの普及で、私たちは便利になり、ビジネスも変わりました。しかし、もうかっているのは、グーグルやヤフーといった検索サイトだけです。それらは、広告収入で無料利用を広めました。しかし、その結果起こったことは、新聞や音楽(CD)といったコンテンツ(インターネットに載せる情報の作り手)の衰退です。新聞の購読者は減り、広告収入は激減しました。違法なダウンロードで、CDは売れなくなりました。新聞各社もインターネット配信を始めましたが、もうかっていません。
2点目は、国家の安全保障についてです。グーグルもヤフーもアマゾンも、ツイッターも多くのクラウドも、アメリカ製です。利用する私たちは、その情報をすべて彼らに握られています。確かに、これは重大な問題です。
また第1点目の問題は、このままでは、このビジネスモデルは持続しません。グーグルはもうけていますが、新聞などのコンテンツ産業を無料利用していることで成り立っています。新聞社が細ると、成り立たない商売です。詳しくは、原文をお読みください。
知らない世界を読むことは、勉強になりますね。もちろん、どこまでが正しく、どこが違うかを指摘するだけの知識は、私にはありませんが。岸さんの分析と主張は、説得力があります。
ごみ処理
朝日新聞3日夕刊の環境欄は「ごみ」で、香川県豊島(てしま)の産業廃棄物処理を取り上げていました。瀬戸内海の島が産業廃棄物で埋まり、有害物質がしみ出したのです。問題になったのは、もう20年も前の話です。その後始末をどうするか、大問題になりました。近くの島で再処理することになりました。それが10年前です。最近は新聞記事にならないので、若い人は、知らないと思います。
その他に、ごみ焼却場の付近でダイオキシンが問題になったこと(1980年代)、東京でごみ戦争といわれるほどの事件があったこと(1970年代)も、若い人はご存じないでしょう。この記事には、簡単な年表もついています。勉強になります。
ガラパゴス携帯電話
28日の朝日新聞オピニオン欄は、ガラパゴス携帯を取り上げていました。
携帯電話からインターネットに接続できるiモードは、NTTドコモが作りました。写メールもお財布携帯も、日本が作りました。なのに、日本の携帯電話は世界で勝てず、iPhoneなどのスマートフォンに押され気味です。
夏野剛さんの言葉
(日本の高機能の携帯電話は)国内で、海外勢に押されていると言われている。本当にそうなのか。2009年度、iPhoneを含むスマートフォンの出荷台数は、230万台を超えたという。でも携帯電話の年間総出荷台数は、最盛期の5千万台に及ばないものの、3千万台半ばを維持している。スマートフォンが、大勢力になっているわけではない。
・・日本企業に多い年功序列、終身雇用で育った純粋培養型の経営者では、対応できない。必要なのは、若手や外国人、女性を登用する多種多様な雑草型の組織だ。高度成長期の仕組みにとらわれた企業形態こそ、「ガラパゴス」だろう・・
松田美佐さんの言葉
・・韓国では、日本と比べて携帯の普及率やメールの頻度はほとんど変わらないのに、通話回数はずっと多い。メールも使うけど、親しみを示すために通話で直接コミュニケーションをする。日本では、直接のコミュニケーションを避けるために、メールを使う・・
人間関係も、ケータイがネットにつながることによって広がった・・SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)はその例です・・ただ、SNSでは、同じ興味を持つ相手としかつながることができません。本当に異質な相手とは、出会うことがない。コミュニケーションの範囲は広がっているのだけれど、自分と似た相手とだけつながっているので、全体としてみれば閉じている。異質なものへの関心そのものが低くなってしまうという問題点があります・・