カテゴリー別アーカイブ: 社会と政治

社会と政治

教員の長時間労働

3月11日の朝日新聞オピニオン欄「記者解説」、「先生を、教育の質を守る 給与や長時間労働、予算かけ抜本策を」が、教員の長時間労働や精神疾患を取り上げています。詳しくは記事を読んでいただくとして。そこに、各国の中学教員の1週間あたりの労働時間が図になって載っています。

経済協力開発機構(OECD)の「国際教員指導環境調査2018」によると、中学校教員の1週間の仕事時間は、OECD加盟国のうち調査に参加した31カ国の平均が38・8時間だったのに対し、日本は56・0時間。アメリカが46・2時間、韓国は34時間です。
書類作成などの「事務仕事」は、参加国で最長の週5・6時間だそうです。

なぜ、こんなことが長年にわたって放置されているのでしょう。先進諸国を手本に発展を遂げた日本が、いつの頃からか、独自路線を歩んでいます。それがよい結果をもたらしているならよいのですが、これはひどいですよね。教育分野でも成功を収めた日本が、慢心したのでしょう。
予算がないというなら、文科省と財務省の責任は重いです。与党はどうしたのでしょう。年金や公共事業費も重要でしょうが、未来の日本人をつくることがより重要だと思うのですが。

一億総おひとり様社会

1月13日の日経新聞一面連載「昭和99年 ニッポン反転」は「「総おひとり様」の足音 個つなぐ社会、日本モデル」でした。

・・・身元保証人がいないと入院・入所お断り――。2022年発表の総務省の抽出調査で、一般病院や介護保険施設の15.1%がこう答えた。割合を全国に広げれば「お断り」は約3千施設に及ぶ。高齢者の孤立問題に取り組むNPO法人の須貝秀昭代表(52)は「『家族』が前提の社会を変えないと、命が救えない」と訴える。
戦後、日本の基準は家族だった。1978年の厚生白書には、同居は「我が国の福祉における含み資産」との記述がある。当時は高齢者の約7割が子供と同居し、面倒をみるのが当たり前とされた。80年代には配偶者特別控除や専業主婦の第3号被保険者制度が導入され、家族像が固定化されていった。

同じころ、欧州は経済的苦境から抜け出すため女性活躍にかじを切った。日本と正反対の政策は、共働きを前提とした子育て支援につながり、比較的高い出生率の要因とされる。
京都産業大の落合恵美子教授(家族社会学)は「80年代の経済的成功が改革の意欲をそぎ、家族モデルが固定された。女性の社会進出の遅れは『失われた30年』の要因にもなった」と指摘する。

家族の姿は半世紀で一変した。2020年の国勢調査では単独世帯が一般世帯の38%を占めた。「サザエさん」型の3世代同居は4.1%。家計調査が標準世帯としていた「夫婦と子供2人」は1割を切る。非婚化が進み、およそ3組に1組が離婚し、死別後も長い人生が待つ。迫る「総おひとり様社会」と日本はどう向き合うべきなのか・・・

倫理的・法的・社会的課題。ELSI

11月29日の読売新聞に「ELSI研究 活発化 先端科学 社会への影響は 混乱回避 倫理・法的観点で」が載っていました。

・・・最先端の科学技術は社会に恩恵だけでなく、予期せぬ混乱をもたらすこともある。そうした科学技術の光と影を踏まえ、研究開発がもたらす「倫理的・法的・社会的課題(ELSI(エルシー))」を検討する研究が国内でも活発化してきた。研究対象は、人工知能(AI)や脳科学など幅広い最先端領域に広がるが、人材育成など課題も残る。
利用が急拡大する生成AIでは、個人情報や著作権の保護などを巡る議論が、技術の普及を後追いするように進んでいる。ELSI研究は、こうした混乱を避けるために、技術開発の過程で社会との関係などを議論するものだ・・・

ELSIとは、Ethical(倫理的)、Legal(法的)、Social(社会的)なIssues(課題)の頭文字による略語。人の全遺伝情報を解読する「ヒトゲノム計画」が1990年に米国で始まった際、必要性が主張された。現在は、強力な計算能力を持つ量子コンピューターが既存の暗号を解読することによる混乱や、脳科学で読み取った意思に関するデータの取り扱いなど、科学技術全般で議論されている。兵器利用の是非や、技術を使える層と使えない層との格差拡大など、論点も多岐にわたる、とのことです。

科学技術の進歩が人間社会を混乱させないように、悪影響を及ぼさないように、制御しなければなりません。産業用機械や自動車などの事故の防止から始まって、核・生物・化学兵器の禁止など。科学の進歩が急速、かつ大規模なだけに、新しい問題も多岐にわたります。

アジア大会と政治

読売新聞オンライン、10月8日の「君が代や日本の得点にブーイング、韓国と北朝鮮の合同チームなし…アジア大会閉幕」から。

・・・一方、あらゆる場面で政治的な背景を感じる大会でもあった。過去大会は韓国と北朝鮮による合同のチーム結成や行進が話題となったが、関係悪化で今大会は見られなかった。

サッカー女子の日本対北朝鮮戦は、国歌斉唱で君が代が流れるとブーイングが始まり、日本が得点するたびに落胆の声が響いた。バスケットボール女子の日本対中国戦も、日本の好機のたびにブーイングが起きた・・・

国語辞典を作る

中世ラテン語の辞書を編む 100年かけてやる仕事』の続きです。いくつも、なるほどと思うことがあったのですが、一つだけ書き留めておきます。日本の辞書の歴史です。

現存する最古の辞書は『篆隷万象名義』で、空海が編集し、830年以降にできたとされています。漢字辞典です。『和名類聚抄』は930年代にできた、国語辞典兼漢和辞典兼百科事典です。広辞苑のご先祖ですかね。

明治になって、政府は一人前の国になるために、国語辞典と文法書が必要と考えます。最初の本格的国語辞書は、明治24年に完結した『言海』です。明治憲法が施行されたのが明治23年です。出版祝賀会には、初代総理大臣・当時枢密院議長の伊藤博文などが出席しています。しかし、これは私費で作られたのです。日本には、国が作った辞書は一冊もないとのことです。

日本は、国語に無関心な国だと思います。義務教育学校で国語が教えられ、規範はあるのですが、国定の文法書も書き方の標準もありません。文科省が定めた常用漢字表記のよりどころなどがあり、国立国語研究所もありますが。原稿を書いていて、どこで句読点を打つのか、迷うことが多いです。
そして、英語をカタカナで表記したカタカナ語が氾濫しています。多くは、国語辞典にも載っておらず、素人には理解しにくい、また覚えられない言葉です。カタカナにすらせず、アルファベットのままで使っている新聞もあります。
多くの国語辞典では、ひらがなとカタカナが見出しで言葉を検索します。アルファベットは見出しに立っていないのです。困ったことです。関係者は、どのように考えているのでしょうか。