カテゴリーアーカイブ:社会と政治

日銀総裁、日本は世界のフロントランナー

2010年10月25日   岡本全勝

10月21日の朝日新聞オピニオン欄は、白川方明日銀総裁のインタビューでした。1ページもの大きなものですが、一部紹介します。詳しくは、原文をお読み下さい。

(問)今回の金融緩和を打ち出した時、日銀を世界の中央銀行の「フロントランナー」と表現しました。
(答)金融危機後に欧米の中央銀行が取った政策のほとんどは、日銀が90年代後半から2000年代前半に採用したものだ。そして今、日本が直面している問題は、欧米も経験していない新しい状況になっている。にもかかわらず、金融政策の議論はいつまでも欧米での議論が前提となっている。だから「自分たちの頭で考えよう」という気持ちを込めて、フロントランナーという言葉を使った。

(問)日銀が十分な金融緩和をしているとしたら、日本経済が回復するためにさらに必要なことは何ですか。
(答)将来への展望が開けにくいと、多くの人が思っている。成長への展望を切り開いていくことを、企業、金融機関、当局それぞれがやるしかない。今の日本経済が直面している問題を、正確に理解することも重要だ。
例えば物価が持続的に下落するデフレ。人口減少と生産性上昇率の低下から、潜在成長率がじわじわ下がる傾向に歯止めがかからないことが、デフレという現象に出ている。これが問題の本質だと、正確に理解しないといけない。痛みを伴うが、これに取り組まない限り、デフレから脱却できないという基本認識をしっかり持つ必要がある。

(問)企業は何をするべきなのでしょうか。
(答)企業は高い利益を享受できる新たな市場を創造し、開拓していくチャレンジが大事になる。日本の企業は、これまで主としてコスト削減やコスト構造の改善による生産性の引き上げを優先する戦略をとってきた。いわば経営の効率性の追求だ。これはこれで大事だと思う。ただ、日本は今、人口が減少していて既存の国内市場が縮小に向かう中で、「市場を創る」という戦略がない限り、発展はやはり難しい。

(問)政府に求められることは何ですか。
(答)政府の最大の仕事は、企業や金融機関がチャレンジしていくことを可能にする環境を整備していくことだ。グローバルな競争上、日本の企業が不利になる制度がないか、不断に点検していくことが求められている。すでに政府の検討は始まっているが、自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)の推進、税制や規制の見直しは重要なポイントとなる。人やモノが成長分野に流れるようにしていかないといけない。柔軟性がカギだと思う。個人が挑戦して失敗しても、もう一回挑戦できるセーフティーネット(安全網)の整備もやはり必要だ。

(問)課題が山積していますね。
(答)ただ、悲観しすぎてはいけない。かつての成長率の高さはなくなったが、冷静にみれば日本の強みもたくさんある。
日本は労働時間を減らしてきたが、それでも単位時間当たりの生産性上昇率は、今も米国と比べてそれほど負けていない。金融システムも安定している。リーマン・ショックが起きて先進国の金融機関の経営が悪化した時でも、日本だけは金融機関の貸し出しは増加した。さらになにより成長著しい中国などのアジア諸国と近い。
最近の日本社会を見ていると、気分の持ちようも大事だと思う。すべてを否定的に考える気分の持ちよう自体が、経済の成長力を落としている面もある。過度の悲観論は、一掃した方がいい。

公を支える官以外の主体

2010年10月19日   岡本全勝

10月18日から朝日新聞夕刊の連載「生きている遺産、暮らしの知恵」が、歌や踊りでない無形文化遺産を取り上げています。一つの社会が受け継いできた、技術、制度、対処法などです。
18日は、スペイン、バレンシア平野の水法廷でした。灌漑水路にかかわる訴訟を、農家の代表が裁きます。会員は1万世帯あまり、1000年続く伝統だそうです。この裁判は、司法への市民参加、慣習的裁判所として憲法で認められ、一般の裁判所と同じ効力を持ちます。地域の制度資本ですね。
一方、日経新聞19日の夕刊「ニュースの理由」は、イギリスのキャメロン政権が、大胆な構造改革に取り組んでいることを伝えていました。「大きな社会」を掲げ、中央政府の権限を民間企業や地域社会、慈善団体に委譲します。サッチャー首相が進めた「小さな政府」は、政府の役割を縮小し市場経済に委ねようとしました。これに対し、キャメロン首相は、大きな政府を代替するのは市場ではなく、「社会」「家庭」「個人」としています。「国家対市場」でなく「国家対家庭」の戦いだそうです。
政府が拡大したのは、行政サービスを拡大したこと、そしてその背景には市場の失敗と家庭の失敗を引き受けたことにあります。民営化、民間委託は、政府が行政サービスに責任を持つが、執行は民間企業に任せることです。ごみ集めの民間委託を考えて下さい。
さらに、福祉サービスなどは、家庭や地域社会が担っていた役割を、国家が引き受けました。すると、その仕事を政府から委譲する場合は、相手は企業ではなく、家庭や地域社会、NPOに渡すことは合理的ですね。

国際交流の成功事例・JETプログラム

2010年10月2日   岡本全勝

10月1日朝日新聞オピニオン欄、ウィリアム・ブリアー元アメリカ国務省日本部長の発言「日本を広める第3の波」から。
・・グローバル化がますます進む今日の日本に欠かせない国際交流事業がある。JETプログラムという、米国人青年らによる小中学、高校での英語補助学習などを通して、日本の若者に国際社会の窓を開けるユニークかつ大胆な実験だ。最近、このプログラムが政府の事業仕分けの見直しの対象にされているようだが、JETこそ日本政府が最も成功し、どの国もつくり得なかった対市民外交の一つであると強調したい。
JETを通じて米国、その他の先進英語圏などから参加した多くの若者たちは、日本を好きになり、日本語を話し、日本人や文化を理解してきた。この若者たちは米欧世界における日本研究の「第3の波」をもたらしている、と私は言いたい。
米国における第1波は、19世紀後半にあった。米国人美術収集家たちが日本美術商と協力し合い、ボストン美術館やワシントンのフーリア美術館に優れた日本コレクションを収蔵した。日本の美と文化は米国人を魅了し、最初の日本研究を打ち立てた。
第2波は、悲劇的な第2次大戦の結果として出てきた。戦時中、米政府は主に日本人捕虜の尋問のため、何千人もの日本語話者を育てた。多くは戦後、米国に戻り、新たな興味を抱いて日本研究に取り組んだ・・
1987年に始まったJETは第3の波を引き起こし、新たな世代を生んでいる。JETを卒業した米国青年たちは、以前とは全く異なった日本および日本人観を持って帰国する。多くは日本に好感を持ち、米国内でそれを伝える重要な役割を果たしている・・
米国のフルブライト基金や英国のローズ奨学金もあるが、日本はJETこそ政府の国際教育事業の最大の成功事例と誇るべきである・・
JETプログラムについては、こちらをご覧下さい。

口蹄疫、封じ込めか選抜か

2010年8月29日   岡本全勝

28日の朝日新聞オピニオン欄「私の視点」、萬田正治鹿児島大学名誉教授の、今回の宮崎県の口蹄疫についての発言から。
・・根本的な問題は、旧態依然たる国際獣疫事務局(OIE)の指針とそれに従う日本の対応策、そして近代化畜産にあるのではないか。
OIEは、世界を口蹄疫発生がない「清浄国」と、ある「非清浄国」に分類する・・しかし、グローバル化で人と物の往来が地球規模で頻繁に行われる今日では、人や物に付着する病原体を陸海空の国境ラインで未然に防ぐことはほぼ不可能だ・・
そもそも細菌やウイルスなどの病原体に対して、人間を含む動物はその抗体を獲得し、抵抗力を身につけて対処してきた。これに対して病原体は耐性を獲得したり、新型の病原体となったりして反撃する。再び動物はその抗体をつくる。この繰り返しが生物の進化だ。従って、無菌化社会を進めていけば、かえって動物が持つ免疫力を衰弱させ、動物たちを危機に陥らせることになる。清浄国の家畜たちは、口蹄疫ウイルスに日頃遭遇しないために口蹄疫に抵抗力をもたないひ弱な家畜となり、ウイルスの侵入で発病し、大騒動となる。
今回、全頭殺処分ではなく発病しなかった家畜を残せば抵抗力のあるものを選抜する結果となり、低コストの有効な対策となっただろう。マスコミ報道は国民に恐怖感を与えたが、この病気は一般に人間には感染せず、動物の致死率も低い。健康な家畜を育て抵抗力をつければ、怖い伝染病ではない・・
そのような考え方も、あるのですね。

アメリカ書店事情

2010年8月29日   岡本全勝

28日の朝日新聞別刷りbe「フロントランナー」小城武彦丸善社長のインタビューから。
・・米国は日本の25倍の面積ですが、書店数は1万店を切っています。一方で、日本は1万5千店以上残っている。米国で本を買うには、車で30分走らなければいけません。日本人は通勤や通学途中に立ち寄って買えます・・