カテゴリーアーカイブ:社会と政治

政策拡充の効果検証、育児休業制度

2011年3月6日   岡本全勝

3月4日の日経新聞「経済教室」は、大石亜希子千葉大准教授の「非正規社員の育休重視を」でした。
育児休業制度が法制化されて、19年になるのだそうです。まだ新しいのですね。この間、休業中の所得保障も拡充され、賃金の50%になっています。これは、OECD各国の平均を、上回っています。2009年度にこの給付を受給した人は、18万人です。しかし、年間出生数の2割でしかないのです。また、7割の女性は仕事を辞めていて、就業継続率はほとんど上昇していません。
教授の分析では、正規雇用社員は育児休業を取得し、就業を継続しています。しかし、非正規雇用が増え、彼女たちは就業を継続していないのです。25歳から34歳の女性雇用者のうち非正規雇用の割合は、1995年には27%だったのが、2010年には42%にもなっているのです。

ところで、この論文の中に、次のような耳の痛い記述があります。制度が拡充してきて、OECD各国を上回ったという指摘に続いてです。
・・ところが、このように相次ぐ育児休業給付の拡充が、実際に育児休業の取得を促進し、女性の就業継続率を引き上げる効果をもっていたかどうかは、これまでまったく検証されてこなかった。政策評価の観点からは、驚くべきことといえよう・・

自信のない日本の若者

2011年2月26日   岡本全勝

日米中韓の4か国の高校生を対象とした調査結果が、報道されていました。25日の読売新聞、26日の日経新聞など。調査は、心と体の健康についてですが、興味深いのは、自己評価についてです。
「私は価値のある人間だと思う」は、日本7.5%、米国57.2%、中国42.2%、韓国20.2%です。
「自分を肯定的に評価するほう」は、日本6.2%、米国41.2%、中国38.0%、韓国18.9%。
「私は自分に満足している」は、日本3.9%、米国41.6%、中国21.9%、韓国14.9%。
「自分が優秀だと思う」は、日本4.3%、米国58.3%、中国25.7%、韓国10.3%。
いずれも、日本が飛び抜けて低いです。本心から思っているのでしょうか、内心は別だけど謙虚に振る舞っているのでしょうか。心配になります。
親との関係においても、日本の高校生は、自分の優秀さを親が評価していることへの肯定率が低いとのことです。米国91.3%、中国76.6%、韓国64.4%に対し、日本は32.6%です。
このような傾向は、本人が一人で考えて身につけたものというより、社会の風潮を学んだ、影響を受けたことの方が大きいと思います。私たち親の言動、マスコミの言動が、このような傾向をつくっているとしたら、私たちの責任ですね。

安全基準の日本標準と世界標準

2011年2月14日   岡本全勝

2月13日の日経新聞「中外時評は」、滝順一論説委員の「原子力もガラパゴス。安全規制を世界標準に」でした。日本の原子力発電所の安全規制についての「特殊性」を論じています。
日本の安全規制は、これまでの事故などを踏まえて、積み重ねられてきました。それはそれで意味があるのですが、結果として安全性が高まったのかというと、専門家は首をかしげるそうです。国民へのリスクが増した恐れすらあるそうです。
安全を重視することはよいのですが、パッチワークの積み重ねで、全体を通した視点が欠けているようです。これは、外国の規制と比較した時に、明らかになります。島の中では素晴らしいと思っていても、島の外から見ると変だというのが、ガラパゴスです。外との競争のない世界では、独自の変化が起き、それが必ずしも合理的でないという例です。
その結果、施設や技術としては世界最先端であっても、管理ノウハウや安全の法体系は後れを取り、世界に輸出できないことになります。日本の社会のソフトエアが、世界に輸出されていないことについては、「社会の制度・インフラの輸出」(1月10日の記事)に書きました。

地域社会の開国

2011年2月9日   岡本全勝

日本では、行政が個人を把握する制度が、いくつかあります。一つは戸籍です。これは、国家が、個人の身分関係(出生、親子、夫婦関係など)を登録するものです。もう一つは住民基本台帳です。これは、地方自治体が住民を把握し、行政サービスの基礎とするためのものです。そして外国人には、別に外国人登録制度があります。
ところで、平成24年7月までに、外国人住民も住民基本台帳に載るようにする改正されます。これまでは、日本人と外国人を分けて把握していたのです。市町村が行政サービスをする際に、外国人住民を十分に把握できませんでした。そこで、外国人住民も住民基本台帳に載せるように変えることになりました(詳しくはこちら)。
これまでの登録制度は、外国人を「管理」するためでしたが、「住民としてサービスするために把握する」ものに変わるのです。これについて、「外国人住民を日本人と同様に扱い、地域社会の構成員として共生する基盤ができる」という評価もあります。外国人も、地域の住民として同様に扱うということです。こんなところにも、古い考え方が残っていたのですね。
この改正を議論した研究会の報告書(平成20年12月)に、興味深い数字が載っています。少し古くなりますが、紹介します。外国人登録者数は215万人で(平成19年末)、総人口の2%です。この数字は、10年間で1.5倍に増加しています。国際結婚は17組に一組です。

社会の制度・インフラの輸出

2011年1月10日   岡本全勝

1月9日の朝日新聞経済欄で、韓国がカンボジアやラオスで、証券取引所の売り込みをしていることを伝えていました。市場経済の重要なインフラである証券取引の仕組みを、教えるのです。
新興国にとって、もの作りを輸入するだけでなく、経済や社会の制度・インフラを輸入することも重要です。日本も明治以来、たくさんの制度を欧米から輸入しました。典型が、法律や行政の仕組みです。
日本も先進国になったので、アジアなどの新興国のお手伝いをすることが、期待されています。法務省が、カンボジアなどでの法整備に協力していることが有名です(参考文献、松尾弘著『良い統治と法の支配-開発法学の挑戦』(2009年、日本評論社)など)。また、JICA(国際協力機構)が、いろんな技術援助をしています。
少し視野を転じて、先進国を含めた世界への社会インフラの貢献となると、あまり思いつきません。かつて、日本が先進国に「輸出」した法律の例として、迷惑メール防止法を教えてもらったことがあります。アメリカの国会議員が、日本に勉強に来たのです。他に、何かありますかね。