カテゴリーアーカイブ:著作

連載「公共を創る」第128回

2022年9月2日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第128回「政治・社会参加で「つながり」を得る」が、発行されました。
社会の不安をどのようにしたら解消できるのか、私たちと行政は何をしたらよいのかを考えています。政治参加と社会参加の重要性を述べてきました。今回は、その背景と理由について説明します。

これからの行政を考え、安心社会をつくるという議論の中で、なぜ社会参加を考えなければならないのでしょうか。
それは、成熟国家になった日本で国民が抱えている不安は、これまでの政府活動の延長では解決できないからです。すなわち、国民の不安である格差と孤立を生んでいるのは、行政サービスの不足ではなく、社会の在り方、私たちの暮らし方、通念だと考えるからです。そして、この課題を解くカギが社会参加ではないかと考えています。

かつての日本社会の仕組みや国民の通念は、農村社会や発展途上時代には適合し、成功を導きました。しかし成熟社会になってからは、私たちの暮らし方とずれが生じ、それが種々の問題を生んでいるように見えます。
かつての「ムラ社会」では、人々は家族、親族、地域、職場といった場所でいや応なしにこの線に絡め取られました。ところが法制や社会の変化、経済成長のおかげで、これらの束縛から解放され、自由に生きることができるようになりました。しかし「つながりはなければ良い」というものではなかったのです。自由になった個人は改めて他者とのつながりをつくり、「ムラ社会での安心」から「他者と共存する信頼づくり」へ、「与えられた付き合い」から「自分でつくる付き合い」へ変えていかなければならないのです。

河北新報社『復興を生きる』

2022年8月30日   岡本全勝

河北新報社編集局編『復興を生きる 東日本大震災 被災地からの声』(2022年8月、岩波書店)を紹介します。
河北新報社が、震災10年を機に連載した「東日本大震災10年報道」を、本にしたものです。2021年度新聞協会賞企画部門を受賞したとのことです。

大震災の被害については、たくさんの報道と記録があり、その後の復興についても、継続的に報道されています。しかし、10年を機にその復興を振り返ることは、価値があります。
自然災害は自然が引き起こすもので、防ぐことができない部分もあります。他方で復興は、私たち人間が取り組むものです。10年というのは一つの区切りですし、津波被災地ではほぼ復興工事は完了しました。
町がどのように復興したか、産業や暮らしがどう変わったか。それを検証して欲しいです。復興庁も、インフラの復旧だけでなく、産業となりわい、人とのつながりやコミュニティの再生も支援しました。インフラの復旧だけでは、町の暮らしが戻らないと気づいたからです。

政府や自治体もその記録を残していますが、地元の新聞社という立場から復興を振り返ってもらうことは、政府と自治体にとっても有意義だと思います。時に厳しい意見もありますが、今後起きるであろう大災害の際に教訓となります。
当事者も関係者も最善を尽くしたのですが、初めての経験でもあり、手探り状態でした。振り返って「こうすればよかった」ということもあるでしょう。第10章で、復興庁が取り上げられています。

私の発言も、93ページ、212ページに載っています。2021年3月18日の記事は、収録されていないようです。

連載「公共を創る」執筆状況

2022年8月29日   岡本全勝

恒例の、連載原稿執筆状況報告です。
第130回(9月29日掲載予定)の原稿を書き上げ、右筆にズタズタにされて、編集長に提出しました。これで、8月締めきり分の原稿を、遅れずに提出することができました。問題は、その先です。

第4章「政府の役割再考」2「社会と政府」は当初、(1)「社会を支える民間」、(2)「政府の社会への介入」、(3)「政府の役割の再定義」で構成して、その次に3「近代憲法構造の次に」で締めようと考えていました。
ところが、(2)「政府の社会への介入」が思いのほか長くなったので、いったん切ることにしました。そして(2)の後半に予定していた内容を、(3)「社会をよくする手法」と独立させることにしました。

で、次の原稿は、その中の構成を考えなければなりません。いくつか素材は集めてあるのですが、それらを並び替えるとともに、全体を調整しなければなりません。これは結構大仕事で、重要なのです。先日から着手しているのですが、他の原稿も抱えていて、進みません。

また、その後の構成を、3「政府の役割の再定義」、4「社会は創るもの」に変更することにしました。まあ、書いて行くうちに変わることもありますが。

連載「公共を創る」第127回

2022年8月26日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第127回「政治・社会参加の重要性」が、発行されました。
前回に引き続き、税金に関心を持ってもらう話を続けます。イタリアでは個人所得税の千分の8を宗教団体に、5を非営利団体に、2を政党などに納めることができます。スウェーデンでは、毎年の年金納付額が所得の一定割合に固定され、それが積み重なって本人の年金受給権が増えていくことを確認できます。

なぜ、このような政治参加や社会参加、そしてその国民の意識を議論するのか。それは、現在の日本社会の不安は、社会の仕組みと国民の暮らし方や意識によって生じているからです。そして、政府、行政による公共サービス提供では、解決しないのです。

ところで、政治学と行政学は政府の役割について、経済学と財政学は市場の役割と政府の関与について大きな蓄積があるのですが、社会については、社会学が分析はするのですが、どのように改善すべきか、政府や私たちはどのように変えるべきかの議論はあまりしません。
社会学は、哲学のような深遠な議論をするものから、格差や孤独なの身近にある具体問題を扱うものまで、様々なものを含んでいます。その全体像を系統的・分類的に示すことは難しいでしょう。私が期待するのは、社会学のうち「実用の学」と思われるものを集めて、分類し、それらを全体的に議論することです。政治学、経済学(の一部)が「実用の学」であると同様に、社会学にもそれを期待したいのです。「公共社会学」という学問分野の考え方もあるようです。それが発展することを期待します。

連載「公共を創る」第126回

2022年8月19日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第126回「政治・社会参加を促す具体策」が、発行されました。社会参加の意識を議論しています。政策として本格的には取り組まれていないのですが、今回は、いくつか特徴的な動きを紹介します。

学校の部活動を教員に指導させるのではなく、民間に委ねようとする動きがあります。ドイツでは、学校の部活動がなく、地域のスポーツクラブが引き受けています。
裁判員制度は、国民に政治参加を促す方法の一つです。日本では選挙の投票に行くか行かないかは、本人に委ねられていますが、義務にしている国もあります。政治教育の一環とも考えられています。

日本では勤め人は、所得税の計算と納税を会社がやってくれます。計算書はもらいますが、関心は少ないでしょう。税金の天引きは多くの国がやっているのですが、年末調整は本人が税務署に申告する国が多いようです。そこで、自分の納税額とその計算に関心を持つのです。