連載「公共を創る」第128回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第128回「政治・社会参加で「つながり」を得る」が、発行されました。
社会の不安をどのようにしたら解消できるのか、私たちと行政は何をしたらよいのかを考えています。政治参加と社会参加の重要性を述べてきました。今回は、その背景と理由について説明します。

これからの行政を考え、安心社会をつくるという議論の中で、なぜ社会参加を考えなければならないのでしょうか。
それは、成熟国家になった日本で国民が抱えている不安は、これまでの政府活動の延長では解決できないからです。すなわち、国民の不安である格差と孤立を生んでいるのは、行政サービスの不足ではなく、社会の在り方、私たちの暮らし方、通念だと考えるからです。そして、この課題を解くカギが社会参加ではないかと考えています。

かつての日本社会の仕組みや国民の通念は、農村社会や発展途上時代には適合し、成功を導きました。しかし成熟社会になってからは、私たちの暮らし方とずれが生じ、それが種々の問題を生んでいるように見えます。
かつての「ムラ社会」では、人々は家族、親族、地域、職場といった場所でいや応なしにこの線に絡め取られました。ところが法制や社会の変化、経済成長のおかげで、これらの束縛から解放され、自由に生きることができるようになりました。しかし「つながりはなければ良い」というものではなかったのです。自由になった個人は改めて他者とのつながりをつくり、「ムラ社会での安心」から「他者と共存する信頼づくり」へ、「与えられた付き合い」から「自分でつくる付き合い」へ変えていかなければならないのです。