連載「公共を創る 新たな行政の役割」が、始まりました。『地方行政』4月25日号からです。毎週木曜日に載る予定です。
第1回は、「はじめに その1」。行政を考えるのに、なぜ公共から始めるかです。
・・・これから、皆さんと一緒に、「公共」ということについて、考えたいと思います。なぜ今、公共を考えるのか。
それは、これからの行政を考えるには、これまでの行政の範囲を超えて、より広い視野で捉えなければならないからです。
日本の行政は、豊かさという目標を達成しました。他方で、私たちの暮らしとそれを支えている社会が、大きく変化しています。住みよい社会をつくるには、広く公共を考え、その中での行政が果たすべき役割を考える必要があるのです。そこで、公共とは何か、どのように変化しているか、そしてこれからどのように変えていくべきか。それを考えたいのです。・・・
行政を考える際に、なぜ公共から考えるのか。次の三つがその理由であり背景です。
1.日本社会が、大きな転換期を迎えていること。
2.公と私の境界が、揺らいでいること。
3.行政も、大きな転換点にあること。
・・・明治から数えて150年。日本は、東洋の貧しい農業国から出発し、世界有数の豊かな国になりました。その間に、社会の大転換を2度経験しました。1度目は明治維新であり、2度目は戦後改革です。大きな犠牲を払いながらも、これらによってうまく転換できたことで、豊かで、自由で、平等で、安心できる社会をつくることができました。
その基礎に、日本には、憲法に書かれてはいない「国家目標」と「この国のかたち」がありました。「国家目標」は、先進国のように豊かになることでした。そのために、先進国を手本に国民みんなで努力することが、「この国のかたち」でした。・・・
・・・ところが、豊かさという国家目標を達成すると、次の目標を立てる必要が出てきます。また、お手本を学び輸入するという「この国のかたち」は、手本があり目標がはっきりしている場合には効率的だったのですが、目標を達成して手本がなくなった時に、役に立たなくなったのです。欧米先進国に追い付いたことで、追い付き型発展という手法が終わりました。平成の日本の停滞は、ここに原因があります。経済の停滞も社会の不安も、その大きな原因は、追い付き型発展が終わったことなのです。
日本は今、3度目の大転換期にいます。転換を迫られているのは、目標と共に、日本社会の在り方であり、国民の意識です。この連載では、それについて考えたいと思います。・・・
この主張は、何度も繰り返しています。これからの行政を考えるに当たって、再度これを基本に考えます。