カテゴリー別アーカイブ: 連載「公共を創る」

連載「公共を創る」第165回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第165回「政府の役割の再定義ー組織の目標と幹部の役割」が、発行されました。
行政組織において、どのようにしたら政策や業務の見直しが進むかを議論しています。今回は組織の目標という観点から考えてみます。
業務の見直しを進めるには、上司が部下にその目標を示すことが重要でした。それに対して、政策の見直しを進めるために、組織の目標はどのように設定されているかです。

各課の目標はどのようにして設定されるのでしょうか。その目標は、課長が部下に与える目標の出発点であるはずです。まず課の目標があり、それを分配したものが各職員の目標になっているはずです。
ところが現状では、国では府省の任務と各局・課の所掌事務は明示されているのですが、それらの組織が達成すべき目標、すなわち整理すべき課題と解決の方向は記されていません。

組織の目標には「所管している制度の運用」「所管行政に関する課題への対応」という二つの軸があるのだと思います。
一般化すれば、前者の既存制度の運営は、課長以下の職員が主に担うことであり、省の幹部である局長が細かいところまで関与する必要はないでしょう。
それよりも局長が力を割くべき主たる役割は、社会全体を見渡しながら、その中で自らの所管行政に関する課題を発見し、その解決を組織の目標の中に組み込むことです。
この点が、まだ十分に理解されていないようです。

社会の変化を表す「貧若同縁から豊熟異独へ」

産業の変化や消費者の嗜好の変化を「重厚長大から軽薄短小へ」と表現することがあります。
それにならって、社会の変化を表す言葉を考えてみました。昭和後期の経済成長期の日本社会と、平成・令和の成熟社会の変化を表そうと考えたのです。連載「公共を創る」執筆の一環です。

「貧若勢同縁」から「豊熟滞異独」を考えてみました。意味するところは、次の通り。
経済成長期=貧しかった、平均年齢が若かった、経済成長の勢いがあった、同調を求められ画一的だった、家族・地縁・社縁というつながりが強かった。
成熟期=豊かになった、高齢化した(成熟)、経済が停滞した、他者と異なっていること多様性が許されるようになった、自由になったが孤独になった。

5文字もあるし、こなれた言葉ではないので、覚えにくいですね。
4文字にして、「貧若同縁」から「豊熟異独」はどうでしょうか。
もっと良い案があれば、提案してください。

連載「公共を創る」執筆状況

久しぶりに、連載「公共を創る」の執筆状況報告です。
相変わらず、毎週(正確には1か月に3回)の締め切りに終われています。書く内容は集めてあるのですが、まとまった執筆時間が取れないのです。隙間時間はあるのですが、集中しないと筆は進みません。いつも同じことを言っています。

右筆の多大なる貢献によって、連載は毎回の締め切りを守ることができています。もう一つ引き受けているコメントライナーの次回原稿は、余裕を持って提出することができました。

もう一つ追われているのが、このホームページの執筆です。毎日、勉強になった記事の紹介と、私の日常生活とを書いています。
前者は、切り取った新聞紙が半封筒にたくさん貯まっています。世の中の変化は激しく、学ぶべきことがたくさんあります。
スペイン旅行中に処理できなかった新聞から切り取った記事がたくさん貯まっていたのですが、3週間かけて目を通し、在庫一掃することができました。興味深い記事がたくさん集まりました。しかし多すぎて、ホームページでの紹介が追いつきません。

もちろん、本業もあります。そのほか今月はいくつも講演を引き受けていて、その準備も必要です。
毎日、講演準備と連載原稿とホームページ執筆を前に、急ぎのものから片付ける「自転車操業」をしています。職場でも、読みたいと取ってある資料が貯まるばかりです。
読みたい本を読むことも、進みません。
夕ご飯を食べた後、すぐに寝ずに作業をすれば良いのでしょうが、そんな気にはなりません。

連載「公共を創る」第164回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第164回「政府の役割の再定義ー公務員の「目標」」が、発行されました。

官僚機構が国民の期待に応えていない現状を分析しています。そこにあるのは、新しい課題への対応ができていないこと、その裏返しとして既存政策の転換が遅れていることであり、突き詰めれば「目標設定の失敗」です。この問題を考えるために、公務員の目標と評価から始めます。

国家公務員に、目標による評価制度とそのための期首面談と期末面談が導入されたのは、この20年ほどのことです。制度が導入される前は、どのようにして目標の設定と共有が行われていたのか。
期首に目標の確認などほとんど、いえ私が知る限りでは、霞ヶ関でも自治体でも誰もしていなかったのです。私は40数年の公務員生活で、上司と期首あるいは異動直後に目標のすりあわせをした経験がありません。
各職員に職務を明示する「ジョブ型」の職場では、各人の業務内容と期待する成果を示した職務記述書が必須です。しかし、職員を一括採用し、係みんなで仕事をする日本の「メンバーシップ型」の職場では、それがなくても、引継書と前任者の作っていた資料を見ながら、周囲の同僚の支援で仕事を進めることができたのです。

しかし、毎年同じ仕事を(少々右肩上がりに)こなしていくだけで済む時代が終わり、各職員に「自分は何をすれば良いのか」を理解してもらう時代が来てみると、管理者が目標を明示し、職員と共有することが必要です。それなしに必要な都度に指示をしていくのでは、職員も不安で、工夫の余地もないでしょう。各人ごとの目標を職員と共有し、職員の達成度や工夫を見る中で、その職員を評価する意味も明らかになります。
近年、新型コロナウイルス感染防止などのために、在宅勤務が進みました。これも、「方向性はわかっているけど、細かい進め方がちょっとわからないので、隣の人に聞く」という仕事の進め方ではなく、引継ぎ書と目標管理ができていたからこそ、可能になったということができるでしょう。逆に、その「作法」を知らず、誰に相談すれば良いかがわからない新人には、つらい職場だったのです。
また、このような引継ぎ書と同僚の協力に依存し、上司との間での意思の交換に基づかない仕事の進め方は、職場の同僚との人間関係がうまくいっていない場合には、困ったことになります。

連載「公共を創る」第163回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第163回「政府の役割の再定義ー改革の仕組み方と官僚機構の転換方策」が、発行されました。
前回、官僚や公務員が新しい仕事に取り組まない理由を整理しました。今回は、どのようにしたら、行政組織において改革が進むのかを説明しました。役所の現場でも参考になると思います。

まず、業務の転換についてです。
・職員の誘導
・管理職の役割
・既存事業の廃止と再編成
・職員と幹部の共同作業
・一度作った事業はなくならない
・成熟期の困難

次に官僚機構の転換についてです。
・官僚の失敗=社会の課題が変化したこと
・行政改革の「遺産」=予算と人員の縛りがきつく、新しい課題に取り組めないこと
・行政の手法=社会と課題が変化したので手法も変える必要があること