カテゴリーアーカイブ:社会の見方

高校では地学を学ばない

2025年9月7日   岡本全勝

9月4日の読売新聞夕刊に「理科4分野を高校必修に 科学者が提案 非科学的なデマ拡散防止へ」が載っていました。
高校生のほとんどが、地学を学ばないのですね。東日本大震災の話をする際に、地表のプレートが衝突する仕組みから始めることにしています。投影する図は、鎌田浩毅先生に作ってもらいました。先生に「大学生でも、知らないのですね」と尋ねたら、「高校で学んでいないから」との答えでした。この図は、外国政府幹部への講義でも、活躍しています。

・・・災害や感染症を巡るデマ拡散を念頭に、科学者から「高校で理科4分野を全て学ぶようにするべきだ」との声が上がっている。大学の研究者や高校理科教員などの研究グループは4月、各分野を横断的に学ぶ新科目の創設を文部科学省などに提案した。2030年度から順次実施される次期学習指導要領での導入を求めている。

現在の高校理科の学習指導要領では、物理、化学、生物、地学の基礎のうち3科目(計6単位)か、いずれか1科目と「科学と人間生活」の計2科目(計4単位)が必修だ。4科目(計12単位)が必修だった1960年代などと比較すると、理科を学ぶ機会は減っている。
文科省によると、地震などのメカニズムも学ぶ「地学基礎」の授業を1年次に開設した普通科の公立高校は7・1%(2023年度)にとどまった。生物基礎(59・2%)や化学基礎(48・8%)とは大きな開きがある・・・

・・・非科学的なデマ拡散は相次いでおり、SNSでは「7月に日本で大地震が起こる」といううわさが広まった。気象庁の野村竜一長官は6月の記者会見で、地震の日時や場所を予測することはできないとして、「デマと考えられるので、心配する必要は一切ない」と述べた。
国立青少年教育振興機構が7月に発表した調査結果では、日米中韓の高校生に「社会に出たら理科は必要なくなる」と思うか尋ねたところ、日本は「そう思う」が45・9%に達した。2位の韓国(33・5%)を大幅に上回っており、学習指導要領を担当する文科省教育課程課は「どうすれば理科への関心を持ってもらえるかも、議論の大きなテーマだ」とする・・・

席を譲られた

2025年9月6日   岡本全勝

先日の地下鉄での出来事です。乗ると、席は埋まっていて、車両の中程まで進み、鞄を棚に乗せました。前に座っていた外国人旅行者2人連れが、席を替わりましょうかと手で合図してくれました。結構ですと手で制しながら、I'm young.と言ったら、笑っていました。

去年イギリスに行ったときに、地下鉄で即座に席を譲られたことを思い出しました。日本の鉄道では、譲ってもらったことはないですね。このことは、去年コメントライナーに書きました。一部を載せます。
・・・先日、ロンドンの地下鉄に乗ったときのことです。私たち夫婦が乗り込むと、若い2人がすぐに立ち上がって席を譲ってくれました。「そんな年寄りではないんだけど」と思いつつ、「サンキュウ」と言って座りました。
帰国して空港から電車に乗ると、大きな旅行鞄を前に置いて座っていた観光客2人が、席を譲ってくれました。アジアの人でしょうか。ここでも「サンキュウ」。しかし、次に乗り換えた電車では、誰も席を譲ってくれませんでした。

小学生の孫が足にケガをし、松葉杖をついて登校しています。ある朝、出勤の際に一緒に地下鉄に乗りました。誰も孫に席を譲ってくれません。座っている人たちは、居眠りをしているか、スマホを操作しているか、まったく周囲に関心がないように見えます。
災害時の日本人の助け合いは、世界が称賛しています。それを支えた他者への思いやりと共助の精神が弱くなると、安心安全な社会は壊れます・・・

日本人は意外と冷たいです。ただし、他人に冷たいのは、最近に始まったことではありません。助け合いの精神が発揮されるのは、「身内」「知り合い」に対してで、「外の人」に対しては冷たかったのです。これは、農村の村社会でつくられた通念、慣習のようです。
鉄道でも、知り合いが来たら即座に席を譲ります。ただしその際は、目上と目下という、もう一つの通念が働きます。

英語とフランス語の語彙の数

2025年9月6日   岡本全勝

岩波書店の宣伝誌『図書』9月号に、野崎歓先生の「サン=テグジュペリ翻訳余滴」が載っています。そこに、次のような文章があります。

・・・英語と比べたとき、フランス語の語彙はかなり少ないと言われている。辞書で比較してみるなら、最も規模の大きな仏仏辞典である『トレゾール仏語辞典』の見出し語は約10万語。それに対し『オックスフォード英語辞典』の見出し語は約29万語と、かなりの開きがある。少ない単語でまかなっている結果、フランス語には多義語が多いということになる。とりわけ基本単語ほど、文脈に応じて異なる意味を担うのだ・・・

そしてterreという単語が、地面、土地、大地、地球とさまざまな意味を持つことが紹介されています。
日本語はどうでしょうか。一番の大きな『日本国語大辞典』は約50万項目とのこと。『広辞苑』は約25万語だそうです。

食品加工の残り物を利用する

2025年9月5日   岡本全勝

9月1日の朝日新聞夕刊「凄腕ものがたり」は、加納千裕さんの「かくれフードロス削減をめざす」でした。

・・・賞味期限切れや食べ残しなど、まだ食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス」。国内では2023年度の推計値が464万トンで、最小値を更新した。
一方で食品加工の段階で出る野菜の切れ端や飲料の搾りかすといった食品残さや、産地で出る規格外作物はこの数字には含まれておらず、年間約2千万トンが廃棄されているとされる。「まだ食べられるのに、もったいない」。これらを「かくれフードロス」と名付け、削減へと奔走している。
独自開発の機械「過熱蒸煎(じょうせん)機」に野菜の切れ端などを入れ、300~500度の過熱水蒸気で乾燥・殺菌し、パウダー化。新しい食品原料に再生する。乾燥にかかる時間は、フリーズドライや熱風といった方法では1日ほどかかることもあるが、過熱蒸煎機を使えば5~10秒と短く、エネルギーコストが抑えられる。食材の風味の劣化や栄養価の減少も抑えられるという。

起業のきっかけは父だった。大手コンビニエンスストアで役員を務めた後、過熱水蒸気を用いて野菜や果物のピューレを製造・販売する会社などを立ち上げた。事業は約20年続けたものの、軌道に乗らずに父は引退することに。自らも手伝っていたことから、「父が長年やってきたことをなくしてしまうのはもったいない。技術を生かして、おいしく健康にいいものを作りたい」と考えた。ピューレは流通時に冷凍させる必要があり、使い勝手の面で課題があったことから、常温で1年間保存できるパウダー化にたどり着いた。今の会社を20年に設立。過熱蒸煎機の開発に着手した。

販路を検討する中で、食品加工工場などに困りごとを聞いて回ると、かくれフードロスの存在が浮かび上がった。カット野菜の工場では、キャベツの外葉や芯が1日に1トン廃棄されていた。キムチ工場では白菜の芯が1日に5トン、リンゴジュース工場では搾りかすが1日に20トン出ていた。
「廃棄コストを削減したいという企業のニーズに応えられるのではないか」
シイタケやオリーブの葉、米ぬか、だしを抽出した後の煮干しやかつおぶし、コーヒーかす……。多様な食品についてパウダー化に取り組み始めた。
昨年2月には、牛丼チェーンの吉野家ホールディングスが過熱蒸煎機を本格導入した。タマネギをスライスする野菜加工工場では、芯や表面の硬い部分など毎日最大700キロの切れ端が出る。年間最大250トンを数百万円かけて廃棄していた。そこで、吉野家に過熱蒸煎機をレンタルしてもらい、できあがったパウダー「タマネギぐるりこ」を買い取る。それをほかの食品メーカーなどに販売し、新たな商品を開発するビジネスモデルを生み出した。パウダーはパンやソーセージ、菓子などに活用されている・・・

不要になった土を回収する

2025年9月4日   岡本全勝

9月2日の朝日新聞東京版に「不要になった園芸用の土を集めます→4カ月で2トン超 三鷹市」が載っていました。
都会ならではの問題ですね。田舎の人が聞いたら、びっくりするでしょう。
でも、私もアサガオやチューリップを植木鉢やプランターに植えるために、土を買いに行きました。買うという「動脈」があれば、捨てる(回収する)という「静脈」も必要ですわね。

・・・東京都三鷹市と武蔵野市にまたがる都立井の頭公園に、園芸用の土の投棄が相次いだことを受け、三鷹市が家庭で不要になった土の回収を始めたところ、4カ月で2トン以上が集まった。市が8月25日、明らかにした。
回収した土は堆肥を混ぜるなどして再生させ、同市で10月4日にある「ガーデニングフェスタ2025」などで無料配布する(1袋5キロ)。

これまで市は、「ゴミではない」として園芸用の土を回収しておらず、市民から問い合わせがあると、有料の回収業者を紹介したり、購入した園芸店に問い合わせるよう促したりしていた。ただ、井の頭公園への投棄が相次ぎ、生態系への影響が懸念される事態になっていた。
そこで、4月から第2土曜日にリサイクル市民工房(深大寺2丁目)と新川暫定広場(新川1丁目)で回収を始めたところ、7月までに延べ301人から2トン以上が持ち込まれた。
1回の持ち込み上限は1世帯10リットル。担当課によると「これでマンションでも安心して園芸が続けられる」といった好意的な声が寄せられているという・・・