カテゴリーアーカイブ:社会の見方

飛び地の中の飛び地、アラブ首長国連盟

2026年3月20日   岡本全勝

時々紹介している、川北英隆先生のブログ。3月17日は「UAEフジャイラへの期待」でした。話題になっている、ホルムズ海峡付近の地理です。そこに、次のような文章があります。

・・・よく見ると領有権が入り乱れている。海峡の北側がイランであるのは確かだが、アラビア半島からの角の突端はオマーン(正確にはオマーンの飛び地)であり、角の下はUAEである。UAEを少し詳細に見ると、その西(ペルシャ湾内)にUAEの最大の都市、ドバイが、東(ペルシャ湾の外)にフジャイラがある。
と、単純に思ってはいけない。フジャイラの少し北側、内陸部にオマーンのもう1つの飛び地があり、しかもその飛び地の中にUAEの飛び地がある。つまり入れ子状態になっていて、UAEの中にオマーン領が、されにその中にUAE領がある。
少し調べると、UAE側の飛び地はシャールジャ首長国のものであり、この部族はかつてイランの海岸部に居住してたのだか、イランに追われ、アラビア半島側に移ったとか。複雑な民族興亡の歴史がありそうだ・・・

西牛東豚

2026年3月19日   岡本全勝

3月1日の朝日新聞に「節約志向、食卓から遠のく牛肉」が載っていました。
・・・家庭での肉の消費が落ち込んでいます。コメ価格が高騰し、物価高が続いていて、節約志向が強まりました。同じ肉のなかでも、高値の牛肉から、値ごろ感のある豚肉や鶏肉へ需要が移っています。
総務省「家計調査」によると、2人以上世帯の生鮮肉の支出は、2025年に年8・3万円と前年から3%増えた。これは金額ベースのみかけ(名目)の値で、物価上昇の影響を取り除いた実質でみると、前年比2%減で5年連続のマイナスになる・・・
・・・一方で、肉は種類によって差が大きい。25年の年間購入量をコロナ禍前の19年と比べると、牛肉は6・5キロから5・4キロへ減った。この間に、豚肉は21キロから22キロへ、鶏肉は17キロから19キロへそれぞれ増えている・・・

紹介したいのは、「西牛東豚」です。
・・・肉の消費は景気の影響を受けるだけでなく、地域差も大きい。
家計調査(23~25年の3年間の平均値)でみると、全国平均の年間支出額は牛肉2・1万円(5・6キロ)、豚肉3・4万円(22キロ)。47都道府県庁の都市別でみると、牛肉は京都が最多で3・6万円、新潟が最少で1・0万円と3・6倍も差がある。豚肉は新潟が最多で3・8万円、福井が最少で2・8万円と1・4倍の差だ。
牛肉は和歌山・奈良・神戸など西日本の都市の支出額が平均より多く、盛岡・前橋・福島・札幌など東日本は少ない。牛肉と豚肉の額を合わせてみると、北海道・東北・甲信越の都市は牛肉より豚肉を好む傾向が、近畿・四国・九州は豚肉より牛肉を好む傾向がうかがえる。鹿児島・福岡・熊本・大分など九州の都市は鶏肉の支出額も上位を占める。

「西牛東豚」ともいえる東日本と西日本の違い。なぜこうした地域差が生じるのかについて、農畜産業振興機構が過去の文献をもとに調べてまとめている。
かつて農耕用として関東以北では主に馬が、近畿では牛が飼われていたが、明治時代の肉食解禁で外国人居留地などで牛肉需要が起こり、農耕牛が食用にも使われるようになった。一方で、関東では旧内藤新宿試験場(今の新宿御苑)で西欧式の養豚が始まり、えさの食品残さが多かった都市部の環境が養豚に適していたため、盛んになったようだという。

全国のセブン―イレブンで売られている肉じゃがは、東日本では豚肉を、西日本では牛肉を使い、それぞれ商品名やパッケージも違う=図下。「地域による食の好みの違いを反映し、販売エリアを分けている」と広報担当者。
牛肉文化のはずの関西では、なぜ豚まんが名物になったのか。
設立から80年余り、「551の豚まん」で知られる蓬莱(ほうらい)(大阪市)。同社は「関西では一般に肉=牛肉を表し、豚肉の入った肉まんを豚まんと呼ぶようになった」と経緯をホームページで振り返る。関東では「肉まん」の呼び方が一般的だ・・・

人口減少は脅威か

2026年3月18日   岡本全勝

2月25日の日経新聞、マーティン・ウルフさんの「人口減少は本当に脅威か 現役世代の負担増、吸収可能」から。
・・・米生物学者のポール・エーリック氏と妻アン氏は、1968年に著書「人口爆弾」を出版し、大規模な飢饉が迫っているという悪名高い予言をした。彼らは飢饉の脅威は、人口の爆発的な増加によって生じると主張した。
だが今日、出生率は人口の維持に必要な水準(人口置換水準)を下回るようになり、バンス米副大統領などが人口減少への懸念を表明している。飢饉に直面しているというエーリック夫妻の見立ては誤っていたのだ。
では、その正反対の警告も間違っている可能性はあるのだろうか。答えは「イエス」だ。

英オックスフォード大の研究者などでつくる「アワー・ワールド・イン・データ」の推計によると、1万2000年前の世界人口はわずか500万人だった。西暦0年時点では2億3000万人、1800年には10億人、1960年には30億人、現在は80億人だ。将来については、国連が2100年の世界人口を102億人と予想している。
地球から人類が消滅しそうにはない。問題なのは、多くの国で出生率が人口置換水準に満たなくなっていることだ。特に中国などでこの傾向が著しい。世界の主要地域における例外は南アジアとアフリカだけだ・・・

・・・では、多くの地域で人口が縮小し、人類が絶滅に至る可能性を憂慮すべきなのだろうか。英国の経済学者アデア・ターナー氏は「ノー」と答える。
出生率の低下が惨事を招くと議論されやすいのは、現役世代が高齢者と年少者をどれだけ支えているかを示す「従属人口指数」が急上昇するという考え方にある。15歳未満の年少者と65歳以上の高齢者を足した人口を、生産年齢人口で割った値という一般的な定義においては、確かにその通りだ。
ところが、この計算方法では若者の多くが20代まで親に扶養されている点は見過ごされている。出生率が極端に低い場合を除き、従属人口指数の上昇はそこまで大きくならないだろう。また一般的な定義では、高齢者が働き続ける可能性も無視している。フランスでは2024年、65歳以上で働く人の割合がわずか4%にとどまった一方、韓国では38%に上った。
ターナー氏によると、人工知能(AI)によって加速すると期待される生産性の向上も解決策の一つだ。2世紀前に比べて労働時間がはるかに短くなったのは、1800年ごろに比べて生産性が飛躍的に高まったからだ。その結果、高所得国では15歳以上が労働に費やす時間の割合が、少なくとも60%減少したと指摘する。
一方、1人あたりの生産量は15倍に拡大したという。こうした傾向は今後も続く公算が大きく、従属人口指数が若干上昇しても十分に対処可能だろう・・・

・・・つまり、人口の減少を恐れるべきだという決定的な理由は存在しない。出生率が1を割り込めばさすがに問題だが、1.5以上であれば少しばかりの先見の明で万全に対応できるのだ・・・

円の実力、ピークの3分の1

2026年3月15日   岡本全勝

2月21日の日経新聞に「円の「実力」ピークの3分の1 最低を更新、購買力の低下止まらず」が載っていました。

・・・日本の対外的な購買力の低下が止まらない。円の総合的な実力を示す指数は変動相場制移行後の安値を更新し、ピークを付けた31年前の3分の1の水準に沈む。「失われた30年」と呼ばれた長期間に及ぶ経済の落ち込みや低金利が背景にある。円の価値回復には、利上げにも耐えられるような経済の成長力を取り戻すことが重要になる。

国際決済銀行(BIS)の20日までの発表によると、2026年1月時点の実質実効為替レートは67.73。1973年に変動相場制に移行して以降で最も安い水準となった・・・
・・・円の実質実効レートが最も高かったのは1995年4月(193.95)で、それと比べるとおよそ3分の1に縮んだ・・・
・・・バブル崩壊後長期にわたった日本経済の低迷が大きな要因の一つだ・・・

「高度成長」と「長期停滞」

2026年3月11日   岡本全勝

戦後日本の経済発展は「高度経済成長」「高度成長」と、その期間は「高度経済成長期」「高度成長期」と呼ばれます。この言葉は定着し、また書物もたくさんあります。例えば、吉川洋著『高度成長 日本を変えた六〇〇〇日』(1997年、中公新書に再録、2012年)が手頃に読むことができるでしょう。

私の分類では、戦後の経済を4期に分けています。「高度経済成長期」(1955~1973)、「安定成長期」(1973~1991)、「バブル崩壊後」(1991~2012)、そして「復活を遂げつつある現在」(2012~)です。「経済成長の軌跡2024
第2期は「安定成長期」と名付けましたが、この間には石油危機による成長低下とバブル期が含まれています。第3期は、失われた20年とも呼んでいます。

連載「公共を創る」を執筆する際に、バブル経済崩壊後の日本を何と名付けたら良いか悩んでいます。
経済学者に聞くと、「デフレ経済」や「長期停滞」と呼ぶのが多いそうです。「デフレ経済」は普通名詞としてのデフレを指すとも取られるので、「長期停滞」が良いのかなとも考えています。そして、この長期停滞(失われた20年、または失われた30年)を簡潔にまとめた書物が欲しいですね。経済だけでなく、日本社会について分析と評価をしたものです。

もう一つの悩みは、第4期の始まりをいつに取るかです。ひとまず2012年と置いてあります。そしてその期間を何と名付けるか。これは、しばらく見てみないとわかりません。