カテゴリーアーカイブ:社会の見方

みんなの力で古文書を解読する

2019年7月26日   岡本全勝

7月25日の朝日新聞科学欄「防災へ、みんなで古文書読み解く」が、興味深かったです。
古文書を読解することは、難しいです。それも公文書なら楷書で書かれていますが、日記などの類いは筆者のくせ字や崩し字があります。文化教室で、古文書を読む講座もあるようです。

この記事に紹介されている「インターネットを使って、みんなで古文書を読む仕組み」(みんなで翻刻)は、良くできた仕組みですね。
インターネットで古文書を公開し、市民が協力して少しずつ解読していきます。読めたところだけ入力します。残ったところを、別の人が解読して埋めていきます。
インターネットを活用した、市民参加型の解決方法です。会場に行く必要もなく、好きなときに、好きなだけ参加できます。
この方法は、ほかにも活用できそうです。

不思議な看板、英語崇拝

2019年7月25日   岡本全勝

先日、不思議な掲示板を見ました。駅に入っている商業施設の通路です。畳半分くらいの大きさです。
掲示板の上部に、「Recruit Board」と書いてあります。日本語の表題はありません。その下に、施設に入っている各店舗の「求人票」が、いくつか貼り付けてあります。その求人票は、日本語で書いてあります。

応募する人は、英語が母語の人より、日本人か非英語圏の人が多いと思います。貼ってある求人表は、日本語で書いてありますから。
この掲示板の英語の表題は、誰に向けて書いたものなのでしょうか。

人を集める街、渋谷。消費か発信か

2019年7月23日   岡本全勝

7月22日の読売新聞「シブヤ再起動 流行の発信地、進化続く」から。

・・・渋谷は、若者の新しいファッションの発信地だった。1970~80年代、パルコはコム・デ・ギャルソンやヨウジヤマモトといった若手デザイナーのブランドを売り出し、「DCブランド」ブームの火付け役となった。
続いて訪れた「渋カジ」ブームは少し様相が違っていた。アパレル業界やファッション雑誌主導でなく、若者たちが自由にアレンジした服装が自然発生的に流行していった。インターネットのない時代、若者は古着屋などの街のネットワークを情報源とし、新しいトレンドを生み出した。その後、東急系のファッションビル「SHIBUYA109」を中心に生まれた「ガングロ」などのブームも、渋谷という街が作った。

インターネットを通じてどこでも服を買えるようになった現在、街がファッションの流行を生み出すことは少なくなった。パルコは、セゾングループの解体に翻弄ほんろうされ、勢いを失った。
11月のリニューアルオープンを前に建設工事が進む渋谷パルコを今、包んでいるのは、2019年の「ネオ東京」を舞台にしたSFマンガ「AKIRA(アキラ)」だ。工事用の仮囲いに緻密ちみつなイラストが描かれ、世界中から観光客が集まる撮影スポットとなっている・・・
・・・歩き回ることで新たな文化につなげる。堤清二氏が描いた理想は今、渋谷の周辺に芽吹いている・・・

・・・日本女子大の田中大介准教授(41)は、「ネットで物を買えるようになり、渋谷は『消費する街』ではなくなった」と指摘する。一方で、「『発信する街』としての魅力で人を集める場所となれる可能性がある」とみている・・・

人を集める街、活力ある街の要素がわかります。

ビジネスモデルの転換、新しい収益を求めて

2019年7月23日   岡本全勝

7月20日の日経新聞に「「クラウドの会社」に転換 マイクロソフト、手本なき その先を模索」という記事が載っていました。
マイクロソフトと言えば、パソコンの基本ソフト(OS)である「ウインドウズ」です。一時は、市場をほぼ独占しました。近年は、それに代わる無料ソフトが出たり、スマートフォンの普及で、かつてほどの栄光はないようですが。
この記事によると、ウインドウズなどのパッケージソフトの売り上げは半分になり、クラウドなどのサービスが47%とほぼ半分になりました。
パッケージソフトは売り切りなので、一度売ったら新製品を出さないと次の売り上げはありません。しかし、クラウドなどのサービスはそれを利用する間、利用料が入ります。アマゾンも、売り上げの多くをクラウドで得ているようです。

・・・「マイクロソフトは完全に違う会社になった。これほどの大企業の復活劇は他にない」と、米調査会社クリエイティブ・ストラテジーズのプリンシパルアナリスト、キャロシーナ・ミラネシ氏は評価する。
一方で、この5年間はマイクロソフトにとって習うべき「手本」が明確だった。近隣のシアトルに本拠を構え、クラウド基盤で首位を走るアマゾンや、シリコンバレーで続々と育っていた、企業向けクラウドサービスを手掛ける新興企業群だ・・・

・・・もっとも「手本」を追いかけるだけで成長が続いた段階は終わりつつある。18日終値時点で時価総額が1兆ドルを上回るのは米IT大手のなかでマイクロソフトだけ。独占禁止やプライバシー問題の逆風にさらされる「GAFA」を上回る株式市場の評価が定着するなかで、関心はクラウド企業になったマイクロソフトが次に何を生み出せるかに移りつつある・・・

「科学技術の現代史」

2019年7月22日   岡本全勝

佐藤靖著『科学技術の現代史 システム、リスク、イノベーション』(2019年、中公新書)が勉強になりました。
第2次世界大戦以降のアメリカを対象とした、科学技術の研究の歴史です。それを、国家、研究組織、社会との関係から分析します。アメリカに限っていますが、この半世紀は、アメリカがほとんどの分野で世界をリードしたので、それで科学技術史になります。

前半は、冷戦期でソ連と競った時代。後半は冷戦後です。
国家・軍備による、原子力、宇宙開発、コンピュータという3つの巨大開発から始まりますが、デタント(東西緊張緩和)とともに、その方向が変わります。コンピュータがパソコンになり、巨大から分散へと大きく仕組みと思想が変わります。一方で、アメリカの経済優位が低下し、科学技術にも経済への貢献が求められるようになります。他方で、科学技術の単純な信仰は終わり、それがもたらすリスクが大きな課題になります。

本書の魅力は、科学技術を、研究者の世界で分析するのではなく、国家との関係、社会の中での位置づけで分析することです。
もちろん、新書の中にこれだけのテーマを書くには、単純化が必要です。そのために、様々なことが「切り捨てられている」と思います。しかし、細かな事実を羅列しても、鋭い分析にはなりません。どのような切り口で整理するかで、評価が問われます。
これだけわかりやすく明晰に分析するには、細部にわたる勉強と、分析の力量が必要でしょう。お勧めです。