カテゴリーアーカイブ:社会の見方

香港市民抗議運動、リーダー不在で100万人

2019年9月13日   岡本全勝

9月10日の朝日新聞オピニオン欄、周保松・香港中文大学副教授へのインタビュー「香港、自由への闘い」から。

・・・今回の運動はリーダーが見当たりません。
「私自身、不思議に思います。雨傘運動は数人のリーダーがいました。今回はネットでつながり、意見交換をしているだけ。催涙ガスを防ぐマスクをして集まり、互いに誰か知らないまま、一緒にいる。誰が主催しているのかも知らない。でも互いに信頼している。何か運動が提起されると、1週間後に十数万人が参加する。創意工夫を凝らして長期、大規模に闘っています。世界史においてまれな運動ではないでしょうか」
「中国共産党・政府には理解しがたい状況でしょう。交渉したり標的にしたりする相手がいないのですから。中国政府は香港の民主派政治家らを非難しますが、運動とは無関係です。米国をはじめ外国勢力が裏で関わっているとも非難していますが、これもおかしな話。外国勢力が香港市民を100万人も動員できますか?」・・・

やはり6月7月は寒かった

2019年9月11日   岡本全勝

東北農政局が、令和元年産水稲の8月15日現在における作柄概況を発表しました。7月の低温や日照不足が心配されましたが、8月になって持ち直したので、作柄は「やや良」です。
そこに、気温と日照を平年との比較したグラフがあります。「福島p2の図
6月と7月が、低温で日照が少なかったことが、一目瞭然です。逆に、5月と8月は暑かったこともわかります。

人類進化の理由2

2019年9月8日   岡本全勝

人類進化の理由」の続きです。読者からの反応を紹介します。

1  腕力でなく、貢ぎ物でパートナーを見つけられるようになって、よかったです。腕力勝負だったら、私は一生独身でした。

2 オスが、貢ぎ物を持つために二本足になったのはわかりますが、なぜメスも二本足になったのでしょう。貢ぎ物を持ってこさせるなら、手は発達する必要はなく、もっと言えば、寝ていても良いと思います。

松元崇著『日本経済 低成長からの脱却』

2019年9月5日   岡本全勝

松元崇著『日本経済 低成長からの脱却 縮み続けた平成を超えて』(2019年、NTT出版)が、勉強になりました。お勧めです。詳しくは本書を読んでいただくとして、私なりの理解を書いておきます。

バブル崩壊後、平成時代の30年間に、日本の産業は地位を落とし、経済は停滞しました。驚異的な経済成長を続けた日本は、いまや先進国の中で低い成長率を続けています。著者は、経済の「景気」と「成長」は別物であり、日本経済の停滞は景気問題ではなく、成長問題だと指摘します。三つの過剰を解消しても、金利を下げても、日本の生産性は向上していません。そして、日本の産業と経済の低下の原因を、2つ挙げます。

1つは、世界の生産構造の変化です。
グローバル化とIT化によって、世界中どこでも(ある程度の水準の労働者と社会インフラがあれば。岡本の補足です)、何でも生産できるようになりました。日本企業も、日本国内だけでなく、海外でも投資をするようになりました。というか、日本国内に投資せず、海外に投資しているのです。日本企業が日本に投資しないことが、経済の停滞の原因だと指摘します。
日本は、企業に選ばれない国になりました。それは、次に挙げる日本の労働慣行が、新しい投資に足かせになるからです。

もう1つは、日本の雇用慣行です。
日本の強みだった終身雇用制度が、生産性向上の足を引っ張っているのです。日本の政策は、解雇をさせない、企業もなるべく倒産させないと言うものです。すると、企業は生産性の低い事業を続け、新しい分野に投資しません。生産性が低いままでは、世界で戦えません。企業が元気になり、労働者がより高い賃金を得るためには、企業も労働者も新しい分野への転換が必要です。ところが、失業させないことと終身雇用制度が、それをさせません。

対比として、スウェーデンが上げられています。かつて高福祉高負担の代表だった国です。公的支出は7割を超えていました。その後下がり、現在は5割です。ドイツやフランスより低くなっています。そして経済成長を続けています。
日本との違いは、労働者の保護のしかたです。スウェーデンでは、不振な企業は倒産に任せ、失業した労働者を再訓練して再就職させます。日本では、生産性の低い(世界で戦えない)企業が生き残り、スウェーデンでは企業の新陳代謝が進みます。

日本社会の意識と慣行が、かつては日本を世界一に押し上げ、現在はそれによって停滞している。この指摘に、我が意を得たりです。現在執筆している連載「公共を創る」で、世界最高の豊かで安心な社会をつくった日本人の意識と社会慣行が、現在の社会の不安に答えていないことを書いています。同じ構図が、経済に出ているのです。平成時代は、その曲がり角でした。そして、国民の意識も行政も、その転換に遅れています。

著者は、大蔵省出身、内閣府で経済財政担当統括官(私の上司でした)や事務次官を務めました。その際に考えられたことが、本書の基礎になっているようです。

参考
日経新聞5月25日、小関広洋・帝京平成大学教授の書評
財務省広報誌「ファイナンス」2019年8月号、荒巻健二さんの書評

東京の大企業の病理

2019年9月4日   岡本全勝

9月3日の日経新聞オピニオン欄、梶原誠さんの「東京銘柄埋没は訴える 京都企業を超えろ」から。

・・・本社の所在地別に株価を点検すると、興味深い事実が浮かび上がる。「東京銘柄」の値動きが、「地方銘柄」に劣るのだ・・・
・・・人口も行政機能も東京に集中しているが、株価は逆だ。20年前との比較では、東日本大震災の被害を受けた東北と、北海道を除く全ての地域に東京は見劣りし、「首都埋没」が鮮明になる。
今年も米国など多くの国で株価が史上最高値を更新したが、日本株は停滞している。原因は時価総額の62%を占める東京銘柄、なかでも大企業にある。東京の大企業の象徴である経団連正副会長の出身企業の時価総額は、5年前から5%しか増えていない・・・

・・・まずは経営コンサルタントである経営共創基盤の代表取締役、村岡隆史氏。東京の大手企業にM&A(合併・買収)を提案した際、法務、財務、グループ会社の管理を担当する部署などから2人ずつも集まって話を聞いてくれた。だが、議論は前に進まない。
決定権を持つのはそれらの部署を統括する別の部署であり、その上にいる重役だからだ。「東京の企業はバブル期に間接部門が肥大化したままだ」という。
次に、昨年まで国際協力銀行の総裁だった近藤章氏。国際競争入札の内幕に接し、下馬評に反して入札で敗れる「経団連銘柄」を見てきた。「IT(情報技術)化ひとつ取っても遅れ、膨大な量の紙を社内で使っている。安い価格で入札できるはずがない」という。

2人が共に指摘するのが「東京の大企業には霞が関とのしがらみがある」という点だ。大きな決定の前に官僚に根回しをする担当者も置く必要があるし、政府への報告は今も紙が主流だ。役所と深く交流する分、官僚的な文化が伝染した面もある。
バブルが崩壊した1991年以降の時価総額の変化率を見ると、最も減らした企業は銀行、電力、建設の3業種に集中する。政府は護送船団方式で銀行を、地域独占体制で電力を、公共工事で建設業界を守ってきた。政府と密接なあまり稼ぐ力を高められなかった点で、東京銘柄の不振と重なる・・・