カテゴリーアーカイブ:社会の見方

小宮隆太郎先生

2022年12月5日   岡本全勝

11月24日の日経新聞経済教室は、八代尚宏・昭和女子大学特命教授の「小宮隆太郎氏の思想の原点 経済学に基づく政策目指す」でした。

・・・小宮隆太郎先生が逝去された。その経済思想の原点は「経済学の論理を現実の政策に生かすこと」にある。
東大助教授となった1955年当時の日本の経済学界は、観念的なマルクス理論が中心で、現実の経済政策は官僚の試行錯誤で進められていた。こうした中で、経済学の理論に反した様々な政策に対し、少数意見としての「小宮理論」を一貫して唱えてきた。
その対象は専門の国際貿易論を超えて、税制、企業金融、土地問題から経済計画まで幅広い分野に及ぶ、それは、経済学の理論はあらゆる社会問題の解決に貢献できるという信念に基づくものだ・・・

今の学生たちはには理解できないでしょうが、私が大学に入る前までは、日本の経済学、特に東大経済学部はマルクス経済学(マル経)が主流だったそうです。当時は「マルクス主義を理解しないと知識人ではない」くらいの位置づけで、ソ連や中共への(現実を知らない)憧れもあり、力を持っていました。で、私も少しかじりましたが、すぐにやめてしまいました。
八代先生がおっしゃる「観念論」が先にあり、それに歴史を当てはめます。現実経済の分析には、ほぼ役に立たない議論でした。

「マル経」に対し現在の経済学は、「近代経済学」「近経」と呼ばれていました。こちらは、はじめは難解でしたが、思考方法が理解できると、頭に入りました。マル経と近経の対立構図を知ったのは、もう少し後のことです。当時のマル経の先生方は、現在の経済学の状況をどのように見ておられるのでしょうね。

少子化の日本、国民の本音

2022年12月4日   岡本全勝

11月22日の日経新聞に「縮小ニッポン、私たちの本音 人口と世界 男女1000人アンケート」が載っていました。結婚、出産、育児についての意識調査結果が載っています。とても興味深いです。

「結婚はした方が良いと思うか」。人生を大きく左右する結婚について「そう思う」「少しそう思う」と考える人は51.5%だった。未婚化が進む中でも結婚に肯定的な意見はまだ多い。
年齢別にみると、やや様相が異なる。60代は6割超が結婚に肯定的なのに対し、20代と30代は5割に満たなかった。男女別では女性の方が結婚に慎重で、特に30代の女性は「そう思う」がわずか9%だった。
結婚が減っている理由を問うと、女性が結婚に慎重な理由がみえてくる。男女とも最多は「若年層の収入・賃金が低い」で6割超だが、「仕事のキャリアに影響する」は女性21.4%に対して男性は9.4%。出産・育児によるキャリアの断絶が結婚に二の足を踏ませている。
「出会いがない・出会いの機会が少ない」と考える人も全体の4割超と多い。特に20代、30代の女性は5割を超えた。国立社会保障・人口問題研究所の2021年の調査ではSNS(交流サイト)やアプリで出会った人が1割を超えた。婚姻支援は社会の変化を踏まえる必要がある。

結婚が減っている理由を問うと、女性が結婚に慎重な理由がみえてくる。男女とも最多は「若年層の収入・賃金が低い」で6割超だが、「仕事のキャリアに影響する」は女性21.4%に対して男性は9.4%。出産・育児によるキャリアの断絶が結婚に二の足を踏ませている。
「出会いがない・出会いの機会が少ない」と考える人も全体の4割超と多い。特に20代、30代の女性は5割を超えた。国立社会保障・人口問題研究所の2021年の調査ではSNS(交流サイト)やアプリで出会った人が1割を超えた。婚姻支援は社会の変化を踏まえる必要がある。

自分は親世代に比べて経済的に豊かになった――。こう考える人がわずか13.6%にとどまることが明らかになった。61.1%が豊かになっていないと答えている。
特にバブル崩壊後に生まれた20代は親世代より豊かだと考える人がわずか6.0%、豊かになっていないと考える人が63.5%に上った。一方で高度経済成長を経験した60代は豊かになったと考える人が24.5%だった。

山田昌弘・中央大教授の分析が載っています。
「そこそこ幸せ」で日本貧しく
結婚や出産が減っている理由として経済的要因を挙げた人が多かった。若年層だけでなく50~60代の親世代も若年層の家計に懸念を持っていることが調査で明らかになった。若年層への経済支援は不可欠だ。
結婚減の理由として50~60代女性の4割超が「独身者が親との生活に満足している」と答えたのも興味深い。一部の若年層は便利で快適な実家生活を捨ててまで結婚をしようと思わないのかもしれない。
移民は変化を好まない日本人の志向が表れた。移民のみならず日本社会は年代を問わず今のままでよいと考える人が多い。社会全体が豊かになり、目先の生活に困る人が減ったのが背景にあると考えている。日本人は徐々に貧しくなることは受け入れてしまう。社会保障費の増加も一定程度は受け入れつつ「そこそこ幸せ」を続けるのだろう。

生活実態の変化と意識の変化のズレ

2022年12月3日   岡本全勝

11月21日の日経新聞「私見卓見」、石寺修三・博報堂生活総合研究所所長の「「見識」と思い込む前に考えよう」から。

「生活者の価値観や意識は今どこに向かいつつあるのか」。この問いに、人は誰しも自分なりの感覚値や仮説を持っていることだろう。そして、それは流行や世論調査などを通して確信となり、個人の見識になっていく。しかし、実は変化の多くは目に見えないから、潮目が変わったことに気づかないことも多い。私が所属する博報堂生活総合研究所が1992年から続けている「生活定点」調査をみると、そのことがよく分かる。

例えば、次に示す3つのデータから考えてみよう。
昨今は学び直しがブームだ。しかし、98年に53%いた「いくつになっても、学んでいきたいものがある」人は2022年には35%に低下し、生活者の学びへの関心は過去最低の水準にある。
キャンプなどアウトドアブームがメディアをにぎわして久しいが「家の中よりも野外で遊ぶ方が好きだ」という人は、92年の45%をピークに低下し、22年は24%。逆に「休日は家にいる方が好きだ」とするインドア派は33%で、アウトドア派を上回る。
SDGs(持続可能な開発目標)への関心は高まっているようにみえる。だが、22年に「環境を考えた生活をすることは自分にとって快適だと思う」人の比率は49%と過去最低を記録した。「面倒だと思う」(51%)人の比率を下回っている。

いかがだろう。いくつかは読者のイメージと異なる動きだったのではないか。逆に今まで、ふに落ちなかった現象に合点がいった方もおられるかもしれない。もちろん、世の中の空気感を予想通りに反映するデータも多く存在している。大事なのは、どちらの変化の可能性も自覚しておくことだと考える。コロナ禍に限らず「数十年に一度」の出来事が頻発するなか、人々の価値観は思いもよらない方向に変化している可能性があるからだ。自らの「見識」が「思い込み」になっていないかを常に疑う姿勢は持ち続けていたい。

韓国、ひとりご飯

2022年11月29日   岡本全勝

11月19日の朝日新聞夕刊に「「悪くないね」 韓国、ひとりご飯の風景 友達がいない人…変わるイメージ」が載っていました。

・・・韓国ではかつて、ひとりでご飯を食べる人は良くないイメージで見られがちだった。「友達がいない人」といった具合に。でも最近は、ずいぶんと様子が変わってきている。

「おひとりさま対応」を売りに店舗を増やしている外食チェーンを、ソウル南部に訪ねた。
韓国で親しまれる「ポッサム」という料理。ゆでた豚肉を、キムチや他の野菜などと食べる。通常は2人分以上からの料理だが、その店先にはこんな表示があった。「1人ポッサム その感動をめざして」
店内にはカウンター席が並ぶ。お昼時、大学生や会社員らが訪れ、定番の「1人ポッサム」を注文していた。スマホ画面に目をやるなどしながら黙々と食事を終え、ささっと出て行く。
就職活動中の金俊怜さん(25)は時々訪れる。「友達がいない人」などと思われないよう、ひとりでの食事は避ける友人らが少なくなかったが、最近はそういうイメージは薄れたと感じる。「他の人の意見に縛られず、食べたいものを食べて、食事に集中できる。友達や家族との食事もいいけれど、自分だけで食べる時間も悪くないですね」
会社員の男性(28)は「前は恥ずかしいイメージもあったけれど、最近はひとりで食べられる店が増えてきた」とうれしそうだ。

韓国では「食事はされましたか」があいさつの言葉になるほどで、一緒に食事をすることで人と人との距離がぐっと近づく。その一方で、ひとりで食事をする人には否定的なイメージがついてまわった。それが変わってきたのはなぜか。
韓国社会の構造的な変化が背景の一つとみられる。少子化が深刻で核家族化も進み、単身世帯が3割以上を占めるようにもなった。
「1人ポッサム」の朴さんは言う。「親の世代は大家族で『みんなで一緒に』という文化だったが、我々の世代は単身世帯が増えて変わった。『個人化』が非常に進んでいる」
「個人化」は、若い世代を象徴するキーワードだと言えそうだ。経済学者で韓国・中央大教授の李正熙さんは「若い世代が就職時に強く望むのは時間通りの退勤。それだけ、自分の時間を大事にしたいということです」と指摘し、ホンパプの一般化の背景に、特に若い世代の価値観の大きな変化を読み取る。

韓国では飲み会で、ビールに焼酎などを混ぜて飲む「爆弾酒」で盛り上がるのが定番だったが、最近はそうしたスタイルになじめない若者も少なくない。50代の公務員は「私が若いころは先輩に『今日はいくぞ』と言われたら、『はい』以外の返事はなかった。今の若い世代にそんな考えは通じません」・・・

最後の段落は、日本と同様ですね。

根津美術館、将軍家の襖絵展

2022年11月28日   岡本全勝

キョーコさんのお供をして、根津美術館の「将軍家の襖絵展」に、行ってきました。将軍家と言っても、室町幕府、足利将軍家です。
その屋敷のふすま絵は残っていませんが、文献から復元した姿を見せてくれます。各部屋に何が書かれていたかが記録されていて(これもすごいことです)、それに近いと思われる現存する絵を展示してあるのです。中国への憧れ、水墨画が主流だったことが分かります。安土桃山時代を経て、このような水墨画と、絢爛たるふすま絵とが描かれるようになったのですね。
もっとも、ロウソクや燭台の光では、私たちが見るようには明るくはなかったでしょう。
展覧会は12月4日までです。

根津美術館の庭は、紅葉の真っ盛りで、たくさんの人で賑わっていました。外国からと思われる人も多かったです。都会の真ん中とは思えない、すてきな場所です。
ただし、庭のあちこちに、日本と東洋の石造や金銅製の古美術品が点在しているのは、よいと思う人と、過剰だと思う人がいるでしょう。