カテゴリー別アーカイブ: 生き方

生き様-生き方

堀田力さん、敵は後ろにも

先日紹介した読売新聞連載の堀田力さんの回顧録。4月18日と19日は、ロッキード事件の捜査過程で、アメリカの司法当局から資料をもらう話でした。初めてのことですが、堀田さんはそれに成功します。
資料には、日本側の政府高官の名前が含まれています。資料は捜査に使うためで、起訴までは政府高官の名前の公表しないことが条件です。起訴しない場合は、名前が出ると名誉毀損になります。

ところが、野党とともに三木首相や大平財務大臣も、その名前を知らせろと迫ります。三木首相にも大平財務大臣にも、それを要求する法的根拠がありました。しかし、堀田さんは官邸での総理の要求に抵抗します。心臓が止まったでしょうね。

私たちの仕事、組織でする仕事、相手や関係者がいる仕事には、しばしば前の敵のほかに、後ろにも敵がいます。そして、こちらの方がやっかいなのです。それを外部に言うわけにもいかず。
部下をそのような立場に追い込まないことが、良い上司の資格でしょう。このようなことは、一般の指導者論には書かれていないのですよね。
上司は気がついていない、あるいは気づいていても言わない。部下は他の人にも言えず、一人で悩むのです。反抗すると、左遷やクビが用意されている場合もあります。

岡本行夫さんを偲ぶ会

今日は、岡本行夫さんを偲ぶ会に、キョーコさんと行ってきました。
行夫さんの活躍と交遊の広さを語るように、各界から大勢の方が参加されました。森元総理、小泉元総理、岸田総理、外務省幹部、財界などなど。
交遊の広さだけでなく、あの熱血に惚れた人が多かったからでしょう。政治家でも官僚でも、これだけの人を集めることができるのは、そうはおられません。内政が主な仕事の私と妻も参加するのですから。

別室に、行夫さんの子どもの時からの写真と、行夫さんが撮られた海の写真が飾られていました。ここに行夫さんがおられれば、楽しい会だったのですが。
遺言とも言うべき『危機の外交 岡本行夫自伝』(2022年、新潮社)が出版されました。
ご冥福を祈ります。「追悼、岡本行夫さん

堀田力先輩

読売新聞連載「時代の証言者」、4月12日から堀田力「鬼から福へ」が始まりました。堀田さんには、東日本大震災の際に大きな支援をいただきました。私が非営利団体との付き合いに目覚めた一つには、堀田さんがあります。

第1回は「司法30年 福祉に30年」です。
・・・「戦後最大の疑獄」といわれるロッキード事件。米国発、元首相の逮捕という異例ずくめの事件を担当したのが東京地検特捜部の検事だった堀田力さんだ。その後、福祉の世界に転身し、世間を驚かせた。巨悪を追及する「鬼」検事から、助け合いを広める「福」の伝道師となって30年。その歩みと、今の時代への思いを語る・・・

・・・司法の世界で30年、福祉の世界に飛び込んで30年。今日、88歳の誕生日を迎えました・・・
・・・1991年に法務省官房長の職を辞し、「今後はボランティアを広めます」と言ったら反響がすごくてびっくりした。「なぜお前がやるのだ」「検察に不満があるのか」などの質問やお叱り、「もっと検察を元気にしてほしかったのに」と嘆くお言葉もたくさんいただきました。いわゆる出世ルートに乗っていたので、「訳がわからん」と思われた方が多かったようです。
でも、私としてはもう限界、自分が自分らしくあるためには辞めるしかない、このまま続けていたら腐ってしまう、そんな切実な気持ちでした。
検察には感謝こそすれ、不満は全くありません。ただ、東京地検の特捜部長になれないとわかった時、僕の人生はそこで燃え尽きてしまった・・・

「ぼんやりの時間」

ぼんやり考える時間」の続きにもなります。
辰濃和夫著『ぼんやりの時間』(2010年、岩波新書)が本の山から発見されたので、読みました。辰濃さんは、朝日新聞の天声人語を長く執筆された方です。

自らの経験と古今の書物などから、多角的に「ぼんやり」を分析されます。もちろん、仕事などの際に「ぼんやりするな」と叱られる「ぼんやり」「ぼんくら」ではなく、ぼーっとしている「ぼんやり」です。
ぼんやりについて書かれた本ですが、ぼんやりとは読むことはできません。難しくない文章と内容ですが、それなりに頭を動かす必要があります。

先日書いた「ぼんやり考える時間」は、物事を考える際の「集中しないで思い浮かべる」手法でした。辰濃さんの「ぼんやりの時間」は、さらに緩めて「物思いもしない」状態のようです。さらに緩めると、意識が落ちて寝てしまうのでしょうね。

地球の未来を議論する財界人

3月24日の日経新聞夕刊「私のリーダー論」、末吉竹二郎・国連環境計画・金融イニシアチブ(UNEP・FI)特別顧問の発言から。
末吉さんは、日興アセットマネジメント副社長の時に、2000年にフランクフルトのドイツ銀行本店で開かれたUNEP・FI主催の円卓会議に招かれて講演します。欧米の金融機関幹部300人ほどが集まっているその席で、ドイツ銀行頭取が金融が地球環境改善にいかに大事かを30分間話すことに衝撃を受けます。

・・・当時は「失われた10年」などと言われ、日本の金融機関では不良債権や人員削減の話ばかり。地球の未来を話し合っている欧米との差はあまりに大きい。このギャップを埋める仕事を誰かがしなくてはいけないと思ったのです・・・
そして12人からなる委員会に入ります。欧米以外では初めてでした。

「リーダーを目指すあなたへ」として、次のように述べておられます。
世界の人々が何を考えているのかを絶えず考えてください。社会のあり方や価値をめぐる国際的な議論の輪に加わってください。自分の国や地域の伝統や文化は大切ですが、時には「ノー」を突きつける勇気が必要です。