カテゴリーアーカイブ:生き方

豊かになるために働くと2

2026年8月28日   岡本全勝

豊かになるために働くと」の続きです。漁師の逆襲に笑ってしまいますが、「たくさん儲けたので、引退して悠々自適」という人は、あまり見かけませんねえ。昔は、ある年齢になると隠居するという風習もありましたが。定年で退職、再就職先も終わって仕事がなくなった状態が、それに当たるのでしょうか。少し違うような気もします。

幸せや満足とは何かを、考えさせられます。「人工知能で浮いた時間は仕事に」を考えると、人生に目標を持つのかどうか、足るを知るかどうかによるのかもしれません。目標がないと、いつまでも仕事を続けるのです。
人間は、じっとしていられない動物のようです。子どもを見ていると、特にそう思います。常に動き回る、先に進みたくなるのです。すると、手に入れた幸せ(現状)に留まらず(満足していても)、さらに先を目指して活動します。
ただし老人になると、さらなる活動が難しくなり、またおっくうになって留まります。そこで、満足を認識するのでしょう。

次のことも、思い出しました。
新地方自治入門』(2002年)で、梶山静六・元官房長官が、大平正芳・元総理の次のような言葉を紹介しておられることを書きました(『破壊と創造』2000年、講談社)。
「梶山君、日本人はずっと貧しい社会を生きてきたから、貧困の中で美しく生きることは知っているが、豊かさの中でどう生きるかは知らないんじゃないか」

豊かになるために働くと

2026年8月25日   岡本全勝

「メキシコ人漁師の物語」を教えてもらいました。ネット上で流通していて、いくつもの変型があるようです。例えば「メキシコ人漁師とアメリカ人エリートにみる「ビジネス幸福度」」(2022年08月24日、三菱電機)。
この話には、原作があるようです。ドイツのノーベル賞作家ハインリヒ・ベル Heinrich Böll (1917-1985)の「働く気が失せるような話」です。邦訳がないようですが、ウェブで訳してくださったのが載っています。それぞれの文章をお読みください。

ごくごく短くすると、次のようでしょうか。
事業で成功したらしい旅行客が、港で漁師と会話します。漁師は今日の分の魚は獲ったので、のんびりと休んでいます。
旅行客は「もっと漁に出ないのかい。すると豊かになるよ」と、事業を拡大し、豊かになる話をします。
ところが、漁師は関心を示しません。「そうすればどうなるんだい?」と問い返します。
旅行客は「そうすれば、ここできれいな海を眺めながら、太陽を浴びて昼寝ができるますよ」と答えます。
すると、漁師は「もうやってるさ」と言います。

良くできた話です。「人工知能で浮いた時間は仕事に

阪神ファンは忍耐強くなる

2026年5月23日   岡本全勝

先日、ある新聞記事に「阪神ファンを長年やっている人は、忍耐強くなる」という趣旨のことが書かれていました。
近年は阪神タイガースが強いですが、長い間、弱かったです。宿敵である巨人は、9連覇を達成するなど強かったです。近年は面影がありませんが。
強いチームを応援していると、負けると悔しく、元気もなくなります。しかし弱いチームを応援していると、負けても「いつものことか」と腹が立ちません。とはいえ、負け続けていると、ファンが離れてしまいます。

私は、かつては近鉄バッファローズ、それがなくなってからは楽天ゴールデンイーグルスを応援しています。そんなに熱心なファンではありませんが。
まだ達観できず、負けると悔しいです。忍耐強くなりません。
本当の野球ファンは、勝ち負けではなく、選手のプレーぶりを評価するのでしょう。「肝冷斎観タマ記

一仕事を終えた後に

2026年5月15日   岡本全勝

先日、ある職責を終えた人と、意見交換会をしました。その重責を負えても社員であるので、次の職に就いたのですが、前職に比べると荷が重くありません。本人曰く「3年間頑張って、燃え尽きました」と。いろいろと難しい場面もあり、それを乗り越えたようです。よかったです。
しかし、それを評価しつつも、私は次のように言いました。
「まだ気を抜いてはいけない。一つに、あなたが卒業した職を見守る義務がある。もう一つは、その経験を生かし、次の仕事の準備をしなければいけない」

日本は、経済成長で世界最高水準になったことに満足して、長期停滞に陥りました。「勝って兜の緒を締めよ」という名文句もあります。サッカーでは、持っていたボールを味方にうまく渡せると一安心ですが、そこで立ち止まると叱られます。「パスを出したら、次にボールをもらえる場所に走れ」と。

組織人間であるからには、自らが育てた組織と職員を見守らなければなりません。ただし、口を出してはいけません。嫌われるだけです。他方、あなた自身の将来を切り開かなければなりません。大きな仕事を終えても、人生は終わりではありません。

アイデンティティーの危機は何度も来る

2026年4月22日   岡本全勝

4月7日の朝日新聞オピニオン欄「人生、焦り迷いながら」、岡本祐子さん(公認心理師)の「目をそらさず、内省深めて」から。
・・・自分は何者なのかという「アイデンティティー」は、青年期に獲得され、その後の人生を方向づけると考えられてきました。しかし私は、現代社会では青年期に獲得されたアイデンティティーで、その後の長い人生を生き抜くことは難しくなっている、と考えて研究してきました。
現代は、大人になってからもアイデンティティーの危機が何度か訪れることが分かっています。中年期や現役引退期に訪れる危機がそうで、「自分の人生はこれでよかったのか」と悩む人は多くいます。30歳ごろに揺り戻しがくる人もいます。変化が速く、価値観も多様化した時代になり、大人になっても自分をつかみ取ることが難しくなっています。

ただ、アイデンティティーの危機が訪れることは、決して悪いことではありません。自分の価値観を問い直し、納得できる生き方に変えるため軌道修正するチャンスにもなるからです。
中年の危機は「自己の有限性の自覚」とも言えます。体力の衰えを感じ、仕事での限界感もある。「あと何年元気でいられるか」と時間的展望が狭まっていく。競争社会に身を置く人ほど深刻だと思います。

男性と女性を比較しながら中年の危機を研究してきましたが、男性が仕事の話を中心に語るのに対し、女性は仕事と家庭を同じくらい重要視し、家族が健康で幸せに暮らせているかどうかも、人生の評価を左右する傾向がみられました。
危機を乗り越えるのに重要なのは、普段から自分を見つめる習慣をもっておくことです。「なぜあの時に心がざわついたのか」など、自分の思いや感覚、体験を書き出すなど、内省を深めておくと、自分の助けになるはずです。
それから、月並みではありますが、自分で自分を支えきれなくなった時、支えてくれる家族や友人らとの関係性を大事にしてほしいです。公認心理師や臨床心理士ら専門家に相談するのも有益だと思います・・・