カテゴリー別アーカイブ: 明るい課長講座

生き様-明るい課長講座

100%の稼働率は効率的ではない

2月28日の読売新聞、西成活裕・東大教授の「ウィズコロナのあり方 3密解消も急がば回れ」から。

・・・渋滞は時間の無駄です。渋滞学を分野横断的に展開する中で、工場などの生産現場の無駄の排除にも関わるようになりました。
実地のヒアリングによれば、工場の稼働率は30%程度の余裕を持たせた方が効率的です。誤解を受けがちですが、100%の稼働率が最も効率的というわけではないのです。フル稼働だと機械のメンテナンスの時間が取れないし、試作品も作れません。
バケツリレーを模した数理モデルによる解析でも、水の量をバケツの7割とした場合が最も効率的に運べました。

会社などの組織や社会も同じです。その時の環境に完璧に適応し無駄がないと、環境が変化した時に不安定になってしまいます。環境が変わってもそこそこ対応できるようにしておく方が、長い目で見てトータルのコストが少ない可能性が大きいのです。
コロナ禍でも病床不足などの問題が生じました。「見える無駄」を徹底的に排除し、効率を上げようという短期的視点だけを重視すると、有事に対応できません・・・

・・・渋滞学でも、車間距離40メートルを保てるかが渋滞が生じるボーダーラインとなっています。車間距離がそれ以上短くなるとスピードが落ち、後ろの車に増幅して伝わります。その結果、十数台後ろの車を止めてしまうほどの渋滞を引き起こすのです。
つまり、急いでいるからと車間を詰めるほど、時間当たりの交通量は低下します。利他心を発揮し、全ての運転手が車間距離を無駄と思わずに保つ方が結局、目的地に早く着きます。「急がば回れ」というわけです・・・

スポーツ選手の緊張への対処方法

2月25日の朝日新聞スポーツ欄、スポーツ心理学者の荒木香織さんと、バレーボール日本代表主将の柳田将洋さんとの対談「柳田将洋の不安、五郎丸のルーティーン発案者が導く答え」から。

〈柳田は2017年に欧州に挑戦した。荒木さんの指導を受けたのは渡欧直前だった〉
柳田 当時は2年目で、いろいろチャレンジしようという時。不安や悩みがいっぱいあった・・・
柳田 「しんどかったら、普通に帰ってきたらいいやん」と言われた。「そうか。自分のやりたいこと、やればいいんじゃん」と腑に落ちた。自分がやりたいようにやって、楽しんでいったら一番プラスと、海外に行けた。楽しいと思えたのは、きつかったら帰ればいい、とりあえず今年やってみるかぐらいの感覚でできたから。3シーズン、ガッツリできた。得るものも大きかった。
荒木 人は、先が明確でない状態が一番不安にはなる。行ってダメだったら、通用しなかったらどうしようと。心理学的には、不明瞭なことをどれだけ取り除いていくか。
「頑張れ、頑張れ」と言っても、不安を増すだけ。心理的に帰る場所があると思っていたら、そんなに不安にはならない。別に無理して海外でプレーしなくても、日本でもいろんなチャンスはある。励ましの意味も込めて、「ダメだったら帰ってくるのもいいんだし、問題ないと思うよ」という声かけをした。
柳田 「自分の好きなようにしたらいいや」と、今の環境をどう楽しむかにフォーカスを当てられるようになった。大事なのは自分が何をするか、どういうマインドで試合に臨むか。その癖や習慣がついた。

〈五輪のプレッシャーや不安に対処できず、パフォーマンスが悪くなることがある。「オリンピックの魔物」にどう立ち向かえばいいのか〉
荒木 対処法の一つに変わりない。ダメっぽい顔を伝えておく。「これ、今やばい時」というサインを作って、伝えておくのは一つ。パニックになって、サインも分からなくて、「ヤバイです」と言われたら、声かけに行く。
五郎丸選手も、W杯の最初のゲームの前、国歌斉唱の後は、気持ちが高ぶりすぎているはずだから、「みんな俺に声をかけてくれ、体を当ててくれ」とお願いしていた。実際、号泣してしまって。自分が予想していた通りになったから、みんなが声をかけ、体を当てに行って。それでも、落ち着ききれなくて、最初のプレーでタックルされるのにも気付かず、体当たりした。すごくいい突進で。そこからやっぱり、あの試合は変わった。本人も「お!」と目が覚めた。
いくら想定していても、対処しきれないことも出てくるかもしれない。それが「オリンピックの魔物」といわれるところ。みんなで協力して、越えられないことは絶対ない。みんなでいつも通りにコミュニケーションを取って。ただ、準備を怠るとダメ。たぶんこんな感じだからできるかな、ではたぶんいけない。あらゆるシナリオを持って準備しておく。指導者が想像できないことも、選手はたくさん想像できる。シチュエーションを考えつつ、話し合っておく。練習の前後に時間をもらってやってみる。そういう工夫をする。

〈荒木さんは眠れないという選手には、不安を書き出してもらったという〉
荒木 前々から、困りそうなことを言ってしまうのはあり。なかったことにしない。あることにして対処する。お互いを頼ってやっていくのもあり。寝られない、食べられない、あんまり体が動かない。息が浅くなって、深呼吸しなさいと言われる人もいる。いろんな現象が起きます。すごいことになります。でもそんなものです・・・

窓口での嫌がらせ

3月1日の日経新聞に「消費者庁、相談員への嫌がらせに対策 コロナ禍で増加、指針作成」という記事が出ていました。
・・・全国の消費生活センターの相談員に対し、相談者らからの嫌がらせ電話や暴力が多発しているとして、消費者庁は28日までに、相談員向けの対応マニュアルを作成した。精神疾患となって業務に支障を来すケースもあり、対応策が求められていた・・・

消費者庁のホームページに載っている「相談対応困難者(クレーマー)への相談対応マニュアル作成」のことのようです。

相談者を説得できず、主張の繰り返し、罵詈雑言等消費生活相談とは言えない状況になったら、「傾聴」から「相談終了」へと対応を切り替える。
〇一定時間*、相談者の主張を聞き取り、説明。
→更に一定時間*説明を尽くしても、主張の繰り返し、大声を出すなど話が進展しないときは、相談終了の旨を伝え電話を終了。
〇罵詈雑言が始まったら、相談者の言動を制止し、それでも止まなければ相談を終了。
(*)一定時間としては、例えば目安として概ね30分程度が考えられるが、相談内容、相談者によって異なる。

〇二次対応者(職員)への引継ぎ
電話を切ることができない場合、相談員に対する非難等の場合、二次対応者(職員)へと対応者を交替
〇複数の職員、庁内関係者との連携した対応
来所相談の場合には、複数の職員で対応、時間を区切って組織的に対応することが考えられる。
(例)相談員から引き継いだ職員が相談終了を告げ、退去を促す
→庁舎管理規則に基づく退去要請(警備員へ通報)
→従わない場合、警察に通報

日本企業、経営人材育成の問題

2月23日の日経新聞経済教室、齋藤卓爾・慶応義塾大学准教授の「経営人材育成、早期・計画的に」から。

・・・つまり日本での企業統治に関する議論はバブル崩壊後の不祥事、業績低迷の原因追及として始まったのである。そして統治構造は、取締役会規模の縮小、海外機関投資家の持ち株比率の上昇などにより徐々に変化し、2012年発足の第2次安倍政権の一連の企業統治改革により大きく変化した・・・
では企業統治改革により日本企業の低業績は改善されたのか。各国の改革効果を検証した研究は、最低限必要な社外取締役の人数や比率の設定が業績を向上させたことを報告している。だが日本の改革が業績を明確に改善したという結果はこれまで得られていない。
売上高30億ドル以上の日本企業360社を含む30カ国約2千社の国際比較によると、日本企業の業績は14年から16年にかけて改善したが、その傾向は続かず、国際的にみて依然低水準のままだ。またよりリスクをとると大きくなると考えられる利益率のばらつきも、12年以前と同様に国際的にみて最低水準にある。社外取締役を選任した企業群の業績が改善したという傾向もみられない。企業行動でみても配当や自社株買いなど株主還元は増えたが、改革が目指したリスクテイクに関しては、設備投資や研究開発投資が促進されたという傾向はみられない。

長年日本企業の行動そして業績が大きく変わらなかった理由の一つとして、経営者の育成・選任が挙げられるのではないだろうか。適切な経営者の選任は企業統治、特に取締役会の最も重要な役割とされている。
米国では経営者の姿が時代とともに変化している。ピーター・カペリ米ペンシルベニア大教授らは1980年と2001年の米誌フォーチュンが選ぶ大企業100社「フォーチュン100」の経営者を比較し、若年化や最初の就職から経営職に就くまでの期間の短期化を報告している。カロラ・フリードマン米ノースウエスタン大教授は1935年から2003年までの経営者の変化を検証し、1970年代中ごろから生え抜きの経営者が減り、経営人材の会社間移動が増えたこと、経営学修士号(MBA)の学位を取得した経営者が増え始めたことを示した。
経営者属性の変化の理由として情報技術や経営管理手法の進歩、企業の巨大化、事業のグローバル化、多角化に伴い、経営者に求められる経営能力が特定の企業だけで通用する企業特殊的なものから、どの企業でも通用する一般的なものに移ったことを指摘している・・・

しかし日本企業の社長のキャリアパスはこの30年間大きくは変化していなかった。
近年、女性役員の登用が進むが、調査対象の社長で創業家以外の女性は1人もいない。外国出身の社長も極めてまれだ。社長に就任した年齢は90年以降一貫して60歳で、平均的には社長は若返っていない。入社年齢をみると、91%の社長が30歳までに入社しており、この比率は90年の81%から上昇している。
経営能力を見込まれたと考えられる41歳以降に入社した社長の比率は、90年の13%から7%に低下している。銀行の役員や官公庁の幹部などが、事業会社に経営者として移るケースが以前より減っているためだ。変化の象徴として注目されるいわゆるプロ経営者は、それを補うほどには増えておらず、近年むしろ内部昇進の社長が増えている。
かねて日本企業特有の遅い昇進は、リーダーの形成に不利であることが指摘されていた。社長就任者の昇進は他の社員と比べて特段早くなく、またこの30年間に早まってもいない。平均的に内部昇進の社長は入社から部長昇進までに約22年を要し、46歳ごろに部長職に就いている。これは一般的な部長昇進年齢とほぼ同じだ。そして入社から部長昇進、部長から役員昇進までの期間はむしろ長期化の傾向がみられる。
一方で社長就任年齢は変わらず、役員から社長就任までの期間は顕著に短くなっている。つまり内部昇進の社長のプレーヤー、中間管理職としての期間が長くなる一方で、役員としてトップマネジメントを経験する期間は短くなっている・・・

自衛隊、災害派遣時の心のケア

2月19日の朝日新聞に「災害派遣、ミーティングで心ケア 陸自取り組み、東日本大震災を機に本格化」が載っていました。

・・・災害派遣にあたる自衛隊員のメンタルヘルス対策で、陸上自衛隊が日々の活動後の任務解除ミーティング(解除MT)に取り組んでいる。多くの遺体収容に直面した2011年の東日本大震災を発端に全国の部隊に広まったもので、新型コロナウイルス対応での派遣も相次いだ昨年にはマニュアルがまとめられた。
陸自のマニュアルによると、解除MTは「5~10名程度」の小グループで「一日の任務終了後、日々実施」し、所要は「短時間(20分程度)」。通常の訓練後に改善点を検討する反省会とは違い、災害派遣など精神的負担の伴う任務で「日々のストレスを組織で軽減するため」に行う。

解除MTの手順はこうだ。上司は、隊員たちをねぎらい、その日の頑張りを聞く。危険な現場で活動する隊員が情報不足により不満をためないよう情報を伝える。「困っていること、知りたいこと」を一人ひとりに確かめ、その際には、目の周りや唇など不調が表れやすい部分に気を配って体調を確認する。さらに、活動への意見を聞き、「前向きな言葉で締める」。
また、上司に向けた助言として、「上司・組織への不平不満が蓄積されないように(毎日話す機会があることを認識させる)」「隊員は上司の一挙手一投足を注視している」といった点も強調されている・・・

その要点が、7項目載っています。自衛隊だけでなく、いろんな組織でも参考になります。
しかし、朝日新聞もカタカナ、アルファベットが好きですね。MT、ミーティング、マニュアル、ストレス、ケア・・・。入学試験問題には、使えないでしょうね。