投稿者アーカイブ:岡本全勝

ソーシャル・ディスタンス?

2021年5月28日   岡本全勝

奥井智之先生の「不特定多数で「社会の敵」を叩く“祭り”が、ネット上で発生するそもそもの理由」には、次のような指摘もあります。「ネット記事のコメント欄とSNSのはかなさ

・・・今回のコロナ禍の下で、人々は、たえず身体的距離をとるように求められてきた。
「社会的距離(social distance)」は、本来、人々の親密度を測る指標である(家族のメンバーは遠くにいても、その「社会的距離」は近いのが普通である)。したがって、ここでは、「社会的距離」と「身体的距離」を区分する。
理論的には、「身体的距離」を取ったからといって、「社会的距離」が広がるわけではない。しかし、「身体的距離」の拡大は、「社会的距離」の拡大のリスクを、つねにともなっている。それが、コロナ禍の下で、わたしたちが直面してきた、根源的な危機である・・・

連載「公共を創る」で、孤立を書いているところです。そこでは、孤立しないように他人や社会とのつながりの重要性を指摘しています。
先生の指摘にもあるように、ソーシャル・ディスタンスは、本来は社会的距離であって、人の親密度です。ウイルス感染を防止するために他人との間に距離を置くことは、物理的距離や身体的距離です。家族や友達とは遠く離れていても、社会的距離は近いです。

「ソーシャル・ディスタンスをとる」では、「他人との社会的つながりを断ちましょう」という意味になってしまいます。よもや「家に引きこもって、他人との連絡も絶ちましょう」と呼びかけているのではないでしょう。
「距離を取りましょう」「間隔を空けましょう」では、なぜいけないのでしょうか。

日本記者クラブ登壇「政と官」

2021年5月27日   岡本全勝

きょうは、日本記者クラブに呼ばれて、「官僚と政治」についてお話ししました。1時間話して、30分の質疑応答です。
コロナ対策で、オンライン開催です。司会者の坪井記者が横にいるほかは、椅子だけが並んでいる会見室で、カメラに向かって話しました。百数十人の登録があったそうです。記者クラブのサイトに、写真が載っています。動画も公開されました。

話が脱線しないように、骨子をつくり、それを配って、それに沿って話しました。「資料1
日頃考えていること、これまで考えたことを整理して、思いの丈を話すことができました。盛りだくさんなので、1時間でも時間が足らないくらいでした。たくさんの質問が出ました。
場所が場所なので、言葉を選びながら話しました。さすがに、疲れました。今週は、これを含めて3回講演がありました。「その2」「その3」へ。

骨子の後ろに、これまで書いた「行政と官僚のあり方に関して」の拙稿を並べておきました。結構、書いてきましたね。詳しくは「著作一覧
『省庁改革の現場から-なぜ再編は進んだか』(2001年、ぎょうせい)
『新地方自治入門-行政の現在と未来』(2003年10月、時事通信社)
連載「行政構造改革-日本の行政と官僚の未来」月刊『地方財務』(ぎょうせい)2007年9月号から2008年10月号まで、未完
「行政改革の現在位置~その進化と課題」年報『公共政策学』第5号(2011年3月、北海道大学公共政策大学院)
『東日本大震災 復興が日本を変える-行政・企業・NPOの未来のかたち』(2016年、ぎょうせい)
連載「公共を創る-新たな行政の役割」『地方行政』(時事通信社)に、2019年4月から連載中

「幸せのメカニズム」

2021年5月27日   岡本全勝

前野隆司著『幸せのメカニズムー実践・幸福学入門』(2013年、講談社現代新書)が、勉強になりました。かつて興味を持って買ってあったのですが、放置してありました。連載執筆にあたり、積ん読の山から発掘しました。

近年、幸福学が盛んになっています。その理由の一つが、経済成長の達成です。経済成長によって、生活満足度は上がる傾向にあるのですが、ある段階からは上がらなくなります。当然ですよね、もし上昇を続けて、生活満足度が満点まで上がったら、その先はどうなるか。そう考えても、物の豊かさは、幸せの一要素でしかありません。

各人によって異なる幸福感をどのように、客観的に比較分析するか。幸福論は、古典時代からさまざまな識者が論じ、また私たちもそれなりの考えを持っています。幸福学では、哲学的な幸福論ではなく、多くの人の調査を基に統計学的に分析します。
他人との比較(地位財)による満足と、他人との比較と関係ないこと(非地位財)よる満足があります。前者は、所得、社会的地位、物などです。後者は、健康、自由、愛情、社会への帰属意識などです。そして、地位財による幸福は長続きせず、非地位財による幸福は長続きします。しかも地位財による幸福は、維持するために「走り続け」なければなりません。終わりがありません。

前野先生の研究では、幸せの心的要因は、次の4つにまとめられています。「自己実現と成長」「つながりと感謝」「前向きと楽観」「独立と自分らしさ」です。
人によって考えはさまざまでしょうが(先生もそれは断っておられます)、私には納得できる要素です。
詳しくは本を読んでください。「明るい人生講座」です。役に立ちますよ。

とはいえ、東北楽天ゴールデンイーグルスが負けると、元気が出ません。

とうほくNPOフォーラム登壇

2021年5月26日   岡本全勝

きょう5月26日は「とうほくNPOフォーラムin南相馬2020 復興の先を見据えて ―変化する社会にNPOはどう対応するのか」に登壇しました。冒頭の基調講演です。

東日本大震災では、NPOに大活躍してもらいました。私がそれまで「NPOって何?」という認識だったのに、彼らと出会って「転向」した話は、何度かお話ししました。
被災者生活支援本部や復興庁では、行政が発注する相手としてではなく、「同士」として現地の問題に一緒に取り組んでもらいました。「ボランティア・NPO・公益法人等との連携
その後、非営利団体は社会に認知されたと言ってよいでしょう。地方創生でも子どもの貧困対策でも、非営利団体が行政と協働するようになりました、10年前には考えられなかったことだと思います。
そのお礼と今後の期待を込めて、お話しました。

話をしようとすると、話の内容を考える必要があります。それを骨子に書き出し、また関係の図や写真を集めます。そして関係者に見てもらって、意見をもらいます。その過程で、考えが整理されます。
私は、骨子も図表も、参加者に渡すようにしています。その方が、理解してもらえると思ってです。骨子は、話が脱線しないようにする意味もあります。
問題は、時間配分です。時間内に終える、できれば5分ぐらい早く終わろうと考えるのですが、いつも時間が足らなくなります。苦笑。

南相馬市で開催されるので、行くことを楽しみにしていたのですが。コロナの影響で、オンラインでの出演になりました。
100人を超える人が聞いてくださいました。その点では、便利ですね。「結果報告

ネット記事のコメント欄とSNSのはかなさ

2021年5月26日   岡本全勝

先日、紹介した奥井智之先生が、講談社のウエッブサイト「現代ビジネス」に「不特定多数で「社会の敵」を叩く“祭り”が、ネット上で発生するそもそもの理由 電脳世界に広がる「儚さ」を社会学する」を書いておられます(5月22日掲載)。
ネット記事のコメント欄とSNSに、なぜ人は書き込むのか、そして議論は成り立たないのかについて、社会学から説明しておられます。

・・・ネット記事は儚(はかな)い。
それが、一定の鮮度を保って、人々の前に姿を見せるのは、ほんの一瞬である。良い記事も悪い記事も、次の瞬間には、最初から存在しなかったかのように、ネット世界から姿を消している。
もちろん、それは、アーカイヴ化されているのであろう。しかし、特定の記事を、アーカイヴ(保管庫)のなかで探すのは、特別な目的がある場合に限られる。実際、わたしは、ネット記事がどこかで引用されているのを、見たためしがない。
とどのつまり、ネット記事の寿命は、ごく短い。筆者は、その一瞬に賭けて、自らの作品を、ネット世界に投げ込むほかはない。
オンラインの先には、読者が待っている。正直言って、わたしは、その読者の実態を知らない(わたしは、このネット世界にたまさか迷い込んだ、よそ者にすぎない)。ただ、ネット記事の読者として、しばしば遭遇するのは、その記事が、読者のコメント欄で酷評されている光景である・・・

・・・そこでは、ネット記事を批評することよりも、その記事をダシにして、自らの識見を誇示することが、目的となっているように映る。批評家の小林秀雄は言った。
「批評とは竟(つい)に己れの夢を懐疑的に語る事ではないのか!」(『様々なる意匠』)
「懐疑的」であるかどうかは別にして、ネット記事のコメント欄に横溢するのは、激しい自己呈示の欲求である。
ネット記事に、コメント欄が付いているように、コメント欄にも、個々のコメントへの賛否を表明するアイコンが付いている。
わたしのよく見るサイトの場合、デフォルト(初期設定)では、賛同者の多いコメントが、コメント欄の上位に並ぶようになっている。そして、上位のコメントの内容は、おおよそ似通っている。裏を返せば、意見が分かれて、議論が交わされる光景は、まず目にしない。
そこには、コメント欄のもつ、もう1つの機能が映し出されている。それは、他の(どこのだれとも知れない)多くの読者と協調することで、自らの意見の正当性を確認することである。一言で言えば、そこには、温かい相互承認の儀礼がある。
激しい自己呈示の欲求と温かい相互承認の儀礼──。この2つは、いったい、どのように結びついているのか・・・
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