年別アーカイブ:2026年

伝えたい復興の教訓

2026年3月12日   岡本全勝

NHKウェブサイトに「震災15年アンケート 教訓“医療の復旧・復興計画” 重視を」(3月10日)が載っています。

・・・東日本大震災の被災地に暮らす人たちに行ったNHKのアンケートで、震災の教訓として重視してほしいことを尋ねたところ、医療や介護拠点の復旧や、人口減少を踏まえた復興計画などを挙げる声が多くなりました。専門家は「まちの復興を考えるのは災害が起きてからでは間に合わず、人口減少や高齢化が進むなかで災害後に地域の暮らしをどう立て直すか、事前に考える必要がある」と指摘しています。
NHKはことし1月下旬から2月上旬にかけて、岩手・宮城・福島の沿岸と原発事故による避難指示が出された地域などに住む18歳以上の人を対象にインターネットでアンケートを行い、1000人から回答を得ました。いずれも震災発生当時、被災3県の沿岸などで暮らしていました。

この15年を振り返り、今後、教訓として重視してほしいことはあるか複数回答で尋ねたところ、
▽「医療・介護拠点の復旧」が43.7%
▽「将来の人口減少を踏まえた復興計画」が41%ちょうど
▽「仮設住宅や災害公営住宅の整備計画」が36.5%
▽「仕事などなりわいの再生」が33.2%
▽「商店や飲食店など、商業エリアの再生」が31.8%などとなりました・・・

これについても、我が意を得たりです。医療・介護、仕事や生業の再生の重要性が上位に来ています。また、単なるインフラや公共施設の復旧でなく、それらについては「将来の人口減少を踏まえた復興計画」が挙げられています。私たちが行った災害復旧の哲学の転換「国土の復旧から暮らしの再建へ」は、国民に受け入れられたようです。「復興の現状の評価」「復興の現状の評価、2

「高度成長」と「長期停滞」

2026年3月11日   岡本全勝

戦後日本の経済発展は「高度経済成長」「高度成長」と、その期間は「高度経済成長期」「高度成長期」と呼ばれます。この言葉は定着し、また書物もたくさんあります。例えば、吉川洋著『高度成長 日本を変えた六〇〇〇日』(1997年、中公新書に再録、2012年)が手頃に読むことができるでしょう。

私の分類では、戦後の経済を4期に分けています。「高度経済成長期」(1955~1973)、「安定成長期」(1973~1991)、「バブル崩壊後」(1991~2012)、そして「復活を遂げつつある現在」(2012~)です。「経済成長の軌跡2024
第2期は「安定成長期」と名付けましたが、この間には石油危機による成長低下とバブル期が含まれています。第3期は、失われた20年とも呼んでいます。

連載「公共を創る」を執筆する際に、バブル経済崩壊後の日本を何と名付けたら良いか悩んでいます。
経済学者に聞くと、「デフレ経済」や「長期停滞」と呼ぶのが多いそうです。「デフレ経済」は普通名詞としてのデフレを指すとも取られるので、「長期停滞」が良いのかなとも考えています。そして、この長期停滞(失われた20年、または失われた30年)を簡潔にまとめた書物が欲しいですね。経済だけでなく、日本社会について分析と評価をしたものです。

もう一つの悩みは、第4期の始まりをいつに取るかです。ひとまず2012年と置いてあります。そしてその期間を何と名付けるか。これは、しばらく見てみないとわかりません。

原発事故避難市町村、人口2割回復

2026年3月11日   岡本全勝

今日は、3月11日。あの日から15年です。各紙や放送局が、詳しく伝えています。このホームページでは、私が気になったものをいくつか取り上げています。

3月9日の読売新聞1面に「原発避難 人口回復2割 大熊 7割が新住民」が載っていました。
・・・東京電力福島第一原発事故で避難指示が出た福島県の11市町村の居住人口は約1万8000人で、事故前の2割にとどまることが、各自治体への取材でわかった。東日本大震災から11日で15年となり、避難先に定着した住民が多いとみられる。一方、避難指示の解除が遅れた大熊町と双葉町では帰還住民は少ないものの、居住人口の7割弱を移住者が占め、新住民によるまちづくりが進んでいる。

11市町村では、震災から3年後の2014年4月から22年8月にかけて、避難指示が解除されて住民帰還が始まった。だが、避難指示区域の居住人口は、震災当時の8万8330人から1万7818人(今年1~2月時点)に減っている。
居住人口の回復率は、解除が早いほど高い傾向にあり、15年9月に町内全域で解除された楢葉町は4436人で、55・4%と最も割合が高かった。これに対し、解除が遅れた大熊町(住民帰還を伴う一部解除は19年4月)は1086人で震災前の9・4%、最も遅れた双葉町(同22年8月)は193人で2・7%しか戻っていない。
両町では避難先から戻った帰還者と、移住者の数が逆転。居住者から帰還者を除いた移住者の数は、大熊町で住民の約7割の748人、双葉町で5割強の104人に上る。大熊町では、23年に小中一貫の義務教育学校ができて教育目的の移住者が増えた・・・

避難が長期間になると、避難者は新しい土地で生活を始めています。すると、帰還する人は多くありません。意向調査でも、そのような結果が出ています。他方で、記事にあるように、新住民が増えています。原発事故地域の復興は、現実を踏まえて行う必要があります。

コメントライナー寄稿第27回

2026年3月10日   岡本全勝

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第27回「東日本大震災から15年-未来への課題」が3月9日に配信され、3月10日のiJAMPにも転載されました。

2011年3月11日に東日本大震災が発生してから、早いもので15年が経ちます。1000年に一度の大津波と、経験したことのない原発事故が併せて起こりました。私は発災1週間後から被災者の生活支援に当たり、引き続き復興庁統括官や事務次官、福島復興再生総局事務局長として、10年近くにわたって復興に従事しました。

津波被災地では、約10年で復旧工事を終えました。400近くもの市街地や集落を、移転したり土地をかさ上げして造り変えたりする大工事でした。より大きな課題は、公共インフラを復旧しても、町のにぎわいが戻らないことです。商店が再開されないと住民は暮らしていけず、働く場所がない町には人は戻ってきません。そこで、国が事業再開を支援することにしました。災害復旧の哲学を、「国土の復旧」から「暮らしの再建」に変えました。
東日本大震災での教訓は、その後の災害に生かされています。しかし、予想されている南海トラフ地震では、東日本大震災をはるかに超える被害が想定されています。一つの課題は、復興にかかる財源です。

原発事故からの復興は、まだ道半ばです。放射線量が高く、避難指示を解除できないところもあります。廃炉作業の見通しは立たず、災害はまだ終わっていないのです。今後の道のりの長さを考えれば、「東電福島第1原発事故復興基本法」を作ることを提案しました。

復興の現状の評価、2

2026年3月10日   岡本全勝

復興の現状の評価」の続きです。NHKの記事は、次のように続きます。
・・・一方、道路などのインフラや公共施設の整備について評価を尋ねると
▽評価するが21.3%
▽やや評価するが54.5%
▽あまり評価しないが18%ちょうど
▽評価しないが6.2%となり
7割以上が評価するという結果になりました。

「評価する」と「やや評価する」と答えた人にその理由を複数回答で尋ねると
▽「災害に対する安全性が高まったから」が44.1%
▽「生活の利便性が向上したから」が43%ちょうどなどとなりました。

一方、「あまり評価しない」「評価しない」と答えた242人にその理由を複数回答で尋ねると
▽「地域のニーズとあっていないから」が最も多く35.1%
▽「将来の人口減少を想定していないから」が34.7%
▽「整備が不十分だと感じるから」が29.3%
▽「維持管理費用が心配だから」が24%ちょうど
▽「あまり利用されていないから」が23.1%
▽「災害対策が不十分だから」が19.4%
▽「必要以上の整備だと感じるから」が17.8%でした・・・

インフラ復旧について評価が高いとともに、大きすぎることの問題も認識されているようです。作った施設の維持費については、各報道機関も伝えています。例えば、NHK「被災地に重くのしかかる“復興維持費”の現状は」(3月9日)