連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第269回「これまでの議論ー再チャレンジ政策とこれからの行政」が発行されました。
私が「人間らしい生き方への被害」に関心を持つきっかけとなった再チャレンジ政策、その相談窓口の「地域若者サポートステーション」について説明しています。ここで行われている業務は、従来の行政手法とずいぶん違うのです。
その1は、業務の「相手」が、組織でなく個人であることです。従来の行政は業界(企業や団体、あるいはその連合会など)を相手にすることが多く、生活者を直接相手にすることは、苦情対応のような場合を除き多くはありませんでした。
その2は、実現の「形」の違いです。若年無業者の自立支援には大きな施設は不要で、相談を受けて指導できる人が重要です。つまり、人材と技能です。
その3に、「出掛けて行く」ことへの転換です。これまでは、役所は来る人を窓口で待っていました。しかしこの仕事では、こちらから出掛けて
行く必要があります。
その4に、行政以外の担い手が重要かつ必要なことです。若年無業者の自立支援では、行政機関よりも、非営利団体(NPO)が活躍しています。市町村も、それらの組織に仕事を委託しています。
その5に、従来なら家庭に任されていた問題が行政の仕事になるということは、行政が家庭の中に入ることです。
このように、再チャレンジ政策は、行政の在り方を考えることにつながりました。これまでは、行政が社会や企業の先頭に立って、指導や統制をしました。これからは、国民が自由に行動してそれぞれ幸福を求め、企業が自由に競争して社会の利益を高めます。そして行政がその後ろで支える。そのような役割分担が、望ましいでしょう。行政は豊かで平等で自由な社会という目標を達成し、次の役割を模索していたのですが、ここにそれが見えるように思えます。
困った人を救うために、社会保障制度があります。しかし、公的扶助(生活保護)にしろ、社会保険(医療、年金、介護など)にしろ、金銭、現物、サービスの給付が主でした。しかし自立支援は、このような給付だけでは目的を達成することはできず、継続的な相談や助言が必要です。これまでの社会保障制度を超えた、新しい考え方が求められます。これまで行政が前提としていた、近代市民社会像と近代憲法の考え方を変える必要が出てきます。