年別アーカイブ:2026年

補正予算の財源

2026年6月5日   岡本全勝

国の補正予算が審議されています。
その財源について「総額3兆1135億円はすべて赤字国債を発行してまかなう。首相はこの日の衆院本会議で「市中への発行総額を増やさずに対応できるため、国債マーケットに影響を与えることなく実行可能だ」と繰り返した。財務省によると、税収増などにより2025年度の国債発行が計画より3兆円少なく済む見通し。このため、3兆円超の国債を新たに発行しても市場に出回る量は差し引きでほとんど変わらないという理屈だ」とのことです。6月4日の朝日新聞「市場を警戒、財政規律強調 首相「国債発行総額、増やさず対応」 補正予算審議」。

ご存じの通り、財政法では、国債は例外的に発行すると定めています。特例公債法を定めて、その例外をつくっています。
第四条 国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。

一時しのぎなら良いのですが、日本の財政は毎年、多額の国債を発行し、その累積残高も飛び抜けて多くなっています。為政者が考えるべきは、発行額を減らすこと、残高を減らすことでしょう。「今はうまく回っているから大丈夫」という説もありますが、それがどこまで続くか心配です。他方で、南海トラフ地震も想定され、その復興経費を考えると、財政に余裕を持っている必要もあります。

税収増があるから、それを使えば良いという考えも、疑問です。財政法には、次のような規定もあります。
第六条 各会計年度において歳入歳出の決算上剰余を生じた場合においては、当該剰余金のうち、二分の一を下らない金額は、他の法律によるものの外、これを剰余金を生じた年度の翌翌年度までに、公債又は借入金の償還財源に充てなければならない。

基本を切り抜ける知恵を出すことも良いですが、それが続くと基本を放棄したことになります。

早まる採用活動は悪いことか

2026年6月5日   岡本全勝

5月27日の日経新聞に、「採用計画調査から(4)」「早まる就活、6割「悪影響」採用活動、コスト増に疲労感」が載っていました。

・・・日本経済新聞社がまとめた採用計画調査では、2026年春入社の採用活動における早期化や長期化の影響について聞いた。「悪い影響があった」と回答した企業は6割を超えた。学生だけではなく企業にも疲弊が表れている。
26年春入社の面接、試験など選考の開始時期は「24年10~12月」が27.3%と最も多かった。「25年3月」(18.7%)、「25年1月」(12.9%)、「24年7~9月」(9.9%)と続く。
政府は新卒採用の選考活動開始時期について卒業年度の6月1日以降が望ましいとしているが、25年6月以降だったのは5.6%にとどまった。ルールと実態が乖離していることが浮き彫りになった。

早期化・長期化による影響について良しあしを聞くと「悪い影響があった」とした企業が1778社のうち1112社と62.5%を占めた。
具体的な影響(複数回答)では「早期に学生との接点を持ち、自社理解を深めてもらえた」が66.3%と最多だったものの、次に多かったのは「内定辞退防止の負担が大きくなった」で55.2%となった。内々定辞退者の数について「前年より多かった」と答えた企業は3割に上った。優秀な人材を獲得するために早期からの採用活動を有効と考える半面、内定辞退の対応策に頭を悩ませる企業が増えている・・・

でも、採用活動が早まること、企業の負担が大きくなることが問題なのでしょうか。
大学では、通常4年間学ぶのですよね。3年生の夏や秋から採用の面接などをして学生を選ぶということは、学生が身につけた学問を問わないに等しいでしょう。(学問を問わず)優秀な学生と判断して会社が採用したいなら、卒業を待たず、2年生でも3年生でも学年途中で採用すればよいのではありませんか。
良い学生と見込んだら、卒業を待たずに、採用すれば良いのです。それなのに、なぜ卒業まで待つのか。内定辞退の恐れもあるのに。
採用活動が早まることが問題ではなく、卒業証書が形式的価値しか持たず、学んだ内容を問わないという大学教育と、企業の採用基準が問題なのです。

今年も人事院初任研修講師2

2026年6月4日   岡本全勝

今年も人事院初任研修講師」の続きです。今日は、入間市にある人事院の研修所に行ってきました。
117人の研修生たちが18班に別れて、与えられた課題を議論し、発表します。研修生には、課題(3種類)を与えてあり、各班が1つの課題ついて検討した結果を発表します。指導教官は私のほかに、被災者支援本部で一緒に苦労し、当時の実態を知っている、福井仁史君と辻恭介君にお願いしました。3室に分かれて、それぞれ6班ずつ担当します。

各班ともよく調べてあります。論点の整理、資料の作成、発表も良くできていました。採用されてまだ2か月ですが、しっかりしています。このような作業や検討に慣れているのですかね。もちろん、欠けている点もあります。
これまでにない事態にどのように対処するか。その場合は、想像力の勝負になります。各課題とも正解のない問題です。他方で、他省庁の職員と集まって議論をして、一定の結論を出す。それがこの研修の狙いです。初めて出会った人たちが、議論します。
しかも、発表だけでなく、ほかの班からの質問(攻撃)に応えなければなりません。言いっぱなしでは、終わらないのです。これも良い経験になったと思います。

班別討議を進める過程で「課題が漠然としすぎていて、困りました」という意見もありました。その通りでしょう。簡単に答えが見つからない課題、そもそも何が問題かもわからないような課題を設定してあるのですから。学生時代の試験は、答えが一つだけの場合が多いですが。何が課題かを見つけることも、官僚の仕事として重要なのです。そして初めて出会った人たちと一緒に仕事をすることも、今後の人生ででてきますよ。

日本人の孤独感、40年にわたり上昇

2026年6月4日   岡本全勝

5月21日の朝日新聞に「日本人の孤独感、40年にわたり上昇 81研究を分析、「悪化」を統計的に確認」が載っていました。

・・・「孤独」は世界的に非常に差し迫った重要な社会課題と言われるが、日本でも実際に悪化しているのか。中央大学の研究グループが日本国内で過去に実施された研究を分析したところ、約40年間にわたり孤独感が上昇していることを確認し、専門誌に発表した。

 孤独感は単なる個人の主観的な感情ではなく、心身の健康リスクを高める可能性が指摘されている。世界保健機関(WHO)の報告書によると、世界の6人に1人が孤独感に悩み、年約87万人の死亡の原因となっている。WHOは、孤独と社会的な孤立を、解決を急ぐべき深刻な公衆衛生上の課題と位置づけている。
日本も深刻化していると言われるが、長期的な変化はわかっていなかった。
そこで研究グループは、孤独感を定量的に評価するための指標(UCLA孤独感尺度)を使って日本で1983~2023年に実施された81研究のデータ(計約5万人が回答)を統合して分析した。
平均値の推移をみると、孤独感は約40年間で長期的に上昇していることが統計的に確認された。

青年期(中学生~大学生)、成人期、老年期(65歳以上)にわけたところ、とりわけ青年期で上昇していた。全体的には男性の方が女性より孤独感が高い傾向が見られるが、年々の変化をみると女性で上昇傾向が確認できた。新型コロナウイルス感染の流行前に比べて流行中の方が孤独感が高かったことも確認できた。
社会環境の変化の影響についても探った。単身世帯数やインターネットの利用時間のほか、経済的な豊かさを示すGDP(国内総生産)の増加は、孤独感の上昇と関連が見られた。また、平均の世帯人数や婚姻率の減少も、孤独感の上昇と関連が見られた・・・

血縁や地縁の希薄化、核家族化と単身者の増加、非正規労働者の増加など、一人暮らしで自由な生活を得たのですが、他方で孤独がやってきました。これは、連載「公共を創る」で取り上げている成熟社会の課題の一つです。他人とのつながりは面倒なものでもあります。スマートフォンによる便利なつながりは、多くの場合、深いつながりにはなりません。

オランダの歴史に学ぶ

2026年6月3日   岡本全勝

2026年オランダ・ベルギー旅行4」の続きです。
岡崎久彦著『繁栄と衰退と: オランダ史に日本が見える』(1991年、文藝春秋。1999年、文庫版)を再度、買って読みました。岡崎さんは、オランダの盛衰に日本は学ぶべきだという視点から、1906年にイギリスで出版されたエリス・パーカー著『オランダの興亡』を紹介する形で、16・17世紀のオランダの興亡を語っておられます。元は1990年に雑誌に連載されたものですが、当時の日本はバブル経済に踊っていました。やがて来る衰退に、警鐘を鳴らしておられたのです。

大国の盛衰を語る際に、16世紀をスペインとポルトガル、17世紀をオランダ、18世紀・19世紀をイギリス、20世紀をアメリカが覇権を持ったと見るのがわかりやすい説明です。オランダの場合は、それまで他国の支配下にあった、そして自然条件にも産物にも恵まれない小国が、どうして世界の大国になったのか。歴史家だけでなく、興味があります。そしてなぜ、衰退したのか。学ぶべきことがあります。
一国の盛衰は、国内要因とともに、対外的な要素もあります。競争相手がいないときや、競争相手に勝って覇権を取ります。しかし、豊かになることで製造業から金融業に移行し、また挑戦することが少なくなり、産業力が低下します。他方で、他国から挑戦を受けた際に、舵さばきを誤って負けていきます。指導者たちは、対外的な危機とともに、それを認識していても統一できない国内意見とも戦わなければなりません。この項続く。