年別アーカイブ:2026年

インターネットを予想できなかった人たち

2026年6月8日   岡本全勝

読売新聞「時代の証言者」は、鈴木幸一の「ネット開国に挑む」が続いています。鈴木さんは、インターネットという言葉が一般に知られていなかった時代、インターネットイニシアティブ(IIJ)を創業し、国内企業で初めてインターネットの商用サービスを始め、日本のネット基盤を築き上げてきました。6月4日の「資金集め 相手にされず」から。

・・・1992年12月、インターネットイニシアティブ企画という会社を設立し、93年にインターネットイニシアティブ(IIJ)に変更しました。社名には、我が社がイニシアティブ(主導権)を取ってネットで社会変革をもたらすとの気概を掲げました。
資本金の目算は大きく外れました。電力会社からの10億円とその他の企業からの拠出で、20億円以上集まる想定でしたが、実際は、懐の寂しいエンジニアが持ち寄った約1800万円でのスタートでした。

当てにしていた企業からの出資話はビジネス的に詰められた話ではなく、資金集めはゼロからの出発となったため企業へのお願いに日々を費やしました。ネット市場の成長予測と事業計画を綿密に練り、その将来を説きました。
ある銀行の幹部に「日本のインターネットの利用者は現在は1000人程度ですが、10年後には3000万人になります」と話をすると、当初は「ホラもそこまでくるとたいしたものだ」とあきれられました。私の予測は、逆の意味で外れました。10年後の利用者は8000万人に迫り、今では驚きでもありません。
悔しい、笑い話のような思い出もあります。
ある鉄鋼メーカーにお願いに行った際には、「インターネットを私なりに調べましたが、皆がビジネスとして使うようになったら、全裸で逆立ちして銀座を歩きますよ」と、冗談交じりに言われました・・・

この人たちに、現在の心境を聞いてみたいですね。

坪井ゆづる執筆「東日本大震災15年の「節目」に」

2026年6月7日   岡本全勝

月刊『自治総研』2026年6月号に、坪井ゆづるさんが「東日本大震災15年の「節目」に」(61ページから)を書いています。インターネットで読むことができます。
15年間の復興事業の実績と評価が、よくまとめられています。事実と数値を詳しく取り上げ、かつ実績と問題点を均衡の取れた形で評価してあります。問題点の指摘だけでなく、対応策も提言してあります。関心ある方に、一読をお勧めします。

発災当初からこれまでを追いかけてきた記者でなくては、書けない論文です。たぶん、官僚もこのようにまとめることはできないと思います。そして、今後、福島復興に携わる関係者や、災害復興を担当する官僚たちにとって、よい教科書になると思います。感謝します。

津波被災地では、復興事業がほぼ終わったこと、それに費やした予算(歳入、歳出)、「まちの復興」と「ひとの復興」の間に時間差が生じたこと、土木事業が優先されたこと、今後の災害に備えて事前復興が重要なこと、新たな土地制度が必要なこと。
原発被災地では、復興はまだ道半ばであること、除去土壌を処理する課題、先が見えない廃炉の扱いなど。
復興15年での振り返りなど

竹工芸、購入者の8割が外国人

2026年6月7日   岡本全勝

5月31日の日経新聞別刷りに「竹の魔術 しなりが導く匠の技」が載っていました。

・・・日本人にとって竹がもっとも身近な植物の一つであることは間違いないだろう。和的な景観を彩る要素としてだけでなく、しなやかで強靱な特性は昔から、人びとの暮らしを支えてきた。近年は厄介者扱いされることもある一方、その秘めた能力に魅せられる人は少なくない。
細い竹ひごが、生き物のようにしなる。岐部笙芳(せいほう)さんの手が交差するたび、目の前で美しい網目模様が広がっていく。大分県九重町にある岐部さんの工房を訪れた。現在全国で3人いる竹工芸の重要無形文化財保持者(人間国宝)の一人だ。
創作は「材料とり」と呼ばれるひごづくりから始まる。真竹を縦に割り、包丁を使ってひごをつくる。細いものは1ミリ以下。端から見ているとわけなく見えるが、均一な幅を保つのは経験のたまものだ。使用する数も作品によっては百本を超えるというから、繊細さに加えて根気もいる・・・

・・・(訓練学校の)1年の課程を終えた後も学び続け、展覧会で受賞もした。だが、作品づくり一本で食べていくのは難しい。問屋の求めに応じてつくった小物は一つ3000円。月に10個が精いっぱいだ。バブル期にはバッグが高値で売れたこともあったが、崩壊とともに需要は激減。アルバイトをしながらの制作が続いた。
第二の転機は25年ほど前だ。ある日、日本の竹工芸に造詣が深い米国人ロバート・コフランドさんが通訳を伴い工房を訪れた。「作品を見せてほしい」と請われ、2点を注文して帰った。その後、米国で個展を開催することになる。
いまも購入者の8割を外国人が占める。団体が山あいの工房にバスで乗り付けることもあるそうだ。「元の竹から変化して様々な形に変化する。実演すると『なんなんだこれは』と驚かれる」。竹が醸す日本文化への憧憬もあるのだろう・・・

オランダの歴史に学ぶ2

2026年6月6日   岡本全勝

オランダの歴史に学ぶ」の続きです。

司馬遼太郎著『街道をゆく オランダ紀行』(1994年、朝日文庫。新装版が出ています)を本棚から探し出して(このシリーズは捨てませんでした)、読みました。司馬さんの本は、読みやすいですね。もちろん歴史書ではないので、すべてに目配りすることなく、ある視点から、そして現地の風景を織り込みながら、説明してくださいます。先日訪れた風車の残る観光地、キンデルダイクで、咸臨丸が建造されていたことを知りました。

続けて、桜田美津夫著『物語 オランダの歴史 大航海時代から「寛容」国家の現代まで』(2017年、中公新書)を読みました。これは500年の歴史を新書にまとめてあるので、オランダの黄金時代には1章が当てられています。しかし、その後のオランダがたどった歴史がわかりやすいです。マウリッツハイス美術館の位置づけもわかりました。

と書いて、私のホームページを検索したら「オランダの歴史」がでてきました。ああ、読んでいたんだ。私の興味は変わっていないということですね。でも、何も頭に残っていなかったということです。寝る前に布団で読むと、こんなものでしょう。「生産の読書、消費の読書、貯蓄の読書」。実は先日、別の本でもやってしまったのです。肝冷斎に話したら「二度あることは三度ある」と言われてしまいました。

ところが、岩波書店の宣伝誌「図書」6月号に、石井洋二郎さんと國分功一郎さんの読書を巡る対談が載っていて、石井さんの次のような発言があります。
・・・渡辺一夫先生がある本を読み始めたら、途中でラテン語の引用があって、自分の筆跡でフランス語に訳してある、そこで前に読んだことがあると初めて気がついた。博覧強記の渡辺一夫先生でさえそうだと・・・

寺島実郎著『世界認識の再構築─17世紀オランダからの全体知』( 2025年、岩波書店)も興味深そうですが、これはまたの機会にしましょう。

超人は、主体的に考え練習する

2026年6月6日   岡本全勝

5月23日の朝日新聞オピニオン欄、吉井理人・千葉ロッテマリーンズ前監督へのインタビュー「勝手に育った」超人たち」から。

・・・メジャーリーグで活躍する佐々木朗希、大谷翔平、ダルビッシュ有。3投手がアメリカに渡るとき、指導者として携わったプロ野球・千葉ロッテマリーンズ前監督の吉井理人さんは「勝手に育った」と評する。超人に共通する言動とは。その礎となる思考を鍛えるために、周りはどうサポートしたらいいのか。

―「勝手に育った」3投手の共通するものはなんですか。
「好奇心、向上心が強く、自分の頭で考えて工夫して練習する。主体性をもって、自分の意思や判断で物事に向き合うとも言えます。主体性は、言われたままを積極的に取り組む自主性とは明確に異なります」

―とはいえ、主体性は個人の資質によるような……。
「主体的な思考は鍛えられます。ああしろこうしろと他人に指示されるのではなく、自分で考えて取り組むことで、モチベーションが高まる。活躍する選手は自分を客観視できるから、やるべきことがわかるのです」
「まずは自分を知ることが一番のポイントです。三人称で日記を付けてみたり、脳内で自分がコーチになったつもりで自分をインタビューしてみたりすることをお薦めします。『私は』ではなく『吉井は』と俯瞰した視点で振り返る。できたこと、できなかったことが言語化できるようになれば、自ら解決策を見いだせるようになります」

―結果に至ったプロセスに加えて、そのときの感情も振り返ることが大事だそうですね。
「感情によって行動は変わります。気合が入りすぎると力んでしまう。実は家族とケンカしていたという私生活が影響することもある。メンタルをコントロールすることは重要です」
「大谷のすごさは、いつも機嫌良く見えることです。楽しくない日もあると思うんですけど、自分で自分の機嫌をとれる。力を発揮できる精神状態を作れるのです。小さいときから訓練してきたのでしょう。大谷が一人いるだけで、周りの雰囲気がぐっと良くなります。日本が優勝した2023年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)がいい例です」

―主体的な思考を育むために、指導者や保護者ができるサポートはありますか。
「気づきを与えることが全てだと思っています。まずは相手に話してもらう。安心して話してもらう関係を作るために、相手の主張は全肯定します。そのなかで『なぜ』『どうすればよかった』『どうしたい』と質問攻めにします。最初は上辺だけのことしか話せなくても、質問を繰り返すことで一歩ずつ思考が深くなっていきます」
「答えは与えられません。その人のなかにしかないのです。困ったときにヒントを与えたり、提案したりするなかで、自分に合うと思う解決策を選んでもらいます。自己決定を尊重し、成功体験を積み重ねた先に、主体性は養われていきます。もちろん年単位の時間がかかることもあります」

―勉強などでもそうですが、指導者は「答え」をアドバイスしたくなります。
「一時的には効果が出ますが、やらされてもうまくいかないとやる気がなくなり、やめてしまいます。長い目で見るとマイナスです。サポートする側は我慢が必要です。私も駆け出しの頃は、最初は選手に質問していても、最後は自分で答えをまとめていました。その会話を録音して、見直しました」

「32歳でメジャー移籍し、投手コーチから『自分のことを一番知っているのは自分自身だから、君のことを教えてくれ』と言われたのが印象的でした」