10月17日の日経新聞に「男性の「俺」離れ、半数が使わず 「私」や「自分」で自己主張弱める」が載っていました。
・・・男性一人称の自称詞、「俺」の存在感が揺らいでいる。民間調査によると「俺」を使う男性は約30年で急減し、「私」「僕」「自分」に分散した。専門家らは、立場や関係性に配慮し、摩擦を避けたい意識の表れとみる。
博報堂生活総合研究所が実施した調査によると、家族や友人の前で自分を「俺」と呼ぶ男性の割合は1994年に未婚者で86.0%、既婚者では65.4%と多数派だった。ただ、2026年調査ではそれぞれ42.5%、46.7%と半数を割り込んだ。
「俺」衰退の裏で進むのが分散化だ。1994年では次点「僕」とのほぼ2択だったが、2026年には「私」が未婚・既婚とも2割前後の勢力となり、「僕」は3位に転落した。「自分」も未婚・既婚とも1割前後を占め、存在感を増している。
調査を担当した研究員の加藤あおいさんは、「男らしさを強調する『俺』を避け、より自己主張が弱い『私』が選ばれている」と分析する。「『自分』はSNSなどで匿名で発信したい場合にも便利。主張が強いと思われたくない、属性を明らかにしてたたかれたくないという心理がある」。身近な関係だけでなくフォーマルな場でも広がっているという。
なぜ男性は、自分の色を消そうとしているのか。『自称詞〈僕〉の歴史』著者である友田健太郎さんがこの30年の変化として注目するのが、女性の社会的地位の向上だ。
「『俺』の乱暴なイメージが強まり、女性との対等な関係性を意識する男性が使いにくくなった」と友田さんは分析する。「『僕』にも若干のエリート感がある。一方、『自分』は自身を内省するような率直な響きがあり、男女間の緊張とも無縁で選びやすくなったのでは」
言葉とジェンダーの関係を研究する言語学者の中村桃子さんが注目するのは、生活総研調査での女性側の変化だ。1994年は「あたし」の利用が未婚女性で4割超、既婚女性で3割弱を占めたが、2026年にはともに1割以下となり、「わたし」が大きく増えた。
中村さんによれば、「あたし」は「わたし」より女性性を強調する響きを持つ。「俺」離れと「あたし」離れは同じ変化の表れで、「伝統的な男らしさ、女らしさに魅力がなくなった結果ではないか」と考察する・・・