年別アーカイブ:2026年

「俺」を使わなくなった

2026年10月27日   岡本全勝

10月17日の日経新聞に「男性の「俺」離れ、半数が使わず 「私」や「自分」で自己主張弱める」が載っていました。

・・・男性一人称の自称詞、「俺」の存在感が揺らいでいる。民間調査によると「俺」を使う男性は約30年で急減し、「私」「僕」「自分」に分散した。専門家らは、立場や関係性に配慮し、摩擦を避けたい意識の表れとみる。

博報堂生活総合研究所が実施した調査によると、家族や友人の前で自分を「俺」と呼ぶ男性の割合は1994年に未婚者で86.0%、既婚者では65.4%と多数派だった。ただ、2026年調査ではそれぞれ42.5%、46.7%と半数を割り込んだ。
「俺」衰退の裏で進むのが分散化だ。1994年では次点「僕」とのほぼ2択だったが、2026年には「私」が未婚・既婚とも2割前後の勢力となり、「僕」は3位に転落した。「自分」も未婚・既婚とも1割前後を占め、存在感を増している。

調査を担当した研究員の加藤あおいさんは、「男らしさを強調する『俺』を避け、より自己主張が弱い『私』が選ばれている」と分析する。「『自分』はSNSなどで匿名で発信したい場合にも便利。主張が強いと思われたくない、属性を明らかにしてたたかれたくないという心理がある」。身近な関係だけでなくフォーマルな場でも広がっているという。
なぜ男性は、自分の色を消そうとしているのか。『自称詞〈僕〉の歴史』著者である友田健太郎さんがこの30年の変化として注目するのが、女性の社会的地位の向上だ。
「『俺』の乱暴なイメージが強まり、女性との対等な関係性を意識する男性が使いにくくなった」と友田さんは分析する。「『僕』にも若干のエリート感がある。一方、『自分』は自身を内省するような率直な響きがあり、男女間の緊張とも無縁で選びやすくなったのでは」

言葉とジェンダーの関係を研究する言語学者の中村桃子さんが注目するのは、生活総研調査での女性側の変化だ。1994年は「あたし」の利用が未婚女性で4割超、既婚女性で3割弱を占めたが、2026年にはともに1割以下となり、「わたし」が大きく増えた。
中村さんによれば、「あたし」は「わたし」より女性性を強調する響きを持つ。「俺」離れと「あたし」離れは同じ変化の表れで、「伝統的な男らしさ、女らしさに魅力がなくなった結果ではないか」と考察する・・・

JICA強靱な社会づくり研修

2026年10月26日   岡本全勝

今年も、国際協力機構(JICA)に呼ばれて、強靱な社会づくり研修の講師を務めました。今回の参加国は、パキスタン、パレスチナ、リビア、スーダン、エチオピア、ナイジェリア、ソマリア、ウガンダ、ブルキナファソ、ブルンジ、南スーダン、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボの13か国です。それぞれの国が、どこにあるかわかりますか。

私の出番は3度。10月15日は日本の発展を支えた行政機構の講義、22日は東北復興の講義、そして26日が全体の振り返りです。2回の講義はその主題に沿って話しますが、いつものことながら、それに限らずいろんな質問が出ます。最近は、質疑時間を全体の半分にしています。
岡本講師は、どんな質問にも明瞭簡潔に答える(そう心がけている)ので、参加者からは好評です。正確に答えようとすると時間がかかり、また理解しにくいでしょう。そこは割り切りです。

歴史や社会が異なるので、日本の経験はそのまま当てはまらないでしょうが、各国の発展を考える一助になればうれしいです。「2025年国際協力機構「強靱な国・社会づくり」講師」

児童相談所を改革

2026年10月26日   岡本全勝

日経新聞夕刊「人間発見」、10月13日の週は、藤林武史・元児童相談所長の「傷ついた子どもの心と共に」でした。
・・・精神科医で西日本こども研修センターあかし(兵庫県明石市)センター長の藤林武史さん(68)は福岡市で児童相談所長を18年間務めた。児相に全国で初めて弁護士を常駐させ、虐待などで親と暮らせない子どもが可能な限り里親家庭で成長できるように取り組むなどの改革をリードしてきた。退任後は「子どもの最善の利益」を軸に全国の児相が創意工夫にあふれた挑戦ができるよう支援を続ける・・・

10月15日の「「最後の砦」守った18年」から。
・・・「2003年、福岡市の児童相談所長の採用試験を公募で受験し採用された。」
就任当時の児相の状況は、親や子どもと向き合って支援内容を提案する児童福祉司は、みな児相に異動してきた行政職でした。生活保護の担当経験がある人も中にはいましたが、子ども支援の専門的な訓練はほぼ受けていませんでした。一方で、増え続ける虐待に対応する中で常に疲労感があり、多くの人が「早く他部署に異動したい」と言っていました。
本来、児相職員は専門性が必須です。「いらんおせっかいをするな」と拒む親に「お困りでしょう」と関係をつくる力が重要。「実は助けを借りたい」という親や子の気持ちを観察して、引き出す力が求められるのです。
私は試行錯誤の末、人事課に掛け合い、医療機関などで対人援助の経験がある社会人の福祉職採用を始めました。登山で言えば、3合目からスタートできるようになり、現場に少しずつ活気や安定感が生まれました。

「11年、全国で初めて児相に弁護士を常駐させる改革に踏み切った。今では全国の児相が続いている。」
福岡市では09年から虐待による子どもの死亡事案が続き、職員が疲弊していた。児相は法律上、親の同意がなくても子どもを一時保護できるのですが、親との衝突が大きいと職員の精神的負担も大きくなる。もちろん子どもにも影響します。
そこで児相に子どもをとられると思い抵抗する親に、保護の必要性を熱意や経験則だけでなく、法的根拠も踏まえて説明できれば、職員の精神的負担が軽減できるのではと考えました。虐待死をなくすには、弁護士も参加して、保護すべきだと考えたケースが法的に妥当かどうか迅速に判断するのが良い処方箋になるのではと考えました。
弁護士常駐で必要なケースは保護し、必要のないケースはしない、あるいは保護を解除するという意味では効果はありました。ただ試行錯誤した結果、必要以上に「リスクがあれば、もっと保護すべきだ」というスローガンを唱えても、子どもの命は救えない、というのが私の結論です。
虐待死事案は、児相が関わった時点では事態の切迫度などの法的な保護要件が必ずしもそろっていないことも多い。だから虐待死を防ぐには「保護ありき」ではなく、児相に虐待の相談や疑いの通報があった時に、「SOSが出せない」という親の困りごとをいかに児相職員が引き出せるかが大切です・・・

静岡大学で講義2

2026年10月25日   岡本全勝

先日の「静岡大学で講義」、学生からの感想文が送られてきました。長短はありますが、それぞれの思いがしっかりと書かれています。内容もしっかりしていて、文章も読みやすいです。

大震災対応や総理秘書官の仕事は、彼ら彼女らには珍しいので、勉強になったようです。あわせて、「公務員は法令に書かれたことを実行するだけでなく、書かれていないことを考える」「公務員は接客業」「職場は集団演技」といった話も、新鮮だったようです。
「自分探しは自分作り、経験を重ねることで自分ができる」「一人で悩むな」「わからなかったら人に聞く」「新聞を読む意味」などの、社会人の先輩としての助言も心に響いたようです。そのような話を聞く機会はないでしょうから。

枚数が多いので、読むのは一苦労ですが、私の話がどの程度通じているかを測るよい資料です。「へえ、こんな話が記憶に残ったのだ」と思うような記述もあります。
一つ注文をつけるなら、改行のない文章がいくつかありました。長くなると、読みにくいです。これは、山田准教授から指導してもらいましょう。

生活保護窓口、職員入れ替え

2026年10月25日   岡本全勝

10月15日の朝日新聞「生活保護「半減」3年、窓口の変化は 職員入れ替え、利用者「人として扱われた」」から。

・・・2023年度までの約10年間で生活保護利用者が半減した群馬県桐生市。職員による「申請権の侵害」を市長も認め、再発防止のため市は生活保護行政の抜本的な見直しに取り組んできた。問題が明らかになって来月で3年になる。窓口は変わったのか。

「(以前は)窓口に行けば犬みたいになるしかなかった。人権なんてありませんでした。今、人として扱われているだけ幸せです」
7月、生活保護行政の改善状況を第三者がチェックする市の検証委員会。全利用世帯(710世帯)を対象にした初のアンケート結果が公表された。自由回答には、窓口対応の変化を示す証言が複数あった。
福祉事務所の対応について聞いた質問では、「分からない」が42・4%でもっとも多かったものの、「とても良くなった・良くなった」が35・0%、「変わらない」が18・5%、「悪くなった・非常に悪くなった」が4・1%。改善傾向が確認された。

利用者に罵声を浴びせ、「くず」と言ってはばからない。以前は、そんな市職員もいたという証言もあった福祉事務所。市によると、2025年度から、課長をはじめ担当者はほぼ「総入れ替え」となった。問題が発覚した23年度、市のケースワーカー6人のうち女性ワーカーはゼロだった。現在は10人に増員され、うち4人が女性ワーカーだという。
再発防止策の目玉は、窓口での相談や電話応対の会話録音の実施だ。利用者の了承を得たうえで25年6月から続けている。市地域福祉課の高橋伸幸課長は「私と担当係長の2人が、毎月2件ずつ無作為抽出して聞き、チェックしている」と話す・・・

・・・ 市の生活保護利用世帯数は11年度には約900世帯だったが、23年度には474世帯にまで減少した。問題発覚後の24年度から増加に転じ、26年8月末時点で716世帯にまで増えている。市地域福祉課の高橋課長は「物価高騰の影響もあるだろうが、以前は市の窓口は相談しづらく、利用が抑制されていたと考えざるをえない」と話す・・・

・・・<群馬県桐生市の生活保護問題>
最初に発覚したのは生活保護費を1日1千円に分割支給したうえに、その月に本来支給されるべき満額を支給していない問題だった。その後、市の生活保護利用者数が約10年間で半減していたことが判明した。市が設置した専門家による第三者委員会は25年3月に報告書をまとめ、行政の「生活保護法違反」「組織的不正」などを指摘した。荒木恵司市長は、市職員による申請権の侵害を認め、利用者らに謝罪した・・・