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連載「公共を創る」第256回

2026年4月16日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第256回「これまでの議論ー社会・経済システムの大転換を成し遂げるには」が発行されました。これまでの議論のおさらいを続けています。
第2章で提案した社会の見方の転換の一つは、施設やサービスだけでなく人や社会が持っている文化や気風の重要性を認識することです。私たちは公共施設を社会資本と呼びますが、暮らしを支えているものはそれらにとどまりません。関係資本と文化資本も重要であり、それらは社会の問題も生んでいます。

日本の文化や習俗を分かりやすく表現するために、「この国のかたち」という司馬遼太郎さんの言葉をお借りしました。この概念を使うと、同じように法制度や市場経済を導入しても国によって運用と成果が異なることを、説明することができます。また、憲法や法律には定められていない文化や習俗に、国民の行動と思考が縛られることも整理しやすくなります。
例えば、憲法第24条第1項は「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」と定めています。しかし最近まで、実態としては二人の合意だけでは結婚できず、親の許しが必要でした。そして結婚後は、多くの家庭で夫婦は平等でなく、夫が「主人」として振る舞うものでした。しかし、結婚の仕方や家庭内での夫婦の位置付けは、この数十年で大きく変わりました。

司馬さんの「この国のかたち」という言葉とその観点は、政府も大きく扱うことになったのです。2001年に実行された中央省庁改革の方針を定めた「行政改革会議最終報告」に、「『この国のかたち』を再構築することこそ、今回の行政改革の目標である」と書かれたのです。

次に、「第3章 日本は大転換期」では、長期的な視点から日本社会が大きな転換期にあることを説明しました。そこで取り上げたのは、「行政の前提となっている社会の変化」です。私たちが政策を考える際に前提としていた日本社会がどのように変わったのか、またその中で国民は行政に何を求めているのかを話題にしました。
本稿で対象としている課題は、国民の意識や世の中の仕組みが、経済と社会の実態的な変化に追い付いていないことでした。変化について考える際には、政治と行政制度の変化ではなく、国民の暮らしがどう変わったかに視点を合わせてきました。歴史学で言うなら、政治史ではなく社会史といわれる領域です。

対象とした期間は、第2次世界大戦後を中心にしました。終戦直後の戦後改革は、いま議論している政治や行政とその前提となる社会に関して、革命とも言うべき大きな改革でした。この国のかたちの枠組みが、ここで決まりました。その後、憲法をはじめとする統治に関する制度は、大きく変わっていません。しかし、社会の方は、制度とは少しズレながら、大きく変わりました。
その際に、特に二つの期間の変化を取り上げました。その一つは、戦後約40年間(昭和後期。1945~1989年)の変化、すなわち戦後改革と経済成長期の変化です。「昭和の変化」と呼びましょう。もう一つは、その後の平成時代の30年間(1989~2019年)と現在に続く令和時代(2019年~)の変化、すなわち成熟社会時代の変化です。「平成の変化」と呼びましょう。この二つの時期に、日本社会の変化が進行したのです。

女性トイレの行列解消は国の仕事か

2026年4月16日   岡本全勝

社会の問題、特に地方行政について鋭い指摘をしている「自治体のツボ」、4月15日は「女性トイレの行列解消は国の仕事か」でした。

・・・国交省は男女が等しく快適に過ごせるよう、トイレの待ち時間を平等にせよ、と施設管理者らを指導していくようだ。利用者が男女同数なら、女性用を多く設計することも求めるそう。ま、内容はいいけれど、国に言ってもらわないとやらないのか、民間は。
NHKホールだけでなく、歌舞伎座も映画館も混雑している。行列を放置する商業施設は選ばれなくなるが、唯一無二の殿堂、歌舞伎座あたりはあぐらをかいて手を打たない。だから国が出てきてしまうのか。そもそも施設を造る前から配慮しておくべきことだ。
女性用トイレの混雑放置という事象に国がお出ましになる事態は、いかに日本が女性の社会進出に関心がないか如実にあぶり出すものといえる。競技場などは男性トイレを開放するなどの対策をとっているようだが、女性が人の集まる場所に出かけるのは難儀だろう・・・

続きは、原文をお読みください。

消費税ゼロ、経営者「反対」66%

2026年4月16日   岡本全勝

3月31日の日経新聞1面に「消費税ゼロ、経営者「反対」66% 給付付き控除は「賛成」86% 社長100人アンケート」が載っていました。
・・・高市早苗政権が導入を目指す飲食料品の消費税ゼロに日本の主要企業の経営者は否定的な見方を示している。日本経済新聞の「社長100人アンケート」では回答の66.3%が「反対」だった。物価高対策としての効果に懐疑的で、財政悪化への警戒感が強い。一方で、給付付き税額控除には所得再分配の手段として支持が集まっている。
アンケートは国内主要企業の社長(会長などを含む)を対象に3月2〜19日に実施し、143社から回答を得た・・・
反対の理由は、代替財源が確保できないから(71%)、景気押し上げ効果は限定的でコストに見合わないから(67%)などです。

4月1日には「ブランシャール氏に聞く積極財政 成長投資「正しい」、消費税減税「異論」」が載っていました。
・・・26日の政府の経済財政諮問会議に有識者として出席した米マサチューセッツ工科大学のオリビエ・ブランシャール名誉教授が日本経済新聞のインタビューに応じた。高市早苗政権の責任ある積極財政の考え方に「正しい」と賛同した。食料品の消費税率を2年間0%にする政府・与党案については「少し異論があるかもしれない」と語った・・・

食料品の消費税率を2年限定で0%にするという高市政権の案について。
・・・私はその案に少し異論を唱えるかもしれない。食料や誰もが必要な商品の税率を所得再分配の観点で引き下げるのは良い考えだ。ただ私が必需品の減税を検討するなら、他の品目の税率を引き上げるだろう。そうでなければ財政赤字を増やし、財政の信認を低下させる。実行するなら予算に中立であることを徹底すべきだ。
なぜたった2年間なのかも論点だ。低所得者層を真剣に支援するならそれは恒久的措置出あるべきだ。景気循環も時限的な減税の理由の一つにはなる。景気後退期に一時的に減税すれば、再増税前に人々の消費を増やすインセンティブになる。これは景気後退期には有用な政策だが、今の日本はそうではない・・・

法律に出てくる「市民」

2026年4月15日   岡本全勝

法律に規定された「消費者市民社会」」の続きです。残る「市民」に関する法律の規定は、次の2つになります。
「市民」特定非営利活動促進法、成年後見制度利用促進法
「市民生活」暴力団不当行為防止法、警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律など

市民という言葉は、市の住人という意味でも使われますが、ここでは、西欧近代で生まれた「政治参加の主体となる自立した個人(citizen)や地域社会を担う主体」として取り上げています。その観点では、警察関係で出てくる「市民生活」は「住民の生活」と言い換えることができるようで、少々異なります。

成年後見制度利用促進法には、ずばり「市民」が出てきます。
(基本理念)
第三条 2 成年後見制度の利用の促進は、成年後見制度の利用に係る需要を適切に把握すること、市民の中から成年後見人等の候補者を育成しその活用を図ることを通じて成年後見人等となる人材を十分に確保すること等により、地域における需要に的確に対応することを旨として行われるものとする。

しかし、市民の定義はないようです。どの範囲を指して市民というのか、国民とはどのように異なるかは不明です(専門家の方に教えていただけると幸いです)。

もう一つ「市民」は、特定非営利活動促進法に出てきます。

特定非営利活動促進法
(目的)
第一条 この法律は、特定非営利活動を行う団体に法人格を付与すること並びに運営組織及び事業活動が適正であって公益の増進に資する特定非営利活動法人の認定に係る制度を設けること等により、ボランティア活動をはじめとする市民が行う自由な社会貢献活動としての特定非営利活動の健全な発展を促進し、もって公益の増進に寄与することを目的とする。

この法律は、案の段階では「市民活動促進法」という名前でしたが、自民党内での反対で、現在の名前になったという経緯があります。ここに出てくる「市民」は、「政治参加の主体となる自立した個人や地域社会を担う主体」という意味だと考えられます。
「市民社会」は歴史学や政治学、社会学でよく使われる言葉ですが、歴史的にそれを勝ち取った西欧諸国と異なり、日本では違った歴史を歩んだので、「市民社会」や「市民」という言葉がなじんでいないのかもしれません。

世界銀行のウクライナ復興支援講師、2

2026年4月15日   岡本全勝

世界銀行のウクライナ復興支援講師」の続きです。写真を送ってもらったので、載せておきます。
改めて、これだけの参加者を日本に呼んで、会合を企画運営するのは、大変なことだと思います。関係者のみなさん、ご苦労さまでした。そして、一日も早く侵略が終わって、復興が本格化することを願っています。