年別アーカイブ:2026年

味の素は半導体の会社

2026年10月10日   岡本全勝

10月8日のNHKウエッブに「食品メーカーが半導体で好調 社長が語る秘けつとは?」が載っていました。詳しくは記事を読んでください。驚きますよ。

・・・「絶縁フィルム」は、パソコンの心臓部である「CPU」に存在します。「CPU」には、半導体の基板が何層にも積み重なり、回線が複雑に張り巡らされています。意図しない部品に電流が流れ、パソコンがショートするのを防ぐため、ミルフィーユのように挟まれているのが「絶縁フィルム」です。髪の毛よりも薄く、非常に繊細です。
この「絶縁フィルム」に使われているのが、この会社の主力商品「うまみ調味料」の主成分であるアミノ酸の製造技術です・・・

・・・絶縁フィルムは、現在のAI・半導体需要の高まりを受けて、取引が一段と拡大、世界シェアは95%を超えています。
今年度の絶縁フィルムを含む事業分野の利益は昨年度より20%ほど増えて655億円となる見通しで、会社全体の事業利益のおよそ3割を占めると見込んでいます・・・

手足の代わりか頭の代行か

2026年10月9日   岡本全勝

「未来予測の限界」の続きになります。人工知能が暴走すると、人類の危機になる可能性があります。そのような犯罪的な問題ではなく、普通に検索機能や文章作成機能を使っている場合の問題も見えてきました。

人工知能に頼ることで、人の能力が向上しないのです。簡単に言うと、小学校で算数の計算問題を教える際に、電卓を渡すようなものです。大きな桁の足し算、かけ算や割り算を覚えることなく電卓に頼ると、早く正しい回答を得ますが、子供の計算能力は身につきません。
文章作成を人工知能に頼ることも、同じでしょう。学生が論文を書く際や従業員が仕事について企画書を書く際、人工知能に頼っていては、能力が向上しません。すると、人工知能が書いた文章を評価することもできなくなるでしょう。人工知能と「壁打ち」(意見交換してよいものに作り上げる)するにも、打ち返せないのです。

「機械ができることは機械に任せるべきだ」という説があります。半面は正しいのですが、それでは人は育ちません。手を動かすことと頭を動かすことは、別問題です。便利な機械は活用すべきです。しかし頭を機械に代行させては、その時はよい成果が早く手に入っても、中長期的には人と組織の自滅を招くでしょう。人は育たず、組織は弱くなります。

企業でも、外注してよいことと、内製すべきことがあります。
コメントライナーへの寄稿「役所にも人工知能がやってくる」(2023年10月12日)に次のようなことを書きました。
・・・役所の業務全体の問題として考えてみると、行政改革や人員削減によって、機械化や外注が進みました。調査や企画を調査会社に委託 丸投げ することも多くなり、工事の発注も施工だけでなく設計 段階 から企業に委託することが広がっています。
その結果、職員が考える機会が減り、設計できる職員が減って、成果物企画書や設計図と工事を評価する能力も低下していると聞きます。ある知事が現状に危機感を持ち、催し物を委託せず職員だけにやらせました。前例と経験がなく、職員はとても苦労したそうです。
文章作成も同じです。着想と「文章の肝」において、職員の独創性 が試されます。しかし機械に頼っていると、その能力は向上しません。企画や施工を委託していると、考える能力だけでなく、納入された成果物を評価する能力もつきません。そのような職員は、もう使われないのでは。仕事を手抜きの場と考えるか、能力を磨く場と考えるか 。職員が生き残れるかどうかは、この差でしょう・・・

新生児、3.3%が外国籍

2026年10月9日   岡本全勝

9月26日の日経新聞に「増える外国人新生児、群馬は13人に1人 学外の日本語教育広がる」が載っていました。

・・・日本の新生児に占める外国人の割合が増えている。2025年に生まれた子供のうち3.3%が外国籍だった。国籍や生育環境が多様化し教育現場では対応に追われている。子育てや親へのサポートなどの支援が求められている。
総務省のデータを基に、外国人住民の出生者数を総出生者数で割って算出した。25年の総出生数69万3302人のうち、2万2835人が外国人だった。都道府県別で外国人比率が一番高いのは群馬県の7.5%で、約13人に1人が外国人だった。愛知県が5.3%、千葉県が5.2%と続いた。

群馬や愛知に集まる製造業は外国人を前向きに取り込んできた。自治体やNPOは言語や文化を早くから外国人に学ばせている・・・
・・・この背景には、母国語と住む国の言葉がどちらも十分に発達しない「ダブルリミテッド」という状態がある。外国語話者の親が良かれと思い片言の日本語で子供に接することで起きやすく、一つの言語の積み重ねがなく思考力が育たない。
京都教育大学の浜田麻里教授は「特に日本で生まれた子供は支援の網をすり抜けてしまうことが多い。表面的には日本語能力に問題がないように見えるため問題が深刻化しやすい」と指摘する。

増えたのはベトナムやネパール国籍などだ。自治体は異なる言語や文化圏への対応を迫られている。
群馬県伊勢崎市では3歳以下の乳幼児健診で通訳を派遣している。25年度からはベトナム語を追加して計3カ国語に対応し、1年で計70回の利用があった。多言語翻訳サービスの活用も進め、子供の成長発達の状況や保護者の心配事を伝えられるよう努める。
指導者を育てるのが滋賀県だ。日本語指導や学習支援に関わる人を集め講座を毎年開く。8月には、県内の小学校で日本語教室を担当する教師が授業の仕方などを紹介した。参加者が日ごろの実践や悩みを共有して、対策を考えている。先行地域の取り組みは全国には重要となる。
浜田教授は「今後外国人がさらに増える中で、日本語教育さえすればいいという考えではいずれ限界が来る。(国籍などに関係なく共に学ぶ)インクルーシブな教育の必要性についても考えていくべきだ」と話す・・・

連載「公共を創る」第273回

2026年10月8日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第273回「これまでの議論ー「提供」から「保障」へ変わる政府」が発行されました。公私二元論でなく、政府・市場・社会三元論で捉えるべきという話を続けます。

連載第146回では、サービス提供について、二元論と三元論とで見え方が違うことを模式図で説明しました。公私二元論では、公共サービスは政府が提供し、私的サービスは企業が提供します。民間委託が進められると、政府が企業などを活用する状態が現れます。
官共業三元論では、政府部門(行政)、市場部門(企業)、非営利部門(NPOなど)の3部門がそれぞれ得意なものを住民に提供します。ここでは、公的サービスと私的サービスの区別はなくなっています。そして3部門の上に、政府がもう一度出てきます。政府のここでの役割は、3部門へのルールの設定、誘導、監視です。公共的なサービスを民間主体も行うことから、継続的に安全で公平に提供されるよう、ルールを定めておくことが必要になります。このルール設定とその適正な運用がなされているかの監視が、ここでの政府の任務です。

次に、政府の役割が、福祉提供国家から安心保障国家へ転換しつつあることを述べました。この表現には、「福祉から安心へ」という目標の変化と、「提供から保障へ」という手法の変化の二つを含んでいます。
福祉から安心へという目標の変化は、「人間らしい生き方への被害」という新しいリスクへの対応を意味します。西欧近代国家は「安上がりの政府」「夜警国家」から出発し、「積極国家」「サービス国家」に転換し、さらに「福祉国家」と呼ばれるようになりました。本稿では、福祉国家からさらに「安心国家」に変化しつつあると考えています。国家の主な役割が、福祉の提供から安心の提供へと変化しているという認識です。もちろん、福祉サービスが減るのではありません。安心国家は、夜警国家の治安、福祉国家の豊かさに加えて、生活や人間らしさを含めて安心の範囲を広げるものです。
提供から保障へという手法の変化は、政府が自らサービスを提供する方式から、政府がサービスの継続的な提供と質に責任を持ち、その実施については民間を利用する方式への変化です。

頭脳明晰+やり抜く力

2026年10月8日   岡本全勝

10月1日の日経新聞経済教室に、鈴木智之・国学院大学教授の「変わる企業の採用活動」「経営視点の採用・教育を」が載っていました。詳しくは記事を読んでいただくとして、人材の認知面と非認知面について書いておられる部分の一部を紹介します。

・・・今世紀に研究が大きく進んだ分野の一つに「GRIT(やり抜く力)」がある。長期的目標への根気と熱意を意味する。考える力という面では水準が変わらない人々の間で、職業上の成果に大きな差が生じるのはなぜかという疑問を探求したものだ。
頭脳明晰でも、すぐに諦めるような性格では成果を高く望めるとは限らない・・・