年別アーカイブ:2026年

希望がないと不満もない

2026年7月19日   岡本全勝

連載「公共を創る」第264回(7月9日)に、次のようなことを書きました。

NHK放送文化研究所が行っている「日本人の意識調査」「今の生活にどの程度満足していますか」という問いには、2024年では、満足している人(どちらかといえば満足しているを含め)が75%、不満だ(どちらかといえば不満だを含め)は24%です。かつてに比べ満足度が低下していますが、4人に3人が満足しています。

NHKのウェッブサイトに、博報堂生活総合研究所との座談会(2019年6月14日公開)が載っています。そこに、若者の生活満足度が上がっていることについて、次のような趣旨の発言があります。
・・・「今の生活に不満がある」ということは、「これから先良くなる可能性がある」ということであり、今よりもっといい生活があるという期待があると、今の生活に不足があると感じられてしまう。しかし、「将来が今より良くなるわけではない」と考えれば、今の生活に満足するしかなくなる。日本の行方や今後のくらし向きについて、「現状のまま特に変化はない」「同じようなもの」という回答が最も多くなっていることとあわせ考えると、「将来への期待がないから不満もない」と理解できるのではないか・・・

確かに、将来に希望や期待がないと、不満も生まれません。それが、この調査結果の「4人に3人が満足」の内容なら、喜べません。

10年前の方が今より生きやすかった?

2026年7月19日   岡本全勝

6月28日の朝日新聞に「10年前といま、どちらの時代が生きやすい?」が載っていました。2389人の回答です。

・・・ここのところ、インターネット上では「2016年」が一つのブームになっているようです。10年前に撮った写真をSNSに上げたり、当時のファッションを模してみたり……。振り返ると、この10年で社会があまりに大きく変わっていることに驚かされます。10年前といま、あなたはどちらの時代が生きやすいと思いますか?・・・

結果は、「10年前」の方が生きやすかったと考えている人が79%で、「いま」と答えた人21%を大きく上回っています。
昔がよった理由は、物価や生活費が安かった。国際関係の不安が少なかった。異常気象の影響が少なかった。SNS空間が穏やかだったなどです。
今がよい理由は、様々な情報を簡単に得られる。多様な価値観が尊重される。AIで様々なことができるなどです。

インテレクチュアル・ヒストリー

2026年7月18日   岡本全勝

リチャード・ワットモア著『入門 インテレクチュアル・ヒストリー ケンブリッジ学派の視点』(2026年、中公選書)を読みました。
インテレクチュアル・ヒストリーとは、聞き慣れない言葉です。本書の解説や、インターネットなどで調べましたが、いまいちよくわかりません。ウィキペディアの次の説明が、まだわかりやすいでしょうか。
・・・「知の営み」についての歴史学のこと・・・「過去の政治」をおもな研究対象としていた旧来の歴史学への批判として・・・その後1930年代まで、同時期に胎動していた社会史とともに「ソーシャル=インテレクチュアル・ヒストリー」(Social and Intellectual history) と呼ばれる講義が、アメリカの各地の大学で採用されるようになった。当時のインテレクチュアル・ヒストリーの旗手たちは、ドイツの歴史学の影響を受けており、ヘーゲル学派の流れをくむエルンスト・カッシーラーらのように「時代精神」(Zeitgeist) を把握することを目標として掲げていた・・・

いろいろとインテレクチュアル・ヒストリーについて説明してあるのですが、なかなか理解できません。ほかの歴史学と何が違うのか、あるいはどのような歴史学を敵としているのか、それを1行で説明してくださると、門外漢にはわかりやすいのですが。内包を深掘りするのではなく、外延を示してほしいです。「歴史の見方の変化

同じ著者の『入門 政治思想史』(2025年、中公選書)も読んだのですが、こちらはさらにピンと来ませんでした。内容が悪いのではなく、私の関心とズレていたようです。二つの本とも、すらすらとは読めませんでした。翻訳であること、たぶん原文も私たちになじみがないイギリス流の言い回しであろうこと、そして私が著者の持つ背景を十分理解していないことが、読みにくい原因にあると思われます。

経営陣と管理職は外国人、日本人は従業員

2026年7月18日   岡本全勝

時事通信社の専門誌『地方行政』6月25日号「インバウンド急増、1000万人突破が契機に 久保成人元観光庁長官に聞く」に次のようなことが書かれていました。
・・・観光地で外国資本による大規模ホテルの建設が進んでいるが「ホテルのマネジメント層に日本人があまりいない」ことを課題に挙げる。「米コーネル大ホテル経営学部卒などの外国人が高給取りの経営陣や中間管理職で、日本人は給料が高くないホテルのスタッフにとどまっており、この流れをどこかで止める必要がある」と警鐘を鳴らす・・・

先日書いた「経済停滞・高齢化と終身雇用の変貌」。優秀な従業員から管理職や幹部を選抜する日本の雇用慣行の限界、従業員と管理職や幹部は別に採用する諸外国の雇用慣行の違いが、現れています。

センメルヴェイス反射

2026年7月17日   岡本全勝

センメルヴェイス反射という言葉を知っていますか。
簡単に言うと、権威ある人たちが、通説に反する新たな知識に触れた際に、それを拒絶する態度でしょうか。

センメルヴェイスは、1818年生まれ、ハンガリーの医者です(ハンガリーは日本語と同じで、名字が先に来ます)。出産した母親が産褥熱という病気にかかって死亡する原因が、分娩を担当する医師の汚れた手にあるということに気が付きます。医師自身が原因で患者が死亡しているという事実を、医師たちには認めたくなかったのです。
まだ細菌が知られていない時代です。彼も、未知の「死体粒子」が原因だと、間違った理由を考えたようです。そうだとしても、消毒すると死亡が減るという事実は明らかだったのですが。

地動説を受け入れるには、長い年月がかかりました。近いところでは、プレートテクトニクスは、1960年代後半に登場し、欧米では70年代初めには地球科学の支配的な学説となりました。しかし、日本の地質学界ではその受容に10年以上の遅れが生じたとのことです。