カテゴリーアーカイブ:行政

心の回復力(レジリエンス)学習

2020年4月9日   岡本全勝

4月7日の日経新聞夕刊に「強い心 カギは回復力 レジリエンス学習、学校も導入 苦難の乗り越え方培う」が載っていました。
・・・精神的に苦しい場面からどう立ち直るか――。企業の研修などで導入が進む「レジリエンス(回復力)学習」を取り入れる学校が増えてきた。悩みや失敗をポジティブに捉える方法を話し合うなどする。子どもが話しやすい環境を整えるなど教員による細やかな配慮も必要だが、専門家は「多感な思春期こそ、つらさを乗り越える方法を学んでほしい」と話している・・・

よいことですね。これまでの教育は、立派な大人になることを教えていました。そこでは、落ちこぼれは弱い人間で、そうなってはいけないと教えていました。
しかし、みんながみんな、立派な大人になるわけでありません。みんなが、強いわけでもありません。強い大人も、挫折を経験しながら、強くなったのです。

これからの教育は、優秀な人を育てるとともに、そうなれない人、うまく行かない子ども、落ちこぼれるを支える教育が必要だと思います。そして、優秀な子どもは、放っておいても勉強します。支援しなければならないのは、後者です。
しかし、日本の教育は、まだその転換ができていないようです。

心のレジリエンスについては、拙著『明るい公務員講座 管理職のオキテ』P116で、「精神の体力」として取り上げました。

関東経産局、伴走型支援

2020年4月9日   岡本全勝

月刊誌『時評』4月号に、⻆野然生・関東経済産業局長のインタビュー「伴走型支援がもたらす地域経済の未来」が載っています。2ページだけ、ためし読みできます。

この試みは、日経新聞に取り上げられ、このホームページでも紹介しました。「経産省、伴走型支援」。
また、その原型である福島相双復興推進機構(官民合同チーム)については、何度か取り上げています。「マクロの産業政策とミクロの事業者支援の違い」。連載「公共を創る」第19回で、この手法を取り上げました

中小企業支援として、企業が役所に補助金などの申請に来るのではなく、役所の方から出かけていって、一緒になって問題点を考え、解決策を支援します。画期的なものだと思います。
福島でこれを立ち上げ軌道に乗せた、⻆野局長が被災地以外で展開をしてています。役所で待っているのではなく、困っている人のところに出かけていく手法は、他の分野の行政でも応用できると思います。

北村亘先生「2019年官僚意識調査基礎集計」2

2020年4月7日   岡本全勝

北村亘先生「2019年官僚意識調査基礎集計」の続きです。いくつか興味深い問と回答を、紹介します。
回答のうち「強くそう思う」と「そう思う」を「はい」として、「全くそう思わない」と「そう思わない」を「いいえ」として集計すると、各項目への回答は次のようになります。「はい」「いいえ」の順に、割合(%)を並べます。

社会に貢献したい意識は、高いです。
21.私にとって公益に貢献することは重要である 98、2
24.私は社会のために犠牲を払う覚悟がある 78、22

仕事に対する満足感は、あります。
42.概して、私は現在の職務に対して満足している 79、21
43.私は現在の職務に十分なやりがいを感じている 77、23
33.所属組織に対して個人的な一体感がある 58、42
40.いい機会があるのならば、できるだけ早くに退職したい 34、66

官僚の評価については、低下していると感じています。
37.官僚の威信は社会の中で低下している 93、7
38.官僚の威信低下は、官僚が社会に適応できていないことが原因である 53、47
39.官僚の威信低下は、マスメディアの激しい官僚批判が原因である 73、27

この項続く

子供の貧困

2020年4月6日   岡本全勝

4月6日の朝日新聞オピニオン欄は、中塚久美子記者の「子どもの貧困のいま 弱い所得再分配・窮迫続く母子家庭」でした。
要点は次の通り。
・子どもの貧困の「発見」から12年。問題意識は広まったが解消していない
・所得再分配が弱い。総合的な親の所得保障や教育費負担の軽減を
・貧困を生み出すのは構造的問題。賃金格差など社会的不利の改善に力を入れるべきだ

・・・日本の「子どもの貧困」が国内で注目され始めたのは2008年だ。研究者や当事者らが発信し、メディアで取り上げられるようになった。それ以前の朝日新聞でも、国内の子どもの貧困を指摘した記事はなかった。
翌09年、政府が初めて子どもの相対的貧困率を公表した。07年の数値で7人に1人にあたる14・2%。その後、過去の貧困率も公表され、1985年以降、上昇傾向にあることがわかった。

ワーキングプア、年越し派遣村などで貧困の可視化も進んでいた。生活保護家庭の子ども学習支援や困難を抱える子どもの居場所づくりなどの活動を支える市民が増える中、13年に子どもの貧困対策法が成立。「生まれ育った環境で将来が左右されることのないよう」にと教育支援に力点が置かれた。

貧困状態を把握するための25の指標のうち、21が進路や就園など教育関係。生活困窮家庭の学習支援や奨学金など教育費軽減策、学校を窓口とした福祉機関との連携などが進んだ。
12年の子どもの貧困率は16・3%。15年は13・9%に改善したが、先進国でつくる経済協力開発機構(OECD)の平均13・1%(16年)より高い・・・

・・・日本の母子世帯は8割が働いているが貧困率は高い。東京都立大の子ども・若者貧困研究センターによると、母子世帯(配偶者のいない65歳未満の女性と20歳未満の子ども)の貧困率は1985年の60・4%から、2015年に47・6%と下がったものの、高水準なのは30年にわたり変わっていない。

厚生労働省は02年、母子家庭の自立支援対策として、福祉の手当から就労を促進する方向性を打ち出した。一方、長時間労働を前提とし、男性が稼ぎ主で女性が補助的に働き育児や介護などを担う仕組みは、今も根強く残る。子どものいる男女の賃金格差は10対4。長年、母子家庭を支援するNPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石千衣子理事長は「結婚・出産で仕事を辞めた女性が子どもを抱えて働くのに合わせ、労働市場には月収10万円前後の仕事があふれている。母子家庭もそこに誘導される結果、働いても貧困になる」と指摘する・・・

北村亘先生「2019年官僚意識調査基礎集計」

2020年4月4日   岡本全勝

北村 亘,・阪大教授たちが行っておられる、官僚意識調査の基礎集計がまとまりました。「2019年官僚意識調査基礎集計」『阪大法学 69(6) 』。インターネットで読むことができます。
今後、この数値を基に、分析が加えられます。既に北村先生は、NHKの取材に対し、活用しておられます「霞ヶ関のリアル 心身病む官僚たち

6ページに、結果が出ています。基礎的な問をいくつか紹介します。
1ここ2,3年で急激に業務料が増えているはかという問には、肯定する割合が74%です。
2業務量の増大に組織として対応できているかという問には、否定する割合が82%です。
6業務の高度化・複雑化に組織として対応できているかという問には、否定する割合が84%です。
客観的事実がどうかは別として、官僚たちは近年の変化を深刻に受け止めています。

この背景には、日本の公務員の人数の少なさがあります。3ページに載っている、世界各国の公務員の「業務量」比較をご覧ください。かつては、このことも日本の官僚の評価を高めたのですが。そして、行政が対応すべき社会の課題が変化したこと、あわせて政治主導への切り替えにまだ戸惑っていることが上げられます。

この調査は、このホームページでも紹介し、参加をお願いしました。参加くださった官僚たちに、お礼を言います。
そこでも書きましたが、各国では政府が行っています。次回は、内閣人事局が実施することを期待しています。もっとも、雇用主の調査と、外部の研究者の調査は、視点が異なるところもあります。その調整は必要です。この項続く