子供の貧困

4月6日の朝日新聞オピニオン欄は、中塚久美子記者の「子どもの貧困のいま 弱い所得再分配・窮迫続く母子家庭」でした。
要点は次の通り。
・子どもの貧困の「発見」から12年。問題意識は広まったが解消していない
・所得再分配が弱い。総合的な親の所得保障や教育費負担の軽減を
・貧困を生み出すのは構造的問題。賃金格差など社会的不利の改善に力を入れるべきだ

・・・日本の「子どもの貧困」が国内で注目され始めたのは2008年だ。研究者や当事者らが発信し、メディアで取り上げられるようになった。それ以前の朝日新聞でも、国内の子どもの貧困を指摘した記事はなかった。
翌09年、政府が初めて子どもの相対的貧困率を公表した。07年の数値で7人に1人にあたる14・2%。その後、過去の貧困率も公表され、1985年以降、上昇傾向にあることがわかった。

ワーキングプア、年越し派遣村などで貧困の可視化も進んでいた。生活保護家庭の子ども学習支援や困難を抱える子どもの居場所づくりなどの活動を支える市民が増える中、13年に子どもの貧困対策法が成立。「生まれ育った環境で将来が左右されることのないよう」にと教育支援に力点が置かれた。

貧困状態を把握するための25の指標のうち、21が進路や就園など教育関係。生活困窮家庭の学習支援や奨学金など教育費軽減策、学校を窓口とした福祉機関との連携などが進んだ。
12年の子どもの貧困率は16・3%。15年は13・9%に改善したが、先進国でつくる経済協力開発機構(OECD)の平均13・1%(16年)より高い・・・

・・・日本の母子世帯は8割が働いているが貧困率は高い。東京都立大の子ども・若者貧困研究センターによると、母子世帯(配偶者のいない65歳未満の女性と20歳未満の子ども)の貧困率は1985年の60・4%から、2015年に47・6%と下がったものの、高水準なのは30年にわたり変わっていない。

厚生労働省は02年、母子家庭の自立支援対策として、福祉の手当から就労を促進する方向性を打ち出した。一方、長時間労働を前提とし、男性が稼ぎ主で女性が補助的に働き育児や介護などを担う仕組みは、今も根強く残る。子どものいる男女の賃金格差は10対4。長年、母子家庭を支援するNPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石千衣子理事長は「結婚・出産で仕事を辞めた女性が子どもを抱えて働くのに合わせ、労働市場には月収10万円前後の仕事があふれている。母子家庭もそこに誘導される結果、働いても貧困になる」と指摘する・・・